ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 メンバー勧誘編、その10。
 今回は勧誘編の実質的なボスである、彼女がお相手!


スピリチュアルなお遊戯

 

「おはようございまーーーすっ!!」

「朝っぱらから元気だなお前」

「勧誘すべきはあと2人! ここが正念場だよ!!」

「ふぁああぁ……昨日散々付き合ってやったんだから、今日くらい1人で頑張れよ」

「ダメ! 零君がいなかったら、誰が穂乃果の無茶苦茶を止めてくれるの!?」

「自覚あったのか……」

 

 

 勧誘活動2日目の朝、俺と穂乃果はとあるマンションの入口前に集合していた。時刻は午前5時で早朝も早朝、最近ニート生活を極め昼起きがデフォルトになっている俺にとっては苦行でしかない。それは穂乃果も同じはずなのだが、早起きする覚悟があるほどスクフェスへの情熱は本物らしい。そのやる気を少しでも勉学に向けてくれたら、テスト前に泣きついてくることもないだろうに……。

 

 ちなみに、こんな朝早くに勧誘活動を行う理由は3つある。

 1つ、今回の勧誘対象が社会人であるため、日中は中々捕まらないこと。2つ、だったら休日まで待てばいいじゃんと思うかもしれないが、なるべく早くすくフェスに参加申請をするためにメンバーを集めたいこと。3つ、勧誘対象の性格が特異過ぎて、まともの状態では穂乃果の勝目がないこと。つまり寝起きで判断力が鈍っているところを攻めようという、相変わらず陰湿な作戦だ。

 これらの理由を考慮して、わざわざ早朝5時に集合させられたのである。さっき穂乃果が自分で公言していたが、俺を巻き込んでいる時点で穏便な勧誘は期待できないと見て間違いなさそうだ。

 

 俺たちは早速マンションのエレベーターに乗り、勧誘対象の部屋の階まで上り詰める。少し廊下を歩いて間もなく、表札に『東條』と書かれたドアの前に辿り着く。そう、今回の勧誘対象はμ'sの中で最も掴み所が難しい希だ。特に単純な穂乃果の場合はいつものような口勝負で彼女に勝てるはずもないため、こうして寝込みを襲う作戦を実行している。俺だって参謀のように計算高い希に言いくるめられることは多々あるから、不意打ち地味た作戦だとしても勧誘するには有効だと思う。卑怯と言われる覚悟があるかどうかだけど……。

 

 

「こうして見ると、なんだか寝起きドッキリみたいだね♪ せっかくだから希ちゃんの寝顔を突撃リポートしてみようよ!」

「そうやってすぐ横道に逸れるから、毎回の勧誘が苦労するんだぞ……?」

「でも見てみたくない? いつも余裕たっぷりの希ちゃんの可愛い寝顔♪」

「それはまあ……見たいかも」

「でしょ? 零君って雪穂の時もなんだかんだ混浴を楽しんでたし、穂乃果の勧誘に文句を言ってる割にはノってくれるよね!」

「うるせぇ……否定できないけど」

 

 

 雪穂の勧誘時だけでなく、海未のツイスターゲームや亜里沙のお使い企画も何だかんだ楽しんでいた俺がいる。そして今回もまさにそうで、普段隙という隙を見せない希の緩んだ姿を見られると思うと俄然乗り気になってしまう。俺が穂乃果のように子供っぽい悪ふざけが好きなのも、秋葉と同じ血を引いているからに違いない。でないと自分が子供っぽいと認めなくちゃならないから!!

 

 

「そういや、どうやって中に入るんだ?」

「フッフッフ……穂乃果がそんな単純なことを考慮してないと思った?」

「俺が単純みたいな言い方やめろ……」

「実はね、事前に秋葉さんからどんな扉の鍵でも開けられる、通称『最後の鍵』を貰ったんだよ! ほらこれ!」

「ど、どんな扉でも……だと!?」

「うんっ! これを使えば女子更衣室に忍び込んでカメラを仕掛けたりとか、女の子の部屋に侵入して下着を盗んだりとかできるよ! やったね零君♪」

「もっと有用な用途があるだろそれ……」

 

 

 鍵の名前は某有名RPGゲームから拝借しているようなので、敢えてそこは触れないようにしよう。

 それにしてもその鍵、持っているだけで警察に逮捕されそうな代物だな。言ってしまえばどんな金庫でも開けることができ、誰の家だろうが忍び込むことができる。それはまさに勝手に人の家に上がり込んでタンスや壷を物色するRPGの主人公のようだ。そう考えると、ゲームで他人の私物を物色する分には抵抗はないが、実際にゲームと同じことができるとなると渋っちゃうな。やっぱ他人のプライベートを犯すくらいの忍耐と精神がなければ、RPGの勇者にはなれないということだろう。

 

 

「あっ、開いたよ!」

「もう開けたのかよ! 何の躊躇いもなしかよ……」

「なるほど、零君はエロ本の袋とじをドキドキしながら開けるタイプかぁ♪」

「現状とシチュエーションが違うだろ! 袋とじはドキドキするけど!!」

 

 

 ネットでエロ動画や同人を容易に見られるこのご時世、今時の若者はエロ本をいうのを買ってみたことがあるのだろうか? コンビニのR-18コーナーでエロ本を手に取り、レジへ持っていくあの緊張は永遠に忘れることなく本人の記憶と心に刻み込まれていることだろう。そしてエロ本の袋とじは、完全に密閉してあることもあって切り離している時にとてつもない期待と性欲が押し寄せてくる。ネットでエロ本を探して満足している勢の皆さんは、一度その緊張感とドキドキを味わってみるといい。きっと自分の世界が広がるからさ。

 

 そんなことを考えている間に、既に穂乃果は希の部屋へと侵入していた。その光景を普通の日常として見ているあたり、俺たちの周りは常に非日常で溢れかえってたんだなぁとしみじみ思うよ。まあほとんど秋葉って悪魔のせいなんだけどさ……。

 

 

「わぁ~♪ 希ちゃんのお部屋、1人暮らしなのに綺麗だね!」

「確かに。社会人の1人暮らし部屋って汚いイメージあるから尚更だな」

「う~ん、ゴミ箱にオナティッシュも入ってない……清潔だ!!」

「プライバシーの侵害にも程があるだろ……。不法侵入の時点で人のこと言えねぇけど」

 

 

 もしもの話だけど、ゴミ箱の中にオナティッシュが入っていたらどう反応すれば良かったのだろうか? 希ってエロいイメージはあるけど本人は特段淫乱思考でもないから、自家発電をした事実が残っていればそれはそれで興奮できたのかもしれない。色気はあるけど普段澄ましている女の子が、部屋に1人でいる時にはしっぽりと――――という光景を想像すれば、それだけで1日のオカズは賄えるほどだ。

 

 そんな淫猥な妄想をしている最中、穂乃果はそそくさと希のベッドへ近づいて行く。

 俺も続いてベッドに歩み寄ると、希の可愛い寝顔が目に映った瞬間にドキッとして思わず立ち止まってしまった。

 

 

「希ちゃんの寝顔は久々に見たけど、大人になって余計に色っぽくなったよね」

「まあ寝相やパジャマ的にもそう見えるな。それにしても、エロい格好してんなコイツ……」

 

 

 それもそのはず、パジャマの胸元が大きくはだけ、ただでさえ深い谷間が異常なまでに深く見えた。夏なので夜が蒸し暑かったのか、寝ている間に無意識でパジャマを半脱ぎにしてしまったのだろう。あと少しでも動けば胸の半球が顕になるくらいは肌を晒していた。しかも朝日に照らされた胸は彼女の艷やかな肌をより際立たせており、直に触らなくても胸の手触り感が直感で伝わってくる。本人が熟睡してすぅすぅと可愛い寝息を立てているのと相まって、清々しい朝なのにただならぬ色気を感じてしまった。

 

 

「いいよいいよぉ~! 巫女さんの無防備な私生活姿なんて、滅多に撮れるものじゃないからね」

「もう巫女さんのバイトは辞めてるだろ」

「でも希ちゃんと言えば、イコール巫女さんみたいなところない?」

「まあコイツに一番似合うコスプレでアンケートを取ったら、巫女さんでほぼ確定だろうな」

「だからこそ希ちゃんの寝顔は珍しく感じちゃうんだよ。聖職者である巫女さんの哀れな寝姿なんて、中々見られるものじゃないからね。それにお金になりそうだし♪」

「さっきからちょいちょい欲望が見え隠れしてるぞ……」

 

 

 そりゃ希の半脱ぎ寝顔写真なら、その手のファンに売ればボロ儲け間違いなしだろうよ。そんな色っぽい写真でなくとも、神社でバイトしていた頃の巫女さんコスや普段着ているスーツの写真など、もはや日常生活の姿を写真集にして売り出すだけで財布が厚くなる。流石絵里と並ぶμ'sのグラビア担当、やはり女の子は身体の凹凸がくっきりしているだけでステータスだな。ここでにこが頭に浮かんでくるのは、もはや反射神経なので気にしない気にしない。

 

 

「それにしても希ちゃんの寝顔可愛いなぁ~♪ 穂乃果、我慢できなくなってきたよ」

「我慢できなくなったってお前、同性相手に欲情したのか……」

「違うよ! ちょっと希ちゃんの頬っぺ触ってみたいと思っただけで、やましいことなんてないから!」

「あまり大声出すと起きちゃうぞ」

「あっ……」

 

 

 眠れる希の顔に自分の顔を近づけている穂乃果だが、話すトーンはいつもとあまり変わっていないため不覚にも程があった。希の眠りは深い方ではないのだが、ここまで騒いでも起きないあたり仕事で疲れがたまっていたのだろう。だったら尚更こんな勧誘のために、彼女の朝を無駄に浪費させるのが心苦しくなってくるな……。

 

 ようやく自分の騒々しさに気付いたのか、穂乃果は息遣いも押し殺すほど静かになった。

 そして眠れる希に手を伸ばすと、寝息で軽く上下する彼女の頬に自分の指を優しく押し付ける。まさに"ぷにっ"という音が適切なくらいに指が頬に食い込み、見ているだけでも分かる柔らかい弾力で指が押し返された。

 

 

「おぉっ! 希ちゃんの身体ってどこを触っても柔らかいと思ってたけど、これは想像以上だよ!」

「う、んっ……」

「か、可愛い声!! いつもはお姉さんキャラだけど、こうして見ると子供みたい♪」

「しかもパジャマが半脱ぎなのもあって、妙にエロいのがまたなんとも……」

「子供でありながらも色気があるって、希ちゃんって本当にズルい! 穂乃果も希ちゃんや絵里ちゃんみたいにもっと大人の魅力を鍛えないと! 醸し出す魅力で零君の精巣を萎びさせるくらいに!」

「姿を見ただけで射精を促すって、それもうテロじゃん!」

 

 

 ただでさえ12人を相手にするのがやっとなのに、これ以上のプレイで搾り取られたらそれこそテクノブレイクしてしまう。複数人でのプレイができるように己の性欲や性技を鍛えてきたつもりだが、同時に彼女たちの性欲もパワーアップしていたのであまり意味のないトレーニングだった。そう考えると、AV男優の持続力は凄まじいと素直に感心するよ。

 

 そんな猥談はともかくとして、穂乃果は未だに希の頬を突っついて遊んでいる。希は自分の頬が弄られる度に小さな吐息を漏らすので、ただの寝顔なのに妙にアダルティックだ。それでいてどこか愛おしく、眠っている赤ちゃんのような反応を示すので微笑ましくもある。あまりやりすぎると起きてしまう危険を感じながらも、普段ではあまり見られない希の健気な様子に俺も目を奪われていた。

 

 

「胸の谷間もエッチだねぇ~♪ そうだ、ちょっとだけ触ってみようかな」

「おい本気か?」

「あれ? もしかして零君も触りたいの? でも言いだしっぺの穂乃果からだよ」

「そりゃ触りたいかと聞かれたら触りたいけどさぁ、そんなことをしたらいよいよ起きちまうぞ?」

「大丈夫。胸の谷間に指を入れてみるだけだから!」

「そんな『先っちょを入れてみるだけだから』みたいな言い回しをしなくても……」

「こういうの何て言うんだったっけ? おっぱいズリ……? まあいいや、実際に体験した方が早いよ!」

 

 

 コイツ、眠っていて抵抗できない女性になんと羨まけしからんことを!! 思い返してみれば、最近女の子にエロいことをする役目が穂乃果に回っているような気がする。女の子にセクハラをするのは俺の特権であって、女の子同士の絡みなんてたまにでいいんだよ。だが今回も穂乃果にその役目を奪われてしまったので、もしかしたら俺、教育実習以前よりも性欲が低下してる……? 恋愛に対しては積極的になったのだが、その代償としてエロに対しては積極性を失ってしまった……のか!? ハーレム主人公としてそれはどうなの!?

 

 

「ゴメンね希ちゃん。いつも胸を触られてばかりだったから、今日はそのお返しだよ♪」

 

 

 穂乃果は躊躇いもなく人差し指を希の胸の谷間に差し込もうとする。

 希には『ワシワシ』という女の子の胸を弄り倒す必殺技があるのだが、その被害者として名を連ねているのは穂乃果だ。その理由は穂乃果がいつも色々やらかすからなのだが、今日は不条理にもその仕返しを計画に入れていたらしい。もちろん俺は止める……なんて野暮なことはせず、指パイズリの現場を息を飲んで見守っていた。

 

 

 だが、そこで俺でも穂乃果でもない声が聞こえてくる。

 

 

「だったらウチは、そのお返しをしてあげないとね♪」

「ふぇ……?」

「穂乃果!?」

 

 

 一瞬の出来事だった。

 突然希が上半身を起こしたかと思えば、目にも止まらぬスピードで穂乃果を逃げ出す隙間もなくホールドしていた。プロレス選手もビックリの押さえ込み方は、かつてワシワシを効率良く発動させるために鍛え上げた賜物だろう。

 そして間髪入れず両手を穂乃果の胸に宛てがうと、片手の5本の指、計10本の指を巧みに駆使して彼女の胸を鷲掴みにした。

 

 

「ぎっ、ギャァああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「穂乃果ちゃんのくせに、よくもウチを嵌めようとしてくれたやん? そんな生意気な子にはたっぷりとお仕置き♪」

「ひゃっ! あっ、んっ……!!」

「久々やなぁ、こうして穂乃果ちゃんの胸をワシワシするのは。でも昔の記憶が身体に染み付いてるからかな? 穂乃果ちゃんの敏感な部分を攻めるこの手捌きは衰えてないよ♪」

「そ、そんな解説いらないからぁ……ひぅっ!」

 

 

 さっきまでの穂乃果のしたり顔はどこへやら、あっという間に攻守が逆転して彼女の表情は気持ちよさに塗れたオンナの顔に変貌していた。

 希の胸揉み技術は俺と同等くらいであり、むしろμ's結成前からその技を会得していた分、俺よりもμ'sメンバーの胸の感度を熟知しているかもしれない。その経験がまさに今発揮されており、まだ2、3揉みくらいなのにもう穂乃果が頬が赤く染まり出していた。ここ5年で鍛え上げられたそのセクハラ術、しかとこの目に焼き付けて勉強しておかなければ!!

 

 ――――と思ったのだが、そういや希の奴、どうして穂乃果の攻撃に反応できたんだ……?

 

 

「おい希。まさかお前、起きてたのか」

「うん。零君たちが部屋に入ってきた時からね」

「それなのに黙って寝たフリしてたのかよ……」

「最初は部屋に入ってきたのが誰か分からなかったから、ちょっと様子見をね。でも相手が2人だと分かって、しかも穂乃果ちゃんが良からぬことを企んでることを知ったから、逆にこっちから罠に嵌めようと思ったんよ♪」

「まあお前が考えそうなことだよ……」

「の、希ちゃぁ~ん……喋りながら胸触らないで……んっ、あぁっ!」

 

 

 希は笑顔でここまでの経緯を語りながら、同時に穂乃果の胸の先端を重点的に攻める。やはり計算高い彼女に仕返ししようなんて短絡的な考えは安々と見破られてしまったか。でも逆にそんな計略を張り巡らす知的な女性ほど、快楽に陥った時の羞恥で悶え苦しむんだよな。今の穂乃果も十分に官能的だけど、俺としては今この状況で余裕の希を攻めたらどうなるのか、それが気になって仕方がない。

 

 しかし、今回ここへ訪れた目的はそこじゃない。もう穂乃果は性奴隷の如く胸を弄られているため忘れていると思うし、俺もさっきまで抜け落ちていたが、あくまで勧誘をしに来たんだ。寝起きドッキリをしようと思ったら逆に仕返しをされて、寝起きドッキリドッキリになったことで勧誘活動が計画からフェードアウトしそうだったぞ……。

 

 

「も、もうっ! 穂乃果はこんなことをしに来たんじゃないの!!」

「勝手に人の部屋に忍び込んで、頬っぺを触って胸まで弄ろうとした人が言うセリフ?」

「その場のノリでムシャクシャしてやっただけだもん! 最初から計画してた訳じゃないから!!」

「そっちの方が余計にタチ悪いやん? お仕置き♪」

「ギャァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 因果応報って四字熟語の動画を作成するならば、まさに目の前で起きている光景を録画すれば無修正でもみんなに伝わるだろう。これまで無理を強いる勧誘をしてきた罰と言わんばかりに、叫び声を上げるほど胸を攻められ表情が蕩けている。

 ていうか、声が大きすぎて確実に隣の部屋に聞こえていると思うんだが……。レズプレイの叫び声で目を覚ますお隣さんが不憫で仕方がない。あとでお中元を送ってやろう。

 

 

「絵里ちから聞いてるよ? 穂乃果ちゃんがスクフェスに参加するために、元μ'sメンバーを集めてるって話」

「ま、またネタバレ!? まあ話が早くていいけどさぁ……」

「話は早いけど、まだウチが加入するとは言っとらんよ? 穂乃果ちゃんからあつ~い説得を聞かせてもらったら、()()()()()()加入するかもしれないけど」

「うっ、事前にそう振られると恥ずかしいんだけど……」

「あれぇ~? みんなには自分の気持ちを素直に伝えたのに、ウチには黙ったまんまなんやぁ~寂しいなぁ~」

「うぅ、何という棒読み……」

 

 

 穂乃果の勧誘と言えばこれまで幾多のメンバーを圧倒してきただが、希に対してだけはサラリとスルーされてしまう。それどころか逆にその勢いを利用され、巧みな言葉攻めで穂乃果を追い詰めるその手口は見事の一言だ。これには穂乃果もタジタジで、希に後ろから抱きつかれながらも抵抗の色すら見せない。これまで通用したテクニックが全く通用せず、寝顔をイジって遊ぶと言う反撃の糸も切られ、まさに絶体絶命の状況に追い込まれていた。

 

 そんな穂乃果を尻目に、希の様子はまさに"余裕"の二文字だ。さっきからずっと悪戯な笑顔を崩すことなく、しかも穂乃果の耳元で棒読みを発しているので尚更タチが悪い。もうコイツがラスボスでいいよ……。

 

 

「このままウチに胸を揉まれ続けて牛さんみたいな垂れおっぱいになるか、それともお熱い情熱が籠った説得をウチに伝えてくれるか……。選択は2つに1つしかないよ♪」

「もう分かったよ……。希ちゃん!!」

「ん~?」

「穂乃果たちは希ちゃんが必要なんです! 希ちゃんがいないと悶々としてみんな夜も眠れません! 湧き上がる興奮が収まらず、発散することもできないこのもどかしさ……。だから、穂乃果たちともう一度μ'sとして舞台に上がってください!! そしてまた穂乃果たちに興奮を感じさせてください!! …………これでどう?」

「それ……告白?」

「違うよ!! 何を思って女同士で告白し合わないといけないのさ!!」

「しかもちょっとエロかったし……」

「それは零君の思考回路の問題だよ」

 

 

 いやいや、みんなと一緒に()()()()()()興奮を味わいたいのは文脈から分かるけど、字面だけ見ているとベッドの上で悶々としている妄想しか浮かんでこない。しかも現に穂乃果と希が密着しているからなのか、さっきから発する言葉が全部レズレズしく聞こえるのは気のせいだろうか……? 他のメンバーの勧誘でも同じような現象が発生しているから、もしかしたら俺が教育実習に行っている間にコイツら、自分たち同士で溢れ出る性欲を補ってたんじゃねぇだろうな……? 俺が開発する前に女の子同士でデキ上がっているのはやめてくれ!

 

 

「穂乃果ちゃんのお熱い勧誘も聞けたことやし、ウチもμ'sに参加しようかな。絵里ちとは違って招待状の件もそこまで心配してないから、むしろ社会生活の余暇活動だと思って思いっきり楽しませてもらうよ♪」

「なんだろう、素直に喜べない自分がいるよ……。もしこれで参加してくれなかったら軽く反乱を起こしてたよね」

「その時はまたワシワシして止めてあげるから♪」

「希ちゃんに触られると、気持ちいいんだけど悪寒が走るんだよ……」

「だって普通に気持ちよくしちゃったら、お仕置きにならへんやん?」

「胸を揉むだけで女の子の感情を自在に操れるお前が凄いよ……」

「零君も体験させてあげようか? 男の子相手はもちろん下半身を……ね♪」

「猥談に持ち込めば俺が欲情すると思うなよ?」

 

 

 すまん、実は若干性欲が反応した! だって希に下半身を狙われちゃねぇ……?

 そんなことよりも、勧誘活動は波乱の渦中であったのにも関わらずあっさりと加入を承諾された。だけどいつもとは違い穂乃果が追い詰められる展開となっていたため、体感的には苦戦を強いられたように見える。まあ雪穂の勧誘時は簡単すぎてつまらないのも嫌と自ら公言していたので、これくらいの困難があった方がメンバーが揃った時の喜びは大きいだろう。

 

 そして希が加入したことで、μ'sのメンバーは11人となった。新生μ's(とは言っても5年前の話なので、新生という言葉も既に怪しいが)は総勢12人なので、残るは1人。さて、誰が残っているのかな――――

 

 

 ………………

 

 

 ………………

 

 

 ………………えっ? 花陽!?

 

 

 アイツがラスボス!?

 

 

 

 

 To Be Continued……

 




 やはり希は一筋縄ではいかず、もう彼女がラスボスに等しいので勧誘活動はこれで終わり!!

 ――――とはならず、次回が真のラスボス戦です!

 どうでもいいですけど、花陽がラスボスの玉座に待ち構えている展開って可愛くないですか?()





【告知】
 私と同じくハーメルンで『ラブライブ!』を執筆されている"たーぼ"さんの小説『ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~』との2回目のコラボが決定しました!
 投稿日は9月8日(金)を予定していますので、何卒よろしくお願いします!

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