ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 『金髪+巨乳+アメリカンハーフ+高身長+スタイル抜群+美少女』
 この属性を全て兼ね備えている女の子はだーれだ??


シャイニー・スキャンダル

「でっけぇなオイ……」

 

 

 俺の目の前にそびえ立つのは、見るからに神々しい高級ホテルだ。流石に小原家の所有物と言ったところか、周りの山や海など綺麗な自然を一蹴するかのようなインパクトを放つ白い建物は、夜なのにも関わらず明るく輝いている。元々この内浦は田舎っぽいと言ってしまうと申し訳ないが、正直都会とは違って夜になると闇に包まれたかのように暗くなる。その中でも一際どころか百際くらい輝くこのホテルの存在感は凄まじいものだ。まるでここだけ都会の一部を切り取った光景に見える。入口付近に噴水や南国植物なんて、とてもとは言わないけどこの街には若干ミスマッチだ。だがそれだけ小原家と俺たちの庶民の格の違いを見せつけられた。

 

 俺が今日ここへ来たのは、鞠莉からのお誘いを受けたからだ。突然電話で一度でいいから先生を自分のホテルに招待したいから来いと強制的に予定を入れられ、こうして出向いた訳だが……。もう入口にいるだけでも、最近リッチ感を出している俺が縮こまるように惨めになってしまった。これだけ豪華だと緊張しちゃうっつうの!

 

 するとホテルの入口から鞠莉が現れ、こちらに駆け寄ってくる。こうして見ると鞠莉って見た目だけでもお嬢様感が半端ないよなぁ。だからこそ一般庶民の俺がここにいること自体が場違いに思えてくるのだが……。

 

 

「あっ、先生! チャオー♪」

「鞠莉か、よく分かったな俺が来たって。今から電話するところだったのに」

「先生のことなんて何でも分かっちゃうんだから!」

「まあ俺って単純らしいからな」

「そういうことじゃないんだけどねぇ……」

 

 

 一瞬顔を曇らせた鞠莉だが、すぐにいつも通りの晴れた表情に戻り、俺の手を握ってホテルの内部へ誘う。

 

 

「じっくり楽しみましょう先生。2人きりのMidnightを……ね♪」

「おい待て! 俺に何をするつもりだ……?」

「私が先生に何かをするんじゃなくて、先生から私にするんでしょ? 普通はね♪」

「誘ってんのかそれ? 誘ってんだよな!?」

「フフッ、もしかして私から先生にするほうが良かった? 何がとは言わないけど」

「それは内容による」

「そうやって素直なところ、私は好きよ♪」

「お前なぁ……」

 

 

 だから、冗談でも真っ向から笑顔で好きと言われるとドキドキするからやめてもらいたい。Aqoursのみんなも段々俺の扱いが分かってきたのか、こちらに笑顔を向けて直球な言葉を放つことが多くなった。俺をからかっているのかもしれないが、恐らくは心の距離が近くなったおかげだと思う。ていうかそうでないとJKに弄ばれる残念イケメン教師の異名が付いてしまうからな……。

 

 それにしても、こんな会話を繰り広げてしまったせいで目の前のホテルがラブホテルにしか見えなくなってしまった。真夜中の闇の中で白い建物が淡いライトにより光り輝いているので、外から見ているだけでもムードが漂ってくる。しかも金髪ハーフの美少女に手を引かれているこの光景は、まさに都会で怪しい店に連れ込もうとする集客嬢に騙されているかのような感覚だ。しかも鞠莉がやる気ならぬヤる気に満ち溢れているのがこれまた怖い。今人気急上昇中のスクールアイドルの1人と夜のホテルだけでも世間的に危険なのに、もしあんなことやこんなことになっちゃったらスキャンダルどころの話じゃないぞ……。

 

 

「あれ? 先生もしかして緊張してる? いつもはヤリ手な雰囲気出してるのに?」

「それはお前ら浦女の奴らが勝手に作り上げた偶像だから。それに男なら、ホテルで男女が2人きりのシチュエーションに緊張しない訳ねぇだろ」

「そうなんだ、緊張してくれているんだ……」

「いくら年の差があったって、お前と俺では3歳しか違わねぇんだぞ。世間から見ればほぼ同い年みたいなものだろ」

「へぇ~そう思ってくれているんだ……」

 

 

 俺を誘惑するくらいテンションが高いと思ったら、たまに自分に言い聞かせるように呟くのは一体なんなんだ?? 綿密に計算された誘惑なのに俺が予想外の反応をして困っているのか、それとも勢いで誘惑したけど俺がそれほどまでに否定的でないことに驚いているのか。どちらにせよ俺があと1週間足らずでここを去るから、という理由でホテルに招き入れる訳ではないようだ。

 

 

「それじゃあ早速行きましょ! 私と先生の愛の巣へ!」

「言い方!!」

 

 

 小原家って金持ちだから、どこかに鞠莉を守るボディーガードがいる可能性がある。お嬢様が誰とも知らない男と2人きりでホテルだなんて、そいつらが聞いたら怒り狂って俺に襲い掛かってくるだろう。もう今にもガタイのいいスキンヘッドのグラサンの男たちが襲撃してきそうだ……。

 

 しかし、そんな心配もなくホテルに入ることができたのは一先ず安心。だがこう安々と男を誘い込めるあたり、最初から俺と鞠莉を2人きりにするような計画があるみたいで怖いものがあるけど……大丈夫かな?

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「マジかよ……」

 

 

 人生は驚きの連続であるほど充実してると言えるが、ここまで短時間で驚きが連発すると流石に語彙力を失ってしまう。

 俺が通された部屋はホテルの最上階に1つだけ存在する、スイートルームの中でも最も1泊の値段が高い部屋だった。つまりスイートルームの中でも上の上、スイートルームの中のスイートルームだ。こうして同じ単語を羅列してしまうくらいには語彙力が欠如してしまっている。今までスイートルームという存在は知っていたが泊まるどころか入ったことすらなかったので、こうして上の上の部屋の入口に立っていること自体が俺にとっては驚きなのだ。

 

 部屋を見渡すと汚れやシミなど1つもなく、ここから一歩踏み出して俺の足垢を付けるのさえ躊躇われる。部屋に置いてある家具は素人目から見ても高級品ばかりで、一般庶民の俺の目にはむしろ毒だ。更に大きな窓からの夜景は素晴らしく、内浦の綺麗な海が夜の闇に染まって見えてこれまた1つの風情が感じられた。

 

 俺がその場で硬直していると、鞠莉はまるで自分の部屋かのようにズカズカと上がり込んでいく。これが庶民とお嬢様の格の違いだと、普段の学校生活では感じられない格差を感じた。スイートルームに我が物顔で乗り込むあたり、コイツはお嬢様なのだと今までで一番強く実感したかもしれない。いつもはあまり自分が金持ちなことを鼻に掛けないからな、鞠莉の奴。

 

 

「ちょっと隣の部屋で着替えてくるから、絶対に覗いちゃダメよ! こっちの部屋に戻ってきてからのお楽しみなんだから」

「それはフリか? フリなのか!?」

「どうしても覗きたいというのなら先生のご自由に。敢えて鍵は掛けないでおいてあげるから♪」

「お前の期待してることが何か全然分かんねぇ……」

「だから今日、教えてあげるんだよ……」

 

 

 またしてもボソッと小さな声で呟く鞠莉。どうして時折テンションが下がるのかはまだ把握できていないが、やはり俺をこんな高級スイートルームに閉じ込めたのは何か理由があるみたいだ。

 

 それから鞠莉は何も言わず隣の部屋に入って行った。物静かな態度なのがこの卑しいムードを助長させ、まさにホテルで風呂に入っている女の子をベッドの上で待っているかのような、そんな高揚感すら感じてしまうほどに……。とにかく自分自身が無駄に緊張していることは確かだった。

 

 外も部屋も静かなせいで、隣の部屋から服が肌に擦れる音が聞こえて来る。十中八九鞠莉の着替えの音だろうが、ホテルのスイートルームでかつ真夜中、しかも2人きり――――仕組まれたかのような状況だけど、俺は隣の部屋のドアを凝視しながら息を飲んでいた。やはり俺も男だ、これほどまでにムード満点だとどこか期待している節もあるのだろう。もはや完全にラブホと同じ状況であり、最近曜や果南に奉仕された影響で溜まりつつあった性欲が俺の興奮を煽ってくる。とりあえず部屋の中に入ってはみたが、どうしようもなくそわそわしてしまうのでベッドの近くでまた佇んでしまった。

 

 それにしても、鞠莉は一体何をするつもりなんだ? ただのお遊びで俺を誘った訳ではないというのはさっきも言ったが、だとしたらその目的が見えない。しかも部屋に来て早々着替え出すなんて、まるで今から本当にヤるみたいじゃねぇか……。以前の海合宿でも胸を押し付けてくるくらいには積極的だったし、鞠莉ならありえるのかも。

 

 色々脳内推理をしていたらいつの間にか時間が経っていたみたいで、遂に運命の時がやって来る。

 隣の部屋のドアが開き、そこから艶やかな肌をした女性が――――――って、肌!?!?

 

 

「お、おいっ!? どうしてそんな格好してるんだよ!?」

 

 

 鞠莉はその質問に答えることはなく、卑しく微笑みながら俺の元へと近付いてくる。

 彼女は純白のネグリジェを着ているのだが、布地面積が普通のネグリジェよりも明らかに小さい。それゆえに肌のあちこちが露出しており、二の腕から肩、ふくらはぎから太ももまで何もかもが顕になっていた。そして胸元までもが大きくはだけており、いくら生地の薄いネグリジェと言えども肌を守るような構造でないことがはっきりと分かる。これは絶対に()()()()()()()()()()用のモノだ。見ているだけでも恥ずかしくなってくるくらいだから、当の本人はもっと羞恥心を感じているのだろう。

 

 ――――と思いきや、頬をほんのりと染めているだけで卑しい笑顔は変わらずだったので、どうやらそんなことはないらしい。彼女の身体付きが完全にオトナなので、もうマジ物のソープ嬢みたいだな……。

 

 

「良かった、先生が反応してくれて」

「お前のそんな姿を見て、意識するなってのが無理だろ。もっと自分がいい身体してることを自覚しろよな……」

「自覚してるからこその行動だよ。どう? ドキドキしてくれた?」

「だ、だからするだろ普通……」

 

 

 鞠莉は胸を押し付けながら密着してくる。だからこの状況でドキドキしない奴の方がおかしいんだよインポだよ。しかも着ているネグリジェの生地が極端に薄いせいで、胸の大きさ、柔らかさ、弾力――――つまり女の子の胸の属性全てが事細かに効果を発揮している。伊達にアメリカンの血を引いてはおらず、更に彼女も彼女で自分の最大の武器が何かを熟知しているみたいで、抱きつくよりも胸を押し付けることを優先して密着してくる。こうやって自分の持つ武器の性能から相手の弱点を的確に突いてくる奴に弱いんだよな、俺って。

 

 そうして少し鞠莉から意識を外して油断していると、その一瞬の内に両手で身体を押されてしまった。ベッドの傍に立っていた俺は、そのまま仰向けでベッドの上に倒れ込んでしまう。本来ならスイートルームのベッドはふかふかで、俺の部屋のベッドとは比べ物にならないなどの感想が出てくると思うのだが、恍惚な表情をして大胆な行動に出た鞠莉に集中してそれどころではなかった。

 

 

「マジでやんのかよお前……」

「あれ? 先生って意外とウブなの? もっと遊んでいる人かと思ってたけど」

「俺は心に決めた女の子以外とは遊ばないの。個人的に楽しむことはあるけどさ……」

「じゃあ、私とは遊んでくれる?」

「その質問は卑怯だろ……それに近い!!」

 

 

 ベッドに倒れた俺に四つん這いで跨ってきた鞠莉は、唇が触れ合う3歩手前くらいの距離まで顔を近付けてくる。曜や果南のように今まで積極的になった奴なら何人もいたけど、ここまで大胆に攻めてきた奴は鞠莉が初めてだ。それにウブかどうかの質問だが、金髪巨乳ハーフ美少女にベッドに押し倒される展開をイケイケなテンションで望むことのできる男はそういないだろう。μ'sで女扱いには長けている俺だが、女の子からグイグイと攻められるのは未だに慣れていない。むしろこんなものだろ、普通の男の反応って。

 

 そんなことよりも、遊んでくれる質問の方がタチ悪い。これは安易に答えてはならない質問のような気がするぞ……。

 

 

「どうなの、先生? 私と……遊んでくれる?」

「…………」

「先生?」

「…………無理だ」

「えっ……!?」

「お前とは遊べない」

 

 

 率直な意見を述べた。自分の気持ちを誤魔化したり、相手に同情して虚偽を放った訳でもない。鞠莉は己の予想とは逆の言葉が帰ってきたためか、またしても顔を曇らせてしまう。やはり女の子のそのような表情を見るのは心が痛むが、嘘を言っても仕方がないので後悔も反省もしない。

 

 

「そっか。まぁそうだよね……」

「やっぱり俺を襲うためだけにホテルに連れ込んだんじゃないんだな」

「確かめたかったの、私で反応してくれるかどうかを……」

「だからドキドキしてるって」

「違う。それは女の子に押し倒されたからであって、それは私じゃなくてもいいはず。千歌っちでも梨子でも、曜でも花丸でも、ルビィでも善子でも、果南でもダイヤでも……。今の先生の反応を見てみれば全部分かるから、私じゃなくてもいんだって」

 

 

 鞠莉は前髪を垂らして自分の表情が悟られないように隠すが、彼女がどんな顔をしているのかは見なくても大体察することができた。声が震えていることと相まって、とてつもない悲壮感がこちらにまで伝わってくる。噂には聞いていたが、いつもはお調子者でかつお姉さんポジションの鞠莉も、こうして年相応の乙女らしくなることもあるんだな。

 

 

「先生のことが好きなのかはまだ自分でも分からない。でもね、この18年間で抱いたことのない気持ちを抱いていることは確かなの。それを、あと一週間で確認しておきたかった……」

「そっか、かなり無理矢理な方法だな」

「だけど先生はあまり反応してくれないというか、相手が私でなくてもいい反応ばかり……。だから私じゃなくてもいいんだって思っちゃって……。小原鞠莉としてじゃなくて、Aqoursの1人としてしか見られていないだなぁってね」

「2人きりでオトナなムードを作り上げれば、俺がその気になると思ってたのか? 胸を押し付ければ靡くと思ってたのか?」

「うっ……。やっぱり先生は女の子好きと言っても、ちゃんと良識は――――」

「まぁ、靡いちゃったんだけどな」

「ふぇ!?」

 

 

 さっきまで髪を垂らして声も震えていた鞠莉が、突然顔を上げて目を丸くする。未だベッドに押し倒されている体勢は変わっていないが、話の流れ的には倒されている俺が主導権を握っていた。

 

 

「確かに可愛い女の子ならちょっと迫られただけでドキッとするけどさ、今のこの高ぶりは間違いなくお前のせいだから。金髪で巨乳でアメリカンハーフで、スタイル抜群の高身長の美少女だなんて、そんな設定アニメやゲームでしか存在しないレベルなんだぞ? そんな女の子と実際にこうして夜のホテルってだけでも緊張するのに、ベッドに押し倒されたら動揺にするに決まってるだろ」

「私の……せいなの? それにそこまで動揺しているようには見えないけど……」

「慣れてるからなこういうことには。でも2人きりの時の緊張と高揚感はいつになっても思春期のままだよ。特に今はそれを必死に感じてる」

 

 

 当たり前のことだ。いくら経験が豊富だからと言ってもヤリチン野郎やAV男優じゃないんだ、まだ20歳を超えたばかり健全な一般男子なら女の子にウブな反応をして当然だろ。シチュエーションには慣れっこだけど、湧き上がってくる期待と性欲はいつ感じても心が荒ぶってくる。それくらいいつも初々しい気持ちでやってるんだよ、俺は。

 

 

「何の脈絡もなく、こうして襲いかかられても? 海合宿で私が後ろから抱きしめた時にも、興奮してくれたの?」

「不覚ながらな。いかにも鞠莉らしいスキンシップだなって思ったよ」

「私、らしい?」

「あぁ。お前って傍から見れば積極的に見えるけど、実のところは不器用だろ? だから勢いだけでこうして襲ってきたり、海合宿の時も俺の抵抗を許さず抱きついてきたんじゃないのか? 俺から手を出されたら自分が戸惑ってしまうから」

「それは……」

「もう1つ。今もこうして押し倒しているけど、俺たちの顔は近いけど少し離れている。ここまで積極的なのに顔を離すのは、不意の拍子に唇が触れ合うのを恥ずかしがってるからだろ? 積極的だったりそうでなかったり、そこが不器用なんだよお前は」

「う、うぅ……」

「図星みたいだな。お前にとっては意外かもしれないけど、俺はいつもしっかりお前のことも見てるから」

「先生……」

 

 

 鞠莉はお調子者で恥じらいもなく積極的!! みたいな性格に見えるが、それは体裁で取り繕っているだけで実際は物凄く不器用な子なんだ。これは果南やダイヤから聞いた話だが、再び3人一緒にスクールアイドルをやりたいがために千歌たちを利用したり、学院の理事長になって裏から手を回したりと回りくどい方法を取っていたみたいなのだ。それなのにいざとなったら雨の中を駆け回ってでも果南を探し回ったり、多少口が荒くなりつつも直球で想いを伝えたりしてくるわで、所々に彼女の不器用さが伺える。みんなから一歩引いて1人1人の様子を伺う大人な部分もあるけど、それと同時に子供っぽい部分もあるってことだ。

 

 

「だからお前にはお前の魅力があるってことだよ。悪く言えば不器用だけど、良く言えば周りの状況に合わせて前へ出たり後ろへ下がったりできる訳だからな。そんなことできる奴なんてほとんどいねぇよ。だからいちいち周りと自分を比べる必要なんてないんじゃないか」

「そう……。すごいね先生って」

「だろ? ウブな反応はするけど女の子には慣れてるからさ」

「そういうことじゃなくて、先生の言葉を聞くと安心して心が軽くなるから。親や友達でも感じたことのない暖かさで、多分この気持ちこそ私が求めていた気持ちなんだと思う……」

「その気持ちは自分でしか確認できないから、お前が確信したのならそうなんだろうな」

 

 

 親や友達でも感じたことのない暖かい気持ちなんて、残るはもう1つしかないじゃないか。もちろん異性を想う気持ちに他ならないが、鞠莉はそれ以上自分の気持ちを口に出すことはなかった。恐らくまだそのタイミングではないことを察しているのだろう。そしてこの場で自分の想いを吐露したところで、俺の心を完全に動かすことは叶わないことも。そうやって相手の気持ちを読んで、自分から一歩引けるのが彼女のいいところだ。不器用なのがこんなところで幸いするとは思ってもいなかっただろうが。

 

 

「よしっ、それじゃあここからは私のターンね♪ うりゃっ!!」

「うぉおおおっ!?」

 

 

 先程までの真剣な表情から一転、いつものイタズラな笑顔に戻って一気に顔を近付けてくる。顔だけじゃない、ベッドに仰向けで倒れている俺に四つん這いになっていた身体をうつ伏せに落として、向き合うように密着した。

 

 俺の胸板によって鞠莉の乳房が押し潰され、饅頭、マシュマロ、いやもっと柔らかい2つの双丘が自在に形を変える。やはり彼女は自分の最大の武器を分かっているようで、俺の胸板をマッサージするかのように自分の身体を上下に動かして乳房の感触を俺に与えてくる。これまでのように一歩引いた攻め手ではなく、躊躇もなければ葛藤もない、完全体となった小原鞠莉の攻撃だ。そのせいでこれまで冷静を装って耐えられていた俺も、下半身と共に興奮で気が(はや)っていた。

 

 そして、鞠莉は俺の身体から一度顔を上げる。

 

 

「先生からは攻めて来ないの? 私の準備はALL OKだよ♪」

「言っただろ、俺は心に決めた女の子としか遊ばないって。お前からはまだ受け取ってないからな、本当の気持ち」

「そうね。気持ちはほとんど確信に変わったけど、まだ伝えるタイミングじゃないから」

「グズグズしてたら、俺の方からそのタイミングを奪っちまうかもしれないぞ」

「むしろそっちの方がいいかも。カッコいい先生の姿、もっと見たいし……。今日もそう、ずっとドキドキしっぱなしで、お化け騒動の時以来かも……。それから先生を見るたびに私は……」

 

 

 鞠莉は間近にいる俺にも聞こえない声で呟くが、そのほっこりとした表情を見れば今度は悩みに惑わされていることはなさそうだ。それどころか段々ブツブツと早口になっているせいで、どこかヤンデレに似た黒さが見え隠れするが……流石に夜のホテルというロマンチックなムードでそんなことはないよな??

 

 

「っ!?!?」

「今度はどうした……?」

「先生のここ……大きくなってる」

「あぁ、それは仕方ないことだ。だって男だもん、金髪巨乳ハーフ美少女にこんなことをされたら誰でもそうなるって」

「そうやって欲望を包み隠さず暴露する直球なところも大好きよ。気に入った! 今度は先生のここで遊んであげる♪ 先生は私で遊ぶ理由はないけど、私は先生で遊ぶ理由がたっぷりとあるから!」

「勝手にしろ。でも怖気づいて途中で終わるのだけはなしだからな。男にとって寸止め以上に過酷な試練はないんだぞ」

「それを聞いたら余計に遊びたくなってくるけど、今晩は日頃のお礼を兼ねて丁寧にご奉仕してあげる」

 

 

 人気上昇中のスクールアイドルに夜のホテルで下の処理をしてもらうなんて、誰かに見つかったりでもしたらスキャンダル確定だろう。だが今の俺は性欲に煽られているということもあり、彼女の魅力的な提案に流されるしかなかった。薄暗いホテルの部屋、薄いネグリジェを着た少女、ベッドの上――――こんなアダルティなシチュエーションなのに、何のアクションもなく引くのは勿体無い。こっちからは手を出さないと誓うから、それくらいは許してくれ。

 

 そして俺はベッドに腰を掛けるように促される。脚の間に鞠莉が入り、俺はそこから興奮と欲情の絶頂にいた――――――

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「まただ……またやっちまったなぁ」

 

 

 場所は変わって自宅のベッドの上。俺は寝転びながらホテルでの一件を思い出していた。

 鞠莉にはそのままホテルに泊まるように勧められたのだが、予想以上に俺の中の"男"が反応して危険だと感じたので、今日は家に帰らせてもらった。本当にあのまま襲ったりでもしたら、スキャンダルどころか彼女の人生まで壊してしまいかねないからな……。

 

 しかしまたAqoursの子に奉仕してもらったとか、スキャンダルとか考える以前の問題な気がしてきた。だって教師だよ顧問だよ?? 教え子の人生を心配するよりもまずはモラルというもをだな――――と言っても、やっちまったものは仕方がない。教師や顧問以前に俺だって男なんだよ。そもそも既に2人にやってもらってるし、もう今更だろう。

 

 そう勝手に自分を正当化して、布団を被った。

 

 

「今日の鞠莉、可愛かったなぁ。口も胸も気持ちよかったし――――あぁ、思い出すとまた興奮してくる。さっさと寝よ寝よ」

 

 

 なんか俺ってもう、彼女たちの魅力にどっぷりと浸かってないか……?

 だがそれでもいいと思う。彼女たちの本当の心を知ることができるのなら。

 




 これまでのAqoursの個人回とは雰囲気をガラリと変えて、大人なロマンチックムードにしてみたのですが、最終的には同じ展開に……。好きなんですよ! 女の子が自ら奉仕してくれる展開がね!!

 でも零君はこれで3人にご奉仕され、もう教師や生徒の関係なんて全く無意味に……


 次回はルビィの個人回です!



新たに☆10評価をくださった

紅魔慧さん

ありがとうございます!

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