ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 デレデレ、メンヘラ、ヤンデレ、ツンデレ、クーデレetc……皆さんはどのキャラが好きでしょうか?

 ちなみに私はブラコンの妹が好きです()


デレ度MAX、SAN値ゼロ!(後編)

 

 果南に手を引かれ、俺は廊下と階段の空きスペースへと連れ込まれる。

 ここへ来る途中での会話は一切なく、彼女は俺の前を早足で歩くばかりだった。本当なら果南も他のみんなみたいに頭がイっちゃってるかどうかを探るべきなのだろうが、千歌や鞠莉、その他大勢の女の子たちの暴走で疲れきっていた俺にそんなことを考える余裕はない。思っているのはただ果南がまともであってくれという願望だけだ。それにしても手を握る力が強すぎるのは何とかならないものか……。

 

 

「おい果南、ここまで来ればもう手を離してもいいんじゃないか? お前の爪が手に食い込みそうだしさ……」

「先生は……」

「ん……?」

 

 

 さっき生徒会室へ乗り込んできた時と比べてやけにトーンが低い声だ。元々コイツの声はそこまで高くはないのだが、それでも少しドスが効いているというか、やや怒りが篭っているような気がする。もしかして俺があまりにも女の子たちに甘かったから怒っちゃった? 教師としてはあんな状況でもビシッと叱ってやるべきだったんだろうか。

 

 

「先生は、どうして他の女の子と喋ってるんですか?」

「えっ、どうしてってアイツらが襲い掛かってきたんだぞ」

「そうですよね。先生を放っておくから他の女に襲われるんですよね……」

「お、おい果南??」

「刻み込んでおかないと……先生が私のものだってことを」

「あっ、うぐっ!!」

 

 

 ずっと俺に背を向けていた果南だが、突然こちらを振り向くとそのまま突進して俺を廊下に押し倒した。毎日のストレッチで鍛えられているからか、さっき大量の女の子に取り押さえられていた時よりも果南1人の拘束力の方が数倍強い。

 そしてここで初めて彼女の表情を見た。いつも澄んでいる目が歪んでいたのだが、俺と目が合うと捕食するかのように据わり出す。この焦点が合いつつも濁った目は――――はい、どう見てもヤンデレです本当にありがとうございました。

 頬は赤み掛かっており、何を興奮しているのかはぁはぁという卑しい吐息がはっきりと聞こえてくる。Aqoursの中でも学院の中でも大人の女性っぽさに近い彼女。だからこそその吐息はどこか色気を感じてしまい臆してならない。果南の様子がおかしいのは重々承知だが、男の性欲の高鳴りに抗うことはできなかった。

 

 ここで俺は果南の不可解な行動を今になって気づく。何故コイツは生徒会室にいなかったのに鞠莉が勝手に脱いでいたことやダイヤが何度も飛び降りる詐欺をしていたことを知っていたんだ……?

 

 

「先生が考えていること分かりますよ。教えてあげましょうか……」

「なんだよ……」

「私は先生のことなら何でも分かっちゃうんですよ。いくら遠く離れていても、愛さえあれば何でも分かっちゃうんです……」

「そ、そうか……だったら俺から離れてくれ。俺のことが分かるんだったら、俺の気持ちも分かってくれるよな?」

「いいですよ。でも他の女と話していたので、そのお仕置きを済ませてからです」

「お仕置きだと……」

「はい。先生の唇や頬、首筋から足のつま先まで全部私のマークを付けちゃいますから。安心してください、ファーストキスですよ」

「誰もそんなこと聞いてねぇよ! いやファーストキスじゃなかったら誰とやったんだと問いただしたいが――――ってええぇい!! そんなことはどうでもいいから離れろ!!」

 

 

 いくら果南が日々鍛えていようとも、成人男性の力に敵うはずがない。だから押し倒されたこの状況を無理矢理好転させるのは造作もないのだが、力強く押さえ込まれているため俺もかなりのパワーで押し返さなければならない。もちろんそうなれば果南の身体は廊下に叩きつけられてしまう訳で、いくら危険な状況でも女の子を傷付けることはしたくない。そんな俺の性格を彼女は分かっているのだろう、抵抗されることなど考えず容赦なく顔を、そして唇を俺の唇に近付けてくる。

 

 ぷりっとした、見ただけで肉厚と分かる美味そうな唇が迫る。最悪マウスtoマウスだけは回避できるよう首を捻って首筋を見せつけるが果南は見向きもしない。彼女の狙いはまず俺の唇のようだ。

 

 

「ねぇ先生。私と――――キスしよ?」

 

 

 果南の口から聞くと圧倒的な包容力のあるセリフである。

 だが裏にヤンデレ特有の野望が見え見えだから騙されないぞ俺は!!

 

 そうカッコつけても抵抗しようにも抵抗できないこの状況、さぁてどうするかね……。

 最悪首筋に跡を付けられるのは許容する覚悟で必死に頭を回転させていると、果南の背後にうっすらと人影が現れていることに気が付いた。

 

 

「必殺! シュバルツシルト!!」

「あうっ!!」

「えっ、何だ何だ!?」

 

 

 突然果南の頭に何かがぶつけられたと思ったら、彼女はそのまま目を回して俺の胸に倒れ込んできた。どうやら気絶しているようだが、一体誰が……?

 

 

「危ないところだったわね、先生」

「善子か……」

「マルたちもいるずら!」

「花丸とルビィも!?」

「ギリギリのところで間に合ってよかったです」

 

 

 俺を助け出してくれたのは善子、花丸、ルビィの1年生組だった。どうやら善子が右手にゴスロリの折りたたみ傘を持っていることから、それで果南を殴って気絶させたのだろう。先輩に対して容赦ねぇなコイツ……。まぁ俺だけではあの状況の打破は難しかったから感謝するべきなんだろうけどさ。

 

 でも助けてくれたからといって安心するのは早計だ。さっきみたいに果南の例があるから、何食わぬ顔で手を差し伸べてくれるコイツらにも警戒せざるを得ない。しかし果南とは違って暗い雰囲気もなく、表情もいつも通りで普段と全然変わっているところはない。もちろんそう油断させる彼女たちの手かもしれないから、決して気を緩めはしないけど。

 

 

「とにかく、助けてくれたことには礼を言うよ。ありがとな」

「べ、別に先生のためじゃないですから!」

「えっ……?」

「き、聞こえませんでした!? 先生のためじゃないからと言ったんです!」

「いや聞こえてたけど、どうしたんだ――――ルビィ?」

「勘違いしないで欲しいずら! 先生を助けたのはあくまでついでですから! フンッ!」

「花丸まで?!」

 

 

 分かりやすいツンデレを発揮するのはこのメンバーでは善子だと思っていたので、唐突に花丸とルビィが楯突いてきたのには驚いた。2人は可愛らしい目を釣り上げ、その様子は某西木野お嬢様を彷彿とさせる。なるほど、花丸もルビィもツンデレキャラな訳ね……。だが西木野のお嬢様と違うのは、いかに怒ってますよアピールをしても子供のような可愛さしかないってことだ。見ていて初々しいというか、ツンツンされているのに和んでしまう。

 

 

「ルビィたちは先生を助けたんじゃないです! 果南さんの純潔を守るために敢えて果南さんを黙らせたんです!」

「だから自分が助けられたとか思って欲しくないずら! 勘違いも甚だしいです!」

「そもそも変態の先生なんて助ける訳ないじゃないですか!!」

「押し倒されたくらいでデレデレして、本当に変態なんですから!!」

「なんだろう、変態って言われ慣れてるのに心にグッサリ来るこの感じは……」

 

 

 花丸とルビィは普段俺を貶すことがないため、2人からこうして真っ向から罵倒されると心がサンドバッグのように甚振られる。普通のツンデレちゃんだと声が尖っているからある程度覚悟はできるが、2人のような声がゆる~い子から罵倒されるのは変な快感が生まれそうだ。これだと俺がMだと思われちまうな……。

 

 だが言っておくぞ、ツンデレの対処法なんて5年前から心得てるんだよ!!

 

 

「そっかぁ……そうだよな、俺ってお前らに嫌われてるんだし仕方ないよな。はぁ~……」

「ちょ、ちょっとそんなため息付かないでください! ま、マルは先生のこと好きですから! あっ、好きっていうのはそういう意味じゃなくってあのぉ、そのぉ……」

「ルビィも少し言いすぎたと言いますか、先生のことは嫌っていないと言いますか、でもでも好きと言われるとそれは……う、うゅ……」

「はぁ~……やっぱり俺のことは嫌いなのかぁ~」

「「す、好きです!!」」

「え? 好き? 今好きって言ったよね??」

「「~~~~ッ!?!?」」

 

 

 花丸とルビィは顔を真っ赤にしてその場で硬直してしまった。今頃羞恥心に襲われ必死に戦っているのだろうが、ツンデレは羞恥心に勝てないことも5年前から知っていることだ。

 そしてこれがツンデレちゃんの対処法なり。罵倒に対抗するから向こうも付け上がる訳で、だったらわざと卑屈になってやればいい。そうすれば引け目を感じたツンデレちゃんが勝手にデレてくれるから。あとはボロを出したところを攻めればそれで攻略完了。そう、今の2人のようにな。

 

 

「ねぇ、そろそろ行くわよ。こんなところで油を売ってる場合じゃないでしょ?」

「あ、あぁそうだけど……」

「なによ?」

「お前は何ともないのか?」

「はぁ? あまり意味わかんないこと言わないで。そしてあまりこっちを見ないで、濡れちゃうから」

「は、はい……?」

 

 

 善子が無表情のまま痴女みたいなことを言い出すから思わず聞き返してしまった。

 

 

「言ったでしょ? あなたのそのカッコいい声が私の子宮を唸らせるんだからあまり喋らないで」

「えぇ……」

「そんな素っ頓狂な顔もカッコいいわね。見てるだけでも下着が蒸れちゃいそう」

 

 

 善子は喜んでいる――――というか悦んでいるようだが無表情を崩さず、そして声のトーンも一定であるためイマイチ様子が掴めない。それに声を聞くだけで濡れるとか、姿を見せているだけで蒸れちゃうとか、それって褒められているのだろうか……。

 

 いつもの善子ならテンション高めで俺に突っかかってきて、自分から痴女発言なんてすることもないのだが、これもみんなと同様に性格が捻じ曲がっているのだろう。この無表情かつ覇気のない口調、だけど俺のことはベタ褒めする、これはデレに偏ったクーデレの性質そのものだ。

 

 

「ほら、こんなところで時間を浪費している場合ではないわ。女の子たちが来る前に、早く2人きりになれる場所へ行かないと」

「えっ、どうして2人きり?」

「そんなことも分からないの? 先生はこの濡れに濡れた私の秘所にその逞しい欲望の塊を突っ込む様を、他の誰かに見られてもいいって訳? まあ先生が公開プレイ好きだった言うのなら私は従うしかないわ。恋人としては彼氏には健全でいて欲しいけど、彼女なら恋人の偏った趣味を受け入れることも大切よね」

「待ってくれ、いきなり話がぶっ飛びすぎだろ!? どうして俺たち恋人同士になってんの!?」

「どうしてって、この前あなた私を抱きしめてくれたじゃない」

「あれは成り行き上だし、仕方なくだな……」

 

 

 善子の不幸体質を治そうとしたけど結果が乏しくなかった時に、遠い目をしていた彼女を抱きしめた過去がある。まさかあの行為が告白だと思っているのかコイツは? 性格がクーデレちゃんになっていることは承知だが、それでも頭がお花畑過ぎやしませんかねぇ……。

 

 それに鞠莉と同様に善子はヤる気満々だ。無表情を貫きながらも誘惑するような目で上目遣いをされているため、どこか妖艶な雰囲気が伝わってくる。

 そしてその目力に感化されている隙を付き、善子は俺の腰に腕を回して堂々と抱きついてきた。胸を押し当て男の性欲を助長させるように密着し、無表情ながらも多少口角の上がった表情は元の小悪魔な性格が露見していた。普段の彼女からではありえない行動なので、驚きというより焦りの方が大きい。心臓も激しく鼓動して、俺は唾を飲み込んだ。

 

 

「先生が廊下の真ん中で公開プレイがしたいっていうのなら、私はそれでもいいけどね。むしろ見せつけちゃってもいいくらい」

「だ、だからってキスしようとすんな! お前の相手は後でしてやるからとにかく離せ!」

「恥ずかしがらなくてもいいわよ。でもあなたの騒ぐ姿は可愛いから、抵抗されるのもこれまた一興よね」

「ああ言えばこう言うなお前は!」

「ほら、黙って私を受け入れなさい。そしてここで永遠の愛を――――?」

「ん……? ど、どうした……?」

 

 

 饒舌な舌滑りで俺への愛を囁いていた善子だが、その途中で目を見開いて俺を見つめてきた。さっきまでは男を魅了するかのような魅惑の目をしていたのに、今はまるで元の善子に戻ったような……あっ、も、戻った?

 

 

「な゛っ……」

「な?」

「なに気安く抱きついてんのよこの変態ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

「い、ってぇええええぇえええ!!!!」

 

 

 顔を沸騰させた善子の強烈なビンタにより、俺は再び廊下に転がるハメとなった。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「まさかここまで女の子たちを手玉に取っているとは、お姉ちゃん驚いたよ♪」

「分かってはいたけど、やっぱりお前の仕業だったんだな……」

 

 

 善子が元に戻ったのを機に、学院の女の子たちも次々と正気を取り戻した。Aqoursのメンバーも無事に元に戻り、今は元凶の秋葉と共に部室に集合している。

 どうやら俺に求愛していた記憶はあるようで、女の子たちが悶え苦しむ姿で一時学院が騒然とした。それはAqoursのみんなも同じであり、秋葉のハイテンションとは真逆でさっき自分がやらかした行動を思い出しては顔を真っ赤にして悶えている。コイツの発明品に耐性のあるμ'sならまだダメージは抑えられただろうが、初体験のAqoursにとっては今にも羞恥心で押し潰されそうになっていた。

 

 

「みんなが回復するのはまだ時間が掛かりそうだな。で? お前この学院の子たちに何をした?」

「それは単純明快。私が学校に仕掛けた芳香剤によって、女の子の心の中に1ミリでも誰かが好きという気持ちがあったら、その気持ちが増幅して愛が抑えきれなくなっちゃうの。そして膨らんだ愛はその子の性格を積極的に求愛するように変えてしまい、愛を伝えることしか脳がなくなるって感じかな♪」

「相変わらず誰の需要があってそんなモノを作るんだか」

「えっ、それは零君にでしょ? なんだかんだ言って楽しかったんじゃないのぉ~?」

「疲れたし正気も失いそうだったけど、まぁいい気分であったことは確かだよ。一応言っておくけど、お前を褒めてはないからな」

 

 

 形は強引すぎるほど強引だけど、大勢の女の子たちにちやほやされるのは悪くない。むしろ大好物な部類だ。流石にあれほどたくさんの女の子に迫られたことは今までなかったので、ここまで疲労困憊になるとは思ってなかったけど……。

 

 

「あ、あのぉ……」

「君は確か千歌ちゃんだよね? 何かな?」

「好きな人への愛を膨らませるってことは、私が先生を襲ったのってつまりそういうことなんですよね……?」

「う~ん歯切れが悪いなぁ~。どうせなら私の口から言ってあげるよ♪」

「あっ、そ、それは!!」

「零君を襲ったってことは、程度の違いはあれどみんな零君のことが好きだってことだよ!!」

「「「「「「「「「~~~~ッ!?!?」」」」」」」」」

 

 

 一瞬にして部室の温度が急上昇する。Aqours9人の顔から発せられる熱気が冷房の冷気を打ち消し、澱んでいた空気に更なる困惑したムードが漂う。

 

 

「私は先生のことは好きですよ! 好きですけどぉ……は、恥ずかしい!!」

「そういえば私、先生にご指名されたとか言っちゃった……もう変なお店の人みたいだよぉ……」

「ズボンを下ろしたのは私の意思じゃないです! 芳香剤とことりさんの言葉に洗脳されてただけだから……だけですから!」

 

 

 俺にデレデレな求愛をしてきた2年生組は、自らの度を超えた愛情の伝え方を思い出し再び羞恥心に苦しめられる。それに曜の意思じゃないって言葉は……余計な詮索はしない方が身のためか。

 

 

「マル、先生になんて失礼なことを!? 嫌いなんてことは絶対にないし、でも好きかと言われると……好き……うぅううう頭がクラクラしてきたずらぁあああ!!」

「せ、先生が好き……? ルビィが……? うぅ……うぅうううううううううううううう!!」

「こんなのはっきりと言ってやればいいのよ。先生のことは好きじゃない……まぁでも嫌いではない。一応好きの方に若干偏ってるくらい…だ、だからって変な勘違いしないでよね!」

 

 

 ツンデレとクーデレという王道デレ路線で俺に迫ってきた1年生組も見事元通りだ。やっぱこの奥手な感じが1年生組の可愛いところだよなぁ。

 

 

「私が先生のことを……ふ~んそんな感情あったんだ。自分でもちょっと意外かも」

「先生、こ、これは一時の気の迷いというものですわ! 人間誰しも道に迷うことがあるように、心も揺らいでしまうことがあるのです!! だ、だから勘ぐらないでください!!」

「あまり意識したことはなかったけど、先生に跨っていた時を思い出すと顔がホットに……こんなに顔が赤くなったのは初めてかも」

 

 

 痴女キャラ、メンヘラ、ヤンデレという面倒な性格三銃士となっていた3年生組。正直他の学年の子よりも俺への好感度が低いと思っていたのだが、芳香剤の力に当てられ襲いかかってきたってことはつまりそういうことなのだ。何だかちょっぴり嬉しかったり。

 

 

「秋葉さんって、こんなことばかりしてるんですか……?」

「こんなこととは失礼な! この芳香剤だって素直になれない奥手の女の子に重宝するかもしれないんだから!」

「かもしれないとか言ってるけど、ほぼ役に立たないからなコイツの作るものは」

「それでも世界に必要なんだよね~私は」

 

 

 秋葉の言うことはまさにその通りで、彼女の頭は世界の頭脳と言われるくらいなのだ。だが俺たちの前では自らが愉しむためだけの欲望の捌け口にしかその頭脳を使わないから、全くもって宝の持ち腐れ感が半端ではない。Aqoursのみんなもそのことを察したようで、もう呆れ返った顔で彼女を眺めていた。

 

 

「私としてはただ零君がご執心なみんなの全てを知りたかっただけだから、ちょこっっっとだけ強引な手を使っちゃった♪」

「これでちょこっとなんですね……」

「もしかして本気を出して欲しい? 私がその気になれば、みんな羞恥心で気が狂って人生やり直したくなるレベルにまで落ち込むこと確定だけど、それでもいい?」

「笑顔でそんなことを言えるなんて恐ろしすぎますわ……」

「こういう奴なんだよコイツは。人を虐めるのも貶めるのも何ら躊躇しないから」

 

 

 マッドサイエンティストという言葉がピッタリ当てはまるのだが、一応擁護しておくと表に出さないだけで人を見守ってやる優しさはある。俺にμ'sとの同棲生活を勧めシスターズが密かに抱いていた悩みを解決させようとしたり、ゲームの世界に拉致してシスターズと向き合わせようとしたりなど、要所要所でしっかり手を差し伸べてくれる。だからこそ今回のようにイタズラ紛いのテロ行為をしたとしても俺やμ'sは彼女を憎みに憎めないのだ。

 

 それにコイツはエロいことが苦手という最大の弱点でもあり可愛いところがあるのだが、それは秋葉に対抗する特大級の切り札なので使い時を考えている。つまり仕返しをしたければいつでもできるってことだから覚悟しておけよ。

 

 

「そういう訳だから、これからもちょくちょくAqoursの練習を覗きに来るね――――って、何この雰囲気!? みんなの憧れの先生のお姉さんなんだから、もう少し歓迎ムードでもよくない!?」

「みんなの顔を見てみろ、全員拒否してるから。それに今回の惨事を引き起こした張本人がよく言うよ」

「へぇ~そんな反応するんだぁ~。だったら今日の芳香剤をもっとパワーアップさせて帰ってきてやるんだから! 精々彼への想いを高めて待っておくことだね!! それじゃあ本日はこの辺で♪」

「お、おいっ!!」

 

 

 不穏なことを叫んでそそくさと部室から出ていきやがった……。

 

 

「先生のお姉さん、一度会いましたがあんな人だったとは知りませんでした……」

「曜は運が良かったよ。あの時おもちゃにされなかっただけでもな」

 

 

 今まで平和だった浦の星女学院に悪魔が住み着いたことで、日々の生活が需要のないスリリングに満ちることとなった。果たして次に彼女が暴れるのはいつになるのだろうか……?

 

 

 そしてこの後、みんなの中で暴れまわる羞恥心が収まるまで数時間掛かった。

 少し顔を合わせただけなのに、Aqoursに爪痕を残しすぎだろ……。

 




 いつもとは違ったキャラのAqoursはいかがだったでしょうか? 個人的にはヤンデレとクーデレが執筆していて楽しかったので、機会があれば1本ずつ話を書いてみたいなぁと思いました。
しかし今回のクーデレは異常なほどの痴女寄りでしたが(笑) 雪穂がツンデレ寄りのクーデレなので、善子のクーデレまた違った新鮮味があったかと。

 次回はまたμ's襲来編に戻ります。最近は前後編が多かったので、なるべく1話ずつでコンスタントに投稿したい願望があったりなかったり……。

 とりあえず次回は真姫の登場です!
 共演するAqoursのメンバーは、真姫と共通点のあるあの子! そしてかなりゆったりとしたお話になるかも。



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https://twitter.com/CamelliaDahlia

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