東方穿孔羊   作:ほりごたつ

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~東へ~
第八話 西方の悪魔と東方の妖かし


 照りつける太陽を浴びながら、ほんの少しの草と大量の砂とが入り交じる大地に、蹄代わりのハイヒールを埋めて歩く者が一人。

 砂漠という覚束ない足場を細いピンヒールで歩くなど自殺行為以外の何物でもないが、彼女にとっては体の一部に近く、脱いでしまう事はなかった。

 上着もベストも脱いで肩から下げたショルダーバッグに畳入れ、それでも暑くてタイを緩め、シャツのボタンも上から二つほど外している今の姿。

 乱れたり着崩したりする事がない彼女にしては随分と乱れた格好となっているが、彼女の種族から考えれば色香の漂う今の見た目も多少は理解できるかもしれない。

 タロットカードという絵札の15番目にいる彼女。

 羊の悪魔アイギスに充てがわれているのは欲望と呪縛・誘惑・肉欲・暴力といった意味合いだ。

 職人としての態度こそ穏やかなモノを見せる彼女だが、掃除や排除、以前の吸血鬼や魔女からの依頼等荒事となると、含まれた意味合いのような姿も見せる。

 そうあれかしと長く崇拝されていれば、気が付かぬ内に本人の方からもそうあろうとするのかもしれない。

 

「さすがに暑い…失敗ですね、素直に海の道(シーロード)から渡航してしまえば良かった」

 

 指を鳴らし、砂地を穿って日影を作る黒羊。

 影に入り、休憩しながら珍しく悪態をついているアイギス。

 額には大粒の汗が浮かび、良く日光を吸収する黒髪の先からも掻いた汗が滴っている。

 袖まで捲った赤いタッタソールチェック柄のYシャツも、背中や脇辺りの色がワントーン濃い色合いとなっていて、誰が見ても暑さに負けているといった状況だ。

 けれど、倒れてしまったり、暑さにやられるとまではならないようだ。

 時折すれ違う交易商の一団。

 キャラバン隊と言われる者達から頂戴した水もまだ十分にあり、水と同時に食事も済ませている為それほど焦ってはいないらしい。

 

「エジプトのミイラは良いものでした、ああいった者がこの先にもあると聞いて草原の道(ステップロード)も、などと思いつかなければ汗だくにならずに済んだのですが、今更言っても仕方がないですね」

 

 右腰のベルト部分に通したベルトポーチから、キャラバン隊の誰かが持っていた水筒を取り外し口をつけながら独り言を呟く。

 本来はエンバーミング用の薬品等が収まる部分なのだが、今は死者の腐敗を止める薬よりも自身の乾きを潤す物の方が重要で、薬品の方はキャラバン隊の皆に掛けて回って空にしたらしい。

 今頃は干物と腐敗物の間くらいになった亡骸が、アイギスの歩く交易商の進む道、後にシルクロードと呼ばれる道の何処かで転がっているはずだ。

 普段なら気にも掛けない相手達だが、アイギスを恐れず話しかけてきた気概を爪の先ほどだけ気に入ったようで、手向け代わりと水の礼という形で誰かに見つけてもらえるように遺したようだ。

 キャラバン隊の者達からすれば、褐色の肌をして頭に羊の角飾りを被った地元民、それが欧州仕立ての衣服を着込んでいたというのが気になっただけらしいが、それはどうでもいい事だろう。

 

 この後も独り言を呟いては歩き、水が切れれば襲い奪ってという一人旅が暫く続く。

 美鈴の生まれた地。

 その地に向かう途中で、話だけは聞いていたミイラを見てみたいと考えていたアイギスが、一旦はインド洋の方へと南下しそのまま諸外国を歩いていたのだが、歩いた先で別の地でも遺体を操る者がいるという伝承を聞いてそのまま北上。

 今歩いている内陸部の先の地、かつて遺体をより集めて呪術で動かしていたジャセンという者がいたと聞いて、墓守として少しだけ興味が湧いたアイギスがその地に立ち寄ったようだが…

 そのジャセンの姿は既になく、言葉も通じなかったため食事だけ済ませて渋々と過ぎていったり、古い時代に繁栄を極めたこの地の王朝を傾け、滅亡させる原因となった九尾の魔物の話を聞いてそちらへと向ったりしていたようだが、その者もすでにおらず、全てが無駄足となったようだ。

 期待しては裏切られて、少しだけ気を落としながらも、美鈴の言った『大陸の端の方に見えます』というテキトウな説明だけを頼りにまた東へと歩み始めたアイギス。

 大陸の端へと辿り着き、海の先に見える小さな島国が見えると、端の方に見えるというのだからあの地がそうなのだろうという、言葉の綾から生まれた勘違いをして東方の端の地へと渡っていった。

 

~少女渡航中~

 

 扇形に整えられた小さな半島。

 狭い土地に押し込められたように木造の商店や住まいが立ち並ぶ小さな町並み。

 異国でありながら欧州人のような者も見れば、美鈴のような衣服を着る者達もいて、なんというか少しだけ懐かしいような雰囲気を見せる町並み。

 形だけ真似られた造りの店舗内、一部分だけレンガ造りの店内を見ればビリヤード台が置いてあったり、その回りではビールやコーヒーを楽しむ欧州の人種達が楽しそうに過ごす町。

 小さな島国の端、海に向かってせり出た島のような土地に、特に姿も変えずに降り立ったアイギスであった。

 

「人前に姿を見せても騒がれないというのには違和感を覚えますね、角が見えないのでしょうか?」

 

 大きなアモン角を撫でながら振り返ってみたり、周囲を見回したりしている異国の黒羊。

 積み荷に紛れ船から降りた際には、役人のような者達から何かを言われたが、言葉が通じないとわかり通訳を呼びに行くために監視者が減った瞬間、残っていた者達を穿ち綺麗に消したアイギス。

 身形だけは三つ揃えのスーツ姿にインバネス・コートという、欧州の上流階級にいるような立ち姿の為、商船を利用し渡航してきた男装の麗人としか見られず、角も何か冠くらいにしか見られなかったようだ。

 随分と苦しい見られ方だが、国が変われば身形も常識も変わる。

 諸外国の情報を制限しているこの国では頭から直接生えているとは見られない、何か、面妖な頭飾り程度にしか見られなくなったのかもしれない。

 

「さて、着いたはいいのですがいかがしましょう? まずは言葉からでしょうか? 両方の言語が載った辞典でもあれば助かりますが」

 

 欧州であればある程度共通で通じる言語が、この国では通じないらしい。

 酒場にいた訛りの強い欧州人達の会話はどうにか聞き取れて、ここがヒノモトノクニ、もしくはジパングという国だとは知れたがそれ以外は貿易だとか儲けだとか、今必要な情報は得られず、バドミントンに興じる者達を眺めて一人佇むアイギスであった。

 しばらく佇み景色を眺めていたのだが、ただ立っているだけではなんの前進もない。

 致し方なしと酒場に戻り、あまり旨くない香りの悪いコーヒーを頼み、カウンターでくつろぐような素振りを見せ始めたアイギス。

 注文したコーヒーが手元に届いた頃、魔力とは違った力…感じ慣れない妖かしの気配を店舗の入り口辺りから感じ取っていた。

 

「お隣宜しいかしら? お一人で待ち合わせでも?」

 

 宜しいかと聞いておきながらアイギスの返答を待たずに隣の椅子へと腰掛ける者。

 紫色のロングドレスを身に纏い、長く輝いている金髪を耳にかけるようにかきあげながらアイギスを見つめる誰か。

 昼間から人間の集まる店舗内にいる悪魔と、それに似た雰囲気を持ち言葉も解する事が出来る相手…髪色や様相から大陸、同じ地域の出の者かと考えるアイギスだったが、悪名轟く自分を見ても慌てず寧ろ近づいてくる魔の者に少しだけ興味が惹かれたようだ。

 

「待つような方はおりません、今し方上陸したばかりですので」

「上陸、やはり異国の方ですのね。どちらの方か存じませんが言葉も通じないままでは何かと不便でしょう? 宜しければ教えて差し上げますわ」

 

 同じくコーヒーを注文し、待つ間に指をカウンターの上で滑らせて遊ぶ女性。

 淑やかな態度で親切心の感じられる物言いをするが、顔に浮かばせている笑みは絵画から切り取り貼り付けたような、気味の悪い、胡散臭いと言ってもいいほどの美しい笑みを見せている。

 こういった手合は信用ならない、過去にこなしてきた膨大な依頼の中にもこういった顔をするものがいた、そういった者達は得てして腹に企み事のある相手が多いと体感し理解していたアイギスだった。

 

「ありがたい申し出ですがお断り致します、名も知らぬ初対面の方のご厄介になるつもりはございません」

「あらあら、好意は素直に受け取るものですわ…それに、断られるとは思いませんでしたので、すでに少しだけお教えしてしまいました」

 

 アイギスの方を見ながら白魚のような指先だけを動かしていた女。

 確実に人外ではあるが正体の見えない女の言葉を受けて、横目で見ていた女の顔を初めて正面に見るアイギス。

 正面から見てみると更に気味が悪い笑みだと再認識するが、得体のしれない者相手に下手な事も言わず成さず、言われた言葉だけを考えるようにしていた。

 だが、考えなくとも言葉の意味がすぐに理解できた…通りを歩く者達の会話が分かり理解できるようになっていたのだ。

 何をされた?

 瀟洒な態度は崩さず内面だけで訝しがると、紫色のドレスを纏う者が扇子で口元を隠して紫がかる金色の瞳だけで笑んでいた。

 

「言語以外は弄っておりませんわ、コレは良き出会いを記念した私からのプレゼントですので…気に入って頂けたのなら嬉しいのですが、異国の悪魔殿?」

「記念品、というには些か怪しいモノですがお陰様で捗りそうです。今は出会いと貴女様に感謝致しましょう、異国の妖かし殿」

 

 プレゼントと言いながら抉じ開けられた言語の壁。

 アイギス自身が壁を穿っても問題ないように思えるが、今回は語学留学として訪れているし商売人としては結果に繋がる過程も説明できるようにしておきたい。

 そう考えて壁は残したままだったのだが、その壁は他者に抉じ開けられてしまった。

 少しだけ気に入らないがこれも過程の一つかと理解を示すアイギス、本来であれば長い時間がかかる過程を飛ばしていてすぐに納得出来ないとは思うのだが、時間など今更どうでもいいようだ。

 

「私からも出会いの記念品を、と考えますが何分着いたばかり。手持ちも仕事道具くらいしかありませんので差し上げられるものがない、お恥ずかしい限りです」

「仕事道具とは? 働かなければならないような方だとは思えないのですが」

 

 腰のベルトに通した右側の革製のベルトポーチの逆側。

 左側にもう一つ通した少し大きめの、同じく革製のシザーバッグから磨き上げられたノミ等、普段から使っている愛用品を取り出して少しだけ見せるアイギス。

 パチュリーを連れて紅魔館に向かう前から磨いていたのは、仕事道具を少し持ち出し、訪れた先でも多少の事が出来るようにと考えて持ち出す物を吟味していたようだ。

 

「Arbejde er det bedste tidsfordriv、この国の言葉で言えば『仕事は一番良い暇つぶし』となるのでしょうか、言葉通り楽しんでいるだけですよ」

「悪魔殿の出の言葉? 諺でしょうか?」

 

 今現在店舗を構えている地の諺ではないが、以前に訪れ少しだけ過ごしていた土地の諺。

 襲っては食らう事に飽いて、他に何か暇つぶしはないかと考え始めていた頃に聞いた人間達の諺である。

 短い一生を送る者達がない知恵を働かせて考えた言葉など気にも留めていなかったアイギスだったが、不意に思い立ち成り立ちから続く趣味を仕事としてみたところ意外と好評で、良い暇つぶしとなっていた。

 

「過ごしていた事があるというだけで出自は別ですよ、何かご入用ならその時には記念品代わりにお一つ依頼を受けましょう。仕事ぶりを気に入って頂けたなら、その後も贔屓として頂きたいですね」

 

 腰掛けるカウンター席、その横に置いたショルダーバッグから一枚、小さな紙を取り出して気味の悪い女に手渡すアイギス。

 100年くらい前から欧州の人間達の間で流行りだした、今で言う名刺のような物を手渡してどうぞ宜しくと商いをしていると姿勢で見せるアモン角の悪魔。

 棺桶から家具まで誂えマス、場合によっては棺桶の中身までご用意致しますという文言とシーカーズ・コフィンという店舗名が書かれた、仕事の内容が書かれた名刺を受け取り目を通す女性。

 

「シーカーズ・コフィン。棺桶の中身までとは、荒事もお願い出来ると考えて宜しいので?」

「荒事でもなんでも、場合によってはお引き受け致しますよ、そういったご予定が?」

 

 アイギスの名刺を見ながら仕事内容の確認をする美女。

 美しい見た目からは荒事とは縁遠い雰囲気が見て取れるが、逆に考えれば大概の事は荒事にもならないのだろう。

 悪魔と理解した上で席を離れることもなく、アイギスの赤黒い瞳を真っ直ぐに見ても怯えや畏怖といったモノを覚えない手合。

 小さな島国の妖かしの割には大物の気配を見せる女に対して、この者からであればそれなりに楽しめる仕事がもらえるかもしれない、出来ればなにかあると良いみやげ話と暇つぶしが出来る。

 そんな事を考えているアイギス、荒事という好ましい言葉に対して予定があるならばと少しだけ自分を売り込み始めた。

 

「予定とまでは申しませんが、私の庭を訪れては荒らして、散らかったまま地に還る者が多くなってきまして…今はまだ困る程ではないのですが、いずれ目に余る事になりそうで」

「なるほど、いつまでこの地にいるかわかりませんが、縁があればお申し付け下さい‥暫くはカンジのお勉強をする為にこの地に留まっております故」

 

 この地に留まるという言葉を聞いて、少しだけ瞳に何かが宿る金髪の美女。

 アイギスとしては語学のために訪れただけで、自分からこの地に住まう者達に対して何かをしようという気は毛頭ない。

 依頼でも受ければ話は別になるのだろうが、食事以外で自ら荒事を起こすつもりなどはなかったのだが、この女からは何か一物あるように見られているようで、女は出会いから笑んだままで他の顔色を見せないままだ。

 威嚇とまではいかないが手の内を晒すことはしない異国の妖かし、先ほどのプレゼントの時にも何かをしてはいるが何をしたかは悟らせない手合。

 真正面から話しかけてきて手の内はあると見せつけてくれた妖艶な美女に対して、自身の出自や手の内も晒さずあくまでも訪れた理由だけを話していくアイギスだった。

 

「一つ聞いても?」

「何でしょう? お答えできる事であればお答えしますわ」

 

 一瞬だけ警戒するような瞳になる扇子の女。

 そんな事は気にせずに答えられる事であれば答えてもらおうと、穏やかに笑みを浮かべたままで女に問いかけるアイギス。

 

「この国では名前はどの様に表記されるのでしょうか? 知人の故郷かと考えておりましたが少し違うようで、私の住まう地では名が先に姓が後にくるのですが」

 

 問掛けを聞いて警戒の色は完全に消え去ったようだ、代わりに少し惑うような困ったようなモノを目に宿す女性。

 それもそうだ、この地に留まるといった異国の悪魔。

 漢字を勉強するなどとどうでもいいような事を言った悪魔に対して、何を聞かれどう濁そうかと考えを巡らせた頭に、そのどうでもいいような事の追加の言葉が入ってきたのだ。

 内心では拍子抜けした紫色の妖かしだったが、声色には出さず素直に答えを述べ始めた。

 

「姓が先、名が後に来ますわね。ついでにお答えしますと隣の国でもそういった表記をしますわ」

「ふむ、それでは彼女の生まれた国がこの国なのか隣の国だったのか判断しかねますね、ですが形が一緒ならば良しとしましょう。お答えいただきありがとうございます」

 

「いえ、このくらい。宜しければ悪魔殿の名も知りたく思いますわ、シーカーさん?」

「それはお仕事をする機会があればその時に、悪魔に対して真名を尋ねるなど些か失礼ですよ…尤も、私の場合は操られたりはしないのですが」

 

 アイギスの住まう西洋において、真名を悪魔に知られると魂を支配され操られる。

 逆に悪魔の真名を知る事が出来ればその悪魔を自在に操る事が可能となる。

 と、数百年前から民間伝承として広まり始めたが、アイギスが生まれたのはそれよりも随分と前で、この概念が固定化される前から存在している彼女には当て嵌まらない。

 正確に言えば穿たれていて当て嵌まるものがないらしい、無いものは穿つこと叶わないが在るというのなら何でも掘り返す、美鈴から同じ問掛けをされてそう言切ったのは他ならぬアイギス自身である。

 

「悪魔でありながら概念に当て嵌まらないのですか?」

「そういった枠組みが出来上がる前から生きておりますので。誘惑程度なら出来ましょうが逆に他者の全てを操る事も出来ません、ですが、お陰様で随分と気楽に過ごせておりますね」

 

「気楽などと、あまり油断されると足元を掬われて墓穴を掘る事になるかもしれませんわ」

「慣れておりますので問題ないかと、ジョークまで嗜まれるとは良い御方と出会えました」

 

 コーヒーを口に含みながらジョークも交えて、穏やかに会話を進める二人。

 時代から照らし合わせれば金髪をリボンで結った妙齢の美女と、それに付従うだけの、本来ならボロ布一枚を纏うべき褐色の肌を持つ女が席を並べてティータイムを過ごす光景。

 新大陸の話を知っている文明の進んだ国の者達から見れば、奴隷と雇い主という立場であるはずの肌の色をした二人が席に着き話すなど、欧州人からは違和感しか覚えられず少しだけ店内が騒がしくなり始めていた。

 

「少し煩くなり始めましたし、本日はこの辺りで。機会あればまたお会い致しましょう」

 

 先に席を立ったのはアイギス。

 感じられる視線が隣の妖かしよりも自分に向いていると気がついて、軽く会釈し自然な仕草で席を離れようとしたのだが…

 カウンターに二人分の銀貨を置いてから、隣の席に置いてあったショルダーバッグを肩に掛けた頃、数人の大柄な欧州人に囲まれる。

 ビールグラスを片手に持って赤ら顔、ひと目で酔っているとわかる男が三人。

 体をカウンター側に傾けて背中側を男達に向ける格好の黒羊、その尻を強く触り揉んだ男が下品に笑い奴隷なら着飾るなとのたまい始めた。

 言葉を聞いているのかいないのか、触れてきた男の手に触れてそのまま体を引いて倒す。

 騒ぎながら倒れた男の頭から背、足先までを数歩ハイヒールで踏み抜きながら歩きゆっくりと店を去っていった。

 下卑た笑い声から悲鳴へと変わり、別の意味で騒がしくなる店内で一人優雅にコーヒーを味わう女、境界の妖怪が去っていったアイギスの事を周囲の騒ぎを気にも留めずに考え始めた。

 声も上げず羽虫のように人を潰し去った悪魔。

 言語の境界を弄り、力の片鱗を見せつけても焦りすらしないあれはなんだったのか?

 不意に現れた、感じた事がない魔力を肌に感じて会いに出向いてみたが、敵意も感じず媚びるような気配も見せない異国の悪魔。

 去っていった背を思い出し暫く様子を見てみようと考えていたのは、初めてアイギスが会った日の本の国の妖怪。

 八雲紫であった。 

   




シルクロードの陸路がステップロード、回路がシーロードというらしいですね。
調べていてステップロードという単語が目に入った時、某SFCソフトのガレサステップという地名が頭に浮かぶました。
ピコーン! パリィ ってのが懐かしいです。


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