東方穿孔羊   作:ほりごたつ

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第二十五話 魅せる怪力乱神

 渡る者の途絶えた橋を駆け抜けた二人。

 先導し手を握る土蜘蛛と、手を取られ後に続く黒羊。

 真っ直ぐに走る二体の大妖怪が血の匂いと騒ぎの中心へとたどり着くと、好ましい景色が広がっていた。

 栓代わりに固く掛けられた閂はへし折れて、留まることを知らない濁流となった血の流れが大きな洋館の正面扉から垂れ流されている光景。

 濁った赤と濁った匂いを周囲に撒き散らしながらも、引く雰囲気を見せずに轟々と流れ続けている。まるで大津波にあった町のように血の波に流されて住まいは動き、町並みは歪んでいる。

 

「こりゃまた派手に出たもんだ、他のは無事かねぇ」

 

 走る途中で迫ってきた血の波。

 それを避けるように少しは頑丈に見えた酒場のある建物、その屋上で話すヤマメ。

 轟々と流れている血の川を眺めながらも誰かを探すように周囲を見回している、キョロキョロと二三度辺りを見回すと遠くのほうで争う誰かの姿が見られた。

 

「お、勇儀見つけた。喧嘩の相手は…なんだいありゃあ?」

 

 勇儀の姿を見つけたヤマメ。

 元気に戦う友人を見つけ嬉しそうだったが、友が争う相手に目をやると少しだけ目を細め、首を伸ばして顔だけを前に出した。

 争う相手その内の一人は、真っ赤に染め上げられた半袖に太腿丈のキュロットスカートを着て大きな錨を振り回す者、もう一人は同じく血に染まった法衣のような服を着て輪っか片手に戦う者。

 その二人は人型で何かしらの妖怪だとわかるが後者の側に寄り添い、輪の動きに呼応して動く何かがヤマメにはわからなかった。

 

「なんでしょうね、ピンク色で少し可愛いですが」

 

 ヤマメの言葉はただの独り言だったが、それに返答するようにアイギスも述べる。

 二人が見る先には確かにピンク色がある、正確にはいるというのだろうか。

 法衣を着て徒手空拳を放つ女に合わせるように、動きをカバーするように独自に動いて、時に呼応して自由自在に大きさも姿も変えるピンク色の雲。

 その雲には凛々しく逞しい男性の表情が浮かんでおり、険しい顔で勇儀に拳を放っている…それを可愛いというが、あの庭師といいこの雲といいアイギスの男性趣味はそっちなのだろうか?

 

「入道雲のどれか、でしょうか。ここにはいないはずの妖怪ですが、うちの下に封印されている妖怪のどれかにいたと記憶しています」

 

 二人の後ろから聞きなれない声がする。

 心の奥に響くような静かな女の声色。

 ヤマメは声の主がわかるため振り向かないが、聞きなれない女の声に振り向くアイギス。

 

「ピンク色のアレが雲? その割には物理的な拳を振るっているように見えますが?」

 

「そういう妖怪ですから、貴女は…」

「なるほど、では聞きますがどちらが敵でどちらが味方だと思えば宜しいのでしょう? 今ここで話すよりも、終わらせてからの方が落ち着いて話せると考えますが」

 

 佇んでいたのは三つ目の女性、全身ずぶ濡れで髪や纏う衣服の袖、スカートなどから雫を滴らせる誰かが何かを言いかける。

 けれどその言葉はアイギスの声に遮られた。

 アイギスの物言いに振り向いて嗤うのはヤマメ。

 濡れ姿の三つ目の正体を知るヤマメからすれば、今の少しの会話だけでもそれなりに楽しかったようだ、この三つ目の女性こそこの地の管理を任された者、地霊殿の主古明地さとり。

 真っ先に血の池に飲まれた後、勇儀に拾い上げられてペットと共に川に投げ入れられた雑な扱いをされたこの地の管理人であった。

 

「額に角を生やした方が味方、それ以外は見慣れない者です…それより…」

「ふむ、ご助言感謝致します…ヤマメ、あちらの方にご挨拶して参りますのでこの方をよろしくお願い致します」

 

 聞きたい部分の返答を聞いてすぐに飛び去るアイギス。

 会話の途中でいなくなった黒羊のいた辺りに、低めの身長に見合った小さめの手を伸ばすさとりを置いてすぐに飛んだ。

 アイギスを捕まえられず空を切るだけのさとりの手、それを見て再度笑い声を上げるヤマメ。

 相手の心を読みとり好きに覗けるという三つ目の覚妖怪古明地さとり。

 

「アイギスちゃんはつれない女だったか、大失敗だねぇ、さとりよぉ」

 

 飛んでいったアイギスの背を三つ目で睨むさとりと、それを眺めてゲラゲラと嗤うヤマメ。

 忌み嫌われる者達しかいないこの地で更に嫌われるその力、それを見慣れないアイギスにも行使し、上手く利用し管理人としてこの場を納める算段だったようだが…何を読み話そうとしても聞かれなくては意味がない。

 足を止める事も話す事にも失敗したと、見た目でわかる仕草で止まったさとりと同じ方を眺めヤマメが楽しそうに嗤う、その笑いはさとりとアイギス二人に対して向けられていた。

 旧都に向かう途中、私に対して問答無用などと言っていたがそれはアイギスの方じゃないのかと、腹を抱え嗤っていた。

 

 アイギスの飛ぶ先で争う者達。

 三対一という数の差がありながらも、余裕を見せあしらうのは先ほど味方と言われた無勢側の女。振り下ろされる錨を片手で受け払い、女の体よりも大きな入道の拳も片腕で受け殴り返す女性、その動きはまさに鬼だった。

 

「何故鬼がいて、何故私達の邪魔をするのよ!」

「知らないわよ! ここって地上じゃないの! 鬼がいるからまだ地獄!?」

 

 文句を言うのは多勢側の二人、正確には三人だが一人は会話しないので二人でいいだろう。

 殴り返されかき消された入道雲の拳を再度顕現させるように、両手で少しの印を組み騒ぐ尼公。

 その会話相手は同じく受け払われた錨を強く握り直し、敵対する鬼を睨む船幽霊。

 出てきた瞬間こそ荒れ狂い、邪魔する者、邪魔してくるはずだった『人間』達に向けての憎しみや怒りを露わにしていたのだが…相手取るのが人ではないとわかってから変に冷めていた。

 

「そっちの錨が正解さ、ここは地獄、正確には旧地獄ってところだ。地獄に鬼がいるのは当然だろう? さっきから温いが、血の池噴き上げた気概はどうしたい?」

 

 軽く握った右拳を左手で受け、パンパンと鳴らし煽る勇儀。

 態度も雰囲気も手を抜いているとわかる雰囲気、荒事にいる鬼らしくはないが喧嘩というよりも見定めようとしている為、敢えて抑えているようだ。

 忘れ去られた自分の事を出会いから鬼と呼んだ者達、二人共鬼を知りその力も知っているというように全力で退治しようと、正面から向かってくる妖怪二人。

 狡猾な攻め方しかしなくなった人間を見限り地上を去った鬼が、正面から挑んでくる元人間二人をほんの少しだけ気に入って、争いを楽しみ力量を見ようと捌いていた。

 

「水蜜、どうするのよ!? 出てきてこれじゃ封印どころか消されるわ!?」

「うっさい一輪! 出てきちゃったしどうにかするわよ! 黙って殺られてなるもんかっての!」

 

 腹を括ったと表情を引き締める、水蜜と呼ばれた船幽霊。

 轟々と流れる地の川近くへ移動すると左手に持った穴空きの柄杓を川に伸ばし、勇儀に向って掬ってかけるような仕草を見せた。

 何をするのかと眺める勇儀。

 眺めていると村紗の足元に地の水流が纏まり始め、グルグルと螺旋のような動きを見せて、赤い大蛇のような姿になり鬼の元へと畝り動いた。

 

「派手な技だなぁ、血を操る妖怪なんて知らんが、中々面白い!」

 

 眼前に迫り鎌首上げる血の大蛇、それに向けて右足を引いて少しだけ構えてみせる勇儀。

 確かに勇儀の言う通り血を操る妖怪は知られていない、血を好むのが妖怪ではあるが血そのものを今のように操るというのは聞かない。それでも村沙が操れるのはこれが血の『池』で血の『川』となっているからだろう、彼女は船を沈めてきた船幽霊、溺れるモノである血が池となり川となる今なら操れるようだ。

 

「面白いで済まさないよ! 鬼なら血に溺れたらいいんだ!」

 

 携える穴空き柄杓を勇儀に向ける村沙。

 それに合わさり大蛇の口が開くと、勇儀に向かい猛然と奔る。

 赤い一本角が蛇の口内に消えたように見えた瞬間、周囲を響かせる程の咆哮が轟いて蛇が口先から振るえて掻き消えた。

 何かでかき消されたと身構える村紗だったが勇儀は特に何もしていない、ただただ吠えただけでこうなったのだ、声すら武器になる鬼…その咆哮が大蛇を口内から散らしてみせた。

 

「水蜜だけじゃないって事、忘れないで欲しいわ!」

 

 吠えた勇儀に向かい叫び法輪を向ける一輪。

 蛇の口内から現れたばかりの鬼に向って巨大化させた入道の両手の拳が迫る、ガッチリと組まれた両手の指、固く組み一つの鉄槌と成った雲山のスレッジハンマーが勇儀の頭上から振り下ろされる。勇儀の佇む建物毎破壊する質量と勢い、だが雲山の両拳は地面に触れず一定の高さで止まっていた。拳の下の開いた空間、そこにいるのは鉄槌を片手で受け両足を少し地に埋めた鬼、片手の平を雲山の両拳に宛てがい下から小さな動作で打ち上げると高々と、打ち上げられる雲山の両手。

 

「地に足ついてない拳なんざ怖くないねぇ、踏ん張りが足りないよ!」

「このっ化け物め!」

 

「おうさ! 化けもんさ! こちとら生まれて今までずぅっと鬼だ。鬼の四天王、力の勇儀ってなぁあたしの事だ!」

 

 勇儀の名乗りを受けて一瞬固まる元人間二人。

 彼女達が外の世界で封じられる前、その頃から悪名轟いていた鬼、その四天王で力の勇儀といえば当時の妖怪を知る者からすれば…固まるのも無理は無いだろう。

 だがここで諦める気はない二人、再度柄杓を動かして血を集め蛇を操る村紗と握る法輪に力を流し、雲山の体を肥大化させる一輪。

 別の場所に封じられた誰かを救いたくて出てきた二人。

 取り仕切る旧都の街を守るつもりの鬼。

 それぞれが引けない理由で動く中、何の思い入れもなく遊びに来たのが横槍を入れにきた。

 再度勇儀に迫る大蛇。

 それに対して拳を構える勇儀だったが、その拳が振るわれる前に後方から聞こえたパチンという音と共に大蛇が消えた。

 次はなんだと首だけで振り向く鬼、角度を変えた一本角の先には一対のアモン角が見えた。

 

「誰だい? 角なんて生やして、知らぬ同族にしちゃあ見慣れないが、こいつらとも感じが違うなぁ」

 

 振り上げた拳を下げる相手が取られ、少し機嫌が悪くなる勇儀。

 大蛇を殴るために構えた右腕はそのままに、突然訪れた見慣れない妖怪、村紗達のように血塗れたスーツ姿のアイギスを睨む。

 念のため言っておくと、見た目は近い濡れっぷりだがアイギスの方はヤマメに寸断された時のソレである。

 

「お初にお目にかかります、ご挨拶と助太刀に伺いました」

 

 返答をし、下げ慣れた頭を垂れるアイギス。

 それを受けて機嫌の悪さを表に出すように立っている屋上の床、瓦を足を動かさずに踏み抜く勇儀。

 横取りしたのが挨拶なら随分な挨拶で気に入らない。

 それともこれから挨拶をしてくれるのか?

 そもそもこいつは誰だ?

 と考えていたが、面を上げたアイギスの追加の挨拶を聞いて機嫌の悪さは増した。

 

「三つ目の管理人殿から貴女様の事を聞きまして、少しのお手伝いをと思いこうして寄ってみましたが、必要ないようにも見えますね」

 

 勇儀に向って話すアイギス。

 少し話したさとりの事をこの地の管理人だと言い切り、その者から頼まれたと嘘をつく。

 さとりを地霊殿の主だと断定したのは勘でも噓でもなく、はっきりとした確証があっての事だ。

 ここにはいないはずの妖怪と言い切ったさとりから、この地を管理し把握しているといった風合いが見て取れるし、うちの下に封じられた妖怪という言葉からも地底の中心地に住まう者だと察することが出来るだろう。

 ピンクの雲を操る者とその隣の血の池を動かした者、彼女達の血濡れた身形と地霊殿の現状を見れば彼女達が何処から出てきたのかも推測できる。

 

「ほぅ、管理人からねぇ。ヤマメと喧嘩してた地上の妖怪ってのはお前さんかい」

 

 今し方まで見ていた妖怪二人を余所に、すぐに別の者に目が移る鬼。

 正面から向かってくる相手を気に入り楽しみながら見定めていた最中、機嫌はそれなりに良かったはずだが、そんな中唐突に現れたアイギスのせいでその機嫌は傾いた。

 さとりを管理人と呼ぶ者はこの地底にはいない、あれは管理を任されただけの覚妖怪というだけで、地底の皆に認められて成ったというわけではなかった。

 そんなさとりを管理人と呼ぶのは極々偶に訪れる地上の妖怪くらい、それもあの胡散臭い地上の管理人の息がかかった者くらいである。

 それを話さず身分を隠す、強引だが偽っているような者が現れたせいで機嫌が傾いたようだ。

 

「良い喧嘩でした」

 

「あぁそうかい、そういやぁその管理人はどうだったい? 血だらけだったんだがちょっとは綺麗になってたか?」

「匂いはしましたがずぶ濡れで、ぱっと見は綺麗な状態でした、ヤマメに預けたので多少は安全でしょうが、何か?」

 

 傾いた機嫌がほんの少しだけ戻る勇儀。

 自信が認めた友人であるヤマメとやり合い尚生きている黒羊。

 ヤマメが勝てば喰うか散らすかして終わりだと知っている勇儀、こいつが生きているならあっちが死ぬか喰われたかしたと地底の妖怪らしく邪推していたが、ヤマメの生存を聞いて少しだけ機嫌が戻り、不機嫌からご機嫌斜め程度になった。

 けれどこれ以上機嫌が良くなる事はない、がその話は後述しよう、この場で出番待ちをしている者達が三人ほどいる。

 

 鬼と悪魔、話す二人のところに再度向かう血の大蛇。

 完全に放置して話していた二人を余所に、力を練り上げて大きく逞しい姿と化したソレを、勇儀とアイギスのいる建物毎飲み込ませる勢いで動かす村紗。

 

「悠長に話してくれて、また忘れられるとか我慢できるかっての!」

 

 流れでた血の池の残りほとんどを纏めた大蛇が迫る、向かう途中にある住まいをなぎ倒し進む姿は赤い水害といったものであった。

 温泉と入り口の川、後は月を移す地底湖くらいしかない地底で水難事故と呼ぶには規模がでかく結構な被害がでた旧都の繁華街だが、住人皆に水難の相が出ていたとでも思って諦めてもらいたい。

 

「いい気概だぁ元人間、もうちょっと頑張ればあたしに届く蛇に出来そうだ! 次があったら退治して見せとくれよ!」

 

 軽く右の拳を握り、左手の盃煽りながら大蛇と睨み合う鬼。

 飲み込もうとする激流が勇儀の眼前にまで迫ると、拳を振りかぶるモーションが見えないほどの速度で右腕が動く。

 勇儀の拳の先に空気の層が出来るほどの疾さ、その空気の壁を軽々貫いて撃ち抜かれる鬼の拳。ボンという大気を抜く音と共に大蛇が殴り抜けられて、その奥にいた水夫姿の船幽霊に向けて拳圧が飛んだ。

 勇儀に向けて錨を向けていたのが幸いしたのか、拳圧が体に触れる前に錨をひしゃげさせてそのまま後方に殴り飛ばされる船幽霊。

 遠くの地面に斜めに着地し、土煙を上げて旧地獄の繁華街の中にその身を埋めていった。

 

「水蜜!? ってこっちもこっちでマズイか!?」

 

 鬼にぶっ飛ばされた船幽霊の名を呼ぶ尼公、水蜜に一輪と呼ばれた尼僧も、蛇を鬼に押し付けたもう一人から攻められて、防戦一方となっていた。

 一輪が操る見越し入道という妖怪、雲山が放つ拳は触れる前に悪魔が鳴らすパチンという音と共に消されていく。アイギスの正面に現れ上から見下ろす形の雲山がふ、どれほどサイズを大きくしてもその拳は届かなかった。

 

「寡黙な紳士も好ましいのですが、あちらは終わりましたしこちらも終いと致しましょう、死なない程度には加減して差し上げますので」

 

 珍しく自分から加減すると言うアイギス。

 気に入ったわけではなく、入道を眺め穿つ中である事を思い出していた。

 外で世話になったとある寺の者達、彼女達が探し続けている身内の中にピンク色の雲妖怪がいたような、頑固者で話さないが一緒にいる尼公を無言で守る紳士がいた、そんな話を聞いた気がすると思い出したようだ。

 一度結んだ縁のある者、世話になった者の探し人を殺めるのは気が引ける黒羊、でかでかと育っていた雲山は一輪の消耗と共にサイズを小さくし始めて、頭を残してアイギスに穿たれた。

 残る一輪も真っ直ぐに突っ込んでくるアイギスに、携える法輪を使いながら徒手空拳を放つが、殴打を無視して突っ込んでくるアイギスの右手に捕まり、水蜜の飛んでいった辺りに向って胸元掴まれゴリ押されていった。

 

「真っ直ぐ行くかぁ、やり口は気持ちいいねぇ」

 

 一輪を盾代わりに並ぶ住まいを数軒突き抜けて走る黒羊。

 そろそろ船長の沈んだ辺りに差し掛かると、ヒールを地に差しブレーキをかけ右手を引いて一輪をぶん投げる。

 数枚の壁を抜いて水蜜のいる辺りまで投げ込まれた一輪、ギリギリ残る意識をハッキリさせるように頭を振るが、後から飛んできたスコップが頭巾で隠れた頭を弾いた。

 カコォンと良い音が響くとガクリと意識と頭を落とす入道使い。

 

 不意に訪れた静けさ。

 音を立てて流れていた血の川は纏まった所を殴り消され、その殆どを霧散させた。

 残るのは血で汚れた地底世界と、鬼と悪魔が暴れたせいで盛大に壊れた旧地獄の繁華街。

 

「これは…封じられていた妖怪達の方がマシだったのでは…」   

 

 引いた血の匂い、その代わりに感じる埃や土煙の匂い。

 そして終わらない争いの匂い、全部を捉えてポツリと呟くのはこの地の管理人であるさとり。

 これまでもそれなりに騒がしい事はあった。

 突然やってきた少数の鬼達、今暴れている一本角を筆頭にここの何処かに住まわせろと言って先住と争い、今日のように繁華街が荒れた事もあった。

 その時は一方的に終わり、短時間で済んだからまだ良かった。

 今日も出来ればそうあって欲しい…が、嗤う土蜘蛛の思考からは嫌な事しか読み取れない。

 鬼と似たような存在の土蜘蛛、それが負けて嗤う相手。

 この後確実に酷い事に、今より酷い事になる。

 こんなつもりで上に知らせたわけではない、来れば面倒事に巻き込まれると知らせる為にわざわざペットを使いに出したのに…まさか面倒が上から来るとは考えなかったさとりであった。




村紗一輪の加筆修正をしたけれど、鬼には勝てなかった。
おかしい、こんなはずでは。

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