レオと鳴海は知り合いだったらしい。なんらかを話した後、レオはイヤーマフを放り投げた。結界をゆるめろ、と部下に指示をする。
「まずは君ら2人のアリスも調べなくちゃね。『君のアリスはなんだ』」
質問されたパーマの目がぼんやりした。まるで熱に浮かされたような表情。
「あかん、パーマ!」
蜜柑が叫んだのと棗が何かを投げたのはほぼ同時。レオの注意が棗に向く。
「まだ抵抗する力が残っていたんだ? 結界の中でアリスを使って、その跳ね返りがきたようだけど」
「うるせえ」
棗の状態はみるからに悪化していた。全身に汗を掻いて、肩で息をしている。その状態で火を出そうとする。
「必死だねぇ、そこまでする理由がお前にあるのか? 学園を恨んでいるのは俺たちZと一緒だろう? どうせ帰っても裏任務をさせられるだけだ」
「あんた・・・・・・!」
蜜柑は棗を庇うように前にでた。レオを睨み付ける。
「ええ加減にせぇよ! 棗をあんたらに渡して溜まるかっ! 全員で学園に帰るんや!」
「お前何で、レオさんの声を聞いてなんともないんだ?」
黒服達が驚いた顔をするなかで、レオが何かに思い当たったようににやりとした。ぐっと蜜柑の顔を引き寄せる。
「お前無効化か? ――似ていなくもない、あの女に・・・・・・」
一人で短く笑った後、乱暴に蜜柑を突き飛ばす。
「おい、今からあの女について調べろ! 十年前を徹底的に洗い出せ!」
あの女?
誰のこと?
蜜柑の頭に浮かんだのは、以前見た過去のことだった。初校長にアリスを入れて、学園から失踪した母親。彼女は確か、反学園組織に行ったはず――。
まさか。
そのとき、蜜柑の肩を棗がたたいた。ぼっとするな、と小声で言ってくる。
「パーマ、近くに何があった?」
「ここから南に、倉庫が・・・・・・中に火薬や薬がたくさんあるわ」
ヒゲを出した彼女の答えに、棗が何か考え込んでいた。
「・・・・・・お前ら、こっから逃げろ」
「は? 何言って――」
「時間を稼ぐから出ろっつってんだ、お前らいたんじゃ足手まといだ」
パーマは頷こうとしたが、蜜柑は首を振った。
「おい」
「嫌や、あんた何するつもりなん。あんた一人残って、あんたはどうなるんや」
「俺はお前らよりゃこういうのに慣れている。お前らは何とか逃げて、学園に居場所を伝えろ」
棗は何と言ってもきかないだろう。蜜柑は唇を噛みしめ、頷くしかなかった。
「・・・・・・分かった」
けど棗を一人になどできない。絶対もう一回戻ってくる、と密かに心に誓う。
「じゃあいくぞ・・・・・・行けっ!」
棗の声を合図に蜜柑とパーマは駆け出す。目指すは出口の扉。突然のことは黒服達の意表をついた。それでも腕を掴まれそうになるが、棗がカバーしてくれた。炎で威嚇している。
「動くな。少しでも動けば、この先にあるダイナマイトに火をつける――」