学園アリス If   作:榧師

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脱出②

 レオと鳴海は知り合いだったらしい。なんらかを話した後、レオはイヤーマフを放り投げた。結界をゆるめろ、と部下に指示をする。

 

「まずは君ら2人のアリスも調べなくちゃね。『君のアリスはなんだ』」

 

 質問されたパーマの目がぼんやりした。まるで熱に浮かされたような表情。

 

「あかん、パーマ!」

 

 蜜柑が叫んだのと棗が何かを投げたのはほぼ同時。レオの注意が棗に向く。

 

「まだ抵抗する力が残っていたんだ? 結界の中でアリスを使って、その跳ね返りがきたようだけど」

「うるせえ」

 

 棗の状態はみるからに悪化していた。全身に汗を掻いて、肩で息をしている。その状態で火を出そうとする。

 

「必死だねぇ、そこまでする理由がお前にあるのか? 学園を恨んでいるのは俺たちZと一緒だろう? どうせ帰っても裏任務をさせられるだけだ」

「あんた・・・・・・!」

 

 蜜柑は棗を庇うように前にでた。レオを睨み付ける。

 

「ええ加減にせぇよ! 棗をあんたらに渡して溜まるかっ! 全員で学園に帰るんや!」

「お前何で、レオさんの声を聞いてなんともないんだ?」

 

 黒服達が驚いた顔をするなかで、レオが何かに思い当たったようににやりとした。ぐっと蜜柑の顔を引き寄せる。

 

「お前無効化か? ――似ていなくもない、あの女に・・・・・・」

 

 一人で短く笑った後、乱暴に蜜柑を突き飛ばす。

 

「おい、今からあの女について調べろ! 十年前を徹底的に洗い出せ!」

 

 あの女?

 誰のこと?

 蜜柑の頭に浮かんだのは、以前見た過去のことだった。初校長にアリスを入れて、学園から失踪した母親。彼女は確か、反学園組織に行ったはず――。

 まさか。

 そのとき、蜜柑の肩を棗がたたいた。ぼっとするな、と小声で言ってくる。

 

「パーマ、近くに何があった?」

「ここから南に、倉庫が・・・・・・中に火薬や薬がたくさんあるわ」

 

 ヒゲを出した彼女の答えに、棗が何か考え込んでいた。

 

「・・・・・・お前ら、こっから逃げろ」

「は? 何言って――」

「時間を稼ぐから出ろっつってんだ、お前らいたんじゃ足手まといだ」

 

 パーマは頷こうとしたが、蜜柑は首を振った。

 

「おい」

「嫌や、あんた何するつもりなん。あんた一人残って、あんたはどうなるんや」

「俺はお前らよりゃこういうのに慣れている。お前らは何とか逃げて、学園に居場所を伝えろ」

 

 棗は何と言ってもきかないだろう。蜜柑は唇を噛みしめ、頷くしかなかった。

 

「・・・・・・分かった」

 

 けど棗を一人になどできない。絶対もう一回戻ってくる、と密かに心に誓う。

 

「じゃあいくぞ・・・・・・行けっ!」

 

 棗の声を合図に蜜柑とパーマは駆け出す。目指すは出口の扉。突然のことは黒服達の意表をついた。それでも腕を掴まれそうになるが、棗がカバーしてくれた。炎で威嚇している。

 

「動くな。少しでも動けば、この先にあるダイナマイトに火をつける――」

 


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