「っとまあ、こんなとこなんだけど、なあどうよ? お前が尊敬して敬愛して服従して崇拝して盲信して尽くしてたすんばらしぃご主人様が、なんとなんと! 実はこんなひどいことをしてたって話なんだ〜けぇ、ど?」
一通り話し終えて、男は
リゼウィムは笑う。邪悪そのままに嗤う。不信感を煽り苛立ちを煽り焦りを煽り怒りを煽り、悲しみも恐怖も復讐心も何もかもを煽って諭して教唆して。戦争も裏切りも引き起こすこの煽動の天才は、虚無である
はたして、
「はーひーふーへーほーん。なるほどなるほどそういうタイプね〜。俺の話が信じられないってことかい? 大好きご主人様さまがそんなことするはずかないってことかい? うひゃひゃひゃひゃっ。でも事実なんだよねぇ。事実なんですよぅ。残念なことに、お前のご主人様はそーんなことするひっでぇ奴だったってわけだね♪ お前は今までずっと騙されてたってわけ! うっひゃー悲しぃ話だねぇー俺ちょっと泣きそう♪」
うひゃひゃひゃひゃ。リゼウィムは愉しくて仕方がない。ああ、楽しい。愉しい。楽しくてたまらない。リゼウィムは笑う。愉しい。愉しい。なんて喜ばしい。人形とまで呼ばれるほどに忠誠心に溢れたとされる目の前の小娘が、現実を前にしてどうすることもできないこの感覚、この反応!
そうだ、そうだ。この反応だ。この世には力ではどうすることもできないことが多すぎる。それを知ったこの反応だ! ほら見ろ。現実を知らぬ
なんて――なんて容易い。現実という刃の強いこと強いこと。無限の半分ですら滅せなかった
ああ、これだ、これなのだ。リゼウィムはこれこそが欲しかったのだ。無力に浸る絶望が、無力を呪う絶望が。現実に対し、何も成せぬ無力であると自覚してしまい、絶望してしまうその姿が見たかった。その姿が、ああ――愉しい。うひゃひゃひゃひゃ。リゼウィムは嗤う。狂ったように笑う。
リゼウィムの周囲に不思議な魔力が取り巻く。それを感じて、リゼウィムは残念そうに、しかし底意地悪そうにうひゃひゃと笑った。
「あんりゃ。あーらら。残念だなあもう時間じゃん。もったいねーもうちょっとなのになー。正気までどんぐらい時間かかるか分かんねえんだけどせっかくだから苦悩ぐらい見て行きたかったぜ。……ま、いいや。おおーいそこの茫然自失系悪魔型聖獣少女
リゼウィムは邪悪に笑って、にやにやと嗤って、未だ一点を見つめ続ける
その言葉が響いてもなお、
動かず。動かず。リゼウィムが去ってしばらくして、それでも
★
ライザーは屋敷に戻る最中、異様な形で抉れた、どこか見覚えのある地形を発見した。綺麗に削れた後から瓦礫が降り注いだかのような、異様すぎる光景である。それは
やはりというべきか、
「おい」
ライザーが声をかけても反応は無い。いつも通りに無表情で、彼女は何も語らない。ふむ、とライザーは
「話を聞け」
のでデコピンをする。ぱちん、といういい音と突然の衝撃に、
「ライザー」
「ああそうだ。俺だ」
首をかしげる
(しかし、なんだこの地形は……)
どうやら、
「ここで何があった?」
ライザーは問う。
何があったのか。何が相手になったのか。不死身の存在が相手していた。幽体が相手だった。流体が相手だった。それならば分かる。
しかし、恐らくそうではない。何故なら、
ブラックホールの引力を受けても死なず、どころか無効化し、さらに星の質量すらも無視する存在。そんなものが見過ごせるはずがない。見逃せるはずがない。
「なあ、ここで何があったんだ」
正直に言えば、この問いに状況を把握する意味はほとんどない。ライザーは
少しでも、少しだけでも情報があるだけで、何かが劇的に変わるかもしれない。姿形、能力。何か知れれば正体が分かるかもしれない。能力が分かれば対策ができる。姿形が分かれば推測ができる。正体が分かれば弱点をつける。そうすれば、先手をつけるかもしれない。
ライザーは少しでも多くの情報が欲しかった。
情報を得るための他に、これは
例外はあるが、基本的に悪魔であろうと人と同様に言葉にしなければ分からないのだ。積極的にでなくてもいい。ただ、最低限でも喋るようになれば、きっと
一歩ずつでいい。少しずつでいい。
だから、情報収集という意味でも成長という意味でも、少しでもライザーは喋ってほしいと、話してほしいと願って問うたのだ。ここで何があったのか、と。そういった想いを込めた、そういった願いを込めた問いだった。
そんな、ライザーのいろいろな思いが入り混じった、頼みのようなその問いかけに対し――
小首を傾げた
★
気がついたらロリコンおっさんが消えててライザーが目の前にいた。どうやら俺は錬金術に目覚めてしまったようである。やったー。この世の全ての男をライザーにしよう。代わりばんこに若干の休憩を挟みつつ年がら年中犯されよう。そうしよう。
まあ魔力使えない俺がそんな大それたこと出来る訳ないんだけどね。多分おっさん帰ったんだろ。そしてライザーがここに来たってことか。せっかくなら服を脱がしてくれても良かったのに。てか後処理とか終わったんだろうか。終わったんなら俺の性欲の処理も頼む。
いやーしかしなんだったんだあのおっさん。神器効かねえとか反則にも程があんだろ。どうやって殺せってんだ。あとあの幼女も。あいつなんだよ。こいつはなんか神器が効いてるのに効いてないし。まあもういないからどうでもいいや。今は目の前のライザーである。
「ここで何があったんだ」
いやそれ俺が聞きたい。なんで俺のとこきたんだあのおっさん。あれか、幼女っぽいからか。誘拐しようとしてたのか。やべえあぶねえ。ってことはライザーが助けてくれたってことかな? やべえライザー抱いて! それはもうぐっちょんぐっちょんに!
とりあえずライザーが聞いてきたことには首をかしげとく。ほんと何が起きたんだもう。まあこの地面は俺のせいだけどさ、でもこれって死なないおっさんと幼女が悪いんだから結果的に俺は悪くない。つまり俺は無罪である。
だから俺が壊したとことかライザーも悪くない訳で、正しいことをした俺はご褒美にライザーからねっちょり犯してもらうのだ。こう、まずは服の上から胸の感触を楽しむかのようなねっとりとした愛撫で俺を昂らせて――
むにゅん
んっ。そうそうこんな風に……。……!??!? ひあっ!? なん、え、なんっ? ちょま、いやちが、胸が、え? ど、え。な、ふぇ。あ、え。
ま、待って待って待って! 今すぐ来ていいけどちょっと待って! 待たなくていいけど待って! やりながら待って! ……あ、え、う、え? あ。う、なに? あ、もしかして俺って心の中を読ませる能力にでも目覚めたの? 鳥じゃなくて猿なの? さとりなの?
なるほどそうなのかそれでライザーは俺の心そのままに行動したって訳なのか残念ながらちょっとだけ違うんだけど全然大丈夫っていうかむしろ大好きっていうか快楽こそがとか思うけどたまにはこういう気持ちよさもいいよねっていうかそうじゃなくてえっと――
「とりあえず飛んで戻るぞ。さすがにまだ俺が抱えた方が速いからな」
よっしゃそのまま帰ってベッドインだよやったねラッキーだね俺! さっきの胸愛撫はライザーの性欲がはやったのかたまたま脇をかかえるときに胸が巻き込まれたのか分かんないけど良かったよまたやってね!
ふははは! 長年の夢がやっと叶う! なんていい気分だ! 楽しい! 嬉しい! どうせなら飛んでる最中におっぱじめても良かったんじゃないかな! 気持ちよければなんでもいいし! 今なんか快楽じゃない意味で気持ちいいよ! すごいねライザー! でも快楽も大好きです!
もしかしてあのおっさんはサンタクロースかなにかだったんじゃないだろうか。なんか白髪だったし。そりゃ神器効かねえわ。そうでもしないとプレゼントとか配れないだろうし。ってことは幼女は助手かトナカイかな。うん。なんだこの世界サンタいたのか。
いやーびっくりだ。サンタって実在してたのか。さすがサンタだな。俺のしてほしいことを的確にプレゼントしてくれるとか。あれかな。今まで貰ってない分のプレゼントをくれたのかな。よっしゃありがとう! 殺さなくて良かった。
あ、もしかして幼女が俺の自爆止めようとしたのって良い子ポイント的なのが下がるからとかかな。若干俺の希望と違う感じで快楽を追求した揉み方じゃなかったのは地面壊すっていう悪いとこしたからか。ごめんよ幼女。でもあれだけの減点ですませてくれてありがとう。殺さなくて良かった。
いやー。しかしいい子にしてた覚えとか全然ないけどプレゼント貰えて良かったわ。ほんと。悪い子にしてた気もしないから当然なのかもしれないけどさ。ありがとう。ライザーもクリスマスプレゼント的な感じでホワイトクリスマスしてくれないかな。今クリスマスじゃないけど。
あ、そうだサンタいるならあれもいるのかな。あのなんか汚いのとか置いていくやつ。名前なんだっけ。悪い子のとこに訪れるサンタによく似たなんかグロいの。あ、違う黒いの。……これだけ聞けばチン●みたいだな。悪い子にしてたらライザーがくれるのか……?
まあでも今日貰えるもんね。そしてこれからも貰うもんね。ライザーと毎日毎日ずっこんばっこんしてやるぜ。ベッドの上で乱れてやるぜ。うふふふふふふ。いやー。いいなあ。この心に余裕ができた感じ。これが勝ち組というやつだね。
「……ああそうだ、思い出した」
ん? どうしたライザー。あ、あと胸の下で腕組むくらいならチン●で体重支えるとかいうロマンしながら揉めばいいと思うんだ。俺は気持ちいいライザーも気持ちいいでウィンウィンだと思うんだけど。ウィンウィン。ウインウインっていうとバイブの駆動音みたいだよね。
「お前が卵を産んだことをアザゼルに聞いたんだが……」
総督に? ああそういえば総督は卵のこと知ってるもんね。だから聞いたのかな。お、もしかして卵の媚薬効果を実際に体験したいってことなのかな。実は俺体験したことないからせっかくだし一緒にやって一緒に発散させたいな。
「お前、その卵……アザゼルのところに持っていくものじゃないのか?」
え? なんで? 確かにアザゼルに卵の媚薬効果調べてもらったことはあるけどさ、だからといって取り分100パーセントってのはおかしいだろ。多少はとってもいいかもしれないけど、でも最初の一個とってんだからそれで満足してたらいいのに。欲張りだな総督。
まあでも残念なことに蛇が全部食べるんだけどね。今朝もなんか食べたし何なのあいつ。ちょっとおかしくない? いつも普段どっか消えてるくせに気づいたらいるんだよね。でも気持ちいいのはいいよね。まああれはなんか苦しいっていうか物足りないのに無理やり与えようとしてるっていうかマイナスを押し付けられてる感じだから苦手なんだけど。
てかなんで今になって総督はこんなこと言ってきてんの? しかもライザーを介すとか酷いことしてまでさあ。いつから俺の卵は総督のものになったんだよ。お前が俺を孕ませたのならまだしもさあ。でも最初はライザーで最後まで全部ライザーだから。そう決めてるから。
って、ん? あれ? あ、やべ。なんか思い出してきたかも。そうだ、なんか食わせんなとか言って増えたら送れって言ってたような……? …………。……まあどこに送れとも多分言ってないからね。へびの胃袋に送りましたってことで。
……俺に送れだったっけ? まあいいや。どうせばれてももう証拠はないんだからいいんだよ。いかにも毎日卵とか産むわけなくね? みたいな顔しとけば良いんじゃないかな。だってよく考えたら普通卵とか産まないもんね。鶏じゃないんだから。
誤魔化せるごまかせる。余裕余裕。いくら総督が頑張っても証拠不十分で全ての要求を跳ね除けてやるぜ。いえー。証拠がないなら俺がやったとは限らないし……ていうかそもそも口約束どころか一方的に伝えられただけだから守らなくて良いじゃん。それなのに無理やりそれらを成立させようとか詐欺かよ。やべえな総督って詐欺師だったのか。
「……おい?」
違う違う。首を横に振る。そういうことにはなってない。そんなことで俺をコントロールしようなんて甘い甘い! 残念だけど俺にはそんなわけ分からん命令に従う義理とか必要とかないから。だから卵は全部俺のものなのである。
「そうか……。まあお前はそうだろうな」
……? どうしたライザー。見上げても顎ぐらいしか見えない。おのれ身長差め……。俺はそうだろって誰だってそうなんじゃないの? もしかしてなんかよく分かんないことがあったりすんの? なにそれきになる。おーしーえーろーよー。手取り腰とり教えろよー。
「ああ。あまり気にするな。だが少し周りに興味を持て」
ライザーには興味津々ですぜ旦那。いつだってその滾った性欲を息子さんで叩きつけてくれてもいいんだよ? 俺はきっと涎を出して大喜びで迎え入れるだろうから。上も洪水、下も洪水ってやつ。足元に火をつければお風呂かな。
うーん、さすがライザー速いなあ。ぐんぐん進む。もう屋敷がすぐそこである。俺が飛んだらもっと時間かかるからなあ。下手すれば倍くらいかかったりしそうだよね。まあ重いものがあるなら話は別なんだけどね。
ってあれ? なんか屋敷通り過ぎてない? なんで? あ、なんか用事とかあんのかな。それとも屋敷よりラブホとかでじっくり時間をかけて朝までやろうって感じかな。ふふふ。いいねいいね。たくさんやろうぜ。ってラブホも通り過ぎた……まあ近くのだと知り合いがいそうだからかな。うん。
うん、うん。ここどこだ。まあ確かに見知らぬところでヤるっていうのもいいんだけどさ、でも最初は普通に部屋とかの方がいいなあ。いや、まあヤレるならぶっちゃけどこでもいいんだけどね。いっそのこと戦場のど真ん中とかでも問題ない。俺もライザーも死なないし。
命の危機に達したらなんか子供残せるっていうし、この案いいかもしれない。うまくいけばライザーの子供が手に入る。うまくいかなくてもセック●はできる。なんてこった。どっちに転んでも俺大勝利じゃないか。やったあ。
まあとりあえず今回のセック●を堪能してから、またなんかあったりしたら提案してみるのもいいかもしれない。ライザーにちょっとセック●しないかって感じの提案をされたときとかさ。多分ライザーオッケーするだろうし、これはちょっと頑張って覚えておこう。
ふふふ。楽しみだなあ。
「さ、ついたぞ」
お、ついたみたい。さてここ……は……。
「よお、俺の言ったこと忘れて元気に過ごしてたみたいでなによりだ」
……こんにちは総督。帰っていいですか。
アザゼルはもう総督ではありませんが、主人公はそんなこと関係なく総督呼びです。