二十二話
ぐらり。
これで五体目。
十二体の内の五体。一人で半分近くという大戦果。ブラックホールにのみこんだ巨大なスライムを除き、
しかし、悪魔の上層部において、その能力以上に危険視され問題視された事柄が存在した。それは強さでも瞳でも能力でもなく、
例えば筆記におけるその解答のおかしさ。特に最も問題視されたのは社会学で、
それはまるで、巻き込まれたことでさえ他人事のように感じているかのような異常性。蛮勇の正体。
彼女が提出したレポートにも、それは現れている。空っぽさを助長している。試験において提出されたのは、『ライザー』とだけ書かれた、未完成にすら劣るレポートである。何がしたいのかすら書かれていない、主の名だけが書かれたそれは、どこまでも空白に満ちていた。
実技試験は言うに及ばず。ただ全てを壊すかのような絶大な質量と引力で以って意味もなくその絶大性を知らしめた。フィールドを二度、引力でもって破壊するという滅茶苦茶さによって。いや、意味はある。この時、試験監督は事前に、互いに持てる力で戦えと言った。そう指示をしていた。つまり彼女は指示に従っただけである。ただ、従う以外をしなかった。
自分を見れず、空っぽで、他に従うしかできない人形。功績はある、実力もある。中級悪魔に推薦するための要素は充分揃っている。だがそれ以外が圧倒的に足りていない。これは酷すぎる。何も見ないということは、周囲が見えないということだ。何も感じないということは、配慮が足らないということだ。こんなのが上に立てるわけがない。いくら兵士として優秀であっても、王としては愚王に過ぎる。
強いというのも厄介だ。実力は最上級悪魔クラス。しかも死なないのだ。これが自分を持たないのだ。指示に従うのみをするのだ。狂ったものが教唆煽動するだけで、辺り一面地獄と化すだろう。その再生能力から見ても、止められる術はひどく少ない。
幸いなことは、その主がライザー・フェニックスであり、ある程度の道徳心と常識をわきまえた存在であったことだ。だから上層部は彼に
自己がないゆえに誰の指示にでも従う可能性がある最上級悪魔クラスである。利用されればどれほどの被害が出るか想像に難くない。ならばどうするか。どうするべきなのか。
つまるところ。ライザーがしっかり手綱を握っていればいいのだ。
なぜならライザーは
そう、つまり。
上層部は、
★
適当にでかいのを殺してたら居なくなったらしい。ライザーはなんか後処理だとかでどっかに行き、俺はレイヴェルに見つからないようにこっそりと屋敷に帰る途中である。当然だが歩きで。飛ぶと目立つのだ。って、あれ? ここ確か何回目か知んないけど、でかいの倒した所じゃね? つけといた目印あるんだけど……。……まさか持ってかれた? いやサイズ的に無理だろ。
ってことはどうやらでかいのは殺して少しすると消えるらしい。一匹目はなんかめっちゃすり潰した記憶があるからともかく、二匹目以降のなんかきもいのを殺したのは普通の攻撃だったはず。死体も残っていたの見たし。まったく。まじかよ。俺の苦労はどこ行った。苦労してないけど。
消えるならわざわざ殺した意味がないんだけど。やっぱり殺さずに気絶くらいにしておくべきだったかな。でもなんか再生してたしなあ。あー。どうしよう。せっかく丁度いいタイミングででかいのがやって来たと思ったのに。ライザーもほんといいタイミングだったのに。あとはそのままベッドインしとけば最高だった。今からでもしたい。
レイヴェルも大目に見てくれたらなあ。試験不合格ぐらい普通だろ。どうやったって落ちる人は落ちるんだからどうしようもないってのに。まあ俺はライザーの手によって快楽落ちしたけどね。エロ同人みたいに。エロ同人みたいに!
というか正直プロモーションの性能がよく分かんないんだよね。とりあえずで一番強い
なんだっけ。
まあともかく、俺はプロモーションでパワーアップしてるはずなわけなんだけど……。んー。まあ多分だけど引力とか質量とか上がってんじゃないかな。実感全然わかないけど。これ実は欠陥品なんじゃないの? 魔力は上がってるから上がってるとは思うんだけど。
まあぶっちゃけパワーアップしたところで
あ、でもなんだっけ。死ねるようになったのは面白かった。あれなんか体ないのに辺り見渡せるんだよね。そして復活するときの位置を選べるから実質テレポートに……。……。これだ! これがあればレイヴェルから逃げられる! さすが俺。褒美にライザーと休憩したい。
いやー。良かった良かった。正直詰んだかと思った。がんばって隠れて帰ってるけど気配の消し方とか俺知らないからね。レイヴェルがそんな能力もってたらどんなにがんばっても屋敷で捕まるからね。でもこれなら見つかっても逃げられる。これで大丈夫。
そうそう。なんであのときプロモーションできたのかな。確かあれって相手の陣地には入らないとみたいな条件があった気がしたんだけど。んー。まあライザーがどうにかしたのか。そんなもんだよね。うん。さすがライザー。ライザーの汁と俺の汁を混ぜ合わそうぜ。
汁といえばフェニックスの涙ってあれどうやって作るんだろうね。ライザーに目潰ししても再生されるときに炎でるからできないと思うんだけど。やっぱ血から作ってんのかな。そりゃ量産できないわ。相当疲れてなきゃ血とか流れないもんね。疲れてないと一瞬だけだし。
……ていうか結構遠くまで来てたんだな俺。いま歩いてるけど飛んだほうがいいのかな。見つかってもテレポートすればいいし……いや、でも見つからないに越したことはないよね。仕方ない。しばらく歩くか。
あーあ。そこらへんにライザーのチン●落ちてないかなー。または生えてないかなー。まあライザー本人が落ちててもいいけどさ。むしろそっちのがいいけどさ。発情期のライザー落ちてこないかなー。犯してくれないかなー。
あ、やべえ面倒くさい。こっから屋敷までどんだけ距離あるんだもう。飛ぼうかな……いやでもなあ。テレポートしようにも最終手段ぐらいに……ていうかテレポート先でレイヴェルに会ったらなんか対策されそうだしなあ。するならライザーと俺とのセッティングにしてほしいものなのに。
だいたい俺は屋敷でごろごろしてあわよくばライザーとそういう行為をしたいってだけなんだから追われて逃げられても屋敷に戻れないんじゃ困るんだよね。バレるわけにはいかない。でも飛びたい。確かに飛んでも遠いけど歩くより速いから飛びたい。走るのはだるい。胸揺れて重いし。
俺ってばフェニックスなのでブラジャーしてなくても垂れないのである。ライザーのお母さんが言ってた。わあい。これで心置きなくいつでもセック●ができるね。まあさすがにパンツは履いてるんだけどさ。これないとただの変態だからね。
ただこれもレイヴェルにばれると大目玉をくらう。厚手のトレーナーとか着てたらばれないんだけどね。薄着してたらめっちゃ怒られる。いいじゃん。ライザー誘惑できるし上脱ぐだけですぐ上半身裸になれるしでいいことずくめじゃん。
しかしどうやったらライザーって欲情して俺に襲いかかってくるんだろうね。ユーベルーナとかとはヤッてんのに何で俺だけ……。やっぱりこの胸が、なんかアンバランスなのが悪いのか。俺はいけるけどなあ。
あ、もしかして表情とか声ってこと? こいつ俺のテクじゃ……ってこと? めっちゃ効いてるのに! くっそなんで俺の顔は動かないんだもう。声も喘ぎ声出すのは無理だし……くそ。どうすれは……。
ってなんだこいつら。せっかく結構進んで……多分半分は過ぎたと思うぐらいに来たのに。んー。……? なんだ? 誰だこの……えーっと、俺ぐらいの身長の幼女と、なんか変なの着たきもいおっさんは。二人とも全然似てないし髪の色も違う……まさか誘拐か! まじか。やべえ変態だ。ロリコンだ。うわあ。
「うひゃひゃひゃひゃ! おいおい人見知りの俺が恥ずかしさを必死でこらえながら話しかけんだぜ? それをシカトたあ寂しいじゃねえか。会話しようぜ会話をよ。あ、そういえば喋れねえんだっけ? うひゃひゃっ♪」
ずぶ、とお腹に違和感。ん? おー。風穴空いてら。まあこれぐらいじゃ死なないんだけど。いつの間にやったんだろ。ていうかなんだこいつ。急に攻撃してきたんだけど。見た感じ……人間か悪魔か天使か神ってところか。うん。面倒くさいしきもいし、とりあえず殺すか。
とりあえず引力で引きつけて……あれ? あー。引きつけられない。なるほど。またそういうの無理なタイプか。まあとりあえず出力上げてっと……ん? あれ。まだ無理なのか。なんだこいつ。きもいくせに面倒くさいな。というかさりげなく隣の幼女にも効いてないのか。ってことはこいつも敵か。んー。まあ引力効かなくてもいいや。とりあえず死ね。
「いきなり殴りかかってくるなんて物騒だなあなあええ? でもでもでもぉっ! あっれーあれあれあっれっれー? どうしたどうしたの
んー? んー。なんでだろ。なんか殴った感触がおかしい。んー。幼女のほうはどうなんだろ。とにかく殴ってみる。……って、あれ? 殴りかかっていくとものすごい衝撃。なんか俺の腕消えてる。ていうか体の大半消し飛んでんだけど……これ多分一回死んだかな。死んで全身消える前に復活した感じかな。あーもう。こいつも面倒くさいタイプかよ。どうしよ。とりあえずもう一回殴るか。
「ありゃん? ありゃりゃん? ありゃりゃりゃん? もう一回やっちゃうのん? こりゃあとんだお馬鹿さんだなあおい。うひゃひゃひゃ。でも俺ってば嫌いじゃねえぜそういうの。……ま、そうは言っても無駄無理不可能残念賞♪」
殴る。けど効いてない。大分出力上げたんだけどまだ無理だったみたい。というかこれなんだ? 効いてないというかこう、なんていうか。スライム相手みたいな手応えじゃなくて、なんだろ。強いて言うなら空気殴ってる感じ。……んー。神器の調子がおかしいのかな。
あーもう。ていうか神器ってメンテナンスとかいるの? しないと調子悪くなったりすんの? そんなの聞いたことないんだけど。幼女に殴りかかったときに死んだのは多分反撃されたからだろうし……。まあ見えなかったけど。多分幼女の仕業だから神器のせいじゃないよなあ。
まあとりあえずさらに出力上げるか。これに間違いはないだろ。あ、てかあれしようあれ。なんかめっちゃ吸い込むやつ。スライム殺したの。多分目立つだろうけどこの際もう仕方ない。出力上げてー。とにかく上げてー。体中にまた走る衝撃。ってまた死んだ。まあ即効再生復活したんだけど。てか反撃以外もするのねこの幼女。また見えなかったし、正直こいつやばいんじゃね?
「さっすがさすがだなーフェニックス。素敵すぎておじさんびっくりだぜ♪」
まあいいや。どんだけ殺されても問題ないし。さてと。とりあえずの引力攻撃準備完了っと。
「させない」
お、幼女喋った。そして羽交い締めにされる。……ってかこいつほんと力強いな。なにこれ。なんだこいつ。振りほどくどころかビクともしないんだけど。……動かなくても吸い込むやつはできるからいいんだけどさ。さてと。んじゃ準備もできたし、くらえ! 必殺! なんかよく分かんない間に相手が小さく押し潰されて死んでる攻撃!
「んっ」
幼女の呻く声。なんだお前幼女のくせに喘ぎ声みたいな声出してんじゃねえよ。変にエロいんだよ。ってこれ吸い込み攻撃発動してんのか。辺りがなんか黒くなり、そして明るくなる。ぐちゃぐちゃの地面に当たり前のように立つ幼女とロリコン。二人ともノーダメージっぽい。うん。なんだこいつら。
「うひゃひゃひゃひゃ。個人でブラック・ホールを作り出すたあ驚きだ。驚きすぎて笑っちゃうぜ♪ でもでもで、もおっ! おじさん実は
えー。まじかよ。神器無効化されたらどうしようもないんだけど。いやまあどうにかなるんだろうけど。でも面倒だしさっさと死ねよ。とりあえず体を復活させる。こういうとき服も一緒ってのが素敵だよね。裸だったらライザーとか欲情して俺に襲いかかって……あれ? そっちのがよくね? なんで服も一緒になんだよ!
まあともかく。神器効かないなら殴ったときの感触も納得である。あれだね。神器の影響全部消すから感触がおかしいんだね。あと引力も効かないんだね。でもこの幼女はなんなの? こいつも無効化系?
……もう一回殴るか。そしたら感触でわかんだろ。
「おっよっよよーん? だからと言ってリリスの方を狙っちゃうかー。そっち狙っちゃうかー。あっちゃー! あっちゃっちゃー! ざあん、ねぇん! そいつはオーフィスの片割れなんでぇっす!」
いやそのオーリスって誰だよ。まあそのオーリスの片割れに殴りかかる……っておおっ!? 全身になんか大きい衝撃が走る……ってまだ死んだかな。よく死ぬな俺。ん? これは……お、幼女も吹っ飛んでら。ってことはこいつは無効化系じゃないってことか。……あれ? そっちのがめんどくね?
なんだこれ。神器は無効化されるわめっちゃ強い幼女はいるわ。俺がなにをしたというんだ。試験落ちたのが悪いのか。でもまだ落ちたって決まったわけじゃないから。実力テスト的に可能性はあるから。ライザーがえっちなご褒美くれる未来はきっとあるから!というかご褒美じゃなくて日常にしたい。
あー。でもこれまじどうしよう。こいつらどうやればいいんだもう。殴ってればいいの? 何回殴ればいいの? めんどいんだけど。心の底から面倒なんだけど。
もう帰りたい。てかこいつら無視して帰っていいんじゃね? もうどうでも良くなってきたんだけど。なんでわざわざこんな奴ら構ってたんだろ。こんなんするぐらいならライザーとの営み妄想して一人マスターなベーションしてるわ。
帰る行き先にロリコンと幼女が邪魔してるけどまあ多分通してくれるだろ。ってかおい幼女いつのまに戻ってきた。お前さっき飛んでってなかったっけ? んー。……まあいいや。帰ろ。
「おーっとと、本題に入るのを忘れてたぜ。ほらほらおじさんってもう年だからさあ。ついついお話忘れて遊びたくなっちゃうのよ♪」
……えー。通してくんないのかよ。もう必殺技らしき攻撃が効かない時点でやる気ないんだけど。というか帰りたいんだけど。まだこっから屋敷までどんだけ距離あると思ってんだくそが。しかもまだレイヴェルの件もあるのにさあ。
「人の話は最後まで聞きましょうって親に教わんなかったのかなあ? せっかくあんなに立派なお父様にお母様だったのになあ?」
なんで俺がこんな悩まなきゃなんないんだよもう。俺はライザーと粘膜の擦り付け合いができたらそれでいいってのに何でみんなしてそれをさせないかなあ。快楽をくれ快楽を!
「うひゃひゃひゃひゃっ♪ 教えてやるぜ教えてやろう教えちゃうよん
てかさっきからうるさいんだけどこのロリコン。なんなの?
ライザーは苦労人。
一応言っておきますと、シリアスとかないです。