「ああ、そうだ。お前に聞きたいことがあったんだ」
椅子に腰掛けて頬杖をつきながらライザーは俺を見る。
そもそもさ、
くそう。主人公は今ずっこんばっこんしてんだろうなもう。ライザーもそれに感化されていいと思うんだけど。感化されて俺をやって気持ちよさに目覚めてこれから毎日俺と一緒にベッドに行けばいいのに。俺に触れろライザー!
「おい、話を聞け」
とんと指で額を小突かれる。え? ……え!? 今のは総督のあれだと!? いつの間に……! まさか総督が伝授したのか? それならついでに俺を犯すように言ってくれたらいいのに。聞いてないな? お仕置きだ! みたいな感じでぶっこんでくれたらいいのに。
「ほら、聞け」
またも小突かれる。く、くそう。総督の前でだけ気をつければ良かったのにこれからはライザーの前でも気をつけなければならないのか。ていうかどうやって判断してるんだこれ。自分で言うのもなんだけど俺本当に表情変わんないからね? 変えられないからね? 何をやっても無駄だったからね? ……おっと、あぶない。また考えがとんでた。
「……まったく。こんなことに気づかないなんて俺は何をしてたんだか」
ぼそりと呟くライザー。……? えーっと、今まで俺のことを犯してなかったことを言ってんのかな?
「ん? ああ、いやなんでもない。気にするな」
首をかしげるとライザーは目をつむって首を横に振った。一体なんなんだもう。犯すなら犯す、犯さないなら犯すではっきりしてほしい。こっちはいついかなる時でも準備万端だというのに。
ライザーは何度か目を手でもんだ後、本題に入るが、と続けた。
「まあ大した話じゃない。中級悪魔昇格の試験でも受けてみないかってことだ」
……そういえばそんなんあったな。ていうか今更? 俺悪魔になってから結構経ってる気がするんだけど……。なんか中級悪魔になる条件とかあんのかな。ていうか中級悪魔になるメリットってあるの? なったらライザーとセック●できるようになるの? 毎日俺は快楽に溺れた日々を暮らせるの? それなら喜んでなるんだけど。
そもそも上級悪魔がなんか下僕とか持てるってのは分かるんだけど、中級悪魔って何ができんのって話だよね。低級の今と一体何が変わるんだろうか。喋れるようになるとかじゃないだろうし、え、いやほんとなにできんの?
「元々推薦はされていたんだがな、お前が自分で判断できるようになるまで俺の方で断っていた。中級悪魔になるとどうしても多少の自立が求められるからな」
ふむ。つまり……なんだ? ライザーが断ってたから試験の話がなかったってことか。
「お前が悪魔となってから随分経つ。いい加減、中級悪魔試験程度の知識はあった方がいいだろう。昇格するにせよしないにせよな。今回の試験はイッセーも受けると言っていたし、せっかくの機会だから受けるだけ受けてみてはどうか、という話だ」
ふむ、ふむ。ふん。なるほど。……え? まさか勉強しなくちゃならないパターン? なんで? どういうこと? だって今までそんなこと必要なかったし、これからも必要ないんじゃないの? 俺に必要なのは過度の快楽とセック●くらいなものなのに。
どういうことだとライザーを見つめる。そんな俺を見て、ライザーはゆっくりと頷いた。
「そうか、受けるか」
なんでそういうことは伝わらないかなもう! 違うと首を横に振るも、ライザーは既に俺から目を離している。おいこっち見ろよ。とにかく勉強は嫌なのでライザーの肩を叩いてもう一度首を横に振って見せる。するとライザーはにっこり笑った。
「なんだ? 不安か? 安心しろ。暫くすることがないからな。俺が教えてやるよ」
……ま、まあそういうことなら……。うん。科目は保健の実技がいいな。体の仕組みとかそんな感じの。教室はベッドの上でみっちりねっとり教えてもらえるのか……。いいね。
頷くとライザーはまかせろと胸を張った。うん。リードはまかせた。俺をしっかり快楽へと導いてくれ。ライザーなら間違いなくできるから。抜け出すことすらできないように堕としてくれ。
ふふふ。いける、いけるぞ。これで俺は遂に処女喪失以来の性行●を経験することができる。この日をどれ程待ちわびていたか。この時をどれ程待ちわびていたか。なんかもう時間が経ちすぎて俺って実は処女なんじゃね? と思うほどになっていたけどそんな思いからついに解消されるのだ。ふははははっ!
……って、あれ? そういえば俺って不死身だけど処女膜って再生してんのかな。……もしそうなら俺は処女ということに……。……つまりライザーが処女大好きだったら俺大勝利? やったー!
「そうだ。そういえばリアスたちとサイラオーグ・バアルの戦いが明後日あるんだったか。俺は見に行くがお前はどうする?」
サイバン? よく分かんないけどレイヴェルなら問答無用で俺を引っ張って行くのにきちんと尋ねるライザーはさすがである。抱いて欲しい。それに関しては許可とかそんなんいらないから。無理矢理でも全然構わないから。
うーん。どうしようか。ぶっちゃけ興味ないんだけどライザーと一緒だしなあ。もしかしたら気分の高揚したライザーがその昂った体を持て余して俺を押し倒し強引にその息子を中に入れてくれるかもしれないしなあ。でも闘いとか興味ないんだよなあ。
「お前がついてくるなら、観戦ついでに一緒に冥界に戻ろうと思っている。まあ本音としてはついてきて欲しいんだがな。向こうの方が何かと都合もいいだろうしな」
うん。よし行こう。すぐ行こう。今すぐ行こう。とにかく行こう。こういう地道なところでライザーの好感度を上げてセック●という形で解放させるのだ。
頷いてライザーについて行くという意を示すと、ライザーはにっこり笑った。これは好感度上がってるに違いない。もうあれだね。セック●してもおかしくないね。
「よし。そうと決まれば手続きとかを終わらせないとな。お前と契約していた奴らの住所とかは分かるか?」
え? 手続きとかいんの?
★
手続きとか色々終わり、あとなんか主人公と誰かの戦いも終わったらしくて試験の勉強が忙しい今日この頃である。ライザーと冥界に戻ったあと、勉強頑張ってたらなんか無理して行かなくていいと言われたので行かなかったのだ。これでライザーも行かずに部屋であはんうふんできたら最高だったんだけど。
まあ現実はそんなに甘くないらしい。ライザーはそうかと言って行ったし。残念。そんなわけでその間試験の勉強をしていたのだ。ていうかレポートってなんだこれ。何書けばいいんだ。作文か? 作文なのか? 中級悪魔になったらライザーとエロいことしまくりたいって書けばいいのか?
そもそもなんだよ試験って。推薦されたらもう昇格でいいじゃん。何でわざわざ知識とか求めるの? 一番強い奴が王様みたいなことしてるんだから試験も力比べだけでいいだろ。
あー。めんどくさい。ていうか悪魔のくせになんで有名どころの半分以上が潰れてんだ。お前ら悪魔だろうが。欲望めっちゃあるはずだろうが。一日中盛っとけよ。そうじゃないから俺がライザーと盛れないんだろうが。仕事なんてエロいことでいいだろうが。もう。
あとさ、なんなのおっぱいドラゴンとかレヴィアたんって。どう考えても問題に出るようなことじゃないよね? なんで出そうな問題にこんなんまとめてんの? 正直ライザーの正気を疑うからね? まあ正気じゃないから理性が外れて俺を押し倒すならいいんだけどさ。
実戦試験に関してはライザーは問題ないって言ってるし、俺も問題はないと思うけどさ。そこだけは安心。でもレポート書けない。語句覚えられない。無理。できる気がしない。ていうか悪魔文字も正直不安だし、これはもうライザーの(オナ)ペットとして一生を終えるしかないね。
……あれ、待てよ? もしかして魔法試験的なのもあるのかな。悪魔って魔法のイメージ強いし、確か主人公も魔法使ってたはず……。え、え? まさか実戦試験すら俺は突破できん可能性もあるってこと? なにそれ。マジで困るんだけど。ライザーどうしよう。犯して。
遠距離の攻撃手段がないのもまずいかもしれない。試験が的当てだったりしたら詰む。そういうのって絶対引き寄せたら失格になるよね? 近づいても駄目だろうし。ヤバい。一斉に始めるなら他のやつ全員殺してからとかもできるけど、順番だったらそれもできない。くそう。どうしよう。セック●したい。あ、違う。違わないけど違う。
誰だよこんな試験考えた奴。もういいじゃん。下僕悪魔は皆主人の性奴●ってことでいいじゃん。それで主人は一日3回くらい下僕悪魔で性欲を発散させる義務とか作ればいいじゃん。そうしたら管理楽だし俺も幸せで万々歳じゃん。
やだなー。勉強やだなー。裏口合格とかないかなー。こっそりライザーが賄賂とか渡してくれてたりしないかなー。……割とマジでありそうなんだよね。ないとしても気にくわんやつを弾くぐらいはしそう。まあどうでもいいんだけど。
ていうか合格しなくていいんだっけ。ライザーはなんか記念受験とか言ってたような……。でもなんかいるって言ってたし、やっぱり合格しないとアレだしなあ。ああ、くそ、もう! というかまずレポートが書けない! レポートなんかポケモ●以外で書いたことねえのに書けるわけねえだろ!
作文くらいしか書いたことないのに。小論文もレポートもかいたことないのに。そもそも作文すらろくに書いたことねえよ。どうすりゃ良いんだ。
だいたい、中級悪魔になったらしたいことを今までの功績踏まえて書くとか言われたけど、俺って功績何があるの? ライザーへの性欲を我慢したとかそういうの? それなら確かに勲章ものだけどさ。そりゃあもう崇められるほどの出来事だけどさ。
あ、卵? いやそれは……うーん。卵、卵か。納得できるようなできないような。確かに卵は功績と言っても差し支えないけどこれ知ってるのライザーと総督ぐらいしかいない筈。まあ総督が話してたら別なんだけど、でも卵……は多分ちょっと違うよなあ。
だからってへびである筈がないし、
次だ次。遠距離攻撃。まあこれは石でも投げておこう。多分当たるだろうし。駄目そうなら試験監督するやつごとやれば問題はない筈。あ、でもライザーに迷惑かかるなら駄目だ。……じゃあ、まあその時は仕方ない。諦めよう。次がある。
最後に筆記。なんかもうこれテストしてる気分。帰ってるんだけど帰りたい。とりあえずカンニングペーパー作るのは確定として、それからまあ詰め込めるだけ詰め込むぐらいしかないよね。会場襲って延期にすることもできるけど、ライザーに怒られるだろうし。怒ってナニが起こるならやるんだけど。
勉強したくない。暗記とかめんどい。まあ覚えるだけな分、国語とかよりはマシなのかもしれないけど、それでもめんどい。ていうか覚えるのがなにより一番めんどいよね。何が覚えるには音読がいいだ。俺は声でねえんだよクソが。
ていうかライザーもさ、暇とか言ってたのに仕事してるしさ。俺の付きっ切りの家庭教師はどうした。保健体育の実技授業は何処にいった。保健体育じゃなくても正直一人だと何も分かんないんだけど。全部覚えるとか無理だから。
あー、もう。くそ。試験考えたやつ死ね。
★
中級悪魔昇格のための実技試験。それを行うためのフィールドにて、イッセーは対戦相手から目を離せないでいた。威圧感があるわけではない。殺気に溢れているわけでもない。むしろ、向こうはなんとも思ってすらいないのか、なんの気配も感じられない。
燃えるような橙色の髪、満月のような黄色い瞳。小さな体に不釣り合いなほど大きな胸を持った彼女は、いつも通りに無表情だった。
(ライザーにサイラオーグさんに続いて
彼女の姿を目にした瞬間から、イッセーはアザゼルたちの言っていた気楽にという言葉を完全に忘れた。全てを出し切ってなお勝てるか分からぬ強敵である。ライザーやサイラオーグに勝るとも劣らぬ実力者である。余裕など持てる筈もない。
(とにかくまずは
急ごしらえの、策とも呼べないようなものだったが、しかしどうしようもない。タイムラグはイッセーの大きな弱点の一つである。これまではどうにか凌いできたが、今度はそうはいくはずがない。
(絶対に勝つ!)
それでも、イッセーの気概は衰えない。勝たずしてどうするのだ。今まではタイムラグは凌いできた。だから今回も凌ぐ。それだけである。
「それでは、はじめてください!」
そして、試験開始の合図が響く。
「プロモーション、『
直後、イッセーは籠手を出現させ
「おっぱいさんおっぱいさん! 次の行動を教えてくださいな!」
高らかにイッセーが問いかけると、
『欠けた魂が形を為し、眠れし邪神を呼び覚ました後、世の理を崩し、我が誘惑を以て導かん、収縮の闇にて堕つ』
「……え? あの、ごめん。なんだって?」
おっぱいは思春期だった。イッセーは思わず聞き返す。イッセーとしてはこれはあまりにも予想外だった。
『えっ、えっと……』
尊大なことを言ったとは思えないほど普通に、おっぱいはイッセーの問いかけに反応する。そこにはもう、最初にあったはずの緊張感の欠片すらも残ってはいなかった。戦いの雰囲気すら存在しなかった。
(ていうかうわああああああああぁぁぁぁっ!!! なんでそんなキャラなんだよ! やめろ! なんかかゆい! かゆい!)
内心でイッセーは混乱する。それはイッセーもかつて通った道であった。軽度ではあった。重症じゃなかった。だがしっかりと感染しており、両親にほほえましく見せびらかしていたものである。既に通り過ぎた道だからこそ、昔の自分を見るようで、精神的に重くくる。卒業しているからこそ、そのころの恥ずかしさが耐えられない。ていうか普通に喋れそうじゃねえか。イッセーは内心つっこんだ。
『んっと、天より賜らざるを得、果てなる高み至りて理外へ赴き魅せよ、闇たる我がもたらすは凝縮の死のみ』
「ますます分かんねーよ! 普通に言えよ! ていうかさっきと台詞ちがうじゃねえか!」
イッセーの顔が羞恥に赤くなる。
『え、あ、うぅ……』
困ったような、なきそうな声を出すおっぱい。しかしこのとき、おっぱいの心情を測れるほどの余裕がイッセーにはない。イッセーは今、己の過去と戦っているのだ。向き合い、どうにかしようともがいているのだ。
おっぱいもまた、どうにか説明しようとがんばっていた。おっぱい基準でかっこよくありながら、それでいて分かりやすい言葉を考えていた。おっぱいもまた、己の心の内で戦っているのである。
『えと、んと、うううぅぅっ……もー!!
しかし語彙が尽きたのか気力が尽きたのか、おっぱいは戦いから逃げ出した。
「ならはじめからそう言えよ! って、プロモーション?」
イッセーは至極もっともなことを突っ込み――気づく。その直後、
「プロモーション」
イッセーは
――
触れるだけで死ぬほどのダメージを与えられるくせに、引力によって無理やり引き寄せられるというでたらめさ。まさしく星を相手にしているような強大な力。それがプロモーションによりさらにパワーアップしているのか。既に想像の及ぶ範囲ではない。
(これからが、本番だ)
イッセーは息を整える。ちょうど
イッセーの視線と
ぱきんっ。と軽い音が鳴った。
『あ、そ、そこまで!! 中止、中止してください!!』
「え、何が――」
その声を聞いてイッセーは
ならば、なぜ――。辺りを見渡して、この事態にも反応を見せない
(なるほど、俺の力と
そう結論付けて、ふとイッセーは思った。
(つまり、中止することが分かってたってことか? それこそが目的だったってことか?)
思わず、イッセーは
サイラオーグ戦を飛ばしたのは、原作でわりと好きなシーンだからです。
ちなみに主人公はレポートと筆記で落ちました。