……いやほんとすみません。忙しいんです。割とマジで。
「あら? 貴女確かこないだの……」
適当にぶらつきながら目に付いたポストにチラシを入れていると、なにやら聞き覚えのある声がした。見ると主人公の母親である。何か用だろうか。とりあえずご近所付き合いは大事なので一礼ぐらいはしておく。そこらへん適当にしてレイヴェルとかに告げ口されたら絶対怒られるとかじゃない。けっしてない。
というかレイヴェルはそういうことを気にしすぎなのである。いちいちそんなに気を張り詰めたら大変だし、そもそも俺はもういい大人なんだから子供みたいに叱らなくたってやらなきゃいけないことは分かるんだよ。やらないだけで。
だいたいやれ連絡を入れろだの、やれ元気にしてるかだのことあるごとに連絡を入れてくるし。お前は俺の母親か。そんなんなら仕送りとしてライザーを送れ。いろいろ大変なんだよ。
この間のへびを入れたときとかは特に大変だった。主に後片付けが。パンツは濡れて床もびしょびしょ、部屋の中は淫猥な匂いが充満していて、そのせいであとからまたむらむらしたのだ。ライザーがいれば終わっていただろう欲求不満は、日中自らを慰めてもなおとどまることを知らなかった。
慰めて欲情して慰めて、と暫くそんなループを続けて、なんども腰を抜かしながら、何度も自分を弄りながら、どうにか後片付けが終わったのである。めっちゃがんばった。ちなみに卵は結構増えた。全部へびに食べさせたけど。
しかし恐ろしい能力を持ったへびだ。正直もう使いたくない……。……いやでもやっぱりもったいないし少しくらい使っても別にいいような気はするけどね? うん。ほら、後片付けできたってことはどうにかなるってことだし、ライザーを求めるあの苦痛もまあそれはそれでいいし。うん。うん。
ていうかその間俺は悪魔の仕事を完全にサボり、召喚に全く応じなかったんだけど大丈夫だろうか。いやだってあんな発情状態で人前に出るわけにはいかないだろうし、行きたくないし。俺はライザーに操を立てているのだ。まあ風邪引いてたみたいなことで誤魔化しとけば大丈夫か。いけるいける。
まあそんなこんなでへびを突っ込んでから初めての外出である。その間ご飯とか食べずにずっと一人盛っていた。……あれ? 気のせいか性欲大きくなってね? ……いやいやいや。まさか。そんなん困るわ。
いや別に性欲を否定してるわけじゃなくて、ただでさえ持て余してるのにこれ以上性欲が大きくなったら俺はどうやってこれを制御すればいいんだというね。なに? ライザーでも襲えばいいの? うん。それが出来たら苦労しないしなあ。
一人遊びのバリエーションもそろそろ尽きてきた……っていうか大分前から尽きてるからね? 10年ずっと一人でエロいことばっかりしてたからそこの探求は大分突き進んでるからね?
そりゃあ新たな境地である後ろとかそこらへんを開発すればいいけどさ。でもそのせいで垂れ流しとか嫌じゃん? いやフェニックスだから大丈夫だけどさ、全然余裕だろうけど万が一もあるしさ。……でもやってみたいなあ。
……あとは母乳とか? ……出てきそうで怖いな。卵産んだんだし母乳出てきてもおかしくない気がする。え。どうしよう。どんなんなんだろうか。やっぱり勢いよく出したら気持ちよかったりするのかな? いやでもトイレとか出してて気持ちよくなることはないし……。いや開発してないからかもしれないし。
くそう。胸だけで達するのはもうできるんだよなあ。あー。でもトイレの度に気持ち良くなるのは嫌だなあ。抑えきれなくなったら怖いし、ていうかトイレくらい普通にしたい。ってことは迂闊に尿道とか弄れないなあ。
そんな風にうんうんと悩んでいると、がしっと腕を掴まれた。なに? どしたの? なんなの? なんか主人公のお母さんがなんか俺の腕掴んでんだけど。
「あら、いいの? ありがとうね」
え? まじでなに?
そうして連れてこられたのは主人公宅。カレーライスうめえ。なんか王様とかにめっちゃ見られてるけど無視である。やっぱ空腹時のご飯は美味しいね。というか主人公の家でかいな。そりゃあまあハーレムで暮らしてるんだからでかいだろうけど……。でかすぎじゃね? 日本ってこんなでかさにするのってめっちゃお金掛かるんじゃね? すげえな魔王家の資産。
しかしその割にご飯は普通だな。いや美味しいけど。食卓についているのは主人公の母親と王様とロリと巫女である。カレーライスうめえ。ていうかなんで俺連れてこられたんだろうね。
「イッセーが修学旅行でいないからかちょっとみんな沈んじゃっててね、知り合いの貴女がいれば少しは気がまぎれると思ったんだけど」
王様達に説明する主人公の母親。なるほど。いやでも面識あまりなくない? 正直吹っ飛ばしたことと挨拶ぐらいしか記憶にないんだけど。え? なに? サンドバッグになれってこと? いや反撃するけど。むしろ殺す。
ていうかそうか修学旅行か。もうそんな時期か。いいなあ。そういえば今世じゃ一回も行ってないわ。オードソックスに京都に行くんだろうか。で木刀買って大はしゃぎして、帰ってから後悔したり。商売文句につられて謎のアクセサリー買って、やっぱり帰ってから後悔したり。
いや主人公の事だから限定のエロゲとか買ってそうだ。俺も欲しい。身分証とか普段持ち歩かないからエロゲが買えないのである。というか馴染みのとこじゃないと弁当買うのすら警察に捕まりそうになるからね。
しかしエロゲか。そういえば俺って前世でエロゲとか持ってなかったなあ。高いし。……ちょっとやってみたいかもしれない。……主人公の部屋に置いてたりしないかな。エロゲ。まあパソコン持ってないんだけどね。
「あ、それじゃあ私ちょっと買い物に出かけてくるから、仲良くしておくのよ」
そしていつの間にか俺が食べ終わったカレーライスの皿が洗われていた。いやいつ食べ終わったっけ? ……まあ別に悪いことじゃないからいいんだけどさ。
ていうか俺この状況でどうすればいいんだか。仲良くしておけと言われてもそもそもそれ以前の関係だしなあ。仲良くなるには多分自己紹介から始めたほうがいいと思う。友達の友達レベルじゃん。間のクッションであるライザーを用意して俺の穴にインザホールしろよ。
そもそもライザーもライザーだ。俺一人こんなところ送って自分は一人悠々とハーレムにセクハラかましてんだろ。俺にもしろよ! 俺にもつっこめよ! 俺に手を出せばみんなみんな幸せだから。多分そうだから。
大体さ、十年放置ってどうなのよ。十年だよ十年。こんな時間あればたいていのことができるぞ? 割と物事を極められるぞ? 現に俺はオナニ●の経験値多分カンストしてるからね? それなのにセック●の経験が正常●と後背●ぐらいしかないってどうよ。四十八手を極めろよ! ていうか騎乗●ってわりと見かけるだろ! なんでしないのさ。手を出せよ! 犯せよ!
眷属含むフェニックスのセックス経験値って俺わりと古株なのにブービーだからね? レイヴェルの次が俺だからね? っていうかレイヴェルそもそも経験ないからね? つまりそういうことだよくそが!
他の眷属も持ってない神器とかあるのはいいけど、それでもそれを差し引いてなおふざけんなって数値だよね。あれだよ。『でもお前手出されないじゃん』であらゆる議論が無効になるからね? ほとんど処女みたいな奴が何言ってんの? みたいな。
何故だ! なにがおかしいんだ。顔か? 無表情なのが悪いのか? でもそれ俺のせいじゃねえし! 喘げないのもこれ俺のせいじゃねえし! ていうかそういうのは結構需要あるとこにはあるんだからライザーも一回はまってみればいいと思うんだ。そうすれば多分俺を押し倒すから。うん。
あれ? そういえばライザーって王様と結婚したらハーレムとのセック●はどうするつもりだったんだろう? 多分お気に入りだから結構呼ばれるよね。それで他のハーレムメンバーの頻度が下がって、そしてもともとない俺は余計に呼ばれなくなる、と。
あ、あっぶねえ! よくやった主人公! お前のおかげで俺の貞操が汚される可能性が維持された! たまにはいいことするね!
いや、見直したわ。すげえわ主人公。主人公なだけあるね。……そういえば主人公って名前なんだっけ? 田中? ……まあ名前とかはどうでもいいや。
てかなんか妙に王様達静かだな。なんか喋れよ。こいつらもうちょっと賑やかじゃなかったっけ? 覚えてないけど。なんかため息吐いてるし俯いてるし、なんなのこれ。もしかしてこいつらこれが通常運転とか? なにそれ怖い。
「イッセー……」
……あー。そういえばそんな名前だったな主人公。そっかイッセーっていうのか。へー。意外だな。日本人かと思ってたけどこれはハーフかなんかかな? そっかそっか。ハーフの主人公ってなんか珍しいな。
というかなんで王様は急に主人公の名前呟いてんの? 俺の疑問に答えるため? なにそれ俺の心読んでんの? 嘘つけそれならライザーとセック●できるようにどうにかしろや! ライザーは俺を見て王様を見なくなるからwin-winじゃねえか!
どうせお前ら主人公とすっぽりヤッてんだろ。いいじゃん少しくらい俺に幸せを分けろよ。俺に快楽を分けろよ。セック●させろよ!
そんな俺の想いが届いたのか、王様が紅い光に包まれる。そう、この術式は……いや知らんけど。多分えーっと、あれかな。契約行使するための転移魔法陣に似て……。
――あの野郎、逃げやがった!
★
リアス・グレモリーが紅い光と共に現れたとき、曹操は確かに警戒していた。なんせ相手はいくら弱くとも赤龍帝。余裕はあるが、最強の神滅具を持っていたとしても所詮は人間、一撃でもまともにくらえばお終いである。
加えて消滅の魔力を操るリアスまで来たのだ。警戒するのは当然とも言えた。
だからこそ曹操は自らの聖槍をしっかりと握りなおし――
ふと、奇妙な違和感を感じた。
槍の握り自体は問題ない。ただ、漠然とではなくはっきりと、しかし絶対的にありえないとも言える違和感。
(
その重心が、その重みが。明らかに、自覚してしまえばはっきりと、何故気づかなかったか分からないほどに変わっている。
(どういうことだ? 俺はまだ
警戒してるがために、曹操はイッセーから視線を切れない。一瞬だけでも違和感を解消しようと槍に目を向ければ、その一瞬で勝負が決まることすらありえる。考えにくいが、イッセーがつくった罠という可能性も――
(いや、まて。リアス・グレモリーが兵藤一誠に伝えず行った罠ならありえる……か?)
どうやってやったかはともかく、槍の形を変えたことは分かる。相当な力が必要であるが、不可能ではないのかもしれない。そもそも、オーフィスならば苦もなくやってみせるだろう。
(つまり、この際何がどうなったかは気にしない。俺がするべきは反応しないこと、あるいはあえて罠にかかること。隙をわざと作るの隙ができるのとでは、天地の差だからな。……さて、どちらを選ぶべきか)
隙なく構えながら、隙なくイッセーたちを睨みつけながら、曹操は僅かに考えを巡らせる。そして
(ここはあえて乗るべきだな。罠を張り、策を巡らすのは本来人間の役目だが、怪物が張る罠を破るのは英雄だ。そして隙のない状態でできた隙は実に見つけやすい。間違いなく兵藤一誠は反応する。そこを狙おう)
そして、曹操は悠然と、そして自然と自らの聖槍に目を落とし――。
絶句した。完全な、罠でもなんでもない致命的な隙を晒した。頭が真っ白になり、唖然とし、呆然とし。一瞬どころではない。数秒、あるいは数十秒。その間攻撃されていれば、確実に曹操は死んでいた。それほどに明らかな、最大の好機。
しかし、誰一人として曹操の隙をつかない。みな同様にまるで何も考えられないかのように固まっている。イッセーも、リアスも。アーシアだけは不思議そうに小首を傾げているが。
とはいえその反応も当然と言える。その形状は、曹操の予想をはるかに超えていた。想定していた形状の、遥か斜め下を突っ切っていた。
誰が思うだろう。かの聖人を貫き、その聖なる血で祝福されたとされる
――チン●を象ったディル●になっているなどと。
今にも動き出しそうなほど、血管の一本からカリ●まで再現された奇跡の一品。動いてないはずなのに、まるで脈打っているようで、気のせいか暖かさすら感じる。
(…………は? え?)
この時の曹操の心情は筆舌に尽くしがたい。近い言葉で言えば『何が起きたか分からない』であるが、当然それだけでなく、様々な想いが入り乱れていた。
ぐるぐると回る思考。それに終止符を打ったのはアーシアだった。
「どうしたんですかイッセーさん!?」
アーシアの言葉に、全員が我に帰る。一人遠くにいたから見えなかったのか、それとも形を知らなかったのか。ただ一人彼女だけは正気だった。彼女の言葉が、全員の意識を戦場へと巻き戻した。
(危なかった……! 今攻撃されたら死んでいた。しかしされなかったところを見ると、これは意図したものではない?)
曹操は再度
(形状が変わっているだけで性能は変わっていないな。恐らくだが何らかの能力で
「問題ない」
外側を抑えつけたところで最強の神滅具であることに変わりはない。例えばその聖なるオーラは欠片も衰えてない。ならば、聖槍の力によって形を押さえつけている何かを吹き飛ばすことも可能なはずだ。
「誰がやったかは知らないが小賢しい真似をする――」
曹操が力を込めると、その意思を聖槍は汲み取り――
ヴィイイイイイイィィィン。ヴィィィ。ヴィィィン。
なんか震えだした。くねくねと曲がるその様は、形と相まってどう見ても
「……な、なるほど。これじゃあダメなわけだ。ならばっ!」
続けて曹操は更に力を込める――。
グッポンッ。グッポッ。グポンッ。
グラインドしはじめた。一体これのどこが聖槍なのだろうか。ただのオナニーグッ●である。
「これでもだめなのか!? ……ならば仕方ない。ああ仕方ない。プライドもなにもかも傷つくが、これが聖槍なことに変わりはないんだ」
曹操は間合いをはかるために槍を振るう。そう、いくら形は変われどそれは聖槍。悪魔にとって致命的なダメージを与えるものに違いはない。
しかし。
「攻撃……攻撃、か」
曹操が槍で地面を叩くと、槍はぶよんと弾力よく跳ね返る。力強く叩いてようやく小さな穴が掘れるくらいで、どうみても攻撃というものではない。
(……ここで
曹操は槍を構え、その先端をイッセーに向ける。
「これはどうかな?」
そう、光での攻撃。これならば形状も、そして弾力も関係ない――
どぴゅるるるるるるるっ!!! どぴゅっ!
はずだった。槍の先端から勢いよく飛び出したのは、どうみてもケフィ●。無駄に生暖かい上に、異様なほどに聖なるオーラを放っている。
「使えない、こともないが正直使いたくはないな……」
そう。かつて聖槍が出していた光と全く同じどころかそれ以上の光力を宿し、なかなか消えないお陰で継続ダメージとトラップを期待できるというお得仕様。射程距離を失ったのは痛いが、それでも中々のものだった。……見た目さえ気にしなければ。
(どうする? 流石にこれでは苦戦するどころか敗北すらあり得る。とはいえここまできてグレートレッドを見ないのはもったいない。俺がすべきは――)
ふと、そこで曹操の視界にイッセーが映る。何をしているのか見ると――
「部長、とりあえずおっぱいを押させてください」
「え、ええ、まあ、いいけれど……」
なにかしていた。イッセーがリアスの胸を押すと、ぃやんの喘ぎ声と共に
そこで曹操は、ふと懐かしい感触に気がついた。手の中を見ると、それはしっかりとした槍の形の
(リアス・グレモリーが帰還したと同時に俺の槍が戻ったということは、つまりリアス・グレモリーを媒介として、あるいはリアス・グレモリー自信が槍に何かをしていたということか?)
ならば、つまり。曹操は思う。
(リアス・グレモリーの登場は兵藤一誠のパワーアップを促進させると同時に、俺をおちょくることが目的だった?)
この時の曹操はいろいろ疲れていた。いつもならばこの程度の思考で止まることなどありえないだろう。聖槍を封じる実験ともとれるし、曹操をはかっていたとも、何とでも考えられる。だが、曹操は疲れていた。
(そうか、そういうことか)
「そういうことか。兵藤一誠」
殺気立つ曹操。槍は輝きを増し、その目は力に溢れている。曹操の想いは八つ当たりであり、ストレス発散であり、そして的外れであるが、この時、彼にとってこれこそが全てであった。
ムカつくから殺す。
英雄らしくなく、人間らしいその感情で戦う彼の攻撃は、実に苛烈だったという。
★
ぺし。そんな音を立てて何かが頭に落ちてきた。みてみるとへびである。何でお前上にいんの? 天井にでも張り付いてたのか?
ってあれ? 王様帰ってきてたんだ。いつのまに。
正直曹操さんはかっこいい予定でした。
……うん。うん。