一話
気がついたら転生していた。神様に会った覚えもなければ、死んだ覚えすらないままに俺は赤ん坊になっていたのである。もちろん、なんかテンプレな知識多すぎによる知恵熱が出た。その結果、なんか声が出なくなり、ついでに表情も変わらなくなった。なんか熱で脳の変なとこがやられたらしい。つまりあれである。よくある勘違いものへの布石というやつだ。
なんとか筆談でもと思って紙やら持ち歩いてたんだが、なんというか面倒くさい。一言ですむことに何秒もかかるのである。分かる人には分かるだろう。話すことに比べて書くことの労力は大きいのである。よって俺はコミュニケーションを諦めた。
ボディランゲージ? 恥ずかしいからパス。
さて、そんな無口無表情という属性を取得した俺は、例に漏れずロリでもあった。巨乳だけど。前世は俺という一人称の通り男であったので、性転換していることになる。このときの俺の驚きは物凄かったのだが、あいにく声にも表情にもでないのでどうしようもない。しばらく鏡を見続けたり、びったんびったん鏡を叩いたくらいである。その姿は、容姿も合わさって大変可愛らしかった。俺が転生して初めて萌えたのが俺自身である。ナルシストではない。
そんな属性過多な萌えの塊こと、スーパーロリータな俺は、ある日、何ぞやの儀式の生贄として攫われた。確か悪魔を呼び出そうとしているとかなんとか。しかし悪魔は用意した魔法陣から現れず、俺がお昼ごろに商店街で貰ったチラシから現れた。なんでやねん。しかも、その悪魔は大層なイケメンであった。
チラシから悪魔ってハイスクールD×Dの世界ですねありがとうございます。
しかも俺が召喚した悪魔はライザー・フェニックスという作中ではかませの役割をもつ焼き鳥である。いや、お前上級悪魔だろ。なに下級悪魔の真似事してんだよ、と突っ込みたかったが、俺は声が出せないので突っ込めなかった。
「ふむ。気まぐれで来てみれば中々に悪くない容姿だ」
儀式をしていた奴らは大喜びで俺を差し出した。まあ生贄なんだから当然だよね。そして奴は俺を食ったのである。性的な意味で。
さて、性的に食われる前、俺はもし焼き鳥の眷属になったのならどうにか逃げ出そうとか思っていた。なんたって俺は元々男であり、ハーレムは作りたい側、加わりたいなんてあるはずもない。
しかし。しかしである。奴はものすごく上手かった(性的な意味で)。俺がまだ少女と呼べる年齢なのにも関わらず、見事に俺の性感を引き出したのである。つまりめっちゃ気持ちよかった。何度でも味わいたいと思ったし、そのために眷属になることも全然抵抗がなくなったのである。
お●んぽなんかに負けない! → お●んぽには勝てなかったよ……。
というわけである。僅か2コマの出来事であった。
ありがたいことに、ライザーは俺を兵士として眷属にしてくれた。なんでも、俺が快楽に屈しなかったのが悔しいとか。いや、めっちゃ屈してましたけど。声帯は失われてない分呻き声っぽいものなら出るからそこらへんだろうか。
あとなんか俺に神器があるんだからだとか。
まあこれで快楽尽くしの爛れた生活が送れるやったー!
★
そう思っていたころが俺にもありました。ライザーは全然俺を相手にしてくれません。放置プレイでありんす。いや本当に困る。何のために俺は眷属になったんだ。快楽のために決まってるだろうが! その快楽が得られないなんて、一体俺はどうしたらいいんだ。
え? 自分から誘いにいけ?
出来るわけねえだろ。なんかこう、向こうが襲ってきたのなら、ほら向こうのほうが立場が上だし従わないわけにはいかないから幾らでも出来るんだけど、こっちから誘うのはなんていうか俺の男としての矜恃に関わるというかなんというか恥ずかしいし。
……やべえ。どんどん俺のエロゲヒロイン化が進んでいる気がする。しかも陵辱もの。
っていうかライザー! お前俺が快楽に屈しないからとか言っておいて手を出さないとか何事だよ! せめて週一、できれば3日に一回、理想は毎日来いや! 頑張れよ! こう、ほら。あるじゃん。『俺の技術はこんだけレベルアップしたんだぜげへへへへ』とか、『毎日調教して感じやすくしてやるぜぐふふふふ』とかさ。
それがどうして俺に手を出さないということになるんだ。お前のせいで自分じゃどうしようもねえんだよ。どうしろっていうんだ。万年発情期だぞこのやろう。欲求不満でいろいろやばいんだぞ。
最近ちょっと欲求不満すぎてライザーの近くにいるだけで泣きそうになる。ある意味調教済みだ。違う方向の調教済みがいいのに。むしろずっと調教してくれて構わない。けれど奴はしてくれない。くそう。
そんなこんなで俺の欲求不満な日々は過ぎ去り、いつの間にかライザーは成人した。
そしてやる気の起こらないレーティングゲームをして、なんとか勝利。そして俺は見た。ライザーがレーティングゲームで一番活躍した女王を連れ、部屋に入っていくのを。中から漏れる声は間違いない。こいつら突き合ってやがる。
つまりである。レーティングゲームで超活躍→よくやった、ご褒美をやろう。というわけだ。
そんなわけで俺は来る日も来る日も鍛え続けた。魔力はあんまりないので近接戦闘ぐらいしかできないけど頑張った。範囲攻撃持ってる女王の成績とかどうやって超えるんだよとか思ったけど頑張った。意外と神器が役立ってくれた。いらない子とか思っててごめんね。超必要です。
まあそんな感じに頑張った結果、ついに俺はMVP へと輝いた。そのときのライザーの言葉がこちら。
「よくやったじゃねぇか」
そしてぐしゃぐしゃと俺の頭を撫で、終わりである。ご褒美がない。そして部屋に連れ込まれる別の兵士。中から聴こえる喘ぎ声。
えっ? なに? いじめ? 俺だけ仲間外れにしようとかやってんの? お前の席ねーから! ってこと?
えー。いや、えー。ない、ない。ありえん。ありえない。ってか、なんなの? 俺の努力はなんなの? 痛いの我慢して怖いの我慢して、耐えた先に快楽があると信じてがんばった俺のこの努力はなんなの?
泣きそうになった。けれど涙はでない。そんな機能は俺にはないのだ。なんだ、なんなんだ。期待させるだけさせといて、あげるだけあげやがって。ふざけるなよ。お前が俺に刻んだ快楽がどれほど俺を蝕んでるか分かってないだろう。ライザー。俺はお前に何年も抱かれていないが、それでもなお俺の躰はお前を覚えているんだよ。何をやっても物足りないんだ。お願い、お願いだから助けてくれ。
とか俺から見ればシリアスっぽい空気をかもしてみたりもした。そのときは本当にそんな気持ちだったが、しかし表情は変わらない。傍から見ればいつも通りの俺である。涙も出なければ汗もかきずらく、顔色もあまり変わらない。ちなみに声とか表情はフェニックスの涙を使っても治らなかったので、正直どうすればいいか手詰まりである。まあ、諦めはしないのだけれど。
★
そんなこんなで年月が過ぎ、ライザー率いる俺たちはレーティングゲームで多くの経験をし、また多くの勝ち星を上げたころ、なにやらライザーが人間界へと跳んでいった。ちなみに俺は未だ手を出されていない。そろそろライザーを殴りたくなってくるお年頃である。そういえばレーティングゲームで勝ち星が重なっていることで、我らが女王は確か爆撃女王? だとか呼ばれはじめた。俺もなんかあったけど忘れた。そんなものより快楽がほしいのである。
エロいことしたーい、とか思いながらゴロゴロしていたところ、なにやらライザーから呼ばれたので跳んで行った。もしや犯してもらえるのだろうか、だなんて淡い期待をいだいていたのだが、跳んだ先にはなにやら見覚えのあるイケメンと美女と美少女と変態がいた。というかオカルト研究部、主人公たちであった。いつのまにやら原作がはじまっていたらしい。俺が転生してから今日まであっという間の出来事のような気がするが、実は全然そんなことはなく、どころかムラムラしすぎで過ぎ去る日々は早いのに今という一瞬は長いぜ、って感じだった。
まあとにかく、これで原作がはじまるのだろう。心底どうでもいい。おれはただ今ライザーとユーベルーナがやっているようなディープなキスからその先までをしたいのである。シたいのである。
なんてことを考えてたらお話は終わっていたらしい。十日後に主人公勢とレーティングゲームをするのだとか。どうだったけ、これ確か勝ったんだっけ。まあいいか。どうでも。
俺はいつも通り。ご褒美に無駄な期待を持ちながら、全力を尽くすだけである。
★
「部長。あのライザー・フェニックスとかいう奴ってどんな能力なんですか?」
イッセーがライザー・フェニックスに喧嘩を売り、十日の猶予を与えられたその猶予期間。修行の合間に、彼はリアスに尋ねた。
「ライザー? そうね、イッセー。まず、フェニックスを知ってるかしら?」
「フェニックスですか。そりゃあ知ってますよ。不死身の鳥ですよね」
「そのとおり。あとは火の鳥なんて呼ばれたりもするわね」
へえ、とイッセーはつぶやく。その後、二、三度瞬きをして、驚いたようにリアスの方を向いた。
「え、ってことはアイツも……!」
「そう。あなたの思っているとおりよ。イッセー。ライザー・フェニックスは不死身なの」
「不死身……」
さらにね、とリアスは続ける。
「ライザーには優秀な眷属も多いわ。たとえば
「は、はあ。すごそうですね」
「だからね、イッセー」
リアスはイッセーにウィンクして、茶目っ気たっぷりに微笑んだ。
「相手にとって不足なし、でしょう?」
★
やってきましたレーティングゲーム当日。本日相手しますのはなんと初心者も初心者、どころかレーティングゲーム初経験とかいうやつなので、残念ながら俺は待機を命じられているのだった。まあ確かに必要ないとは思うけどこれじゃあ俺がMVPとれないんだけど。ご褒美もらえないんだけど。いや、でも。主人公なら、主人公ならやってくれる……! 正直6対16で、しかも16側のが経験豊富とか馬鹿じゃねえのってかんじなんだが。あれだね。俺が現魔王と一騎打ちするくらいに馬鹿じゃねえのって感じだ。正直こんな待機するくらいなら部屋に引き込もって物足りなく思いながら一人さびしく自分を慰めていたい。バイ●をよこせ。ちょっとイッてくるから。
『ライザー様の
雷鳴とともに聞こえるアナウンス。どうやら向こうも完全に無抵抗というわけではないらしい。ふむ。俺の出番か。俺のMVPチャンスだな。さあ行くぜ今いくぜ。ひゃっほいと立ち上がる。6対12、数の利はこちらにあるが、向こうが一人も脱落していない今、俺が行くべきである。女王は間違ってもやられないようにしなければならない(建前)からユーベルーナには行かせんぞ。俺がMVPをとる。
「体育館に行け。そこから奴らを追えばいい」
その言葉に頷く。ふっははっはははは。ここからは俺の独壇場である。翼を広げ、体育館へと飛んでいく。これでMVPはもらったようなものだ。ご褒美は6を英語にして妙に発音よくした感じの●ックスでおねがいします。贅沢は言わない。1回だけでいいから。もう何年も待ってるから。ああ欲求不満不満。
『ライザー様の
行き道途中で聞こえたアナウンスにため息をつこうとしたが出なかった。いや、俺のMVPの為にやられるのはありがたいんだけどさ、おまえらやる気あんの? という感じである。初心者相手にこれじゃ後でライザーに怒られるんじゃね? ざまあ。俺はその横でご褒美もらってるから。ふはは。
そんな感じでふよふよ浮いていると、剣持ったイケメンとロリと変態と巫女さんを発見した。これはラッキー。幸運である。きっと日頃の行いがいいから神が俺にご褒美をくれたのだろう。ありがとう神様。だが死ね。
とりあえず向こうに気づかれたようなので適当にロリを神器で引き寄せて殴る。ちなみに俺の神器は
『リアス様の
お、よかった。一撃でつぶせたみたい。俺ってば超すげえ。これがアレだね。きっとライザーはご褒美として俺に手を出すに違いないね。ふはは。さすが俺。ぱねえ。
自画自賛してると剣持ったイケメンが突進してきた。あと巫女さんが雷だしてる。ふむん。甘い甘い。雷は根性で耐え、イケメンは左手を切り取らせてその隙に右拳を叩き込む。ついでタイミングを見計らって巫女を引き寄せ、ちょうどさっき殴って吹き飛ばしたイケメンとぶつかるようにする。最後に地面に刺さってた剣を二人に突き立てれば完成である。
『リアス様の
これで俺は敵陣営の半分を倒したことになるわけで。いやあ。まじこれ絶対ご褒美もらえるよねやったー。引力で切られた左腕を結合面にあわせて引っ付けておく。割と治癒力高いからほっとけば治るのだ。俺超有能。さて残りの変態もやっちまおうぜ、と目を向けると増えていた。赤い髪の美女と金髪の美少女である。ってか王様きてんじゃねえか。やったぜ。
怒った様子の王様がなんかヤバげな魔力を放出してきたので、金髪を引き寄せて盾にする。どうやら細かな制御は苦手らしく、魔力は金髪に直撃した。
『リアス様の
わーい。後二人だわーい。半分近くまで眷属を減らされてからの大逆転である。これはもう犯すしかない。いつでも準備OK、バッチリカモンである。野外でも構わない。ヘイカモン!
とか思ってたら本当にライザーがやって来た。なんか一騎打ちとかどうとか言っている。ここでまさかの逆転負けの可能性浮上である。まじ困った。でもライザーの機嫌損ねて捨てられたらもうあの快楽を味わえなくなるとかいう困ったちゃんになるのだ。それは困る。だから邪魔する訳にはいかない。
しかし一騎打ちってことは俺もういらない雰囲気ですね分かります。ってことで脱落することにした。だって暇になるだろうし。あとの時間は部屋でナニっとくのである。そして準備万端にしてからライザー(のもの)を待つ。完璧だ。
変態がライザーに突進していくのを引力を使って俺側へ進路を変更させる。簡単に言えば殴られて、気絶したふりして脱落しようぜ大作戦とかいうあれである。へいかもん変態。お前に討伐数を与えてやるよ。
『Boost!』
……あれ? なんか威力高くね?
『ライザー様の
★
小さな体が宙を舞う。先ほどまでリアスたち相手に大立ち回りし、イッセーとリアス以外を倒したとは思えないほど、呆気ない脱落だった。
最後の、イッセーの攻撃だってそうだ。相当な威力が込められていただろう、何度も倍加されたその一撃は、当たってしまえばもしかするとライザーを気絶させたかもしれないほどであった。それをなんの躊躇もなく、イッセーが思わず拳を止めなければ死んでいただろうにも関わらず、彼女は自らを盾とした。
まさしくそれは下僕の鏡。
初期以外のレーティングゲームにおいて、彼女はほぼ例外なくそのような行為を行っていた。自らを顧みず、ただライザーのためだけに、ライザーに勝利を捧げ、栄光を与えた。勝利を掴めずとも、栄光を得られずとも、彼女はその在り方を他の悪魔に、その下僕たちに見せ続けた。
彼女の忠誠心の高さ、その躊躇のなさ、その精密性の高さ。他様々な要因を加え、その能力を、その在り方を評し、悪魔達は揶揄と賞賛を込めて、彼女を
……それらのほとんどが誤解であるなどと、誰一人として気がつかないまま。
★
ご褒美はもらえなかった。変態の攻撃があんなに威力あるものだとは思わず、目が覚めたときにはライザーが引きこもってた。二日くらい寝てたらしい。そしてライザーはなんかドラゴン恐怖症になったのだとか。お前になにがあったんだ。あとなんか向こうの王様との婚約が解消されたのだとか。いや、そもそも婚約していたことすら知らねぇよ。
しかし困った。引きこもられては性交渉ができない。まあどうせ今回もしてくれないんだろうなという気持ちはあったが、でもやっぱ少し期待もしていたわけで、なんというか俺の性欲からのクレームが酷いのである。仕方ないから一人で致すのだけれど、自分じゃあチン●ないしなあ。なんというか道具だと微妙に物足りないのだ。もどかしいのである。
というわけでどうにかライザーを引きずり出して性行為しようぜ計画がスタートしたのだった。
俺だけの(Hな)戦いはこれからだ!
ライザー「無口無表情の娘をアヘアヘさせてやるぜ」
レイヴェル「なにそれダッチワイフ?」
ライザー「」
全ての原因はレイヴェル。