学園黙示録:Cub of the Wolfpack   作:i-pod男

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長らくお待たせいたしました。5ヶ月も放置してしまって誠に申し訳ない。
今学期はおろかまさか冬休みまでここまで忙しくなるとはおもわず・・・・・
ともかく、生存報告を兼ねて2016年最後の投稿です。

こうした突発的な長期にわたる不定期更新が度々あるかもしれませんが、これからも皆様何卒よろしくお願い申し上げます。


Three’s a party

しかし田島は銃を下ろすどころか引き金にかけた指の力を強めた。

 

「教官の知り合いがBOWってどう言う事だ?お前の教官、何者だよ?」

 

「ちょっと・・・・!」

 

「彼女を責めちゃ駄目だよ。」

 

竜次は銃を向ける田島を見据えながらも笑みを崩さなかった。

 

「第一その事は誰にも教えていなかった。後、俺をあんな気色悪い、生き物と呼ぶのも烏滸がましいゴミと一緒くたにするなんて心外だな。まあ、確かに俺は余程のダメージを受けなきゃそうそう簡単には死なないけど。」

 

照準をピタリと竜次の顔辺りに合わせて田島はさらに訪ねた。

 

「彼女は無いと言ってたが、敢えて聞こう。お前はこの世界規模のTウィルスアウトブレイクに一枚噛んでいるのか?首謀者は誰だ?」

 

竜次は肩を竦めて首を横に何度か振った。

 

「原因なんて分かってたらWHOやBSAAにでも教えてるさ。首謀者も知ってたらソイツを見つけ出して血祭りに上げてるよ。それに、そんな事言われる筋合い無いよ?劣化版Tウィルスが原因だって情報を匿名でBSAAの支部に流したの、俺なんだから。」

 

その証明とばかりに竜次はその情報が流れてきた日にちと情報を

 

「俺は別に敵じゃないよ。まあ味方でもないんだけどさ。」

 

戦いを仕掛けて来なければの話だけど、と心の中で付け加える。

 

「分かったら銃下ろして。こう見えても銃弾避けるのなんて結構簡単に出来るんだよ?」

 

「田島、ここは私の顔を立てて頂戴。確かに彼の言う通り、彼は敵じゃない。」

 

完全に得心が言った訳ではなかったが、グズグズしているとまた感染者が逃げ場が無くなる位に群がって来る。トリガーから指を外し、銃口を地面に向けた。

 

「竜次、だっけ?私は静香と他の生存者がもしいればその人達も海自の戦艦に連れて行く為にここに来たんだけど。」

 

「あ〜、なるほど。たった二人で何しに来たのかと思ったよ。分かった。そう言う事なら途中までは案内する。」

 

「途中まで?」

 

「俺がいるセーフハウスの位置が他所に漏れる可能性が万に一つであっても防がなきゃならないから、途中どこかで待ってもらう。リカは師匠に恩があるから不利になる様な情報を漏らしたりはしないと一応は信頼しているけど、そこの田島って人はちょっとね。」

 

銃を下ろしはしたものの、まだ何か仕掛けて来るのではないかと言う彼の疑いの眼差しはまだ消えてはいない。ありもしない罠の存在を疑い、勝手に動かれては困るのだ。

 

「条件は、それだけ?」

 

「うん、そうだよ。それだけ。CIAのブラックサイトが秘匿されてる理由と同じ。オペレーションズ・セキュリティーって奴だよ。そこら辺は理解してもらいたい。まあ、こっちに向かって発砲するなってのは言わずもがなだけど。どうする?」

 

リカは何の躊躇いも無く頷いた。

 

「分かったわ。その条件、呑んであげる。田島にも手は出させない。約束する。」

 

「んじゃ行こうか。ついて来て。」

 

「ちょっと待て、徒歩で行くつもりか?」

 

「橋を越えるまでは。そこそこ廃車や瓦礫はどけたけど、両端には車が通れる程の隙間なんて無い。そもそも、俺徒歩でここまで来たんだし。走るよ。」

 

 

 

 

 

 

「銃を扱う時の四つの約束は?」

 

「確認しない限り弾が入ってると考える。撃たない時は銃口を変な所に向けない。当てる物をしっかり狙うまでトリガーから指を外す。それと、当てる物とその後ろにある物にも注意する。」

 

「よし。弾を込めて。」

 

地下室で幅一メートル、奥行き五メートル程の区画を使って作られた簡易的な射撃場にてありすはルポに射撃の訓練の最終段階に入っていた。言われるがまま注意深くゆっくりと、しかし確実に弾を込めて銃に装填し、初弾を薬室に送り込んだ。使っている銃はドイツ製の小型拳銃ワルサーPPKだ。ありすの小さな手一つだけでも握り込めて、尚且つ銃の重さに振り回されない手頃な重さと大きさなのだ。最初はP230を使おうと思ったが、竜次に突き付けられた曰く付きの物だ。あると分かっている地雷をワザワザ踏みに行く必要も無いだろう。

 

ヘッドホン型の耳栓とゴーグルをつけたありすは片目をつぶり、狙いをつけて引き金を引いた。サイレンサーで抑えられた破裂音と共にワルサーの銃口が火を噴く。的にしている人間の頭程はある切り抜かれたダンボールは無傷で、その数センチ左上に細く微かに煙を上げる小さな穴が開通していた。

 

「当たらなかった・・・・・」

 

「惜しかったな。」

 

ルポは指先でありすの頭を撫でながら励ます。しかし内心では驚いていた。ショットガンやフルオート射撃が可能な銃が面で制圧する物ならば、拳銃は点を突く銃だ。五メートルしか離れていなくとも初心者は外す事は珍しくない。

 

高が五メートルとは言え、小学生が一発目で僅か数センチしか外さなかったのは見事としか言えない。照準を合わせるのに大して時間も喰っていない。空の銃で一連の動作や構えを維持する訓練をさせたのも大きかっただろう。ヘッドショットは出来なくとも、膝や足などを撃って敵の足止めならしっかり出来る筈だ。

 

「ほら、もう一度だ。今度はもう少し下を狙ってみると良い。撃った時の反動は両腕全体で吸収するんだ。それと、最後までしっかりと的を見る事。怖いのは分かるが、目を閉じたら余計に怖くなる。頑張って。」

 

「うん・・・・」

 

ありすは再び銃を構えて更に三発、立て続けに撃った。

 

「あ・・・・当たっ、た?」

 

ダンボールの的には口元、そしてぎりぎり額にそれぞれ小さな穴が開通していた。三発中二発命中である。

 

「ああ。全部当たっている。良くやった。」

 

「やったぁ〜!!」

 

やったやったと小躍りするありすを見て、ルポは大きく破顔したが、すぐにそれは霧散した。少し練習すれば的に当てる事などどうと言う事は無い。彼女はこれから動く的に、自分を生ける屍に千と襲いかかって来る感染者にこれをせねばならない。その点では不安はまだ残った。

 

残りの弾を全て撃ち終わった所でルポはありすと視線を合わせる為に腰を落とし、彼女の両肩に手を置いた。

 

「ありす。分かっていると思うが、これからそう遠くない先でこれをありすを襲った奴らに向けてこれを撃たなければならない時が必ず来る。何があっても出来るか?良く考えてから正直に答えて欲しい。」

 

沈黙は数分程続いた。その間ありすの視線は先程撃った的と銃をゆっくりと交互に何度も行き来していたが、それもやがて止まり、ルポの目を捉えた。

 

「うん。ママと一杯練習したから大丈夫だと、思う・・・・」

 

ウルフパックとの邂逅当時こそ伏し目がちだったが、今のありすは以前より堂々としていた。そんな彼女を見て、ルポは彼女を抱き寄せ、痛いと文句を言われても懲りずに彼女を力一杯抱き締めた。この時、さり気なくありずの肩や二の腕に軽く触れていたルポは満足気に笑った。皆の仕事をあれこれ手伝う以外にも体力、筋力を付ける為のトレーニングもやっていた為、体が引き締まって来ている。きっと強く育ってくれるだろう。

 

 

 

竜次を先頭に、三人は床主大橋を目指して感染者の間を縫いながら走り始めた。戦闘を避けられる所は避けていたが、血路は竜次が殆ど一人でその腕力に物を言わせて開いている。

「なあ、おい!どこかで車を拾った方が良いんじゃねえか?流石に徒歩で行くのは無理が有り過ぎると思うんだが!」

 

「何?もうへたばったの?」

 

「このガキ・・・・・・まだ行けるっての!」

 

「じゃあ走れ、風の様に!ハイヨー、シルバー!!」

 

不敵に笑いながら竜次はどんどん先に進んで行き、感染者を鏖殺していった。

 




そのうちこれはマジで多少無理矢理にでも締めくくろうかと思います。やるとしたら後2、3話ですかね?

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