オリジナルのエクストラスキル出しました。
無理なら読まない方がいいかもしれません。
23層ボス部屋前にフェンサーさん、キリトと共に肩を並べて、緊張の余り帰りたくなってしまう。
キリトもフロアボスの相手は久しぶりらしく、フェンサーさんからのお誘いを俺に押し付けていたようだ。
それでも何回かは参加していたようで、顔見知りも何人かいるらしい。
アインクラッド解放軍キバオウ
聖龍連合リンド
の双方から睨まれてるが、ディアベルを侮辱したのだから当然と言えよう。
そういや、クラインとこの風林火山も相当レベル高かったな。攻略組でも上位に入れるんじゃないのか?
「取り巻きは私たちが相手するから、エイトくんは″フクロウズ″に専念して頂戴」
「……おお」
重たい両開きの扉を開けると、360度柵で覆われたドームの真上には逆さに吊り下がる鮮やかな翡翠の羽毛を纏う梟がいた。
″エメラルド・フクロウズ″
体長は3mほどであろうか。琥珀の両眼が俺達を見据えると、梟独特の鳴き声を上げ翼を広げる。
そこから大量に発生する子梟。
ちくしょう、可愛いな。
先制を打つべくホルダーに手を掛ける。
フロアボスが油断できないのは重々承知。出し惜しみはせず、エクストラスキルを発動した。
「斬華スキル【睡蓮】」
一本のナイフを迫り来る10を越える取り巻き共に投げると、突き進む一本のナイフから30本のナイフが前方に飛散する。
取り巻きに囲まれることなく、突き進み″フクロウズ″の透き通ったブランデーを思わせる瞳と合わさる。
その瞬間、″フクロウズ″は独特な低い声を鳴らし、羽ばたくと翡翠の羽が俺に射撃される。
本当に【隠蔽】使えないのな………。
取り巻き共の心配はないが、ボスとサシでやり合うなど本来は無謀もいいところだ。来なきゃよかったなあ。
降り注ぐ羽の雨に当たらぬよう全力で駆け抜け、後方から地面に突き刺さる音が耳に届く。そこで俺も反撃に出た。
斬華(ざんか)
【体術】と【投剣】のスキルを組み合わせて戦っている内に出現したエクストラスキル。
投擲用ナイフを投げるだけではなく、ナイフそのものにスキルの特性が加えられ花の名前によって打たれ方が変化する。
「【朝顔】」
この朝顔は直線状ではなく、回避に出た″フクロウズ″へうねりながら蛇行してヒットしていく。
ただし攻撃力が変化する訳ではない。まぁ、軌道が変幻自在で一回に何本もたたき込めるのはいい。扱いが難しいがな。
「やべっ」
″フクロウズ″も羽ばたいて俺を囲むように羽の弾雨が降り注がれ、肝を冷やす。しかし、冷静さを取り戻して更なる技を繰り出す。
「斬華スキル【蒲公英】」
全身を一回転すると、周囲から無数のナイフが放出され、翡翠の羽を相殺していく。言うまでもなく、全ては不可能で何本か受けてしまう。
少量のダメージだ。焦ることはない。
一応、【斬華】は一つを除いて出尽くした。もう一つは地上に降りてこなければ意味のない代物だ。
「【睡蓮】」
もっとも″フクロウズ″の攻撃回避に集中してれば、充分倒せる。
そう思っていた時期が俺にもありました。
【睡蓮】が全弾″フクロウズ″に直撃してHPゲージが赤くなると、琥珀色の眸は消え失せ光を飲み込むような暗闇となり冷や汗をかく。
それは俺の腐った眼とも違う真っ暗で先が見えない。
激昂。突如、迫り来る″フクロウズ″に戸惑う。
【斬華】の弱点は近距離ではリスキーであることに加え、ごり押しで来られれば中々に面倒。
その場合は距離を取るか、槍で対応するのだが焦りと突発的な行動に対処出来ず、槍を出さずに【斬華】でもなく普通にナイフを投げてしまった。
「がッ!?」
″フクロウズ″の足に体を捕まれ地面がどんどん遠退いていくと、ようやく取り巻き共を倒しきった攻略組を目視。
ちょたけえたけえ! 高所恐怖症になる!
今度は顔に風を受け、凄まじい勢いで固い地面へと叩きつけられ効果は抜群なのか急所に当たったのか一気にHPが削られた。
あぶねえ……、残りはもう二桁を切っている……。
「エイト!」
「エイトくん!」
そこで駆けつけたキリトとフェンサーさんは片手に持つ剣の連撃を与え、下がって回復をして邪魔にならぬよう【斬華】は使用しないで遠くからナイフを放る。
「あっ」
それが止めとなりエフェクトとして砕け散った″フクロウズ″。
結果的にLAボーナスを手に入れてしまった。
“アモンの篭手”
翠の羽毛で覆われた篭手(こて)
早速装着する。どうやら、投擲用ナイフの能力を飛躍的に上げる代物で、それ以外の奴が使っても多少防御力が上がるだけのようだ。
「止め持ってかれるなんて………」
「これでしばらくはは攻略に参加してくれるわよね」
キリトは肩を落としてうなだれ、アスナはにっこりと働けよ社畜と言わんばかりに詰め寄る。
「いやいやいやいや、今回は俺向きであったからよかったものの、次回以降はこう上手く行くかどうかは不明ですよ。いやぁ、運がよかった」
と言い訳をぶっこいていると、鋭い閃光が俺の真横を通り過ぎ、頬に汗が流れたのが伝わる。
彼女は笑顔のまま。それは俺に向けられており、昔の俺なら絶対に告白してハブられていただろう。
しかし、細剣が握られて切っ先は眉間を指している。
シルバーな戦車かよ。
「働きたくねえ………」
「その屈服しない精神は凄いよ」
「エイトくん、あなたに積極性はないの?」
こめかみをおさえるフェンサーさんは顔を俯かせて、俺に呆れているようだ。
「積極性なら他の奴もそうだろ?参加してなくて俺より強いプレイヤーは他にもいる」
「否定出来ないのが痛いわね。けど、一刻早く攻略したいの」
強制よくない。
焦り過ぎても仕方ないだろ。
かつて彼女が無理した時のように、誰かがフェンサーさんの支えにならなければならない。
…………年上が見守るぐらいならいいか。
とりあえずエイトはこれで進めていこうと考えています。