今回はとってもグダグタになってしまいました。
「お前ら……【スイッチ】知らないのか………」
「うん」
「おう」
攻略会議を終えた俺達はボス戦での役割を言い渡され、E隊のサポートとをすることになった。
取り巻きと戦う隊のサポート。ほとんど何もせずに見てればいいものだ。これには歓喜したが、プレイヤー″アスナ″はどことなく不機嫌そうにしていた。
そこで【スイッチ】とやらの練習でキリトに呼び出されたのだが、俺とアスナはその【スイッチ】が分からないのだ。
これには頭を痛くさせているキリト。
「あれだろ?ピタゴラの」
「そっちじゃない」
「リロアンド」
「スティッチでもない!」
「ならあれだ。酒の」
「スコッチでもないわ!」
「敵のターゲットを他に移すやつとかそういうのだろ」
「だから違うってそうだよあってるよ!分かってるじゃん!」
知識としてはな。実際にやったことあるわけじゃないから。違うな、やる相手がいないんだ。
アスナは【スイッチ】の説明を聞いて、ふ~んと理解したようだ。
「あとは実力とか知りたいな。エイトはどんな感じだ」
「【隠蔽】スキルをガンガン上げてる。戦いたくないし」
「これから戦うのに………」
キリトは呆れながら、身の丈を越える人型の白い造形を、素早く縦に切り裂いた。
「速いな………」
感心しながら今度はアスナがスピアを取り出し、フェンサーであることが判明。
キリトと同じように造形物を目にも止まらぬ早さで刺突が幾度も繰り出され、白い造形物は穴だらけとなった。
「おぉ」
今度はキリトから感嘆の声が上がった。
強いな……。俺必要なくね?
俺はやや鬱になりながらため息を吐く。いやさ、出来のいい人のあとでやるとか、やりづらいでしょ?
「目が濁ってるよ……エイト……」
「通常運転だ」
言った瞬間、ホルダーからナイフを4本飛ばし、人型造形物の両手足に突き刺すと、同時に槍で眉間・首・胸・腹・股間を頭部から手際よく突き刺していく。
速さ的にはアスナが一番で、二番目が俺といったところだが、初動など技術面では俺が上だ。
軽くスイッチの練習して、空は赤と紫が混ざり解散することになるが、キリトに声をかけられた。
「このあと暇か?」
「え、アレがアレでアレなもんだからアレしなきゃいけないから、暇じゃないかも」
「…………ごめん、嫌だったか?」
「………わぁったよ。暇だ」
落ち込んだ姿がまるで捨てられた子犬のようで、罪悪感を話を聞くことにした。
「よかった!なら俺が泊まってる宿に来てくれないか!風呂もあるから!」
表情を一変させたキリトは嬉しそうに笑い俺の手を握る。なにこいつ天使。戸塚の再来だわ。
やべ、思い出したら無性に合いたくなってきたわマイエンジェル戸塚マイシスター小町。
俺とキリトが肩を並べて歩き出したとき、アスナことフェンサーが彼の肩をがしりと掴んだ。
キリトの拠点となっている農家の二階に俺とキリトは向かい会って座っている。
フェンサーの素顔はそりゃもう美少女であった。天は二物を与えずというのはやはり嘘なのだろう。
彼女は現在、風呂に入っている。年頃なのだろう。
やや大人びた雰囲気はあるが幼さが残り、年齢的には中3前後かもしれない。あれ、小町と同じくらいじゃねえの?
「明日が最期かもしれないんだよな」
最期。
ホットミルクが注がれたコップを持つ彼の手は震えて、湯気がたつ中身は微かに波立っていた。
「かもな」
とりあえず返しておく。
「怖く、ないのかエイトは?」
「怖いに決まってんじゃねえか。とっとと終わらせてえよ、こんなクソゲー。つってもまだ一層だろ?深く考えすぎても仕方ねえだろ」
しかし、と続ける。
「多分、2~3人は死ぬ」
性格故なのだろうか、常に悪い方向を見据えてしまう。
「鼠が作った″アルゴの攻略本″の裏には『情報はβテスト時のものです。変更されている可能性があります』ってな」
キリトも気付いてるのだろう。ボス戦で変更されている部分はかなりの確率で存在する。
どこらへんが変更されてるかまでは分からないが。
一層でそこそこ変更されてる部分があったのだ。ボス戦も変更されてないとは思えない。
しかも推測の域を脱しないのが質が悪い。
βテスターであるキリトの方が十分理解してるだろう。
「まあ、俺達は雑魚の相手だ。気軽に考えてもいいんじゃね」
キリトの頭に手を置く。
「え?」
これを女子にやったら絶対に気持ち悪がられるだろうが、キリトは男だから問題ない……はず!
「お前は強いけど、少し年上の俺に頼れ。伊達に現実じゃお兄ちゃんやってないんだ」
弟がいたらきっとこんな感じなのだろう。どうりでキリト=天使が成立するわけだ。
じゃあ、戸塚は天使じゃなくなるのか?そうか、戸塚=女神だ!
顔を赤く染めてモジモジするキリト。あらかわいい。
「あのさ、エイト、その」
「お、おぉ。なんだ?」
急な変化にキョドった時、扉からノックから二回鳴らされた。
紅潮させたままキリトが扉を開けると、そこには先日顔を合わせた鼠がいるではないか。
「やっぱりここにいたのカ、忠犬。キー坊、顔赤いナ」
ニヤリと不適な笑みを浮かべる鼠。
「そ、そうか?それでなんのようだよ、アルゴ」
「忠犬に礼を言っておこうとナ」
「俺も俺も」
アルゴに賛同するキリト。
「礼?」
お礼参りですか?
「攻略会議の時のナ。忠犬は気付かなかったが、オイラもその場にいたのサ」
「礼を言われる覚えはないんだが………」
「エイトがキバオウを言いくるめた時だよ」
「…………………」
「元々βテスターの風当たりは良くなかったんダ。それを忠犬がいい方向に傾けてくれタ」
「雀の涙ほどだけどな。中にはキバオウの言う通り見捨てた奴だっているんだ」
そう、どんなに論理的に言いくるめても感情の方はどうにもならない。あいつだけじゃなく、他のプレイヤーだってそうだろ。
「ニャハハハハ!捻デレさんメ!」
「は?」
「オイラが礼をいいたいのはそこじゃなイ。これを忠犬が話したときサ」
アルゴが取り出したのは″アルゴの攻略本″
「忠犬がこれのことを話してくれてオイラの行為は無駄じゃなかったって素直に嬉しかっタ」
曇りのない真っ直ぐな瞳で見上げる彼女に俺はただたじろぎ、目を背けることしかできなかった。
「俺は発言しただけだ。最初から最後までやったのはお前だろ」
「キリト、俺からもありがとう。お前の弁舌で、気持ちが楽になった」
「お前は俺に色々教えてくれただろ……」
「感謝くらい素直に受け取っておケ。情報一つ無料にしてやるヨ」
「いいよ。打算で繋がってたいし、俺が勝手にやったことだ」
そう、言い残して部屋から出て夜風にあることにした。
ひやりとした冷たい風が頬を撫でる。
マッ缶が相応しい夜だが、あいにくここにマッ缶は売ってないのだ。
切り株に腰をかける。
現実世界は今ごろどうなっているのだろうか?
いや、どうもしないか。
小町は受験勉強に励んで、雪乃下と由比ヶ浜は百合百合しているに違いない。
俺はただそこにいただけ。
心配してくれてたら嬉しい気もするが、期待はしないでおくのが傷付かない手段。
しかし、小町と戸塚に会えないのは心苦しい。加えてマッ缶を飲みたい。
世間ではSAO事件がニュースで流れて、偉そうな専門家が偉そうにカメラに向かってテレビの前の皆様にご教授して下さっているのだろう。
テレビに出る専門家って役立たずに思えるのは俺だけだろうか?
「そもそも」とか「一般的には」とか、自分の意見言ってないよね、あれ。
テレビ局側からしたら自分にとって都合のいいことしか言わせないのだから、有能な傀儡が欲しいのだ。
この世界も同じだ。
茅場にとって俺達は踊っているにしか過ぎない玩具。
100層クリアしてもしなくても茅場にとっては楽しめるのだろう。天才様の考えることは理解不能。
プレイヤーが100層にたどり着くまでどれだけかかるのだろうか?
一層につき1ヶ月だから単純計算なら9年ちょいといったところだが、攻略組も増えていくことを考慮するならもっと早いだろう。
まあ、成り行きに任せたらいい。
俺が張り切ってなにか言ったところで聞く耳を持ってもらえるかも怪しいんだ。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
フェンサーの悲鳴。
嫌な予感がするので行かないでおこう。
はい、すいません。前書きにもあったようにグダグタでしたね。
それとネタバレになってしまいますが、俺ガイルキャラ出ます。
誰とはいいませんが。
ではまた。