孤独のプレイヤー   作:ベリアル

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今回も雑になってしまいました。





軍の失態

 

 

 

帰路を辿り、気まずい雰囲気が俺とフェンサーさんの間に流れ、ボスを倒してから二言三言しか話してない。

 

 

 

俺にとっちゃ当たり前と言えば当たり前で日常である。一方で彼女は攻略どころか口うるさいのだから、現状黙りこくっているのが苦痛に感じる。

 

 

 

出会った頃もこのように大人しい気もするも、さしずめ攻略に躍起になっているからだろうと推測できる。

 

 

 

「私のせいだよね………」

 

 

 

ダンジョンの出口近くに差し掛かって開口一番に放った言葉それだった。

 

 

 

「ここにしようって言い出したのに、肝心の私が動けなくて、エイトくんに任せっきりで………」

 

 

 

「俺はこれの確認がしたいって言っただろ。むしろチームワークが苦手な俺には丁度良かったかもな。足引っ張るし」

 

 

 

装着している″アモンの篭手″をぶらつかせ、フェンサーさんの表情を見やる。フォローをいれたつもりでも彼女の表情は曇るばかり。

 

 

 

やれやれだぜ。

 

 

 

「キリト呼んで、レベリングするか?」

 

 

 

「………………………」

 

 

 

「うじうじしてもあれだろ?それにボス戦が近いなら連携の練習しといた方がいいし」

 

 

 

「………いいの?」

 

 

「俺が誰かを誘うなんてのは珍しいことだぞ、フェンサーさんや」

 

 

 

遠回しに気遣っているんだが、どうにもフェンサーさんは放っておけない。

 

 

 

「………スナ」

 

 

 

砂?

 

 

 

「……アスナ。アスナって呼んでよ。フェンサーさんフェンサーさんってなによ。さっきはアスナって呼んでくれたのに………」

 

 

 

「えぇ……。いいよ。名前呼びとか仲いいみたいじゃん。フェンサーさんで慣れちゃったし。あれはノリだし」

 

 

 

迂闊にも露骨に嫌がると、怒ったフェンサーさんは詰めより、人差し指を向ける。人を指で指しちゃいけないって教わんなかったのかよ。

 

 

 

 

「どういうこと?私のこと嫌いなわけ?」

 

 

 

「いや、嫌いというか………苦手というか………なんというか………」

 

 

 

視線を合わせぬよう出口に目を向けて、壁に背中がつくまで後ずさるが、そこで逃げ場を失う。

 

 

 

「はぁ」

 

 

 

幸か不幸か彼女は一歩引きため息を吐くと、眉間を押さえてじろりと双眼が俺を見据えて口が動いた。

 

 

 

「頭から爪先まで腐りきったエイトくんにいい返事がくるのを期待した私が馬鹿だったわね。ごめんなさい」

 

 

 

「ほんとに謝ってるの?貶してるよね」

 

 

 

「ほら、キリトくん呼んでレベリングしましょ」

 

 

 

俺の発言はスルーするフェンサーさん。ま、うちんとこの氷の女王に比べたら可愛いもんだろう。

 

 

 

「あいつとフレンド登録してないぞ。鼠しかいねえ」

 

 

 

鼠とはビジネスパートナーだから必要だが、キリトは別に俺に得をもたらす訳でもないからやってない。

 

 

 

奴からのしつこいお誘いは会う度に幾度もされているものの、居場所が割れてしまうのは不愉快なので断り続けている。

 

 

故に俺の居場所を知ることが可能なのは現在、アインクラッド随一の情報屋しか探れないのである。もっとも、金を持って鼠を介せば居場所はバレてしまうのが厄介だがな。

 

 

 

結局、キリトを呼ぶことなく解散する形になったが、フェンサーさんの表情は晴れているように感じられた。

 

 

 

「また、美味しいもの作ってね」

 

 

 

と、去り際に言われた。また会わなきゃいけないのか……。姑の鏡とも言える彼女の小言を毎度聞かされるのは億劫になる。

 

 

 

時間はまだあるようで、20層へ足を運んで投擲ナイフを補充するために露店がそこら中に並ぶエリアを歩く。

 

 

 

露店には様々な種類があり、軽食やアイテムや武器といったものが売られ、NPCの店では買えないようなものが売られている。

 

 

 

そこで消費者のお眼鏡に叶うかどうかは別として、人混みが出来るというのはそれなりに品質が良いものがあるのだろう。

 

 

 

人混みは嫌いだが、こうして適当に商品を見て回るのは悪くない。

 

 

 

「……………」

 

 

 

人が賑わう露店の集合地帯の隅っこにひっそりと布の上に武器が並べられている店に赴く。

 

 

 

アスナと同じくらいの年齢であろう少女の店主は無愛想な顔で体育座りをしている。繁盛しないのはこの態度に違いない。

 

しかし、繁盛しないのとは裏腹に並べられている武器の質は良いものばかりで、自然と一つの解が導きだされる。

 

 

 

鍛冶スキルによるもの。

 

 

 

一つの商品を手に取る。それで熟練度がどれだけ高いかはある程度は把握出来た。鍛冶スキルを持ってる中で上位に入れるだろう。

 

 

 

「これ、500本」

 

 

 

店主は一瞬目を見開いて顔を上げたが、直ぐに目を鋭くさせて睨みつけてくる。

 

 

 

「イタズラなら帰って」

 

 

 

投擲ナイフをメインにする俺にとっておふざけなどではない。ただ、投擲ナイフをメインにする人間はそういないから、イタズラと思われても仕方がないのかもな。

 

 

 

 

「イタズラじゃない。そんな度胸もない。本当に500本欲しいんだよ。投擲ナイフをメイン武器にしてるからな」

 

 

 

「だとしても多すぎでしょ。…………目腐ってるし」

 

 

 

「スキルの関係上これぐらいないと足らん。目腐ってんのは関係ないだろ。で、売ってくれんの?」

 

 

 

これで売ってくれないなら引き下がる。押して駄目なら諦めろがスタンスの俺にとっては痛くも痒くもない。

 

 

 

「んんん」

 

 

 

彼女は咳払いをすると、さっきまでの無愛想な態度とは打って変わり、笑顔が張り付けられていた。

 

 

 

「いらっしゃいませ!リズベット武具店へようこそ!」

 

 

 

今更かよ………。こええよ女子。こええよ。金目当てじゃねえか。しかも、武具店って呼んでいいのかよ。

 

 

 

「こちらの商品なんですが、素材の関係上100本しか売ってないんですよね……」

 

 

 

「素材取ってくればいいのか?」

 

 

 

「素材は攻略組の友人から貰ったものなんですよね……。取りに行こうにもレベルが厳しいから」

 

 

 

今度は顔を俯かせて、笑顔ではあるが悲しげな表情をしている。

 

 

随分奇特な友人がいたもんだ。

 

 

 

「んじゃ、100本でいいから売ってくれ。また来るから揃えられたら、これ作ってくれ。鍛冶屋」

 

 

 

「あ、はい。ならフレンド登録した方がいいよ。投擲ナイフは時間掛かるから」

 

 

 

それもそうだな。あまりフレンド登録はしたくないが、きっちりとしたビジネス関係だから別に問題ないだろ。というか、口調砕けてるし。

 

 

 

接客とか苦手なんだろ。

 

 

 

フレンド登録を鍛冶屋リズベットとし終えた直後、背後から俺を呼ぶ声が響いた。

 

 

 

「忠犬!」

 

 

 

「……鼠?じゃあ頼むわ」

 

 

 

「うん。また来てね、エイト」

 

 

 

なんだよ、コミュ力高すぎだろ。ビッチか?勘違いしちゃうからやめてくれ。

 

 

 

「んだよ」

 

 

 

鼠と向かい合うと、明らかに普段とは違い、焦りが表れている。この時点でただごとではないと把握する。

 

 

 

俺達は人気のない林に入ると、鼠は焦りながらもゆっくりした口調で俺に告げる。

 

 

 

「……軍がボス戦に独断で挑んダ」

 

 

 

「………おいおい」

 

 

 

軍とはアインクラッド解放軍。最大規模を誇るギルドで積極的攻略に参加しているが、あまりいい印象は抱かない。

 

 

 

トップのキバオウがLAボーナスを持って行くキリトに嫉妬しまくり、ディアベルを侮辱した俺を嫌う始末。俺のは自業自得だね。

 

 

 

「他の奴らが止めるなりしなかったのかよ?今なら間に合うんじゃねえの」

 

 

 

「…………壊滅しタ」

 

 

 

「は?」

 

 

 

「攻略に出向いた軍の40人強はほとんど壊滅状態。生き残ったのはキバオウと数人だケ」

 

 

「…………………」

 

 

 

それには言葉を失うしかない。だが、速攻で切り替えをして、鼠に問う。

 

 

 

「これからどうすんだよ?」

 

 

 

「攻略組上位の緊急召集。圏内にいるプレイヤーは直ちに24層の広場まデ。キー坊やアーちゃんも既にいル。あとは忠犬だケ」

 

 

 

これは流石に出なきゃ駄目か。

 

 

 

重い足取りで24層へ向かうと、既に俺以外の面子が揃いも揃っているようて、キリトとフェンサーさんは相席のようだ。

 

 

 

俺は近付くわけでもなく、入り口近くの椅子に座ったことで会議に参加する意思表示をする。心なしか少年少女に睨まれている気もするが、無視に徹する。

 

 

この場はフェンサーさんが仕切ることになった。

 

 

 

「これから25層ボスの対策及びにアインクラッド解放軍のキバオウの処罰を考えなければなりませんが、異論はありますか?」

 

 

 

当然、否定するプレイヤーはいない。

 

 

 

「では、まずキバオウの処罰について、誰か案がある人間は?」

 

 

 

この場にいないキバオウに対しての処罰を決める為、様々な意見が飛び交う。

 

 

 

処刑。武器、アイテム全て没収。圏内に立ち入ることを禁ずる。ギルド脱退。

 

 

 

 

あれよあれよと、怒りをむき出しに過激な意見も含まれる。

 

 

 

軍のトップがあれでも攻略組では重要な役割を果たしていたのも、事実。それがエゴで潰れたのだから怒髪天にもなる。

 

 

 

そんな憤怒が渦巻く場を制したのはフェンサーさん。

 

 

 

「このままじゃ処罰は決まらないわ。彼に決めて貰いましょ」

 

 

 

「え、俺?」

 

 

 

そして、全員の視線が俺に向けられ、緊張のあまり足が震えだしてしまう。しかし、案はなくもない。やれやれ怖いもんだ、フェンサーさんは。

 

 

 

「……素直に謝罪」

 

 

 

それにより沈黙から一転、怒声が俺にぶつけられフェンサーさんは真っ黒い笑顔を見せている。

 

 

 

「待てよ。素直に謝ることのなにが悪い?今後のことを考えてもまだ軍の力は必要不可欠だろ。なら今すぐ、キバオウが大衆の前で謝罪する。その後、罰としてアイテム没収とかすればいい」

 

 

 

「それじゃ甘過ぎるんじゃないの?」

 

 

 

「じゃあ死刑か?勘弁してくれよ。ここは世界でもトップ5を誇る平和な日本だぞ。死刑は簡単だが、恐怖を植え付けちまう。理由はどうであれ、な」

 

 

 

建て前の罰では簡単だが、感情的な部分が厄介だ。

 

 

 

「下手したら攻略に参加しようとするプレイヤーが減るぞ」

 

 

 

「それはキバオウが悪いからだろ。自業自得だ。みんな分かってくれるさ」

 

 

 

別の方向から声が聞こえる。俺も自業自得なのには賛成だ

 

 

 

「理由はどうであれって言っただろ。内側からじゃなく外側から見たら恐怖を植え付けるには十分。100人が100人同じ答えを出すわけじゃない。キバオウの処罰次第で今後の攻略は更に変化するぞ」

 

 

 

「でも、なぁ」

「責任ある立場の奴が……」

「甘過ぎじゃないか」

 

 

 

難しいよな……。これで納得してもらえるとは思わないし、これ以上何言っても無駄だと分かってる。そもそも、俺には発言力がない。

 

 

 

キリトやフェンサーさん辺りに言ってもらうのがベストなんだったが。

 

 

 

「わかりました。一旦キバオウの件は置いておきましょう。続いて、ボスの攻略について策を講じなければいけません。それに新しい攻略組も…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おつかれ」

 

 

 

「なんもしてないけどな」

 

 

 

緊急会議を終えた場は人の気配が少なくなり、いるのはキリトとフェンサーさん。

 

 

「25層のボス……。戦った軍の話じゃこれまでとは比にならないほど、強いってさ」

 

 

 

そう。いくら軍の戦力が足りなかったといえど、多少の犠牲を払えば倒せなくはなかったはず。キバオウもそれを見越していただろう。

 

 

 

「急激に強くなったボスか……。下手しなくても私達でさえもやられるかもね」

 

 

 

キリトの話を聞いてフェンサーさんは沈んだ声で返し、不穏な空気を拭えぬまま今日という日を終える。







アンケートという程のものでもないのですが、質問があります。


読者の皆様はハーメルンをなにで読んでいますか?


ガラケー

スマホ

PC



私はガラケーで執筆しているのですが、PCで見ると全然違いました。



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