孤独のプレイヤー   作:ベリアル

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処女作です


ハーメルンの投稿が3時間かけてもいまいちわかりません。


尚、序盤は三人称です。

無理そうなら一人称にします。


悲劇の幕開け

 

 

 

――――ポン

 

 

紅い日差しが射す部屋の中で、光を反射させるヘッドギアを被った少年が、手の平で自身の体を軽めに叩いていた。

 

 

ソードアート・オンライン

 

通称 SAO

 

 

簡潔に言ってしまえば、ファンタジーの世界に行ける現実逃避が可能なゲームである。

 

 

「こまちー。ちょっと現実逃避してくるわー」

 

 

「いってらっしゃーい。晩ご飯には戻ってきてねー」

 

 

「おう」

 

 

血の繋がった妹と短いやりとりを終えた少年、比企谷八幡はベッドに横になって目を腐らせながらも、胸を高鳴らせ口を開いた。

 

 

「リンクスタート」

 

低い声が一室から発せられると、比企谷八幡の意識は現実世界から離れ、仮想空間へ飛び立つ。

 

 

 

 

悲劇の始まり。

 

 

 

 

1万人のプレイヤーの犠牲者の1人として。

 

 

 

 

 

 

「………すげえな」

 

 

八幡は国語学年3位というだけあって、ボキャブラリーは豊富なのではあるが、目の前の景色に感嘆で一杯で、

 

 

「すげえ」

 

 

の一言に尽きた。

 

 

確かに彼が見る景色は現実世界でも見られるものではなかった。

空に浮かぶ鋼鉄の城アインクラッドに立ち、吹き抜ける風にここを照らす夕陽。

 

 

RPGに出てくる建築物。そこにいる八幡と同じプレイヤー達。

 

 

「これがソードアート・オンライン」

 

 

八幡はそこから動きだし、見る者が見れば泣き出すであろう笑顔を浮かべていたが、ここは顔に編集が効く世界。

 

 

なので、お馴染みのアホ毛も腐りきった目も真実の姿を覆っているのだ。

 

 

 

 

 

 

早速、SAOを満喫する八幡。いや、プレイヤーネーム エイト。

 

 

悲しいことに真っ先浮かべたのがヒッキーで次にカエル。その次にオタヶ谷。自分で自分のトラウマという名の地雷を踏み抜いたのは彼以外、知る由もない。

 

 

あいにく同情を貰う相手もいない八幡ことエイトは黙々と装備した槍で、草原にいるフレイジーボアを倒していた。

 

 

何体目か、倒して砕け散ったフレイジーボアを見て、一息吐こうとした時だった。

 

 

「あんたもβテスターか?」

 

 

「ひゃいっ!?」

 

 

背後から肩に手を置かれて、裏声を出し振り向くと赤いロン毛の男と少年らしき人物が立っていた。

 

「ああ、驚かせちまって悪いな。俺はクラインってんだ」

 

 

(……なにこいつ。コミュ力高い)

 

 

仮想空間の中でも人見知りスキルが発動しているが、自分の顔が普段と違うことを思い出すと、彼は気を取り直した。

 

 

 

「エイトだ。俺は今日が初だから、βテスターではない」

 

 

βテスターとはSAOの正規版が発売される前に行われたテストで、参加した者のこと。

 

 

「それでそれだけ動けるなら大したもんだな」

 

 

クラインの後方から聞こえてくる声変わりが済んでないような声。

 

 

「俺はキリト。元βテスターだ」

 

 

「どうも」

 

 

「俺はクラインに基本的な動作をレクチャーしてんだ。エイトも良かったらどうだ?」

 

 

エイトはキリトの笑顔に戸惑いリア充だと認識したが、仮想空間でハイなのか

 

「ああ、頼む」

 

 

と、口数は少ないが、キリトの指導を受けることにした。

 

 

実際、βテスターでない割には程度であって、やや分からない部分もあったので助かったのだ。

 

 

「っでえ!」

 

 

そうして、キリトの指導を受けクラインと共にレベルを上げる中で、時間的に帰ろうとする。

 

 

「俺ピサ頼んでんだよ!」

 

 

「俺も妹が飯作ってるから、一旦落ちるわ」

 

 

″妹″

 

 

その単語に食いついたクラインはエイトに詰め寄る。

 

 

「妹紹介してくれ!」

 

 

「お前に妹をやれるか!」

 

 

シスコンを発動させると、ここに来て初めて声を荒げたエイト。

 

 

あとで落ち合うことになった3人。

 

 

しかし、異変は起きた。

 

 

「ログアウトボタンがねぇ………」

 

 

クラインの言葉にエイトとキリトも画面を開き、クライン同様ログアウトボタンの姿がない。

 

 

(バグ……?)

 

 

思考を巡らせたエイトは一つの単語を思い浮かべたが、どこか府に落ちなかった。

 

 

瞬間、3人の姿は草原から消え去り、彼ら3人ははじまりの街の広場に立ち、何が起こったか分からない様子であった。

 

 

一つ、訂正を加えるなら彼ら3人ではなく、無数のプレイヤーがその場にいた。

 

 

「強制転移……!」

 

 

キリトの言葉を聞いたエイトはなんなくではあるが、ここにいる理由が理解できた。

 

 

 

「なんだよこれ!?」

「イベント……?」

「この後予定あんだけど!」

「ふざけんな!バグじゃねえのか!?」

 

 

 

そんな無数のプレイヤー達の混乱の中、割と冷静でいるエイトは伊達に雪乃下陽乃から″理性の化物″と呼ばれるだけはあった。

 

 

「「………ッ!」」

 

 

エイトとキリトは真っ先に気づいた。

 

 

脅威が訪れたことに。

 

 

夕焼けなど比にならない程の赤く、血を連想させる液体が、この場を覆う防御壁の隙間から溢れ出し、形を成していくではないか。

 

 

「私の名前は茅場晶彦」

 

 

肉声ではないことが明らかな音が広場に響き渡り、先程までの喧噪が嘘のように静まりかえった。

 

 

 

 

「プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅しているのに気づいていると思う。しかしゲームの不具合では無い。

 

繰り返す。

 

これは不具合ではなくSAO本来の仕様である。諸君はこの後アインクラッドをクリアしてもらうために勤しんでもらいたい。

 

また外部からナーヴギア停止を試みた場合、ナーヴギアが諸君らの脳を破壊する、またHPが0になった場合も脳を破壊する。回復手段は無い」

 

 

(冗談……にしちゃ質が悪すぎるな)

 

 

心にのしかかる何か。

 

 

(マッ缶飲めない上に、小町と戸塚に会えないってことだろ。笑えねえな)

 

 

彼は図太いのか、ちっちゃい人間なのかは置いておこう。

 

 

「最後に私から君たちにプレゼントだ、確認してくれ」

 

 

その言葉を聞いて一様にメニュー画面を開く。アイテム欄には手鏡が表示され、具現化すると発光に包まれ、広場は輝く。

 

「お前、キリトか?」

 

「クライン?」

 

 

聞き覚えのある方を向くと、声の主達はお互いに指をさして驚いていた。

 

 

キリトと呼ばれた方は中性的な顔立ちで、背も低くエイトから幼く見える。

 

 

逆にクラインは20は超えているが、エイトが見ればこちらの方が好印象である。

 

 

「でー、……エイト」

 

 

「だよな……」

 

 

2人はエイトの方を向いて、驚き半分引きつり半分である。

 

 

無理もない。彼の目は救いようがないほどに生気を感じられず、キリトとクラインは寧ろ被害者なのかもしれない。

 

「おい人の目を見て失礼過ぎるでしょ」

 

 

とツッコミをいれるが、すぐに顔ではなく目が原因であること気付く辺り、自覚はあるようだ。

 

 

他にも彼らだけでなく、数多の声が飛び交い美少女がピザだの、ネカマもいたようだ。

 

 

「それではSAOの公式チュートリアルを終了する」

 

 

言い終えたのか茅場晶彦は消えていく。

 

 

それを合図に泣き崩れだす者、暴れ出す者、呆然とする者。

 

 

様々ではあるものの、誰一人として明るい雰囲気な者はいない。

 

 

そんな中でキリトはエイトとクラインの腕を掴んで、防御壁のなくなった広場の隅に行き、ある提案を持ち出した。

 

 

「外からの助けはまずないとして帰る方法はさっき言った通りクリアするしかないよな。俺はこれから次の街に行くがお前ら2人は来るか?」

 

 

「行く」

 

 

意外にもエイトは即答だった。

 

 

βテスターであるキリトについて行けば、生存率が高くなるという、打算的な考えだ。

 

 

しかし、客観的に見てこの考えは間違っていない。

 

 

外のことは外の人間に任せて、内側は自分達でどうにかしなければならないのだ。

 

 

「俺は行けねえ。ダチと一緒に来てんだ、そいつらを見捨てられない。だからお前達だけで行ってくれ」

 

 

「…………」

 

 

苦い顔をするキリト。

 

 

(正直なところ、クラインはいてほしかったな)

 

 

エイトは表情には出さない。

 

 

攻略的にもそうだが、メンタル的にも明るくコミュ力のあるクラインはいてほしい。

 

 

事実、クラインが話し掛けなければコミュ力最低値のエイトは1人でさまよっていたのは目に見える。

 

 

ただ、強制はできない。

 

 

それからクラインと別れ、キリトと共に目的地へ走り出す。

 

 

 

「エイト。生き残ってやろうぜ」

 

 

「あぁ……。こんなクソゲー、不燃ゴミに出さなきゃ出しな」

 

 

言うことは小さい。

 

 

それでもキリトはエイトが頼もしかった。

 

 

 







一人称にしようか悩み始めました。


エブリスタでも執筆しています。

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