Plongez dans le "IS" monde. 作:まーながるむ
ガールズラブタグの本領発揮
ニヤニヤ病の人はトイレで読んだ方がいいかもしれません(
さて……お姉様は置いてきてしまいましたが戦力は十分です。
彼女が何を思って私にあんなことを頼んだかは分かりませんが……
―アリサと僕を置いてって―
―は?―
―お願い! ……アリサのためだから。もう、アリサを戦わせたくないの―
―……お姉様が、そう頼まれたのですか?―
―ううん。僕の勝手―
どうして戦わないことがお姉様のためになるのかが分かりませんが……まぁ、私はお姉様と出会ってから数時間しか経っていません。
私よりも付き合いの長い方がお姉様のためと言うならそうなのでしょう。
「皆さん、準備はいいですか?」
「ああ、任せろ」
「無人機程度、わたくし一人でも十分ですわ」
「俺は……まぁ、エネルギーも満タンだしいけるだろ」
まぁ、先に出ていた隊長たち三人に含めここにいる三人ですから……五分とかからないでしょうね。
多目に見積もって戦闘時間は十数分。その後、警戒を続けて問題がないようなら破壊した無人機を回収。調査の後、戦利品として再利用に回すことになるでしょう。
「さあ、行きましょう。篠ノ之箒、セシリア・オルコット。二人は戦闘機を、私と織斑一夏で戦車を破壊します」
「分かりましたわ」
いい返事です。
隊長からのデータによれば彼女達は遠隔攻撃と空中制動力に主眼と置いた機体のようなので戦闘機を相手取ってもらうのが一番でしょう。
織斑一夏も一応、荷電粒子砲という遠隔攻撃手段を持ってはいますが……戦闘機を落とすには過剰な威力な上、エネルギーの無駄が多すぎます。なので彼は私と同様に物理的な攻撃力をもって、陸の
「なにかしら亡国機業の情報が分かる可能性もあるので、可能な限り破壊は最小限にお願いします」
「了解」
数十年間、存在は確認されていても規模や目的、本拠地など重要なことは何もは掴ませなかったあの組織のことです。きっと尻尾を掴めるとは思いませんが、一応ということもあります。
なにより相手は犯罪組織。
破壊した戦車や戦闘機に使われている金属や装備などはそのまま私たちが回収できます。
その中から再利用しても処理できない、もしくは資金を使って再利用するだけの価値が無いものだけをEUか国連に処理をお願いすればいいことです。
すこし小賢しいですが、亡国機業は世界の敵ですからね。
それくらいのお願いなら彼らも叶えてくれるでしょう。
戦闘において実弾をほとんど使わないISはコストパフォーマンス的には最高です。今回の事件においてのドイツの損失はショートカットのためにお姉様に壊して頂いた基地の壁と、隊長がトリガーハッピーよろしく砲撃しているレールカノンの弾薬分だけです。
そして、戦線に参加している他の国の
「お姉様もシャルロット・デュノアも、実弾主義のような傾向があるようですからね……」
二人のデータを見る限りでは……ですが。
お姉様はそもそもISの装備の中で一番使っているのが、打撃の威力を少し上げる程度にとどまる疑似エネルギー刃発生装置の
その他の装備は、例えば相手の攻撃を撃ち落とすためであったり、もしくは土煙を立ててお姉様が有利になる戦場を作り上げるためだけの舞台装置……兵装で戦わないなど、お姉様の尋常ならざる体術があってこその戦闘方法でしょう。
隊長からの報告には、お姉様の特徴はハイパーセンサーとの強いリンクとエネルギー効率の良さ、というようにありましたが……私からしてみれば、お姉様の強さの根元はあの変幻自在とも言える体術にあるように思えます。
ISも基本的には人体構造に則って造り上げられているわけですから、その弱点も自然と似通ってきます。もちろん、その弱点はエネルギーシールドでカバーされているのですが……機体自体に影響を与えず、内部の人体を破壊することも理論上は不可能ではありません。そして、機体に影響が無ければエネルギーシールドは全く反応せず、全てのダメージは操縦者に向かうことになります。
それが出来るお姉様がいる限り、フランスはきっと第三世代型ISを開発してもエネルギー兵器には力を入れないでしょう。開発コストだけが無駄に掛かりますからね。
「では、散開しましょう」
せっかくですから、お姉様と並んで戦いたかったのですが……どうやら戦わない方がいい理由があるようですし、ね。
戦力も足りているのですから、お姉様の手を煩わせることもないでしょう。
万が一とはいえ、お姉様が怪我をする可能性もあるのですから。
「しかし……」
右腕に装備している
……なぜ、私は会って数時間の女性をお姉様と呼ぶほどに敬愛しているのでしょうか?
いえ、きっかけは分かっています。
お姉様が私を抱き締めてくださったとき、私の中でなにかが変わり、それがお姉さまを求めているのだと思います。
そういえば、シャルロット・デュノア……彼女に撫でられたときも、少しだけ同じ感覚がしました。
体幹が疼くようなむず痒さとくすぐったい熱を感じます。
これの正体は分かりませんが……彼女が私のことを撫でたときの状況から、この戦いで役に立てばきっとお姉様も私のことを撫でて下さるに違いありません。
だから、私は……
「ん……? ここら辺はもう終わりですか?」
屑鉄の山をひたすらに築くだけです。
さて……これくらいでは、まだ足りないかもしれませんね。
◇
「……っぷはぁ」
息苦しさを感じて、無意識に唇を離します。
……これで、何度目のキスなのでしょうか?
私は、最初の一回で判断能力を失って……ただ、シャルの動きに合わせて唇を当てているだけです。
本当は……私はシャルのことが大好きなので喜ぶべきなのでしょうが……唐突すぎて、何も分かりません。
シャルはどうして私にキスなんてするんでしょう……?
「抵抗……しないの?」
「シャル……ん……」
また……
啄むようにして、押し付けるようにして、そして唇を唇で挟みこむようにして……息継ぎも忘れて、ただお互いに口を塞ぎ合います。
……あぁ、そっか。
そのままの意味で、私の口を塞いでるんですね……?
私が、何て言うのかが怖いんですか?
変態!
とか
キモチワルイ!
とか……そんなこと、言わないから安心してください……
だから……少しだけ、離れてください。
そう思って、シャルの肩を少し押します。
好きです。
愛してます。
私から、そう言わせてください。
なのに、
「んぅ!?」
シャルは離れるどころか、私を押し倒して……
「んぁ……ぁ……ん、ちゅ、んぅ…はぁん……」
ぬるりと熱くて小さな舌を無理矢理とも思える強引さで私の口に突き入れてきます。
口腔を犯されているような
シャルの舌の動きは拙くて、ただ、口の中を舐めるようにするだけで、決して気持ちよくはないのですが……それでも私の中心を熱くさせます。
シャルの唾液の淫靡な甘みに溺れたくなりますが……こんなのは、私が望んでいたことじゃありません。
だから、
「はん……んぅ…ちゅる…ん、んっ!?」
がぶり
「ふぁっ!? は、
割と思いきり、シャルの舌を噛みました。
シャルも跳ねるようにして退いてくれました。もう泣き出す寸前というくらいに目が潤んでいますが、それはこの際仕方ありません。
ですが……口の中に残ったシャルの血が私には花の蜜のように甘く感じられます。
おいし……
「じゃなくて!」
「ひゃい!?」
……思考が欲望に走りかけたためについ大声を出してしまいました。
びくぅっと跳ねるシャルは可愛いですねぇ。
もちろん、私にもそんなことを考える余裕はないのですが。
確かに頭だけは若干冷静になりましたが、心は未だにドキドキと音がしていますし、芯から発生している火照りに身体は翻弄されています。少し気を抜けば、多分シャルを襲ってしまうでしょう。
だって……ようやく恋が叶いそうなんですから……
さすがに……これで冗談というのは、なしですよ?
「シャル……」
「ふぇ!? へと……その、あの…………ごめん」
「どうして謝るんですか?」
私は怒ってませんし哀しくもありません。
理由を言ってくれないことには嬉しいかと聞かれても少し微妙なのですが……
「ごめん……僕、弱いんだ。だから、言葉で伝えられる気がしなくて」
「それは……今の、キスのことを、言っているのですか?」
少し、期待に声が震えてしまう私の問いかけにシャルがコクリと頷きました。
「私のことが……好きなんです、か?」
また、こくり。
……ダメです。
また、何も考えられなくて……息が出来なくなるような錯覚に襲われます。
心臓が強く自己主張をして、頭は熱でやられてます。本能だけがシャルの体温を求めますが……
まだ、です。
だって、シャルが怯えてますから……
「何が……怖いんですか? どうして言えないんですか?」
「拒絶されるのが……怖いから。それに……女の子が女の子のことを好きになるなんて、考えたこともなくて……」
「……キモチワルイ、ですか?」
ぶんぶんぶん。
今度は音がしそうな勢いで首を横に振ります。
シャル……そんなに頭を振ったらクラってしちゃいますよ……?
「ふぁ……」
言った傍から……
少し眉をしかめたシャルをそっと引き寄せます。
安心させたくて一瞬だけ抱きしめて……そして膝枕をして横にさせました。
シャルの綺麗な金髪を出来るだけ優しく好いてあげながら微笑みかけて……問いを続けます。
「女の子のこと……いえ、私のことを好きになってしまったこと、後悔してますか……?」
首を振ろうとしたシャルの頭をやんわりと、でも確実に押しとどめます。
少し驚いたような顔をするシャル。
ふふっ……かわいいですね……
「声に出して……言って下さい。私が言うのもアレなのですけど……声に出してくれないと、信じられませんよ……」
「……その……後悔なんて、しないよ……だ、だって、アリサは可愛くて、強くて、優しくて……好きになったことを後悔するわけないでしょ?」
く、ぅう……!
嬉しい。
嬉しい!
すごく……嬉しいですよ!?
どうしましょう……私の顔、多分シャルより赤いです。
仕方ないじゃないですか! 私、シャルが私のことを知るより前からシャルのことが好きなんですから!
私の気持ちは、シャルのものよりずっとずっと大きいんです。
シャルは否定するかもしれませんが、それは私がシャルを好きになったあの日から時間をかけてゆっくりと私の中に育っていったものですから……
「……その、あと一言……シャルの本心が、聞きたいです」
わがまま、ですかね?
不安だから聞きたいんじゃなくて……ただ、聞きたい。
たった、それだけのために怖がっているシャルを余計に不安にさせるなんてこと……
多分、シャルももう私の気持ちを分かってくれていますけど、それでも不安だと思います。
だって……ありがとうございます、でもごめんなさい……そんなふうに私が言う可能性もシャルにとってはゼロではないんですから。
でも、それでも……
「僕は……」
「…………」
「私は……アリサのことが、好き、だよ?」
僕、じゃなくて私。
それが、なんとなくシャルの奥底からこぼれ出た
「私も、私もシャルのこと、愛してますっ!」
「愛しっむぅっ!?」
「ん……」
私の膝を枕にしていたシャルの背中に手を回し、その赤い唇にキスを一つ。
五秒、十秒、十五秒。
鼻で息をすればいいのに、お互いそんなことも思い付かないで、ただ唇を合わせていました。
「っぷはぁ……シャル、何度でも言います。私はあなたのことを愛しています。一生、愛します」
「ぁ、う……うぅ……」
シャルの目から、涙が一条こぼれました。
「あれ? シャル……?」
「ふぐぅ……ちがう……泣いてないよ? ちがうの、嬉しくて、安心して……」
「もう……私の方が、シャルのこと好きなんですからね……? もう、三年間もずっと、想ってきたんですから……ぐすっ」
もう、私まで、前が見えなくなっちゃったじゃないですかぁ……
せっかく、今までで一番、シャルが近くにいるのに……
「ふぐっ……なんで、嬉しいのに泣いてるんでしょうね……?」
「嬉しいから、だよぉ……!」