Plongez dans le "IS" monde. 作:まーながるむ
『くっ、どこにいやがる!?』
『ま、真後ろから敵機反応!?』
『み、ミサイル!? ダメだ! 避けられない! うわぁぁぁ!』
『たった五機だ! 死力を尽くせ!』
たった五機の戦闘機に私の率いる隊ここまで混乱させられるなんて……
これがレサスの……いえレサス軍総司令官であり兵器産業の重鎮、ディエゴ・ギャスパー・ナバロの虎の子ですか。
『あれ? なんか避けられた……』
『あ、見えないなら適当に打ちまくるってどうだ?』
『お前ら緊張感ねぇな!』
……まぁ、死人は出てないのでいいでしょう。
戦争は終わったので今は戦後処理としてレサスの兵器を破壊しようとかそういう感じです。
ギリギリまで接近しなければ目視することも難しい光学迷彩はグレイプニルのものの発展型でしょうか。
大型垂直離着陸戦闘機フェンリア。
その名前の由来は北欧神話の巨狼からですね。
「ふん、私のカゲロウの前で狼を騙るとはいい度胸ですね……知ってますか? 狼って他のグループの狼には容赦しないんですよ?」
『ガーリートークが一機撃墜したぞ! 俺達も嬢ちゃんに続け!』
私が一機墜としたことで戦意が復活したんですかね?
……もしかしたら、一機墜ちたことで相手の動きが鈍ったのかもしれません。
ビュンビュンとオーレリアの戦闘機が飛び回ります。
レサス最強のエースパイロット部隊とやらも大したことはないですねー。
とはいっても、こちらはオーレリア中の
機体の性能が戦力の違いだと思わないで下さい。最後にものを言うのはパイロットの腕です。
……私は両方とも備えてますけどね。
これで最後となると気分も少しだけ楽しくなってきます。
まぁ、戦争が終わったらタサキさんの暗示が解けて鬱になるんでしょうけどね。
「ハウンド2、前方左に三十二度。そこから右四十度まで機銃掃射です」
『了解!』
「ターキー、気付いてないんでしょうが貞操の危機ですよ? ハジメテは後背位ですか? ワイルドですねー」
『普通にケツ付かれてるって言えねぇかなぁ!?』
「だから、突かれてるんですよね?」
『ちがぁう!』
うーん。
私、兵舎の皆さんと仲良くなってから下品になった気がします。
ついこの前までエッチなことも苦手だったのですが……まぁ、ピュアなままじゃやってられませんからね。
「おっと、テリア1、二秒後にミサイル発射どうぞー」
『あいよ! ってうぉ!?』
ハウンド2の機銃掃射から逃れて、ちょうどテリア1の目の前を通り過ぎようとしていたフェンリアが墜ちました。
……私の指揮能力って実は相当高いんじゃないですか?
「あ、ターキー、黒くて硬くて熱そうな棒状のものが後ろから……」
『ミサイルだろ!?』
「今度は白いのがぴゅっぴゅっと……」
『もう、表現と現実の差が激しすぎる!?』
おー。
軽口を言いながらもあの機動……素早い七面鳥ですね……きっと痩せてて美味しくないんでしょうけど。
「あぁターキー、これが終わったら七面鳥の丸焼き食べましょうよ」
『こっちの死亡フラグをお前が建てんな!? 本当に死んだらどうするんだよ!?』
「やー、死なないと思いますよ?」
……私がいますから。
「あ、ターキー、そのまま急下降から右旋回。下降と同時にミサイル二発お願いします」
『んな、いっぺんに言われても分かるか!』
「とか言いながら、しっかりやってるじゃないですかー。やだー」
ターキー……本名ルシアさんのミサイルはそのまま海面スレスレへ向かって飛んでいきます。うーん、女性ながら見事な手捌きです。
「その腕前でいったい何人の男を堕としてきたのでしょうか……?」
『人聞きがわる……撃墜の方が悪いのか?』
「多分……」
『で? ミサイルは外れたけどどうするんだ?』
「いえ、ミサイルは囮で……そろそろ」
ぐしゃっ、という音がルシアさんの上方から響きます。
アリさんとアリさんがごっつんこ、というやつです。
何が起きたのかといえばルシアさんを追いかけていた機体とルシアさんのミサイルを避けようとした機体がぶつかったんです。
本来ならそんなことは起こりえないのですが……
「オウル隊の皆さん、もうジャミング切ってくださーい」
『あいあいさー!』
味方のミサイル誘導にまで影響を与えるほど強いジャミングを仕掛けていたからです。
もちろん、目視できる機体にぶつかることはありませんがフェンリアは見えませんからね。
そこを私がハイパーセンサーを使いながらフェンリアを誘導していたわけです。
で、ラスト一機は皆で狙い撃ちです。
今までと違って誘導弾になってますから避けるのはきっと辛いですよ?
「さて、では私はレサスの基地に潜入して兵器データを破壊してきます」
『了解!』
これで、本当に戦争は終わりですね。
……データは盗んでいきましょう。もったいないですし。