Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

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ACX/Flash-back.8

「ガーリートーク、出ます」

 

 ……飛んでみて初めて分かるあるはずの感情の喪失。

 何も怖くなくなってしまいました。

 戦場においてはこれ以上ない好条件ですけど……

 

『ラストサン隊、レーダーに敵影あり。数二十五! 迎撃をお願いします』

「了解です」

 

 隊の誰よりも速く先頭に飛び出します。

 両手には塩の都の大火(ウリエル・ジャッジメント)を装備し榴弾と火炎弾を打ち出す準備もできています。

 さらにハイパーセンサーをフル稼働させて……

 

「……やっぱり、戦闘機とISの差は歴然ですね」

 

 白騎士事件の際の操縦者もきっと同じことを考えていたと思います。

 ハイパーセンサーにより全方位の視界をカバーし、そしてそこに映る敵機の軌道予測まで全自動でやってくれます。

 私がやらなければいけないことは、ただ、引き金を引くだけです。

 それだけで、寸分の狂いもなくエンジンを撃ち抜けます。

 私の射程距離に入るのと同時に爆散する機体も少なくありません。

 ……本当に、何も感じませんね。

 人を殺しているということへの恐怖どころか、敵機を撃墜したことへの興奮すらありません。

 ゲーム気分どころか、暇つぶしに一桁の足し算を延々と繰り返しているような、そんな空虚感だけが心にあります。

 

『全敵機の撃墜を確認。そのまま予定通り飛んでください』

「了解しました」

 

 ……このままレサス中枢を攻め落とすことも……単騎でしたら可能かもしれませんね。

 

「ガーリートーク……アリサちゃん、大丈夫?」

「何も問題はありません。ミシェル隊長」

 

 私を心配してくれているのでしょうけれど、今は平気です。辛くなるとしたらこの戦争が終わって、タサキさんの暗示が解けた後か、IS学園に戻ったあとか……

 今は、この戦争で勝つことだけを考えましょう。


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