Plongez dans le "IS" monde. 作:まーながるむ
そういえば前回から回想編+本編で二話同時更新です。
45. Océans onze
「さて……これで、完璧ですね」
キャミソール型の上と普通のショーツと同じ形の下を穿いて、パレオをしっかりと結びつけて、完成です。
でも、キャミの胸以外のひらひら部分とパレオが少し透けてるんですよね……よーくみると傷跡も見えちゃうかもしれません。
「あ、代表も着替えたんだ。ってかクオリティ高!」
「え、なになに、ワンピ? スク水? ロリっ娘のだいひょーは……ぶはっ! なに、だいひょーに何が起きたの!? スッゴい可愛い、というより美人なんだけど!? てかセクシー!」
入ってきたのは原田さんと……カナダから来たエリザベスさんですね。
……というかエリザベス、スク水とかロリっ娘とか、そんな言葉どこで知ったんですか?
「そこはほら、サブカル通だもん! というかそんなことよりだいひょーだよ! その水着、露出は多くないのにビキニよりセクシーな気がする」
「それを見た目小中学生の代表が来てるから背徳感を感じるって?」
「そう、そうそう! リカちゃん分かってるじゃーん!」
原田さんとエリザベスさんも結構仲いいんですねー……というか原田さんってどんな話でも合わせられるんですね。
この前は三好さんとメイク議論をしてましたし、来る途中のバスの中では織斑君と『IS/VS』――インフィニット・ストラトス/ヴァースト・スカイという第二回IS世界大会『モンドグロッソ』のデータを使った格闘ゲーム――の超絶コンボを探しあってましたし……
でも、私、セクシーですか?
えへへ……
ですよね! 私、まだ幼児体型かもしれませんけど内側からは大人の魅力を放ってますよね!
「うーん……今のだいひょー見てるとふたっちゃんがイッチーとニャンニャンする趣味も受け入れられるなぁ」
「え、ちょ、あの!?」
「ベス、代表は好きな女の子いるからダメよ」
「え、リカちゃん!? 代表、こんなに可愛い上に百合っ娘なの!? それなんて私得(おれとく)!?」
女の子が好きなんじゃなくて好きな子がたまたま女の子なんですってば!
似ているようで全然違うんですからね!?
「というか代表は一途だから少なくともベス得ではないね」
「ないかー。残念」
「しかも、代表の片思い相手、三好並に可愛い子だからね」
シャルと三好さんは方向性が違うので比較しにくいですけど、
「マジかー! やっぱり美少女は美少女としか分かり合えないんだ! 今なら悟り開ける!」
「エリザベスさんが悟り開いても迷惑そうなのでやめてください。あと、エリザベスさんも可愛いと思いますよ?」
「うーあー! リカちゃん! 私泣いていいかな!? 悪気がなさそうだから余計に傷ついた!」
「おーよしよし」
エリザベスさんが原田さんの胸に飛びついて嘘泣きをしていますが……原田さん、これ以上ないってくらいめんどくさそうな顔してます。
というかエリザベスさん、本当に日本語が達者ですね。昔から日本に住んでいたりしたのでしょうか?
でも、ロリっ娘ですか……んー、ちっちゃいのは可愛らしいとも言いますけど、私の場合はなんか違う気がするんですよね。
いえ、他からみたらやっぱりただのロリータなんでしょうけど、私的には大人な女性を目指しているわけで……
「てか、代表的にその水着どうなの?」
「ふぇ!? え、と……これは気に入ってますよ」
シャルも可愛いと言ってくれましたし……私、未練がましいですかね?
自分でも重い性格しているとは思うのですが……
でも、二年越しの初恋だったんです。それこそ、織斑君がシャルと知り合うずっと前から好きだったのに……
「でも、ちょっとわき腹の傷見えてるよ? 太腿のも」
「ん……やっぱり分かります? シャルとラウラさんが気にしますかね……」
「あー、代表、ほれ」
原田さんが私に右手の甲を見せてきます。そこにはあのペンの刺し傷の痕が残っています。
「……その、すみませんでした」
「いいっていいって。でもね、そういうことだよ。二人ともどうしても気にしちゃうと思うよ?」
そうですよね。
……私が勝手な行動をした結果がこの傷なのに、二人の心に影を落としていると考えると心苦しいですけど……だからといって私が何かをすれば二人とも気にしなくなるというものでもないんですね。
「でもさー、シャルロットもラウラも、よくだいひょーの近くにいられるよね。私だったら申し訳なくて近くにいられないよ」
エリザベスさんがぽつりと二人を非難するように呟きました。
でも、二人がダメなら私も……
「あ、ばか。というかそれって代表が私に近づくことも入るよ?」
「いやいや、リカちゃんのは完全に自業自得だったでしょ。だいひょーが意味もなくそんなことするわけないじゃん」
「ベスの代表贔屓も相当よね……」
「だってちっちゃくて可愛いもん」
原田さんに対しても毒舌な感じのエリザベスさんなんですけど、きっと二人は結構仲いいんでしょうね。
原田さんも諦めたように笑っていますし。
でも、私は、意味もなくそういうことをしない人では……ううん、しないと、決めたんでしたね。
「原田さんの時は私が過剰に反応してしまったからですよ」
「えー? でもだいひょーは謹慎だけでリカちゃんは退学になりかけたんでしょ?」
……あれも、私をIS学園に留めるためにもう一人の当事者である原田さんを退学させて有耶無耶にしようってことたったんですけどね。
罰の大きさが罪と比例するとは限りません。
まぁ、原田さんは原田さんでキャサリン・ジェファソンさんに罰を肩代わりしてもらったみたいですけど。
「ま、この話はここまで! ほら、私達は着替えるから。代表はもう海いきなよ」
「そですね」
別に泳ぎたいわけではないのですが、いつまでも更衣室にいるわけにもいきませんからね。
でも、傷痕はどうにかして……あ、そういえばいざという時のために包帯を持ってきましたからそれを巻いちゃいましょう。
余計に目立たせることにはなりますけど、どうせ気付かれるなら直接よりはまだ二人も気にしないんじゃないですかね?
きっと、私が笑顔で気にしてないよって言えば笑ってくれると思います。
「あ、アリサやっときたわね!」
「鈴ちゃん……待っててくれたんですか?」
「まぁね、あんただけいないで騒ぐのも寂しいし」
「ふふ、ありがとうございます。皆さん荷物はどこに?」
「こっちこっち」
鈴ちゃんに手を引かれて一つのパラソルの下に。鈴ちゃんたち以外の人の荷物もあるみたいですし専用機持ち組というわけではないんですね。
まあ、とりあえず荷物を置いて……包帯を巻いちゃいましょう。
「それじゃ、私は一泳ぎしてくるわ」
「溺れちゃだめですよ?」
「私、前世は人魚なのよ」
ニヤリと笑いながら海の方に行ってしまいました。あぁ、せめて準備運動を……!
もう! そうやって自信満々で海に飛び込む人ほど危険なんですからね!
足攣ったりしたら大変じゃないですか!
「もう、見えませんね」
……さて、包帯包帯。
「先に目立ちそうな脇腹から巻きましょう」
キャミの裾を胸の位置まで捲り上げて……固定できないので咥えちゃっていいですよね?
な、なんだか服を捲り上げて下着姿を見せようとしてるみたいで恥ずかしいです……
ぱぱっと!
ぱぱっとやっちゃいましょう!
「ぐーるぐーるぐ~るぐ~るぐるぐるぐるぐる! …………こ、こんな感じでいいですね!」
途中でやっぱり恥ずかしくなっちゃって雑になっちゃいました。包帯を巻く位置がずれちゃっておへそが出ちゃってますけど……まぁ、セクシーってことで。
次は太腿ですか……やっぱり、パレオが邪魔なんですけど……こっちの方がもっと恥ずかしいですね。
スカートを捲り上げてショーツを見せつけてるような気分になります。しかも太腿に巻くので脚を開かないといけませんし……うぅ、見てくださいって言っているようなものじゃないですね。
「し、失敗して長引くのは耐えられそうにないのでゆっくりやりましょう……!」
巻く位置を決めて丁寧に巻いていきます。きつすぎると痛くなってしまいますし、緩いと外れてしまうので絶妙な力加減を意識して……
「あ、不破さん何してる、ん……だ?」
「お、織斑、君……?」
あ、あ、えっと……なんで今なんですか!?
ど、どうしよう。まさに織斑君に向けて足を開いているような状態ですし、み、見られちゃってますよぉ……
でも、足を閉じたら包帯が変になっちゃいそうですし……し、羞恥プレイすぎますってぇ……
「織斑くぅん……」
「な、ななな、なんだ!?」
「見ないでぇ……!」
「ご、ごめん! 不破さんが色っぽくてつい目が離せなく……じゃなくて! えっと、ごめんな!」
い、行ってくれましたか……は、恥ずかしかったです。
お、男の子に向けて脚を開くなんてはしたない……もうお嫁さんになれません……シャルをお嫁さんにもらいましょう。
残りの包帯も巻いちゃって……これでよし。
「こほん。シャルに水着見てもらいましょう」
せっかく選んでもらったんですし、早く見せたいんです!
……でも、鈴ちゃんが溺れないか心配ですし、海を眺めつつ保安員をやりましょう。
「あの桟橋が良さそうですね……」
普段はボートなどが繋いであるのでしょうが、人の多い海水浴シーズンだからでしょうか。危険を避ける為なのか分かりませんが陸地にあげてあります。
とにかく、結構海の先の方まで続いているので、あの桟橋の先で見回りしましょう。
「でも、波ありますね……うん、やっぱり入れません。それに深さも割とあるみたいですし……」
あの、桟橋の先くらいで織斑君でもギリギリ口がでるくらいの深さみたいです。
海に近付くのもちょっと、いえ、結構怖いですけど、私が怯えていたせいで溺れている人の発見が遅れるかもしれませんし……
ざざーん……ざざーん
それに波の音は嫌いではないんですよね。
生まれる前の胎児が聞いている音と似ているから、なんて言いますけど、海が嫌いな私でさえそうなんですから本当なのかもしれません。
にしても、皆さん泳ぐのが上手ですねぇ……私はそもそもプールに入ったことも数えるほどしかないので羨ましいです。
練習してみたいとも思うのですが、既に波も腰以上の深さがある水も怖くなってしまったので……
「はぁ……」
自分のダメさ加減にため息がでます……温泉なら大丈夫なのに……
「さて、悪いが、恨むなよ?」
「ま、同情するが、俺らも金は欲しいからな」
「へ? ちょ、きゃっ!?」
海を注視していたため、背後からの声に反応が遅れました。
後ろから四人くらいが私の身体を抱えて……ってまさか!?
「やめっ! 離してください! 離してぇ! 私、ネタじゃなくて泳げ、」
「「「「そらよ!」」」」
「あ……ひっ!」
バシャーン!
無慈悲にも投げられました。
って、やばいですって! ほんとに!?
「さぁ、ずらかるぞ!」
「「「おおーー!」」」
待って……!
行かないで!
……せめて、水面で音を立てられれば誰かに気付いてもらえるのでしょうが、そもそも上に上がれません……
まぁ、まずは冷静になりましょう。
人間の血液と海水の比重はほぼ同じです。ですが骨も肉も内臓も海水には浮きませんから……理論上では肺の中の空気で浮かぶんでしょう。
で、現状浮かべない私には必要なだけの気体が体内にないということになって、沈んでいるのでこれ以上気体を取り込むこともできません。
つまり、浮かべないということです!
……誰か助けてください! し、死んじゃう……!
ど、どうやって上に行けば……それより水面はどっちですか!?
え、えと……あ! 一度地面に脚をついてジャンプした勢いで水面から顔を出せれば!
えと、沈むには……沈めもしません!? ど、どうしろって言うんですか!
ん、だめ……もう、息が…………