Plongez dans le "IS" monde. 作:まーながるむ
本来の主人公がいなかったら、という感じです。
―数週間、もしくは数カ月前―
―オーレリア海域“
「君があの新兵器のパイロット、アリサ・フワだな?」
「はい」
「俺はミハエル・エンハンス。一応、君が所属することになる隊のヘッドだ」
……四十代程度の浅黒い肌の男性。見た目は確かに歴戦の兵士という感じですね。
そのごつごつした手が私に向けられて……握手ですよね。右手を差し出すと壊れ物を扱うような力で手が握られました。
私との年の差は親子ほどあります。
「全く……君みたいな女の子を前線に送り出すなんて上は何を考えてるんだか」
「仕方ないですよ。私しかISには乗れないんですから」
「そうは言ってもなぁ」
謹慎処分中の私のもとへかかってきた一通の電話。
それは、私を転生させたタサキさんからの『出張戦闘』へのお誘い……もとい要請でした。
この世界での私の立場は、私やミハエルさんの属するオーレリアが作り出した新兵器のパイロット。まぁ、新兵器と言っても私のカゲロウとあまり差はないのですが。
ただ、装備にミサイルと長距離飛行ができるようなスラスターが付いているのは新鮮です。
でも、いったい誰が開発を……?
「えっと、とりあえず隊の皆さんを紹介してくださいませんか?」
「ん、そうだな。ハリス! ミシェル! 自己紹介だ!」
ミハエルさんが手を叩いきながら隣の部屋に向けて叫ぶと、男性と女性が一人ずつ部屋から出てきました。
男性の方は若くてなかなかの二枚目、女性の方は落ち着きのあるブロンドの方でした。
「ん、俺? 俺はハリス。ウィスキーとエロ本を愛してやまないイケメンさ」
……しゃべると三枚目のようです。
「あれ、外したか。まぁいいや。それで俺のコールネームはオランジェだ。正式には
「それで私がミシェル。んー、特に紹介するようなこともないんだけど……コールネームは
……何で二人ともそんな酷いコールネームがつけられているのでしょうか?
それとも軍隊にはそういう慣習でもあるんでしょうかね?
「それで、俺が
「えと、じゃあ、皆さんのコールネームの由来なのですが……」
聞いてもいいことなのでしょうか?
「私は結構機体を壊してるからしょっちゅう違う機体に乗るのよ。だから尻軽。さっきも言ったけど本当は一途よ? というか、器用に男を弄べるなら軍になんかいないし」
「俺はやっべえ作戦から何度も生還してるからだな。普通の兵士より長生きしてるから腐ったミカンってことだよ。ミハエルの旦那も似たような感じだな」
「なるほど……ある意味、現担ぎみたいなものなんですね」
それだけを聞くと馬鹿にしたようなコールネームですけど、由来まで聞くとその真意が分かりますね。
なんというか、少し格好いいです。
「まぁ、私達の悪運もここまでみたいだけどね……」
「え?」
「ううん、なんでもない。それで、あなたは?」
「あ、私はアリサ・フワです。ご存知かもしれませんが新兵器、ISのパイロットです。
でも、この世界では戦闘機が普通のはずですが、彼らにはISはどのように映るんでしょう?
ただの新兵器ってことで納得するようになってるんですかね?
「そっか、それであなたのコールネームはどうする? ルーキーなんかじゃ嫌でしょ?」
「そうですね……」
やっぱり皆さんのように洒落たものがいいですよね。
でも、私にはまだ実績なんて無いわけですし……となると、現担ぎというよりも願掛けですね。
うーん……あ、閃きました!
「ガーリートークなんてどうでしょう?」
「「「??」」」
まぁ、やっぱり分からないでしょうね。多分に私の主観も含まれていますし。
「まぁ、簡単に言うと、最近、隣に住んでいる人が犬を飼い始めたんですよー」
「うんうん、それで?」
「その犬がすっごく可愛いんです」
「え、それだけ? ……あー、そういうこと?」
やっぱり同じ女性のミシェルさんは気付くのが早かったですね。
それに引き替え、男性陣はまだぴんとこない様子。
「女の子同士だと、こういうオチのない話も多いんですよ。ですから、」
「「あ!」」
「そうです。墜ちない、という願掛けでした。てへ」
ちょっと皮肉っぽいところもあって、皆さんのコールネームと比べても浮かないと思ったのですけど……自信満々に言いながら全然だったら恥ずかしいですね。
「あーなるほど! いい感じじゃないか」
「いえ、皆さんのコールネームをお手本にしただけですから」
「ま、とにかくこれで新生
最後……ですか。
なかなかせっぱ詰まっている戦況なんですね。
……それもISがあればひっくり返せてしまうのでしょうけど。