Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

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「黒か白か灰色か」



41. Noir ou blanc ou gris

「ん……んぅ……? ん~…朝、ですか」

 

 久しぶりにゆっくり眠りましたね。しばらくシャル達から距離を置くと決めたからでしょうか……?

 もちろん、距離を置くと言っても話さないとか意図的に避けるということではなくて、私から近寄るのを止めるというだけですが。

 でも、せっかくシャルと話せるようになったのに寂しいですね……ううん、これではまた繰り返しになってしまいますね。

 気分転換が必要です!

 ……お買い物か、暴れるか。

 来週の臨海学校の準備はほとんど整ったので……格闘訓練でもしましょう。やっぱり汗を流すのが一番です!

 さて、そうと決まれば布団から出て鈴ちゃんの朝御飯を食べて訓練場に……あれ?

 

「そういえば、鈴ちゃんいませんね……?」

 

 うーん……?

 あ、昨日、寝る前に何か言ってましたね。確かセシぃと一緒に水着を買いに行くとか何とか……

 あ、そういえば私も水着持ってませんね。

 いえ、あることにはあるのですが……スクール水着ですし。でも、泳ぐ気はないのでそれでいいような気も……

 ……一応、着れるか試してみましょう。

 織斑先生に無理矢理着させられる可能性もなくはありませんし。

 うん、やっぱりスクール水着でも上下で別れてる奴の方がいいですね。一緒になってるのは着替えにくいです。

 ですが……

 

「胸が、ちょっと苦しいかもしれません」

 

 中学生の時から……と言っても一年生の途中からは通信で済ませたのでもう二年間以上着ていなかったのですが、着実に成長はしていますね。ふふふ、ごめんね鈴ちゃん。私は一歩先に行かせてもらいます。

 にしても胸が少し大きくなったことは嬉しいんですけど……これは買いに行かないとダメですねぇ。

 スクール水着は背中と脇腹の傷が隠せてちょうど良かったのですが。太腿は出ちゃいますけど。

 まぁ、脇腹と太腿の傷はシャルを守るためだったので背中ほどは気にしていません。

 むしろ、太腿の傷に至ってはシャルに付けられた傷という点で嬉しかったり……もちろん、シャルが気にするので見せないようにしてますけどね。

 

「やっぱり街に出ますか。お買い物と甘いもので元気だしましょう」

 

 んー、どんな水着がいいですかね?

 背中の傷は絶対に隠したいので……まず背中が見えるものは却下ですね。

 そうなると……ワンピースかタンキニになりますが、ワンピースは着にくいですし……

 売場を見に行って、デザインでどちらにするかは決めましょう。

 買うのなら可愛いものがいいですし。

 うん、ちょっと気分が上向きになってきました!

 

 ぐぅ~

 

「はぅっ……鈴ちゃん、ご飯まだですか? ……っていないんでした」

 

 おなか空いてるときに自分で作るのって結構大変なんですよね……フルーツとヨーグルトですましちゃいましょう。

 

 ◇

 

「ねー、君、IS学園の生徒だよね?」

「…………」

「そんなつれない態度とらないでさぁ」

 

 うわ、うわぁ……これがナンパというやつですか?

 私、見た目からは中学生だとか言われるのに……ふふん、やっぱり分かる人には分かるんですね!

 私の秘めたる大人っぽい魅力に!

 でもちゃら男に興味はないんです。

 傷心中なので、もう少し男らしい人に軟派されてたら危なかったかもしれませんね……

 

「IS学園にさ、シャルロット・デュノアって女の子いるでしょ? 俺、一目惚れしちゃってさ。紹介してくれないかな?」

 

 ……そんなことだろうと思いました。

 シャルの可愛さを認めてくれるのは高評価ですけどシャルはあげません……まぁ、私のものでもないですけど。

 でも、こういうのってどうすればいいんでしょう?

 相手も無理矢理聞き出すみたいな雰囲気でもないですし……でも断ったら態度が変わってしまうかもしれませんね。

 そうなると、私も実力行使という方法を採らなければいけませんし、彼もお巡りさんに連れて行かれるのでお互い不幸になります。

 んー、あまりこういうやり方は好きではないんですけど……

 

「お兄さん。ちょっと、目を瞑ってください。電話で呼び出しますけど番号を見られたくないので」

「えーいいじゃーん……なんてしつこくしたら怒りそうだね。俺、向こう向いてるから電話終わったら肩叩いてね?」

「はい」

 

 にこにこ笑いながら男の人が向こうを向くのを確認して……さて、そーっと逃げましょう。

 朝峰嵐才流には兎踏(とと)っていう逃げるための隠密歩法もあるんですよ! 常々、それは武術としてどうなのかなんて思ってますけど……

 お巡りさんを呼んでもいいのですが、何かされたというわけでもありませんし。ちゃらい見た目に反して雰囲気はいい人ですし。

 早いところ水着売り場まで行ってしまいましょう。さすがに女性の水着売り場まで来るほどの勇者ではないと思います。

 

「というか、このショッピングモール、広すぎですよね」

 

 ショッピングモール『レゾナンス』

 ここになければどこにもない、というほどの規模を誇る、ここらへん一帯の中心地です。

 駅舎にバスストップにタクシースタンドと揃っているためアクセスもよく、その集客力に注目した各ブランドが進出してきているからこその品揃えだとか。ここで買い物することを『レゾる』とか言っちゃうくらいには人々の生活に一体化してる施設です。

 私は人が多いところはいまだに苦手なのであまり利用しないのですが、前に鈴ちゃんがここのことを話していたのを思い出したので少し遠出をしてみました。

 おしゃれな人も結構歩いているので、やはり品揃えは信用できるんでしょう。

 ……あとで洋服とかもチェックしてみるといいかもしれませんね。

 代表候補生ではなくなってしまったので、その分の支給は支払われなくなってしまったのですが、社長さんの好意でカゲロウをテスト機という扱いにして今までの半分ほどの額のお金を試験機に乗る報酬という名目で頂いています。

 なので、軍資金は十分です。

 

「んー……でも、おしゃれな水着ってどんな水着なんでしょうか?」

 

 そもそも泳げないので水着は気にしたことがなくて……今の流行がよく分かりません。もし、自分が可愛いと思って買ったものが流行遅れだったりしたらヤですし……

 誰かと一緒に来られれば良かったんですけど……鈴ちゃんとセシぃもきっとここに着ていると思うので会ったら聞いてみましょう。

 それまでは……とりあえず甘いものですね。

 

 ◇

 

 ところでこれって周りからはデートに見られるのかな?

 男の子と一緒に水着売り場にいるんだから見られるだろうけど……いや、まぁ、そう見えるからリン、セシリア、ラウラ、アリサの四人は僕を尾行してるんだろうけどさ。

 コアネットワークを使って位置情報を確認しようと思ったけど、潜伏(ステルス)モードでどこにいるか分からない……でも、わざわざ潜伏(ステルス)モードにしてる時点でやましい事してるって言ってるようなもんだよ。

 それになによりアリサだけ普通に位置情報の開示を自動許可してるし。

 まぁ、アリサのことだから他の三人のことを溜息混じりで見ながら可愛い水着を探してるんじゃないかな?

 

 ……んー、アリサはどんな水着を選ぶのかな?

 ちっちゃいし、肌も白くて髪も淡いピンク色だから白っぽいのとかいいと思うんだけど……

 あ、でも逆に黒みたいに暗くて濃い色でも映えるかも。

 でも……僕が怪我させたから、傷を隠すために選択肢が減ってるんだろうな……

 脇腹に傷があるからおへそがでるデザインのものも着れないだろうし、太腿の傷なんて隠せるような水着があるかも分からない。

 あったとしてもダイビング用のスイムスーツくらいしか僕には思いつかない。

 ……おしゃれっていう、女の子にとっての楽しみの半分以上をアリサから奪っちゃって……僕はアリサに何をしてあげればいいんだろう。

 今まで以上に謝ったってアリサの傷痕は消えないし、アリサにとってもウザいだけだと思う。

 おしゃれだけじゃない。

 アリサは好きな人の前で裸になることにも人よりずっと勇気が必要になる。

 普通なら恥ずかしさがほとんどだろうけど……アリサは傷痕だけが理由で拒絶されちゃうかもしれないから。

 こういう言い方は嫌いだけど、あの傷跡は見る人にとっても不快に映るしね……多分、アリサにとっては羞恥より恐怖の方が大きいと思う。

 アリサ、幸せになれるのかな……?

 ずっと笑っていて欲しいな……僕を見守ってきてくれた人だから。

 だから、今度は僕がアリサを守ってあげられればって思う。

 きっと、アリサの方が世間から厳しい目を向けられるから……

 あんなに優しい子が苦労するなんて悲しいことだから、アリサが大変なときにはそばにいてあげたいな。

 

 とくん

 

 ……あれ?

 今、なんか変な感じしたかも……?

 

「んー……ちょっとアリサの様子を見に行こうかな」

 

 一夏はまだ水着選んでるだろうし。

 

 ◇

 

 むむむ、なんとか最終コンペまでたどり着きましたが……むしろここからが大変です。

 片方は白地に控えめな花模様と飾りリボンやレースがバランスよくあしらわれているワンピース型の水着。花模様もリボンもピンク色なのでちょっと少女趣味っぽいですけど、小柄な私にはちょうどいい気がします。でも下手したら小学生くらいに見られるかもしれませんね。

 もう片方は黒のタンキニ。タンキニといってもお腹が大胆に出るわけではなくて、上はキャミソールに近い感じでおへそがちょっと見えるくらい。なのでお腹の傷もギリギリ隠れそうです。下も付属品としてちょっと長めのパレオがあるので太腿も隠せますし……ただ、少し背中の火傷痕が出てしまうような気がします。

 いつもなら迷わず背中が隠れるワンピース型を選ぶのですが、こっちは太腿の傷が出てしまうのでシャルが見たら気にしてしまいます。

 タンキニでの火傷痕は背中の上からちょっと出てしまうくらいなので、髪の毛で隠せますし……だから隠せない白ワンピよりかは……

 

「んー、両方着てみれば?」

「ですが、見てくれる人もいませんし、なにより外で水着に着替えるというのがどうにも……ん?」

「どうしたの?」

 

 いえ、どうしたもこうしたも……なんでシャルがいるんですか!?

 だって、織斑君とデートに行ってるはずで……あぁ! 二人で水着を選びに着たんですね。

 も、もしかして更衣室であんなこととかこんなこととか……う、うわぁ

 

「あ、一夏? 多分、まだ男性用の水着売り場にいるんじゃない?」

「いえ、そうではなくて。一緒にいなくていいんですか?」

「僕も水着を買いにきたんだしね。そうだ、アリサ、僕の水着見立ててよ!」

「お、おーけーです?」

 

 なんだか、シャルの勢いに押され気味です。

 でも、この二人は結構淡白な付き合い方してるんですね。

 水着選びなんてお互いにいちゃつけるチャンスだと思うのですけど……あれ? 私的に今チャンスですか?

 ……いえいえ、略奪愛なんてそんな。

 

「僕ね、今これとこれで悩んでるんだよね」

「それはまた……だ、大胆ですね」

「そうかな?」

 

 一つは背中がほとんど完全に露出するオレンジの水着。お腹周りも出るのでセクシーです。

 もう一つは短めなパレオが付いている真っ赤なビキニ。短いパレオって腰元を強調してて逆にえっちぃですよね。

 

「私としてはオレンジの方が……でも赤い方が安全ですかね……?」

 

 男の人ってうなじから踵まで、どこにでも興奮できますし、どっちもどっちな気がしますけど……あぁでも赤い方が脱がせやすそうなので、やっぱりオレンジの方ですね!

 

「うん、オレンジがいいと思います」

 

 出来ればもっと露出の少ないワンピースとかにして欲しいんですけどね。

 その、シャルが男の人にそういう目で見られるのはヤですし……織斑君にだって見せたくないんです!

 ……ちょっと開き直れてきたかもしれません。シャルを応援しつつ、織斑君には邪魔をしましょう。

 織斑君、付き合ってすぐにシャルと身体の関係になれると思ったら大間違いですよ!

 フランスにいる社長さんに変わって断固阻止します!

 手を繋ぐまでは許しましょう。でも恋人繋ぎ以上はまだ不許可です!

 

「それで、アリサはその二つで悩んでるの?」

「ふぇ!? や、えと、その私、泳げないのでせめて可愛いものをというか……~~~っ! ……はい」

 

 私が持っている二つの水着を後ろからシャルがのぞきこんでいるのですが……顔が近いです!

 ちょ、ちょっと横向いたらキスできちゃいそうなくらい……が、我慢です。我慢ですよ!

 ……少女漫画なら主人公とイケメンが同時に振り向いてマウストゥマウスになるんですけど……我慢です!

 でもシャル、ほんとに、ち、近すぎですよー!? ところどころ体が触れあっていて……

 

「わー! やっぱり僕の思った通りだね! アリサは白か黒が可愛いって思ってたんだ」

「あぅ……そんな……えへへ」

 

 か、可愛いなんて……シャルの方が可愛いです!

 ……でも、シャルは私に似合う水着を考えてくれてたんですね。どうしましょう。小さいことなのにすごい嬉しいです。顔が紅くなって、しかもにやけてる気がします!

 い、いま、絶対に変な顔してるので見ないでくださいね!

 

「じゃ、試着してみようか!」

「はぃ……」

 

 二つの水着を持ったままシャルに押されて更衣室に歩いていきます。

 シャルと密室とか……あぅ

 

 ◇

 

 あ、三人の潜伏(ステルス)モードが解除されたみたい。

 僕が一夏から離れたからかな?

 ……うん、そうみたい。

 でも、アリサどうしたのかな?

 なんだか借りてきたネコ……というより衰弱したハムスターみたいに大人しいんだけど……いや、衰弱したハムスターなんて見たこと無いけどね。

 なんだか顔も赤い気がするし……

 

 カシャン

 

 とりあえず二人で更衣室に入ったけど……あれ、なんで二人で入ってるんだろう。

 

「あぅ~……え、えと、着替えますね……?」

 

 アリサ、顔真っ赤……もしかして熱なのかな?

 どうしよ、僕、体温低いから手で熱計ったりできないんだよね……ちょっと恥ずかしいけど、仕方ないよね。

 

「アリサ、ちょっとごめん!」

「ふぇ? きゃっ!?」

 

 こつん

 

 ん、おでこ合わせてみたけど……ちょっと熱いかな?

 これ以上正確に計るには……ね、粘膜接触ってフランスで訓練してたときの教本に書いてあったっけ……

 粘膜接触ってようするにキスだよね……しかも大人の……ムリムリムリムリ!

 いやね、アリサにディープキスされてるけど、あれはアリサ酔ってたしノーカウントだから!

 ……でもアリサの上手だったけど誰かとしたことあったのかな?

 

「しゃ、シャル……? あの、いつまで?」

「あ、ごめん!」

 

 正気に戻ってみれば潤んだ目つきのまま、水着で裸の上半身を隠そうとしてるアリサが目の前にいた……えっと、ここまで恥ずかしがられると僕も妙な気分になるというか。

 その、女の子同士なんだから恥ずかしがらなくても、ね?

 ……あれ。

 そういえば、アリサって女の子が好きなんだっけ……?

 じゃあ、僕は気にしてなくてもアリサにとってみれば、男の子に裸を見られてるようなもの……?

 えっと、悪い事したかも。

 

「え、えと、僕、出てるね?」

 

 このままだとアリサも恥ずかしいだろうし……いや、そもそも女の子同士でも普通同じ更衣室入らないよね。勢いって怖い。

 

「ま、待って、くださぃ……」

 

 ガシッと腕が捕まれた。

 アリサの方を伺うとやっぱり潤んだ目と真っ赤な顔で僕を見てる。

 ど、どうしろと?

 

「その、水着、着てるところを見てもらわないと分からないので……」

「そ、外に見せにきてくれればいいよ!」

 

 どういうこと!?

 というか、うん、アリサも暴走してるのかな。

 多分、僕が原因なんだろうけど。

 

「で、でも……傷痕が……」

 

 あ……

 そっか……更衣室の外だと他のお客さんに傷痕が見られちゃうか気になるから……もっと、気を利かせてあげないと。

 

「ごめんなさい。シャルだって見たくないですよね? こんな傷、見せていいようなものじゃないですし。ごめんなさい。自分で判断するのでシャルは外に出てても――きゃっ!」

 

 ぎゅっ

 

 ◇

 

「アリサ、そんなこと言わないで……お腹と太腿の傷は僕を守ってくれたからでしょ? 僕を守ってくれた証なんだから、僕がその傷を悪く思うわけないよ」

 

 シャルが私を抱きしめながら、そう言ってくれています。本心でしょうか?

 こんな、誰が見たって息を飲むような傷があってもいいんでしょうか?

 それでは、

 

「背中……は?」

 

 人を守ったわけでもない背中の傷は……やっぱり気持ち悪いですよね。

 しかも、私の推測が正しければこの傷は他の生徒を見捨てた結果……罪に対する罰の(しるし)です。嫌悪感を抱いても不思議では……

 

「あのね、うまくは言えないんだけど……僕はその傷が嫌いじゃないよ? もちろん、その傷が好きって事でもないし、どうしてもアリサが可哀想って思っちゃう。でもね? その傷があるからアリサはアリサなんじゃないかなって思うの。自分が辛い目に遭ったから、アリサは皆に優しいんじゃないかなって……」

「私は……違います。ただ、この傷を見ても捨てられないように……私の価値を示しているだけなんです。だから、シャルも鈴ちゃんもセシぃも側にいてくれてるじゃないですか」

 

 多分、こんなことを言われたら皆怒ると思います。皆、私が便利だから仲良くしてる訳じゃないって……

 でもですよ?

 仮に……仮に私が人に興味ないと周りを気にせずマイペースに生きていたら……皆は私のことを見てくれましたか?

 どうしても、そう思えません……

 

「そうだね。皆、アリサが優しいから側にいる。僕もだよ?」

「ですよね……だから、」

「でもさ、その優しさが傷のせいでも、元からの性格でも何も変わらないよ? アリサは、もし体の傷が全部消えたら優しくなくなっちゃう?」

「そんなことは!」

「でしょ? アリサはきっと傷なんてなくても優しいよ。だから私たちも側にいるんだよ?」

 

 ……ほんと、ですか?

 じゃあ、私と仲良くしてくれているクラスメイトの皆さんも、この傷を見ても仲良くしてくれますか?

 誰も、この傷を馬鹿にしませんか?

 

「しないしない。最初は皆戸惑うかもしれないけど、アリサを嫌いになる人なんていないよ。それに、その傷のことを馬鹿にしたら専用機持ち達を敵にすることになるんだから」

 

 それなら……

 

「それなら、この黒い水着にします。火傷痕が見えちゃうかもしれませんけど、勇気を出してみます」

「……うん。僕も最初からそっちの方が可愛いと思ってたよ」

「シャル……ありがとう」

 

 例え、シャルの言葉が間違っていたとしても、私のことを優しいと言ってくれて嬉しいです。

 

「それで、シャル。織斑君を待たせてしまっていると思うのですが……?」

「あ! えっと、水着見てあげられなくてごめん! 一夏のところ行ってくるね!」

「楽しみにしていてください」

 

 いつまでも織斑君の彼女を借りているわけにもいきませんしね。名残惜しいですがそろそろ返してあげないと……

 

「やっぱり、私が優しいんじゃないです」

 

 ……きっと、私の周りの人たちがそれ以上に優しいんですよ。


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