Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

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「おこられませんよーにby私」

なろう時代よりもピンク色薄め

R-17.9注意(

大丈夫、T○ラブるよりかは全然健全


34. Est-ce que cela devient l'objet effacé par un directeur?

「激しく……しないでくださいね?

「ふ、不破さん……」

「ゃん……」

 

 へ、変な声出ちゃいました……!

 だって、織斑君が動いた拍子にもにょもにょが私に擦れて……その、えっと……とにかく変な感じがしたんですよ!

 ……でも、なんで私は大浴場で織斑君の上に跨っているのでしょう?

 お互いに全裸で……どっからどう見ても行為の寸前で、ドキドキします。

 まぁ、いいか。

 

  ◇

 

「バカ!」

「馬鹿ですわね」

「馬鹿だな」

「うぅ……なにも言えません」

 

 試合の後、失血による気絶から回復を果たした私を出迎えたのは鈴ちゃん、セシぃ、篠ノ之さんからの酷い中傷でした。

 私、一年生の中じゃ一番成績いいのに……

 保健室にいる中だと……下から織斑君、篠ノ之さん、鈴ちゃんとセシぃが同じくらいというところでしょうか。

 隅っこに座って暗い雰囲気を醸し出しているボーデヴィッヒさんは多分篠ノ之さんと同程度ですかね?

 私の寝ているベッドに頭を預けてうたた寝しているシャルは……私のちょっと下くらいだと思います。

 二人とも転校してきたばかりなのでイマイチ判断が付きませんが……うん、学年トップである私の立場を揺らがすほどの脅威ではありませんね。

 

「ていっ」

「あぅっ……鈴ちゃーん……怪我人には優しくしてくださいよぉ」

「だ、だって今失礼なこと考えてたでしょ!」

 

 鋭いですね。

 鈴ちゃんは中の上くらいじゃないですか。気にするほどでもないと思いますよ?

 

「まぁ、私が一番成績が良いことには変わりないですけど……なんですか? ダメだコイツ、なにも分かってねぇな……みたいな目しないでくださいよ」

 

 何を責められているのかは分かってますよ!

 でも、私にとってはシャルの方が私の身体より大事なんですから仕方ないじゃないですか。

 結局、脇腹の傷は割と深くて自然治癒に任せるなら夏休み中に完治するかどうか……掠り傷だと思っていた太腿も夏休みに入るくらいまでかかるだろうと言われました。

 ああ、足りなくなった血は輸血で補ったらしいです。

 なんでもAB型の血液が若干足りなかったらしく、シャルが不足分を緊急で献血したとか……つまり、私の体の中にはシャルの血が。えへ

 

「怒られてるのになんで笑ってるのよ!」

 

 いえ、主な原因はシャルの寝顔ですが……膝枕してくれているセシぃの優しさとかもあります。

 セシぃはどんな顔をしてるのでしょうかね……?

 

「…………見えません」

 

 というか、視界の半分がセシぃの胸に覆われています。無駄にでかいですね、

 

「鈴ちゃん! 私の精神的安息のためにセシぃと変わってください!」

「意味分からな……あぁ……意味は分かったわ。でも、それは私への挑発と受け止めていいのよね……?」

 

 ち、違っ……!

 

「別に鈴ちゃんなら胸が小さいからお顔がおくひえうはんへ(よく見えるなんて)!」

「小さくて悪かったわね! ……お、やらかい」

 

 ほっぺたで遊ばないでくださいー!

 

「伸びちゃうじゃないですか!」

「伸びないわよ! だから、もうちょっと……ね?」

 

 ね? じゃないです!

 

「あー、鈴?」

「なによ?」

「不破さん、怪我とか気にしないで暴れそうだから止めてくれ。見てるこっちが不安になる」

「た、確かにそうね」

 

 暴れませんよ! でも織斑君ナイスです!

 それにしても……

 

「あの、ボーデヴィッヒさん? こっち、来ませんか?」

 

 声をかけるとびくりと肩を跳ねさせて私を見てきました。

 その目はちょっと怯えていて……なるほど、確かにウサギですね。

 

「行っても、いいのか?」

「いえ、来たくないなら良いですけど……ボーデヴィッヒさんこそ大丈夫ですか?」

 

 あの損傷レベルからVTシステムを使った上、私の一撃を食らったあとで織斑君の雪片弐型で斬られたなら全身が痛くなっていても不思議じゃないのですが……

 

「私は大丈夫だ。若干体が重く感じるだけで……」

「ボーデヴィッヒさん、アリサさんに謝罪はないのですか?」

 

 セシぃがボーデヴィッヒさんに冷たく言い放ちます。

 

「あ、セシぃ、あれはひはふんへふ(ちがうんです)……って鈴ちゃん!」

「はーい、アリサは黙ってる」

 

 なんでですか!

 ボーデヴィッヒさんは全く……あんまり悪くないんですよ!?

 そりゃ、方法は悪かったと思いますけど、私のために怒ってくれたんですし……

 

「……不破、悪かった。事故とは言えお前を殺しかけた」

 

 そんなことで謝られても……

 私的に殺されかけたなんて思ってないんですし、それに、そんなことより私のために怒ってくれたことの方が嬉しかったですし……

 そんなことを考えていたら鈴ちゃんにほっぺたをつつかれました。

 

「ほら、答えなさいよ」

「え? あ、えっと、気にしてませんよ? そもそも飛び込んだの私ですし……」

 

 だから謝る必要なんてないですよ?

 

「はい、これで一件落着ですわ。ボーデヴィッヒさんもこちらに来なさいな」

「……感謝する」

 

 ……あ。

 セシぃは私が気にしてないことは分かっていたんですね。むしろ今のはボーデヴィッヒさんの気分を晴らすための小芝居ですか……

 セシぃって、小学校の先生とか向いている気がします。

 

 コソコソ

 

「? ボーデヴィッヒさん、なんでわざわざそんな端っこに?」

「き、気にするな! 私は端っこが好きなんだ!」

「?」

 

 しばらく意味が分かりませんでしたが……ボーデヴィッヒさんの視線を追って意味が分かりました。

 結局、織斑君に惚れたんですね。

 だから恥ずかしがって織斑君の視線を避けるようにしてこちら側に座り込んでいる、と。

 

「でも、ボーデヴィッヒさんはなんで怒ってくれたんですか?」

「ん、む? 仲間のために怒るのは当たり前だろう。あぁ、別にシュヴァルツェ・ハーゼに入れと言っているのではなくてだな……その、一度、共に戦えばそれは仲間だろう?」

 

 顔、真っ赤ですよ?

 ……恥ずかしいなら言わなければいいと思いますっ。私まで照れちゃうじゃないですか!

 でも、私を仲間と言ってくれて、ありがとうございます。

 

「ボーデヴィッヒさん、私のことはアリサと呼んでください」

「……私のこともラウラと。アリサよろしく頼む」

 

 これでボーデヴィッヒさん……ううん、ラウラさんともお友達、ですね。

 

「んぅ? ……んー?」

 

 ……シャルがもぞもぞ動き出しました。

 半分寝ているような顔がまた可愛らしくて困っちゃいます。

 次第にシャルの焦点が私に合って……

 

()()()! 起きて大丈夫なの!?」

「…………?」

 

 あれ……?

 今、名前で……?

 

「アリサ? やっぱり辛いの?」

「っ……! 辛く! ないですっ!」

「きゃっ」

 

 むしろ横棒一本書き足して幸せなんて親父ギャグ言いたくなるくらい幸せです!

 嬉しすぎて、つい、シャルを抱き寄せちゃいました。

 

「あ、アリサ、苦しいって……ふふ」

「シャルー……えへへ」

 

 もう、ぎゅーっと抱きしめて頬ずりしちゃいます!

 

「ねぇ、セシぃ」

「はい……?」

「今、アリサがデュノアのこと持ち上げてベッドに引きずり込んだように見えたんだけど……寝た状態のまま」

「……きっと気のせいですわ。それよりもアリサさんが殿方にああなるとは思いませんでしたわ」

「え? ああ……うん。まぁ、そうよね」

「それと鈴さん。私になにか、隠してはいませんか?」

「アリサに聞いて……」

 

 ぎゅー!

 すりすり

 シャルは柔らかいですねー。

 

「あ、ラウラ、そういえばさっきのシュヴァルツェ・ハーゼってなんのことだ?」

「む? ああ、私が所属しているドイツ軍の特殊部隊だ。目下、アリサをスカウトしている」

「だめだよ……アリサは渡さない」

「ぅ? しゃる?」

 

 どうしたんですか?

 シャルに夢中になりすぎて話を聞いていませんでした。

 シャルが少し怖い顔でラウラさんを見つめています。

 わ、私を見てください! ……なんて恥ずかしくて言えませんっ!

 

「アリサはドイツには行かないよ。だって、僕のことを守ってくれるって言ってたもん」

「ふん、軟弱ものが。普通は男が女を守るものだろうが……と言いたいところだが誰かに守られるアリサというのも想像できないな。それに、」

「それに?」

「アリサがお前を守ると言うならお前もくればいい。戦力としては十分だからな。それに一夏、お前も私を守ってくれるのだろう? だったらお前もだ」

「ちょ、一夏どういう事!?」

「え? あ、いやー……あれ、やっぱり夢じゃなかったのか」

 

 ここぞとばかりニヤリと笑うラウラさん。さっきまで照れていたのに忙しい人ですねー。

 まぁ、私は……デュノア社の問題を解決したあとならドイツに行っても良いかもですね。

 もちろんシャルがいればですけど。

 

「あぁ、問題ない。どうせ、アリサと一夏が来るのなら鈴もセシリアも来るのだろう? それなら夏の休暇に全員ドイツに招待しよう」

「ま、まぁ……」

「考えないこともないですわ」

 

 当然、国が許さないでしょうが……世界のパワーバランス崩れまくりですね。

 シュヴァルツェ・ハーゼには既にISが三機配備されているので、それに加えて更に五機……五機?

 

「えっと、私、シャル、織斑君にセシぃと鈴ちゃん……あ、ラウラさん! 篠ノ之さんも誘ってあげてください!」

「む? あ、す、すまん篠ノ之、まったく話さないから興味がないのだと……篠ノ之?」

「なぜ、だ」

「「?」」

 

 いきなりなぜと言われても……私とラウラさんには分かりませんよ?

 

「なぜ、私だけ篠ノ之なんだ!? 私は苗字で呼ばれるのは嫌いだというのに!」

 

 あ、そういうことでしたか……

 ですが、

 

「篠ノ之さん。苗字が嫌いな理由は篠ノ之博士がいるからですか?」

「……そうだ。苗字で呼ばれるたびに私を通してあの人を見られている気がする! あの適当で、ちゃらんぽらんで、どこかズレたのが篠ノ之家の人格だと思われてしまう! あの人以外はまともなのに!」

 

 好きな人にこそ怒りを覚えるとは言いますが……篠ノ之さんもシスコンだったんですね。

 

「ということは篠ノ之博士のような人だと思われたくないから苗字で呼ばないでってことですか? でも、それだと篠ノ之博士が篠ノ之家の代表だと認めることになってしまいますよ?」

「う……」

「なので、あなたはその苗字を背負ったまま活躍する方がいいと思います。そうすれば篠ノ之博士が突然変異だと分かってもらえますよ」

「なるほど……」

「なので頑張ってください。“篠ノ之”さん」

「篠ノ之が家の代表になると言うことだな。苦労もあると思うがいずれ篠ノ之束よりも有名になればいいだろう」

「う、うわぁぁぁぁぁん!」

 

 あれ、ちょっと虐めすぎましたかね?

 冗談だったんですけど。

 ラウラさんは天然で言ってましたね。

 

「怪我してても絶好調ね……」

「人を年がら年中いじめっ子しているように言わないでください」

 

 ちょっと、面白そうだったので魔が差しただけですよ!

 ……実際、面白かったですし。

 

「まぁ、そろそろ……ふわぁ……眠いです」

「あら。アリサさんが寝るのでしたらわたくし達もお暇しましょう」

「そうね。アリサ、大人しくしてるのよ」

「あまり心配されるのも気になるだろうから私はなにも言わないぞ。ただ、」

 

 セシぃに鈴ちゃん、最後にラウラさんですが……ただ、なんでしょう?

 少し、顔が赤いような……?

 

「いや、お互いに合意の上ならいいのだが……眠る前に離してやらないと可哀想じゃないか?」

「え……あ」

 

 シャルのことですか。

 さっきまでベッドサイドでうたた寝していたのに、いつの間にかベッドに潜り込んで寝ていたようですね。

 仕方ない人です。

 

「んー。シャルも連れて行ってあげてくれますか? 流石に保健室で同衾はまずいので」

「任された」

 

 ふぁ……おやすみなさぃ。

 

 ◇

 

 んー。

 アリサのデュノアに対するあの態度……あれは、アレよね。

 デュノアは事情があって男装してるけど、本当は女の子。つまり、アリサの片想い相手は……あんなの見せられたら相思相愛にも思えるけど。

 でも、他から見た二人は男と女な訳だから健全と言えば健全なのよね。

 セシリアとかどう思ってるのかしら?

 

「セシリア、さっきのアリサとデュノア、どう思った?」

「え? そうですわね……お友達になれて嬉しい、というところでしょうか?」

 

 鈍感!

 というか、どうすればそんな解釈ができるのよ!?

 ……セシリアはダメね。

 なまじお金持ちだからそこらへんに疎い。恋でもすれば変わるんだろうけど。

 よし、じゃあ一夏ね。

 

「一夏はどう思う?」

「うん、あぁ。そりゃあれだろ。不破さんの好きなのがシャルルってだけで。まぁ、不破さん、女の子も好きらしいしな」

「も?」

「だってほら、好きな子が女の子なんです! ってたまに言うだろ?」

 

 あーなるほど。

 あれってそういう意味だったのね。なんか変な日本語だとは思ってたけど。

 

「ちょっといいか?」

「へ? あぁ、ボーデヴィッヒ……あんたのファミリーネームって言いにくいわね。なに、ラウラ?」

「ちょっと、こいつとアリサのことを話しているみたいだからちょうど良いと思ってな」

「それで、なによ?」

「こいつ、女か?」

「「!?」」

 

 え、ラウラって実は鋭い子なの!?

 どっからどう見たって他人に興味はありません! って感じなのに……

 

「その様子だと図星か。アリサは知っているのか? もし知らないなら……」

 

 ……片想い相手の男が実は女でした、なんて事を心配してるのね。

 アリサが気を許すくらいだし、ラウラも良い奴ではあるのね。

 アリーナで私をバカにしたことを謝られてないからまだ許さないけど。

 しつこい? 関係ないわ!

 

「でも、ラウラはどうして気付いたんだ?」

「うむ。こうして背負っていると男にしては重心の位置がな……それに筋肉の質も男のものとは思えない」

「な、なるほどね……あぁ、アリサのはそれを踏まえての感情よ。安心して良いわ」

「そうか」

 

 うーん。男らしいわね。

 私達が家族だとすると……

 ラウラが父親でセシリアが母親、私が姉……いや、妹かも。一夏は私の彼氏でシャルはアリサの彼氏……彼女ね。アリサ、あれで男らしいし。姉ポジションには……生徒会長?

 なんか、年長者が頼りないから下がしっかりする家庭の典型ね。

 

「それにしても、デュノアさんのどこが良かったのでしょう? もっと男らしい方のほうが将来楽だと思いますわ。アリサさんを引っ張っていけるくらい遠慮がない方でないと……」

 

 ほら、娘の将来を心配する母親。

 

「アリサなりに惹かれるところがあったのだろう。私もアリサの苦労が絶えなさそうだとは思うがな」

 

 娘のこと、分かってますよ? みたいなちょっと情けない父親。

 私も世話を焼かないとダメダメな姉を心配してる感じだし……これ、ちょっと面白い。

 

「あ、箒どうしよう」

「鈴? 独り言か?」

「あー、何でもないわよ」

 

 思わずくすりと笑ってしまった私を覗き込む一夏……私を気にしてくれる彼氏、なんてね。

 

「あ、ちょうど良いところに。アリちゃんまだ保健室?」

「楯無先輩、アリサなら保健室で寝てるはずですよ?」

「そ、ありがと」

 

 うーん……あの人は実姉というより近所のお姉さんね。なんか、近所の妹分が倒れて心配みたいな感じ?

 それにしてもあの瓶……いや、まさかね。校内だし。

 

  ◇

 

「んふふー」

 

 可愛い寝顔。

 こんな子が人を庇うために自分を切らせたなんて誰も信じないでしょうね。

 悪戯するためのものも持ってきたけどしばらくは眺めてようかな。

 調べてみたけどあのフランスの転校生、アリちゃんの片想いの相手だとか。

 好きな子のために頑張るなんて、青春小説の男の子みたい。

 そういうのは嫌いじゃないけど……この子は危ういわね。

 

「目的のためとはいえ、不必要に命を懸けちゃダメよ」

 

 こういう子は言っても聞かないんだろうけどね。

 聞けば織斑君もそんな感じだとか。

 二人の違いはそういう場面があったかなかったかの違いかな。

 

「命なんて懸けてませんよ……?」

「あれま、起こしちゃった?」

「いえ、喉が渇いて……あれ、その瓶、なんですか?」

「えっ? あぁ、お見舞い品……みたいなもの?」

 

 本当はおふざけで持ってきたワインだけど……

 

「ありがとうございます……ワインみたいな瓶ですね」

「み、見た目だけね……! 私のお気に入りのブドウジュースなの」

 

 一杯注いでアリちゃんに渡すと、一口飲んで……

 

「ん。これ、おいしーですねぇ」

「え?」

「どうしました?」

 

 いや、本物のワインじゃないですか! ってツッコミを待ってたんだけど……気付いてない?

 

「私、ブドウジュースって飲むの初めてです。ワイン、というかお酒も飲んだことないですけどね。ふふ」

 

 あ、あー。

 ブドウジュースで酔っ払う人もいるみたいだし……飲んだことなければ分からないかも。

 これは、面白いことになるかも。

 

「さつ社長! もう一杯いっちゃいましょ♪」

「社長って……どんなシチュエーションですか?」

「うーん、美人秘書を侍らす敏腕若手社長とか☆」

「先輩そういうの好きなんですか? パワハラによる性交渉とか」

「せいこっ!?」

 

 あ、アリちゃんってこんな子だったっけ!?

 いや、うん。

 学年も違うから普段のアリちゃんは知らないけど……少なくとも私の前では性的な発言をするような子じゃなかったし。

 ということは……二杯目で酔っちゃったの?

 これは……楽しめる!

 

「しゃちょー。おつぎします☆」

「おー、すまんな、たてなしくん」

 

 のってきた!

 しかも呂律も怪しくなってきて……

 てか、紙コップとはいえ一気飲みは危ないって!

 あーあ、飲み干しちゃった……この子、将来悪い男に酔わされて騙されそう。今は私がその立場だけど。

 

「ぐいっと飲んじゃいましょー」

「えっと……私はパワハラなえっちぃ上司ですからこういう場合は……」

「なんか付け足されてひゃん!?」

「こほん……ぐへへへへ、ねーちゃんいいケツしとるのぉ。ほれ、もーちょい触らせんかぁー! ってかんじです?」

「アリちゃんキャラが……ぁん」

 

 ちょ、ちょっと!?

 アリちゃんのキャラ崩壊とか、そういうことじゃなくて、手付きが妙に慣れてるっていうかツボを抑えているというか……!?

 

「きもちーですかぁ? それなら嬉しいです。えへへ……」

 

 しかも、可愛いし!

 笑い方は無邪気なのにテクニックは歴戦の……いや、まぁ、うん。私も実はこういうことには詳しくないんだけど。

 でも、うん。

 今のアリちゃんはヤバいってことは分かるわ……

 

「アリちゃん、そろそろ……」

「ん? うん、分かりました」

「ほっ」

 

 正直、これ以上触られてたらお姉さん陥落していたわ。

 おへそとか内腿とか……性感帯だったのね。

 お姉さん、年下の女の子に開発されちゃった……なんて。

 うん、とりあえず着替えに行きたいかな。

 

「焦らしすぎましたねー。うん、ここからが本番だって二木さんもいってましたし!」

「ほ、本、番?」

「ええ、おへそとかで体をあっためたあとでもっと気持ちいいところをせめるとすごいよって教えてくれました」

「その、場所って?」

「いやー、それはその、ゴニョゴニョでゴニョゴニョ……ですよ」

「ちょっ!?」

 

 二木さんって何者!?

 なんで、そんなに詳細な攻め方をしってるの!?

 お、お姉さんピンチかも……

 

「じゃ、しゃちょーさんの言うことには従いましょー!」

「いーーーやーーー!」

 

 もう……お嫁にいけないっ!

 

  ◇

 

「ふーん、ふふーん、ふふふーん♪」

「アリちゃん、ご機嫌ね……」

 

 こんばんは……汚されちゃった更識楯無です。

 あれだけのことがあって、なお私の苦難は終わらないようで……

 だって、アリちゃん酔わせたなんて虚ちゃんに知られたらなんて言われるか……

 だからお風呂で汗をかかせて酔いを抜くことにしたんだけど……そういえばアリちゃん怪我してるのよねぇ。

 だから今かいている汗を拭く程度にしてあげないと。

 今日はボイラー点検の日だし、ついでに私は大浴場を使おうかな。

 あ、サウナなら汗もかけるし気をつければ傷が開くこともないかしら?

 

「せーんぱい♪」

「ん?」

「何でもないです!」

 

 まぁ、さっきのエロモードは終わったみたいで今は上機嫌なだけで助かる……というより天真爛漫! って感じで可愛い……今度はお姉さんが美味しく頂いちゃおうかしら。

 ……なんて考えて美味しく頂かれたばかりだったわね。自重自重。

 とりあえず、アリちゃんの周りの子達にお酒を絶対飲ませないように言わないと。なんか、大惨事が起きるような気がする。

 

「はい、じゃ、脱いでー」

 

 見た目からは酔っているかは分からないのよね。

 まぁ、そうじゃなきゃ大浴場まで連れてこれなかったけど。

 服を脱ぐ動作も普通の女の子だし、よく言うことも聞いてくれるし……え、待って、まさか……

 

「アリちゃんアリちゃん、ちょっとお尻つけて座って足開いてみて★」

「? 分かりました」

 

 ……うん、予想通り。こんなに嬉しくない予想通りも珍しい。

 地べたでいわゆるM字な状態のアリちゃん。普通なら絶対にできない恥ずかしいポーズも躊躇わずに……

 この子、酔ってる状態で命令されるとなんでも素直に聞いちゃうんだ……

 

「危なすぎ……」

 

 絶対に、絶対に飲ませないようにしないと。

 

「じゃあアリちゃん、体拭いてあげる☆」

「お願いしますー」

 

 さて、最初に包帯を解いてあげないとね……と思ったけど随分汗を吸っちゃってるわね。

 これは先に換えの包帯持ってきてあげた方がよさそうかな?

 

「んー、アリちゃん、包帯取ってくるから大人しくしててね」

「分かりました」

「それまでサウナに入っててね。ちゃんと水を飲むの忘れないでね?」

 

 まぁ、今日は誰も来ないだろうし一人にして平気よね。

 ちゃんと水を飲んでくれるか分からないけど……温度を低めにして急いで戻ってくれば平気よね。

 

  ◇

 

「織斑君、デュノアさん! なんと今日から男子の大浴場使用が解禁です! もともとボイラー点検で生徒が使えない日なので頑張っちゃいました!」

「おお!」

 

 山田先生の言葉に、つい感動の声を漏らしてしまう。正直、そろそろ疲れを大きな風呂で落としたいと思っていたんだ。

 やったね!

 ああ風呂! 和の心! 文化にして伝統、いーやもはや魂だね!

 風呂最高!

 ……なんて風呂賛歌を心の中で歌っている俺を一気に冷静にさせる爆弾が投下された。

 

「なので二人でお風呂にどうぞ! ゆっくりしてくださいね!」

「えぇ!?……と、ふたり、で、入ってきます」

 

 危ない。

 危うく二人で入れるわけないでしょう! と言うところだった。

 ちらりとシャルルを見れば俺と同じことに思い至っているようで、若干顔が赤くなっている……

 

「では、はやく着替えを取りに行っちゃってください! 私は鍵をとってきますね!」

 

 生徒のために働いているからか、山田先生は輝いていて……断ることもできないよな。

 

「……シャルル」

「困ったね……ま、まぁ、とりあえず、着替えを取りに部屋に戻ろうよ」

「大浴場に行くまでの間に名案が思いつけばいいんだが……」

 

 二人で唸りながら着替えを取りに行ったけど……名案なんて思い付くわけがなかった。

 だって、普通に考えて無理だろ?

 

  ◆

 

「うー……暑いです」

 

 いつの間にか先輩もいなくなってますし……いったんサウナから出ましょうか。

 

  ◆

 

 俺達が大浴場前に着いてからしばらくして山田先生もやってきた。

 

「あ、早いですねー。それじゃ、鍵を開けますよ?」

 

 カタンという軽い音がして鍵が開いた。

 そして、山田先生が扉を開け、

 

「あれ? あれあれ? 今鍵開けましたよね? ……勘違い?」

 

 ることは出来なかった。たまにある鍵を開けたつもりなのに開いてなかった、ってやつだ。

 思わず漫画みたいにずっこけそうになったぞ!

 ただ、再度、鍵の開く音をさせて今度こそ扉は開いた。

 開いちゃったよ……

 

「それでは、一番風呂をどうぞ!」

 

 バタン

 

 ……シャルルと更衣室で二人きり。

 これは、まずい。いかん。風呂には入りたいがシャルルと一緒にというのは論外だ。かといってシャルルを待たせるわけにも行かないし……

 

「あ、俺が入らなければいいのか!」

「だ、だめだよ! 一夏はお風呂好きなんでしょ?」

「あぁ! 愛してる!」

 

 あれ、なんでシャルル引いたの?

 お風呂は和の象徴だぞ? 愛さないわけがないだろ?

 

「……やっぱり男の人の裸が見れるから……?」

「なんか言ったか?」

「ううん!? なんも! とりあえず、一夏入っちゃってよ! フランスではあんまり湯船の習慣とかないからさ!」

「ちょ、シャルル押すなって! まだ服着てるから! とりえず脱ぐから物陰に行ってくれ!」

 

 シャルルに更衣室の影に行ってもらって全裸になる。

 手拭いを肩に掛けて……これぞ、日本男児の入浴スタイル!

 さーて! 風呂風呂!

 

 ガララッ

 

「んー、話に聞くところによれば桧風呂とかっ!?」

「わぷっ!?」

 

 風呂場に足を踏み入れた途端なにかに……声がしたから誰かにぶつかって転んだ。

 声も聞き覚えあるし……目を開いてみれば、

 

「んぅー? ……あ、織斑君もお風呂ですかぁ?」

 

 仰向けに転んだ俺に不破さんが跨っていた……ってなんで!?

 

「一夏、すごい音したけど大丈夫?」

「あ、あぁ! 脚が滑っただけだ! どこも打ったりしてないから心配しなくていい!」

 

 危なかった。

 うん、冷静になるために状況を確認しよう。

 まず、全裸に包帯姿で、しかも体を隠そうともせずに馬乗りになっている不破さん。

 

 にこにこ

 

 不破さんのお尻の下にはちょうど俺のへそ。

 アレな言い方をすれば、いわゆる逆レイプ的視点。

 うわ、いろいろショックで本当に立ち直れなくなりそうだな。

 よし、冷静な自己分析はできたぞ。

 

「って落ち着けるかぁ!」

「一夏!?」

「いや、歌を熱唱していただけだ! きーみーがーあーよーおーはー!」

「そ、そう」

 

 ふぅ、国家のおかげで少し日本男児の心を取り戻したぞ。

 そう!

 日本男児たるものこういう場合は――!

 

「据え膳食わぬは恥! なわけあるかぁ!」

「一夏、迷惑になるからあんまり大きな声で歌わないようにね?」

「わ、わかった」

 

 静かに、不破さんの対処に集中しよう。

 桃色に光る長い髪。

 慎ましやかな乳房。

 おそらく、誰にも見せたことがないだろう秘密の場所にはまだ毛も生えてな……だから違うだろ俺! 流石に三回目はつまらないぞ!

 気を取り直して……真っ白の包帯がかえって不破さんの白い肌を強調して……じゃない。

 転んだせいか包帯がだいぶ濡れてるけど、これじゃ傷口が湿って開くんじゃないか?

 

「不破さん、その包帯かえたほうがいいんじゃないか?」

「そう言うなら……」

 

 脇腹の包帯を解き始める不破さん……だから今じゃなくていい!

 そう思って止めようと思ったけど、体が動かなくなった。

 不破さんの傷を見たから……完治したとしても二十センチ以上の一生傷が残るだろう。女の子なのに……

 でも、そんな傷があっても、

 

「綺麗だ……」

「よいしょっ」

「って、シリアスになってる間に肌の面積がっ!? というか左足だけ持ち上げないで! 見える! 見えてしまう!」

 

 って、ああ! 期待に体が反応しやがった! 静まればか息子!

 

「おぉ……前の私の方が大きかったですね」

 

 不破さんが振り返って元気になってしまった俺のを見て……ってなに見てんの!?

 てか前の不破さんのなにと比べたの!?

 

「んふ、織斑君、こーふん、してますね?」

「しっ、してない!」

「最近、シてないんです? つまり、シたい?」

 

 だから女の子がそういうこと言っちゃダメだって!

 くそ、落ち着け、落ち着け俺!

 不破さんのペースに乗せられちゃだめだ……そもそも不破さんの様子がおかしいけど一体どうして……?

 

「やっぱり……傷だらけの女の子とはシたくないですよね」

 

 悲しげな顔をする不破さん。

 そんな顔をさせるつもりはなあったから、つい、叫んだ。

 

「そんなことない! どちらかと言えばヤりたい! ……じゃねえって言ってんだろ俺ぇぇ!」

 

 俺、死ねばいいのに……言葉のチョイス最悪すぎるだろ。

 

「……ならシても、いいですよ」

「はぁ!?」

「でも、私初めてですし……怖いから私が上でもいいですか?」

 

 ちょ、え?

 待て、これは罠だ!

 不破さんがクールじゃないし、そうに決まってる!

 きっとドッキリ大性交……字が違う!

 ととりとりあとりあえとりあえず、おおれ俺くくーくーるくクールになれ。

 というか、ドッキリなら不破さんの裸を見るなんて状況にならないよな。俺が得するだけだし不破さんだってそんなことしたくないだろうし……

 え、なに、じゃあこれマジか?

 いいの?

 

「あと、危ない日なので外に……」

「わ、わかった」

 

 初めてとか、危ない日とか外に出してとか……最後まで言われたら抑えが効かなくなるから遮った。って外に出しては聞いてないぞ俺!?

 俺よ……本当にさっきから言葉のチョイス、どうにかならないか?

 いくらなんでも、わかったはないだろう……

 それと不破さん、挑発するためにわざと言ってるのか? これで天然なら、破壊力やばいぞ。

 というかもう理性が……

 

「ゃん……背中に織斑君の当たってます……」

 

 あ、理性切れたわ。恥ずかしいけどちょっと興味ある、みたいな声出されたらもう無理だ。

 さようなら理性。こんばんは性欲。

 最近、やたらと誘惑してくる鈴とか、不破さんが好きなのはシャルルのはずとか、いろいろ考えたけどもう無理だ。

 脇腹を刺激しないように不破さんの腰骨を掴んでその身体を持ち上げる。

 

「不破さん、いれ、」

「一夏、騒がしいけど本当に大丈夫? 入るよー?」

「……シャルル? ちょ待って! 不破さんとりあえず湯船の方に……!」

「はぁい。わかりましたー」

 

 上機嫌に不破さんが離れていく……た、助かった。

 ……どっちから?

 

 ガララッ

 

「一夏、なにしてんの? ってそれ……!」

「っだぁぁあ!?」

 

 隠させてぇ!

 

 ◇

 

 一夏の……大きくなってる。何で?

 も、もしかして、僕と入ろうと思ってとか……?

 

 ちゃぷん……

 

「あれ、誰かいるの?」

 

 少し周りを伺ってみると湯船に浸かっている人がいた。

 あのピンク色っぽいブロンドは……アリサ? なんで?

 山田先生が今日は使えない日だって言ってたのに……って湯船!?

 

「アリサなにしてんの!? 傷開いちゃうから湯船なんか入っちゃダメだよ!」

「ふぇ? でも織斑君が……」

 

 一夏が来たからびっくりして、ってことかな?

 でも一夏がお風呂に入ってから結構経つし……というか、一夏はずっとアリサの裸を見てたってこと?

 恥ずかしがってるアリサを見て興奮してた……とか。

 あれ、かなり幻滅。

 一夏、そういう人ではないと思ってたのに……それに、怪我してるアリサに負担掛けて……

 

「って、そんな場合じゃなくて、一夏出てって!」

「お、おう!」

「それでアリサも湯船からでる!」

「わかりましたぁ」

 

 うーん。

 なんかおかしいなぁ、

 アリサが素直すぎるし、なにより怪我してるときにお風呂に入るほど浅慮な人じゃないし……

 ううん、考えるより先にやることやらなきゃ。

 

「アリサ、傷、見せて」

「傷……ですか? でも……ううん、しゃるが言うなら……」

 

 アリサは言いながら髪を纏め始めて、その髪の束を体の前に持ってきた。

 ん? なにをする気なんだろう?

 脇腹と太腿の傷だから髪の毛を纏めなくてもいいんだけど……

 

「えっと、その、見苦しいですけど、これも含めて私なので、受け入れてくれると嬉しい……です」

「え……?」

 

 でも、アリサは脇腹の傷を見せるでもなく、もちろん太腿の傷を見せるでもなくて――

 ただ、背中をこちらに向ける。

 

「ぅゎ」

 

 つい、漏れてしまった僕の声に不破さんがびくりと肩を跳ねさせた。

 不破さんの背中には火傷の痕。

 ……それも生半可なものじゃなくて、火事場から命からがら逃げ延びたことを示すような大きなもの。

 背中の上半分が肌とは違う色をしていて……

 昔、火事にあったって情報もあったけど……ここまで酷いなんて。

 友達の命だけじゃなくて、きっと女の子としての自信まで奪われて……

 

「わっ! ……しゃる?」

 

 そう思ったら、アリサを抱きしめずにはいられなかった。

 ……これまで、どれくらい苦しんだんだろう?

 クラスから一歩引いているように……自分と人との間に線引きしているように見えるのもこの傷が原因なのかな。

 もし、そうなら……

 

「その一線、越えてあげたいな……」

 

 アリサに、僕は気にしないってことを伝えたい……

 

「しゃる?」

「あ、ううん、なんでもないよ」

 

 なんとなく、アリサの態度を私の思い込みで勝手に決めつけちゃうのはダメな気がして誤魔化しちゃった。

 

「一線……越えるんですか?」

「へ?」

 

 ちゅ……

 

 …………

 えぇ!? 今、キスされた!?

 どういう話の流れ!? 

 というか僕初めてなのに……ううん、女の子相手だからノーカウントだよね!

 

「えへへ……ファーストキスがしゃるにあげられました……しゃーわせです。あ、でも私達はフランス人なのであんなのキスって認められないかもしれませんね……」

「あ、アリサ? どうしたの?」

 

 ぶつぶつ言ってると少し怖いよ……?

 せめて、なにを言ってるかが聞き取れれば反応もできるんだけど……

 

「しゃる……失礼します」

「あ、ああ、アリサ!? なにしてるの?」

 

 なんで私の太腿をまたぐの!?

 って、あれ、今なにか、ぬるって……?

 

「アリサ、もしかしてぬふむぐぅ!?」

「ん……ちゅ、んぁ……くちゅ……んぅ」

「ん~~~~~~~!?」

 

 いきなりなに!?

 何でディープキス……あ、フランス人だからフレンチキス?

 ってそうじゃなくて! ……あ、だめ、頭がぽーっとしちゃう。

 

「ちゅ……ぁふ、ん、んぅ…」

「ん、ぁ、ちゅ……あ、うぅ……」

 

 こくん

 

 ……アリサの唾、飲んじゃった。

 ……なんか、ブドウみたいな香りで甘くて美味しいかも。でもちょっとお酒みたいな匂いも……?

 

「しゃる、寝てください……」

「うん……うん? ってうん!?」

 

 僕、状況に流されてる!?

 そもそも、アリサの傷が……って!

 

「アリサ! 傷開いてひゃん!?」

 

 優しいタッチで脇腹を触られて力が抜けたところを押し倒された。傷開きかけてるのにそんなことしちゃ、

 

「そんなことより、身体が熱くて仕方ないんです……しゃる……はい♪ えへへ」

 

 アリサが脇腹から滲む血を人差し指で掬って僕の口の前に持ってくる。

 ……な、舐めろってこと?

 うぅ、笑い方は可愛いのにエッチだよぉ……というか唾とかじゃなくて血だなんてもう変態さんの域に入ってるよぉ。

 

 「シャル……♡」

 

 ◇

 

「わ、私が包帯を取りに行ってる間になにが……」

 

 IS学園唯一の少年は更衣室の壁に頭を打ち付けて、

 

「俺は男のくずだ! 社会の害悪だぁぁぁ! 誰か俺を殺せ! 殺してくれぇぇぇぇぇぇ!」

 

 って叫んでるし、大浴場の中では、

 

「あ、アリサっ、そこはダメだよ!」

 

 なぜか、またエロくなってる酔っ払いのアリちゃん……

 本当に、なにが起きたの……?

 怒られるの覚悟で虚ちゃんに相談してよかった……

 あとで怒られることは決まったけど手段を用意してくれた。

 流石に、このままじゃアリちゃんが可哀想だし……正気に戻ったら不登校になりそうね。

 よし、行くわよ……!

 

「失礼するわ!」

 

 手順としては大浴場に突入、そしてアリちゃんの口にこのハンカチを押し当てるだけ!

 絶対に会話はしない。

 

「御免!」

 

 アリちゃんの頭を掴んでハンカチを……

 

 スカッ

 

「え……?」

「あれー、先輩? 私の、邪魔、するんだ……? ふふっ」

 

 避けられたっ!?

 ……しかも、すごい闘気!

 あとなんかヤバそうなオーラ……巷で言うやんでれっぽい感じの!

 

「でも、ちょうどいい機会ですね。先輩とは手合わせしたいと思っていたんです」

「ふ、ふーん。お姉さんはちょっぴり厳しいわよ?」

 

 で、でも、とにかく今は落ち着いて欲しいかしら?

 

「それでこそ、血が騒ぐというものです」

「あら、知ってる? IS学園で生徒会長っていうのは最強の称号なのよ?」

「では、明日は最年少生徒会長の誕生式です!」

 

 あぁもう!

 脅そうと思ってもかえってやる気になってるじゃない!

 って速っ!

 これが圓明流の片割れの力……

 

「これで、なんで暗殺者なのよ!」

「……不破の始まりは織田信長の時代まで遡ります。信長の全国統一の影には私達がいたんですよ?」

「へぇ! そりゃまた暗部の中の暗部ねっ!」

 

 こんな力で暗殺なんてしたら完全にオーバーキルよ。

 

 ◇

 

「もうっ! お風呂で暴れちゃだめじゃないですかっ!」

「ごめんなさい」

「不破さんも!」

「……ごめんなさい?」

 

 なんで、楯無先輩と私は山田先生に謝っているのでしょう。

 しかも、保健室のベッドに縛り付けられて……脇腹の怪我もなんだか痛みが増している気がしますし。

 んー、昨日の記憶があやふやです。

 先輩がお見舞いに来てくれたところまでは覚えているのですが……

 そういえば今朝、織斑君には土下座で謝られてしまいましたし、シャルは顔が赤かったですし……

 先輩も、偶然手が当たってしまっただけで飛び退くんですよね……

 

「不破さんは怪我人なんですから、次はあんなことしちゃダメですよ! 気絶している不破さんを見て、私泣きそうになったんですからね!」

「はぁ……」

 

 先程から聞く限りでは大浴場で先輩と乱闘をしたとか……手に細かい切り傷がついているのはタイルでも叩き割ったからかもしれませんね。

 

「反省してますか?」

「えっと、はい」

「そうですか、よかった! ではお説教はここまでです! 絶対安静ですよ! 暴れたりしたら面会謝絶で閉じこめちゃいますからね!」

 

 律儀にお大事に、と言い残して山田先生は退場しました。

 保健室には私と先輩の二人きり。

 

「昨日、何があったんですか?」

「うーんと……危うく最年少生徒会長が誕生するところだった……かな?」

 

 ……よくわかりません。


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