Plongez dans le "IS" monde. 作:まーながるむ
ここでシャルロットの登場です
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」
シン……
「お、男?」
「はい、こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入を、」
はい、ダウトー。
残念ながらこの教室にはシャルロット以外に男装している美少女はいません!
って、暴露できたらシャルロットも気が楽になるのかもしれませんね。
「「「「「キャーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」」」」
「(ギロリ)」
「ひぃっ」
って、待って下さい織斑先生! どうして私を睨むんですか!? 私一言も口にしていません叫んでません!
え、なんですか? あの、声に出して……お、あ、え、あ、あ、あ、あ、え、お? ……あ、お前が黙らせろですね! って、ええ!? 先生、クラス代表の仕事を勘違いしてませんか!?
あぁ、もう分かりましたよ! 分かったので投げやすそうなチョークを選ぶのを止めて下さい!
「あ、あのー、皆さんちょっと、声が」
「外人の男!」「フランス!」「美形!」「貴公子って感じ!」「恋人は!?」
「聞いてくれない…………いいでしょう。クラス代表の強権発動です」
がたんっ! とわざとらしい音を出して立ち上がり、ばんっ! と机に手を付く。
突然の私の行動にクラス全体が静まりました。予想以上の音が出て私もびっくりしちゃいましたが……
私がシャルロットの恋人になるんです! ……じゃなくて、
「ふふっ」
まったく、入学から二カ月も経ってしまったので、私が危なさそうな子として扱われていた(上級生からは未だに同じ評価ですが)のを忘れてしまったんですね……? せっかくなので思い出させてあげましょう。
いえ私は基本的に優しいんですけど、怒ると怖い、というキャラはそのままに残ってしまいました。
教団まで歩いて行ってクラスをじろりと見渡す。私が苦労しているのにどうしてセシィは暢気に窓の外なんか見ているんですか!
というかやっぱりシャルロットの前で怒ってるフリとか無理ですよぉ……早くも心が折れそうです。
「皆さん、すこし、煩いですよ? 転校生のお二人も困ってしまうじゃないですか。あんまり騒ぐと私、怒っちゃいますよ? ねぇ、セシぃ?」
「わたくしですの!? わたくしそこの殿方には興味無いですわよ!?」
へー……シャルロットに興味がないんだ。こんなに可愛いのに。
へーそうですか。あぁそーですか! セシぃなんてもういいです!
「アリサさん!? どうして怒ってらっしゃるんですの!?」
「いいからセシぃも叫ばない! はい! クラスの皆さんも席について! 質問はしない! かっこいーのは分かりましたから心の中で言っていて下さい!」
というかシャルロットはかっこいいんじゃ無くて可愛いんです!
……織斑先生。こんな感じで、いいですかね?
「(ッグ)」
織斑先生から送られるサムズアップ。どうやら気に入ってもらえたようです。
「っほ……では、ボーデヴィッヒさんも自己紹介をお願いします。というか、なんで私が話を振らないといけないんですか……」
まぁ、山田先生が私にはみなさんを抑えられないのでお願いします! みたいな仔犬の目で私を見てくるからなのですが。
どうしてISだとあんなに強いのに教室だとこんなに弱っちいんでしょう。
もうここのところ目立ちたくないとか言ってられない生活ですよ。そのおかげで人見知りは更生されてきてますが。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「ということでした。ボーデヴィッヒさんは人付き合いが好きではないのであんまり近寄るな、とのことです。ちなみにドイツの軍人さんだそうですよ。あと織斑先生に対しては従順なので何か困ったら私じゃなくて織斑先生に言って下さいね。あ、織斑君。ボーデヴィッヒさんから織斑君に
「え? あぁ分かった」
発音間違えたんじゃないですよ?
あぁ、ちなみにボーデヴィッヒさんとは昨日、織斑先生を訪ねて学園に来た時に遇いました。なので私が彼女の情報を持っていることは不思議ではないのです。
あと織斑君ごめんなさい。なるべく皆さんの注目を集めて下さいね?
バシンッ!
うわ痛そー。
というわけで、皆さんが殴られた織斑君に注目している間に私の用事を済ませちゃいましょうかね。
「デュノアさん」
「はい?」
「Je suis Arisa Fuwa. Il a été demandé par votre père que j'aide votre vie scolaire. Mes meilleures amitiés. Mlle. Charlotte Dunois. (私は不破アリサです。あなたのお父様からあなたの世話をするように頼まれました。よろしくお願いします。シャルロット・デュノアさん)」
「ぇ? ……あ、不破って博士の、」
ニコッ
「「「「「だ、だいひょーの、笑顔!?」」」」」
「わ!?」
い、いつの間に皆さんこっち見てたんですかっ!?
ま、まぁクラスでフランス語を理解できるのは私以外にいないことは確認済みですし、内容はばれていないでしょうから問題ないですよね?
「だいひょー! 抜け駆けはずるいと思うな!」
「というか、代表て笑うとあんなに可愛いんだ」
「あれってガチ狙いってことかな? くぁー! デフォ装備のしかめっ面の下にあんな兵器を隠してたなんて」
「んー、悔しいけど代表とシャルル君ってお似合いかもね。金髪同士だし」
「「「「たしかに」」」」
「い、いい、いい加減にして下さい! 五人とも怒っちゃいますよ!」
まったく……そりゃ、好きな人には最高の笑顔を見せたいじゃないですか。それを兵器だなんて失礼極まりないですね! それもお似合いだなんてからかって……
五人とも後でケーキ作ってあげちゃいますからね!
お似合いですって、ふふ。
「あー……ゴホンゴホン! それではHRを終わる。各人は――」
次はペアでの模擬戦ですか、なら私はセシぃを……
「ボーデヴィッヒさん? 学園内は広いので――」
あれま、セシぃの面倒見の良さが発揮されていますね……何も起こらなければいいんですけど。
なら、私はシャルロットを、
「おい織斑。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」
「だ、だだだ、ダメですよぉ! デュノアさんは私が、クラス代表の私が!」
「いや、あいつらは男、」
じゃない!
もう、織斑君とシャルロットを一緒にしたら絶対ハプニングが起きるに決まっています!
「私は同じフランス出身です!」
「わ、分かった……分かったから落ち着け不破。ということだ織斑。遅刻せず行けよ?」
おお! 織斑先生は話が分かる人ですね! なぜか微妙に目を逸らされてる気がしますが
というか、シャルロットと織斑君が同じ部屋で着替えるようになるのは問題ですよね……男の子として来てしまった以上仕方ないのですが。
「ではデュノアさん、着いてきてください」
「う、うん」
キャー! シャルロットの手、握っちゃいました! 汗とかかいてないですよね? あれ、どうしよう、分かりません!
「不破も恋愛をするのか……」
◇
とりあえず、人のこない教室で着替えてもらうのがいいですよね。
そうなると、少しグラウンドから離れてしまいますが……
「もういいよね? そろそろ放して」
「ぇ……? デュノア、さん?」
パッと、シャルロットの手を控えめに引いていた私の手が払われました。
……割と、乱暴に。声も、挨拶した時のものより随分と冷たく硬い印象です。
恥ずかしいから、なんて理由ではないのは明白で、しかもシャルロットの目から覗くのは……
嫌悪感……?
「あの人の命令で僕を監視? やめてよ。僕はあの人のオモチャでも道具でもないんだから……あの人に媚びるのは構わないけど、僕を巻き込まないで」
あの人って、社長さん……?
それに私が媚びてるって……もしかしてシャルは私のこと――
「ちが……私達は」
「知ってるよ。君、何度かあの人やその本妻と個人的に会って話してるでしょ? それで、私を身代わりにデュノア社が潰れないようにしようとした……違う?」
「違う! 私はあなたの、」
「愛人の子もまとめて処理できるし、誰が考えたか知らないけど、よくできてるよね。じゃあ僕は着替え終わったから行くよ」
これ以上話すことはない、そういう空気を醸し出してシャルロットが扉を開けて……
「待ってください! 私は……私は」
「あ、不破さんは体調を崩したので保健室に行きましたって言っておくね。授業には来なくていいから」
バタン……
「私は、あなたの味方でいたいだけなのに……」
なんで、こんなことになってしまったのでしょう。
「とにかく……保健室に、いかないと……」
転入生は嘘つきだ、なんて皆に誤解してほしくないですから……
◇
「あ、不破さんは体調を崩したので保健室に行きましたって言っておくね。授業には来なくていいから」
彼女――不破アリサが何かを言おうとしてたけど気にせずに扉を閉める。やりすぎだなんてことはない。だって、彼女はもっと酷いことをしようとしてるんだから。
十四歳の頃、不破アリサのことを知った。IS適性がA以上ある、まさにISに乗るために生まれてきたような女の子だと研究員の人たちは言っていた。
その上大人しく、学力も高いと評判だった彼女が代表候補生になるのだと思った。だから、もうISにも乗らなくてすむんだろうって。
「なのに……」
ある日デュノアのオフィスで彼女と僕の父あたる人が話してるのを聞いてしまった。
遠かったから内容を完全に把握しているわけじゃないけど……むしろ全部を聞いてしまわなくてよかったと思う。
僕が聞き取れたのは、僕を広告塔にすること、それを以てデュノアの重要度を高めること、そして僕で時間を稼いでいる間に彼女がデュノアの技術力を認めさせるということ。
僕を広告塔にするのが今回の男子生徒としての入学だと思う。僕は織斑一夏とは違い、正式にデュノア社に所属しているため他国どころか、フランスですらおいそれと手を出せない。だから、第3世代の開発が難航していてもしばらくはデュノアのIS開発許可が剥奪されることもない。
その上で男子でも乗れるISを開発するとでも言えば他国から正式に技術を買うこともできるかもしれない。
そして、彼女はその間にISに乗って活躍して正当に評価を得る。きっとその段階になったら僕はまたあの屋敷に戻されるんだろう。
そういう、僕だけが泥をかぶる計画の話をしていたんだと思う。
だから、それを僕は邪魔する。確かに僕一人の犠牲でデュノア社に所属する何人もの人が職を失わずに済むということは分かる。
「でも、なんで僕なの……?」
どうせ、妾の子だから使いつぶせると思ったんだろうけど……彼女がその役目を担えば良かったんだよ。
◇
あー、めんどくさ。
実習なんて言ってるけど私達って結局は初めてISに乗る生徒たちのお守りでしょ? やってられないわ。
「専用機持ちは織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、不破、鳳(ファン)だな。では七人グループになって……む、おいデュノア」
「はい」
「あのチビ……不破はどうした」
千冬さん……じゃなくて織斑先生わざとアリサのことチビって言ったわね。見渡すのが面倒だからチビって言葉に噛みついてくるのを期待したんだろうけど……
本当にいないみたいね。どうしたんだろ? 昨日の夜から今日の実習楽しみにしてたのにサボるわけないし。
「具合が悪くなったので保健室に行くと言っていました」
「ほう……まぁ、学園に入ってからの疲れが出たんだろう。この時期になると体調崩す奴も増えるからな。お前らも気をつけるように」
そんな様子なかったと思うけど……ま、まさか、あの転校生に変なことされて泣き寝入りしてるとか!?
アリサ、小さくて可愛いし周りの生徒の話じゃあの転校生もフランス出身らしいから……ま、まさかね。
でも、今の会話からすれば最後まで一緒にいたのはあの転校生みたいだし、後で聞いてみようかしら。
「出席番号順に一人ずつ各グループに――」
はぁ、専用機持ちで班を分けられてるから一夏と同じ班にもならないし……アリサいいなぁ。
「お、鳳じゃん。って言っても分かんないか。私、三好。不破の……まぁ友達?」
「アリサの? なら私とも仲良くしましょ」
三好って名前は何度か寮の部屋での話に出てきた気がする。確か、すごく美人で化粧の上手な演劇部の子だっけ。
改めて見てみれば身長は高すぎず低すぎずで、顔立ちは綺麗系……というか女の子でもため息ついちゃいそう。胸は……まぁ、天敵ではないけど。
Dね。
「あ、みぃちゃんも一緒だ。鳳さん、よろしくね。不破さんからいろいろ聞いてますよ? 今度、中華料理教えてください」
もう一人、礼儀正しい子が。
三好さんと知り合いで礼儀正しいと言うことは……
「一松さん、かな? 私もアリサから聞いてるわ。あと、二木さんっていう子のことも」
「あー、ふたちゃんは別の班みたい。ちなみにデュノアさんの班で唯一悔しそうにしてるのがふたちゃんだよ」
転校生――デュノアの方を見てみれば確かに地団駄踏みながら一松さんを見ている子が一人いる。あれが、女の子大好きっていう……
「そういえば、デュノアさんと言えば朝の代表、なんか本気出してたよね」
「あぁ! 笑顔すごく可愛かったよね。普段から笑ってればいいのに」
転校生の名前に触発されたのか、他の一組の子が少し盛り上がった。
あ、それ私も見たかったかも。アリサってあんまり笑わないのよね。美味しい料理を食べてるときと、いい夢見た後くらいよ。
まぁ、今日のは機嫌がよかったのね。
アリサはフランスにいる女の子に恋してるって言ってたし。
まぁ、あとで様子見に言ってあげた方が良いかな。