Plongez dans le "IS" monde. 作:まーながるむ
「じゃあ、先にお風呂入るから」
「ぁ……はい、どうぞ……」
ただ報告するように言って鈴ちゃんはシャワールームへ。
私もただうなずくだけで二人の間に会話が発生することもありません。
「はぁ……どうしましょう。いえ、どうもこうも謝らないといけないのですが」
鈴ちゃんと喧嘩してから一週間、未だに仲直りできていません。私が完全に悪かったので謝らないといけないのはわかっているのですが……気後れしてしまうんですよね。怖いというかなんというか……
でも大分ヘコんではいますが、私の性格を把握している鈴ちゃんが“嫌ってはいないけど怒っている”という内容の書置きを私の机の上に置いてくれていたのでまだマシな方です。
直接言わなかったのは私から話しかけて謝りなさいということなのでしょう。
それに喧嘩しているとはいえルームメイト、夕食の当番なんかも守ってくれますし会話がほとんど無いだけで背共同生活自体はいつもどおりなのんです。
だから話しかける機会もいくらでもある……というより鈴ちゃんがわざわざ作ってくれているんですけど、どうしても覚悟が決められないというか。
喧嘩してから鈴ちゃんはずぼらじゃなくなってしまったので、タオルとかを渡すのに乗じて謝ろうなんて作戦も初日で諦めましたし。
セシぃにも相談しましたが、相談するということは反省もしているのでしょう? でしたら謝ればいいんですわ、なんて簡単に言ってくれますし。
自慢じゃないですが今まで喧嘩したことが無いので人に謝ったことはないんです……本当に自慢になりませんね。
早くしないと今日も終わってしまいますし、明日ももちろん授業はあります。学園で謝るには二組までいかないといけないですし、一対一でも気後れしているのに人がいるところで、なんてできるわけもなく……
「先送りにしないですぐ謝っておけばよかったです」
そんなことを言っても結局謝らなかったのは私なので言い訳にもならないのですが。
結局この日もグダグダ考え過ぎて謝ることができませんでした。
えぇ、明日からヘタレって呼んでくれてもかまいません……
◇
「鈴さん、少しよろしくて?」
「なによ、アリサのことならよろしくなくてよ?」
わたくし、セシリア・オルコットが長くもない休み時間に赴いたというのにこの人ときたら……そんなに退屈そうな顔をするのなら早くアリサさんと仲直りをすればよろしいのです。
まぁ、今回はアリサさん自身が自分が悪かったと認めているので、鈴さんから仲直りを持ちかけるというのもおかしな話ですが、せめてもう少しあの子が謝りやすいと思えるような態度をとって貰わないといけませんわ。
アリサさんは友達が少なかった分、こういう事態の対応には慣れていません。昨日もわたくしに、仲直りする時ってどう謝ればいいんですか? なんて間の抜けたことを聞きにくるくらいですから。
「そう意地を張らないでくださいな。鈴さんだって本気で怒っているわけではないのでしょう?」
アリサさんの話によればお二人の普段の生活はいつも通りとのことなので、鈴さんからしてみれば、けじめを付けてほしいということなのでしょう。
「まだ怒ってるわよ。でももう許してるの……ただ、やっぱり今回のことはアリサにとって必要なことだと思うからこうしてるだけ」
「アリサさんに必要、ですか?」
どういうことでしょう。
精神的に弱いアリサさんにこのようなことをするのは悪趣味ですわ。
いくら反省を促すためとはいえやりすぎです。
「怖い顔しないでよ。というか私がこういうことしてるのはセシリア、アンタがアリサを甘やかしすぎてるからなんだからね」
「私が? それは一体どういうことですの?」
「今までアンタ達、喧嘩どころか言い争うこともしなかったでしょ? どうせ、ほとんど片方がもう片方に合わせてたんじゃないの?」
「確かにその通りですわ。ですが、」
それが今回のこととどう関係しているというのでしょう?
そもそも、アリサさんは人に嫌われるかもしれないという可能性があることを嫌って、というより怯えています。傷痕の件を経てわたくしと鈴さんは信じるようになったようですが、それが却って彼女の不安を強めてしまったような気もしますわ。わたくし達との縁が切れてしまったらアリサさんは壊れてしまうんじゃないかと私に思わせるくらい。
ですから、気を遣いすぎて悪いということはないはずですわ。
「セシリアはアリサに対して気を遣いすぎ。子供を相手にしてるんじゃないんだから」
「そうは言いますけど、」
「アリサは精神的に不安定とでも言うの? 確かに傷のせいでそうなったのかもしれないけど、刺激しないように甘えさせてたらいつまで経っても今のままじゃない。私たちとずっと一緒にいられるわけでもないんだから、今かでもら当たり前のことを経験させないとだめでしょ?」
……確かに、鈴さんの言う通りですわ。アリサさんと出会ったとき、わたくしはいかに彼女を元気づけるかを考えていて、今はいかに傷付けないようにしているかを考えています。
だから、アリサさんには辛いことに対する免疫ができなかったのかもしれません。
辛いこと嫌なことに適応するには結局そのことを体験しなければいけませんから。
「わたくしが、アリサさんを弱くしてしまったのですか?」
「別に弱いから悪いってことでもないわよ。その弱さのおかげでアリサはフィジカルな強さを手に入れたんだし、我慢することだけは人よりも得意なのよ」
そう、ですわね。
実際に殴り合いをしてアリサさんに勝てる人はそうそういないでしょう。以前、二人で歩いていた際にいわゆるナンパに遭ったのですが、わたくし達の対応に激昂した男数人を千切っては投げ、千切っては投げと奮戦されていましたし。
ただ、それはわたくしがいたからで、もしアリサさん一人のときに同じ目に遭っていたらどうなっていたのかは分かりません。
あまり、自分のために力を振るうことをよしとしない子ですから。
自分だけが我慢すればいい状況では、どんなに辛くても我慢してしまうのが不破アリサという少女です。
「別に、セシリアのやり方が間違ってるとは思わない。でも、私達はいつでもアリサの近くにいることなんてできないの。学園の外ではあの子、独りになるのよ? だから、そういうときのためにも今回のことは、ううん、今回のことだけじゃなくて、私達が意図的にアリサにとって辛い思いをさせることは必要だと思う」
それをアリサ自身の力で解決させていけばあの子も成長するだろうから、と鈴さんは言いました。
折れた骨が太くなるように、叩かれた鉄が鋼になるように……鈴さんの言うようにそうすることも必要なのかもしれませんわね。
「鈴さんの考えは分かりました……でも、やりすぎないでくださいね?」
「大丈夫よ。私だってアリサに嫌われたくないんだから……それに、アリサを見ている限りもう解決も近そうだしね」
◇
「と、いうことで考え得る限り最高の謝罪を教えてほしいのですが」
「ジャンピング土下座とか?」
「ふたちゃん、それ違うよ!」
「じゃぁ、ドスで小指を、」
「みぃちゃんもズレてるっていうかそれじゃ大惨事だよ!」
一松さんがボケる二人に対して勢いのあるツッコミを入れています。
……結構まじめにお願いしたつもりなんですけどね。
「もう……不破さんもごめんね? フランス人ならギロチンに決まってるよね?」
「「それは一番違うよね!?」」
「あの、頼んでいる立場で言うのもなんですが、この流れはもうお腹いっぱいです……」
というわけで三人娘に相談中です。三人寄れば文殊の知恵、なので四人寄ればきっと諸葛亮の知恵です。
……と思いきや一人分さらに姦しくなっただけでした。
公明の罠です。
「まぁ、真面目に答えるとさぁ、怒らせた原因を聞かないと分からないんだよねぇ」
「怒らせたのって鳳(ファン)さんでしょ? だったら抱きついてキスでもすれば、」
「はいはーい、ふたちゃんは黙ろうねー。不破さん、私もみぃちゃんと同じことを言わせてもらうね。酷いことを言っちゃったとか、酷いことをしちゃったとか、場合によって謝り方も違うと思うし」
……ただ怒らせちゃったから謝りたい、だけじゃあ教える方も困りますよね。それで鈴ちゃんを怒らせてしまったわけですし。
……私も学ばない人ですね。
「えっと、詳しくは話しにくいんですけど……」
「「「うんうん?」」」
私が|女の子(シャルロット)のことが好きって言わないといけませんし……あれ? 三好さんはともかく一松さんと二木さんがいるなら問題ないような……いえいえ、問題はそのことだけじゃないんですって。フランスのお国事情にも関わってきますし。
「簡単に言うと、私に好きな人がいるんですが……その障害が大きすぎてどうしようかと悩んでいたのを鈴ちゃんが心配してくれて……でもナイーブになってたのと人を巻き込めるような内容でも無くてですね」
「突っぱねちゃったわけだ?」
「はい……しかも、なにも知らないくせに、と言ってしまって。話さなかったのも私なのに」
「あちゃー、それは確かに腹立つわー。三好さん敵にぶち切れだわー」
本当にあの時の私はどうにかしていました。
シャルロットが来ると分かってから……いえ、IS学園に来てから感情の浮き沈みが特に激しくなっている気がします。家族と、知っている人と離れてしまったからですね。
「…………」
知らない場所は怖いです。
知らない人はそれ以上に怖いです。
何を考えているのか分からないから、相手が何を考えているかが分かるまで怖いんです。
でも、独りじゃいられないから傍に寄って来てくれる人たちを拒めない……信用はできていないのに。ただ慰めてほしいから傍にいてもらうなんて我ながら最低ですね。
「不破ぁ」
私の肩を掴み三好さんが真剣な表情で私の目を見ます。
「笑い飛ばしてあげるよ。不破の悩みなんてさ」
「へ?」
「先に言うけど怒んないでよ? あ、先に言ってないか。まぁいいや。悩みなんてねぇ、他人の目から見たら案外大したことないの」
今は怒る程の精神力もありませんよ……でも三好さん。怒るようなこと二回言ってるじゃないですか。それも前置きの前と後に。
「そんなの分からないじゃないですか……」
「だから話してみなって。私、鳳(ファン)もそれが聞きたいんじゃないかなぁって思うのよねぇ。だいたい謝りたいって言ってたけどホントは仲直りしたいんでしょ? そうじゃないと手段と目的が同じになっちゃってるし、うん、やっぱ鳳に相談してあげるのが一番っしょ」
「そうだねー、やっぱり話した方が良いと思うよ?」
「身体の相性以前に隠し事はだめだよね」
話せなくて喧嘩をしてしまったので仲直りをする時に私の悩みを話すのも自然、なんですか? まぁ、私より世間慣れしている彼女達の言うことなのだからそうなんでしょう。
二木さんの発言は最初からあてにしていません。一応。
シャルロットやデュノア社の名前を伏せれば話しても大丈夫ですよね・・・・・・鈴ちゃんの時も冷静になってそういう風にはなされば良かったんですが。
「私は女の子が……だと誤解が生まれますね。私の好きな人が女の子なんですが、」
「おぉ、いきなり予想外」
「えぇぇぇ!? ふたちゃんと同じ!?」
「いやいや、イッチー、自分のこと棚に上げちゃだめだよ」
……やっぱり、こうなりますよね。でも、誤解のないように言っておきますが女の子が好きなのではなくて、好きになった人がたまたま女の子だっただけなんです。別に男の子でも好きになれるんです! ……多分。
えぇ、たまーーーーに、織斑君にドキッとさせられますし。
偶然、シャルロットが女の子なだけです。
「……果たして私はその子を愛しているのか、それともただ単に好きなだけなのかが判らなくてですね」
「重たぁい! ていうか愛とか大人でもどういうものか判ってない人多いと思うけどぉ?」
「えー? 私はイッチーのことをちゃんと愛してるよ!」
「えぇー、私はふたちゃんのこと好きなだけかなぁ……」
そこの二人、さりげなくノロケないでください。え、一松さんはなんでガッカリしてるんですか? 友達として? あぁ、また同性愛者じゃないって言いたいんですね。いまさら私に対して隠すようなことでもないですけどねぇ。
……あれ? そういえば私はこの二人の関係を知ったときも驚きはしたものの気持ち悪いとは思いませんでしたね。意外と受け入れられるようなものなんでしょうか?
あ、でも私にもともとその素地があったからでノーマルな鈴ちゃんとかほかの人にはやっぱり引かれるかも、しれませんよね?
「でも、鈴ちゃんは織斑君のことを愛してるってはっきり言ったんですよ。だから私の気持ちと鈴ちゃんの気持ちはどう違うのかなぁって。気持ち自体は同じくらい大きいと思うんですよ」
「おぅ……不破の話聞いてたら鳳(ファン)の方の秘密聞いちゃったよ」
あ、鈴ちゃんごめんなさい。つい話してしまいました……
「じゃあさ、その子と不破さんは結構付き合い長いんだ。いいなぁ、そういう人いて……」
「イッチー!? 私たちも小学校のときからの付き合いだよね!?」
「そうだねー」
やっぱり、普通は時間をかけて人のことを好きになるというのが常識みたいですね。少なくとも一目惚れで私くらいの気持ちを抱くことはまず想像できないんでしょう。
なので、一松さんたちも私とシャルロットが幼馴染のような関係だと思うんですね。
「実際に顔を合わせたのは二回だけです。ちなみその女の子は私のことを知らないはずです」
一度目は本邸で素顔を突き合わせてはいますが今とは髪の毛なんかも違いますしね。服装や髪型で人の印象は大きく変わるので一度顔を見られた程度では私に気付く事はないでしょう。
二度目もお互いに顔を隠しての模擬戦でしたし。
「え? じゃあ、不破ちゃんストーカー?」
「まぁ、そう思われても仕方ない状況かもしれませんが違います。私も彼女の顔は十回見たか見ないかです。言葉を交わしたのがさっきの二回のことですね」
「……えっと、不破ぁ。言いにくいんだけど、それで鳳と同じだけの気持ちって言うのはおこがましいと思うんだけどぉ? いや、まぁ、不破が言うんだから何かあるんだろうけどさぁ」
当然、そう言われるとは思っていました。
普通なら、二回あっただけで抱ける気持ちなんてたかが知れていますしね。
「分かると思いますけど一目惚れだったんです。でも最初の遭遇のことを思い出されるとお互いに気まずくなりそうだったので、私から彼女を避けました。髪の毛を染めているのもその一環ですね。そうやって二年間避け続け、」
「二年間!? というか初対面でそこまで気まずくなるような問題起こすって何したの!? キス? それ以上!?」
「……避け続けたのですが、何か彼女のために出来ることはないかと思って影ながらちょっかいを出していたんです」
「ちょっかい出したのに会ったのは二回だけ?」
興奮する二木さんは置いといて一松さんの素朴な疑問に頷きを返します。
私のちょっかいはシャルロットと社長さん本妻さん夫婦の仲を取り持とうとしたものですからシャルロット自身に会う必要はなかったんですよね。会いたかったですけど会いたくなかった、というジレンマも抱えていましたし。
「何をしていたか、というのはあまり詳しく話せないのですけど……簡単に言うなら彼女と彼女の家族を仲直りさせるのが目的でした」
さらに言うと、その結果シャルロットがIS学園に来る際に男装する必要をなくし世間から悪い目で見られないように、ということなのですが。結局はシャルロットに泣いてほしくないからですね。泣くのを我慢されるのもヤですけども。
「両親との不仲を解消してポイントアップ狙い……! 不破ちゃんやるねっ」
「ありがとうございます……一言ごとに感想言うのやめません?」
話が進まないじゃないですか!
しかも、二木さんが茶化すから相談らしい雰囲気にもなりませんし……
◇
トントントントントントン
今日の料理当番は鈴ちゃんです。作るものはやはり中華……というか寮のキッチンコンロがいつの間にか中華用の大火力仕様になってたんですよね。そして五徳も四脚の物から円形の中華五徳になっていますし、壁にはもちろん中華鍋がかかっています。そこまでこだわりますか。
まぁ、鈴ちゃんの場合は形だけじゃなくて味も本格的なので文句はないんですけどね。中華鍋でもフレンス料理は作れますし。
……なんて関係ないことを考えているのは緊張を紛らわすためで。
多分、鈴ちゃんもすごくやりにくいと思います。私、キッチンの入口のところでじーっと鈴ちゃんのこと見てますからね。
ときどき私の方をチラリと見ますが、それでも鈴ちゃんは声をかけて来ません。私が声をかけようとしているのを分かってくれているからだと思います。
だから、息を吸って、カラカラに乾いた喉から声を出しました。
「あ、あの……鈴ちゃん、ごめんなさい」
「……何で謝ってるの?」
「えっと……」
そ、そうでした。
何について謝っているのかを言わないとダメですよね。相手がどうして怒っているのかを理解していることを見せなければただ自分のために謝っているだけになってしまいますし。
「その、えっと、鈴ちゃんに酷いこと言っちゃって怒らせちゃったことと……」
「ことと?」
あとは、えっと……
「鈴ちゃんに、ちゃんと相談できなかったこと……です」
「…………」
鈴ちゃんを巻き込みたくなかったから、と一松さん達には言いましたが、今考えてみればあれは建前でした。
火傷痕のことを気にしないと言ってもらって、それを信じても……次から次へと不信感が募るんです。巻き込みたくないなら相談してからそう言えばいいだけですから。
「私は、まだ鈴ちゃんが信じら、」
「なんで、謝ろうと思ったの? 」
「え? あ、え、その……えと、鈴ちゃんと喧嘩したままなのはヤだからです。その、数少ない私の友達なので」
鈴ちゃんのことを友達だと思っているけど心の底から信用できていない私はなんなんでしょう。
ふと、そんなことが頭によぎります。
それは実はすごく失礼で不誠実なことなんじゃないでしょうか。
「…………はぁ、なんて顔してんのよ」
「え?」
「まぁアリサのことだから? どうせ友達が信用できないとかって考えてるんでしょ? そんなこと考えてるのアンタくらい。というかバカよ、バカ」
「ば、バカ!?」
失礼とかそういうことなら分かりますけど、バカってなんですかバカって! 信用云々に頭の良さは関係ない、というかこれでも成績いい方なんですよ!
「そうじゃないって……あのね、友達イコール信用できる人なんて構造は世界のどこさがしたって存在しないのよ。そりゃ、友達を信用出来れば一番いいことよ? でも友達だから信用するってのは間違い。そんなんじゃいつか騙されるわよ」
「えっと、その、え? 友達は信用できるから友達なんじゃないんですか?」
「いや、だから……」
鈴ちゃんがすごく困った顔をして私を睨んでいます。
私、そんな困らせるようなこと言いましたか?
「あぁもう! じゃあ聞くけど、私が信頼できる友達にも言えない秘密が無いと思う?」
「えーっと、はい……?」
「じゃあ、甲龍の機密を誰かに言うと思う?」
「いいえ」
そんなことしたら罰せられちゃうし、中国自体傾いちゃうかもしれないじゃないですか。
「なら友達が絶対に誰にも言わないから教えてって言ってきたら?」
「それでも言うわけ無いです……あ」
信用してる友達にも言えないことはあるんですね……
でも、私が女の子が好きってことを言えないのと機密が言えないのでは随分スケールが違うと思います。
「ね? 友達同士にだって言えないことはあるのよ。さっきのはスケールが大きかったけど……そうね、スケールを小さくしてみれば……アリサ、胸が小さいことをセシリアに相談できる?」
「無理です!」
「私も無理。まぁ、友人関係なんてそんなもんよ。人によっては携帯のメールアドレスを交換しただけで友達っていうくらいだからね」
それは知人って言うんじゃないでしょうか……?
「……だいたい信用できないと友達になれないなら親友になるにはどうすればいいのよ」
「え? なんか言いましたか?」
鈴ちゃんが何かを口の中でもごもごといったように聞こえましたが内容までは分かりませんでした。
「何でもない! まぁそういうことだから、私もアリサの話を無理に聞こうとしたのは悪かったわ。これで仲直りもできたし。いい? 私が言ったこと、忘れるんじゃないわよ?」
少しくらい秘密があってもいいんですね……
それでも、鈴ちゃんにも話そうと思います。
「私の悩み事なんですけど……ご飯の後、聞いてください」
「分かったわよ。テーブルのほう用意しておいて」
その、ただ頼みごとをされるという“いつも通り”が仲直りできたという実感に繋がって――
「りょーかいです!」
私は一瞬で元気になってしまいました。
「鈴ちゃん、ずっと友達ですよね?」
「あー、はいはい、そうね。お婆ちゃんになっても私たちは友達よ」
次回、シャルル現るる……多分