Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

144 / 148
一か月ぶりですね

20冊くらい買ったまま積んでたラノベ読んだり
バイト増やしたり
絵を描いてたり
で全く手を付けてませんでした(汗

あと、ちょびっとだけゲームやってたりね(最大要因

えと、うん、がんばりますよ?


8. Post-war clean up

「……んで?」

「へ?」

 

 見事、はーちゃんさんを打ち倒し、いつもの四人で夕飯を食べていたら、はーちゃんさんが唐突、かつ目的語どころか主語もない質問をしてきた。

 こういうところが日本語の難しさってやつだよね。

 あ、はーちゃんさんと一緒にご飯してるのは敵対者だった人も赦しちゃう私の度量の大きさを表すため――

 

「痛っ!?」

 

 ちゃぶ台の下の太腿に鋭い痛み。

 何事かと思って見てみたらはーちゃんさんが足の指で私を抓ってる……無駄に器用だなぁ、って痛い痛い!?

 抓った上でさらに捩るだなんて酷すぎるよ……

 

「というかなんでっ!?」

「なんかムカついた。まぁ、それより代表になりたい理由ってなんだったんだ?」

「相変わらず鋭いんだから……うーん、理由かー」

 

 この場合なんて言えばいいのかな?

 アリサ先輩はタブー扱いみたいだから名前は出さない方がいいし、かといって当面の目標の二年生の先輩――特に織斑一夏、篠ノ之箒、シャルロット・デュノア、凰鈴音、ラウラ・ボーデヴィッヒ、セシリア・オルコットの六人――とお近づきになりたいって言ったら、はーちゃんさん怒りそうだなぁ。

 尻拭いと復讐がどうのこうのって言ってたし……それと比べると私のはミーハーみたいに聞こえちゃうもんね。

 でも、うん。

 皆、私の知らないことを知ってるかもしれないし、ちょっとだけ誤魔化しながら話してみようかな。

 

「うーん……最終的にはある人に恩返しというかお礼を言いたいって感じなんだけど、えっと、その為にはまず二年生の先輩と仲良くならなきゃいけなくて……」

「まどろっこしいわね……直接会いに行けばいいじゃない」

 

 横合いからツバサちゃんがもっともな意見を出してきた。

 そうなんだよねぇ。

 なんかこの言い方だと憧れの先輩に話しかけられない~! って感じの少女マンガの主人公みたいな感じだもんね。

 

「うーん、ところがその人、行方不明? って感じでね。だから去年のこと知ってる先輩に話を聞きたいってところかな」

 

 織斑先生の話じゃ死んじゃってるらしいけどわざわざそんな重い事は言わなくていいよね。それに、なんとなく、そんなことない気がするって私の勘が言ってる。もしかしたら間近で強さを見せつけられたから信じられてないだけかもしれないけど。

 ……うん、最近になって思ってみればあの時のアリサ先輩怖かったよね。助けられたっていう意識さえなければここまでしようと思わなかった……というかビビッて近づこうとすらしないんじゃないかな。

 口に棘付きの薔薇を挿すなんて想像するだけでおえーってなる。

 

「行方不明? ここの生徒なのよねゃないの?」

「去年は――「去年のIS学園は退学者とかいないんだから外部だろ」――むぅ」

 

 はーちゃんさん、人の言葉に被せるのってマナー違反なんだぞー?

 

「まぁ、そうよね。結局一度は退学にされたって先輩も夏休み終わりには戻って来たらしいし」

「あー、アメリカのな」

 

 ……あれ?

 はーちゃんさんに遮られてちょっとイラっとしたせいで気付くのが遅れたけど……学園からの退学者がいない?

 アリサ先輩が学園のタブーになってることを考えると死亡後も進級扱いになってるとは考えにくいよね。

 例えば、学園での事故に巻き込まれたとかなら隠蔽で入学記録自体を揉み消されたとかあるかもだけど、織斑先生の口ぶりだとそういう風でもなかったし……学生に記憶操作とかしないと意味ないもんね。

 それに、学園が隠したがってるのも事実だろうけど、どっちかっていうと生徒の方が思い出すことを嫌がってるような気がするんだよね。

 それに試合中、はーちゃんさんが出てきた時の反応とかも……

 なにより、今の話の流れ変だったよね?

 

「うーん……はーちゃんさん、寝る前に時間貰っていい?」

「あん? ……飯食ったら私の部屋で話すか。こいつらも話したいことがあるだろうし」

 

 ん?

 はーちゃんさんの言葉にリオちゃんとツバサちゃんが困り顔で曖昧に笑ったけど……なんでだろ?

 私としてはちょうどいいからなにも問題ないけど。

 

「あ、ところで話変わるんだけど、クラス代表って何やればいいのかな?」

 

 あれ、なんで呆れたような目で私を見るのかな?

 

 ◆

 

「……不思議だよね」

 

 二人きりになった部屋でつい、という感じで理桜が呟いた。

 

「理桜? どっちのこと?」

「……両方、かな」

「そうね。二人のISもそうだし、はものの今日の戦う時の服装……あれは狙ってやったとしか思えないわよ。リリーも……さっき話してたのってアレのことよね?」

「……ノワール。不破アリサ」

 

 ……リリーはそのことを知らないみたい。

 それどころか、去年のキャノンボールファストでのいきさつ自体知らないんじゃないかってくらい。

 そうじゃなきゃ、さっきの話の内容だけで、私たちが誰の話なのか把握出来てしまうことに気付いているべきよね。

 でも、去年の事件を知らないなんていうことがあり得るのかしら?

 一般生徒はテロがあったって説明されただけだからまだしも、リリーは曲りなりにも専用機持ち。それもノルウェー唯一の純国産ISなんてものを引っ提げて現れた注目の的。

 機体は私企業所属な上、リリー自身が国家代表でも、その候補生でもないからと言って去年の顛末を全く知らないとは思えない。

 もしそうなら、リリーのIS――クイーン・オブ・スノウの開発会社である私設軍事企業はよほどの脳無しか、それか……

 

「あえて知らせてないのかしらね」

「……あえて?」

「もし、彼女の母体が亡国機業と繋がりを持っていたら都合の悪いことは教えないかもしれないじゃない?」

「リリーが、亡国機業……?」

 

 ……あんなバカっぽいのに、とか考えてるのかしら?

 理桜は思ってることを表情に出すようなタイプじゃないけど何年も一緒にいるとさすがにわかる。

 

「理桜は分かってないのかもしれないけど……」

 

 だってほら、なんというかバカにする訳じゃないけどリリーって……ねぇ?

 

「……確かに私だったらボロを出さないか不安で教えられなさそう」

「もちろん例え話よ? もしかしたら自分の無理を通して私と相部屋になったのだって計画の一環かもね?」

「翼は、そう思ってない?」

 

 ま、流石にね。

 何か――不破アリサについて一生懸命になってるのは感じるけど、悪事を考えてるとは思えないのよね。

 

「うん、それに今はリリーが私の飼い主みたいなものだしね」

 

 衣食住のほとんどを頼りきりだし。

 あら、これでリリーが本当に亡国機業だったりしたら私の立場も大変ね。

 

「翼……その言い方は、ちょっと」

「ん?」

 

 理桜が困ったものを見る目で私を見てるけど……なにか変なこと言ったかしら?

 

「まぁ、当面の方針は変わらないってことでいいかしら」

 

 ◆

 

「くちゅんっ」

「…………」

 

 うぅ、誰かが私の噂をしてるよ……まったく、私ってば罪な女だぜー。

 というか、はーちゃんさん?

 

「なにかな、その意外なものを見た、みたいな反応?」

 

 くしゃみしただけでそんな目で見られる筋合いはないよ!?

 あ、あれかな、美少女はトイレになんて行かない、みたいな感じで美少女はくしゃみしないみたいな幻想を――

 

「いや、ぶぇっくしょい、みたいなくしゃみじゃないのかと」

「失礼だよ!?」

 

 まったくもう、私をなんだと思ってるのかな……

 それより日本に来て初めてのお友達の部屋に遊びに来たわけだけど……

 

「……つまんない」

 

 サバサバしてるはーちゃんさんと主張の少ないリオちゃんの部屋だからある意味では予想通りだけど!

 いくらなんでも遊びがなさすぎるというか……サラリーマンが一泊するビジネスホテルみたいだよ?

 女子高生ってここまで生活感消せるものなのかな……?

 私の部屋の段ボールにぬいぐるみが入ってるはずだからプレゼントしようかな。

 化粧品でも何でもいいから、少しは女の子が生活してる部屋の感じを出すべきだと思う……そうじゃないと二人とも将来、好きな男の人も呼べなくなっちゃうよ。

 

「――不破アリサの部屋だってこんなもんだったんだぜ?」

 

「っ!?」

 

 はーちゃんさんを振り返るといつもの意地悪なニヤニヤ顔……じゃなくてやっぱりかっていう溜息顔。

 気付いてない、とまでは思わなかった。

 さっきの話だって、皆が候補生――はーちゃんさんはよく分からない――だから去年のことを私よりも知ってるはずだと思ったから話したし、もしかしたら情報をくれるかもって思った面もなかった訳じゃない。

 ……試みは成功したって言えるのかな。

 

「ま、私にしては珍しく幸運だったっていうべきか」

 

 自嘲的な口ぶりのはーちゃんさん。

 でも、顔は結構晴れやかな微笑み……

 なんだろ?

 

「格好付けてる?」

「あん?」

 

 そうそう、やっぱちょっとしかめっ面とか、そういう顔の方がはーちゃんさんらしいね。

 笑顔の方が可愛いとは思うけど、はーちゃんさんがずっとにこにこしてたら調子でないし……うん、キモいってやつだね。

 

「またいらっとする顔だな……まぁいいか。一人、お前の目的に役に立ちそうなヤツに会わせてやるよ」

「一人だなんて、そんなケチんなくてもー」

「……それ以外に知ってる二年がいねーんだよ……悪かったな」

 

 ……あれ、なんか要らないこと言ったかな?

 いつも通りの冗談で、いつもみたいにチョップかはたかれるかするかと思ったんだけど……はーちゃんさん、なんかそこはかとなく悔しそうな顔。

 

「んと、ごめん……?」

「あん?」

 

 睨まれた。

 うん、やっぱりはーちゃんさんはこうじゃないとね。

 無駄にトゲトゲしてる感じ?

 そういうところがちょっとかっこいいと思うし。

 

「それで、その先輩っていうのは……?」

「アメリカからの一般留学生――キャサリン・ジェファソン。一番最後に不破アリサと行動を共にしていた生徒だよ」

 

 最後にアリサ先輩と……もしかしたら直接の原因まで知ってるのかな。

 

 それに――

 

 頭の中で考えかけたことは形にならないまま、はーちゃんさんに遮られた。

 

「それより、私が気になってるのは……リリティア、なんでお前、何も知らないんだ?」

「へ?」

 

 はーちゃんさんがなんのことを言っているのか分からずに、つい間の抜けた声が出る。

 

「不破アリサがどうして死んだのか。不破アリサがどう思われているのか。不破アリサが何をしたのか……」

 

 そんなの知るわけない。

 他国の専用機持ちのことなんてそうそう簡単に調べられないし、会社の力を借りるほどでもないと思ってたし……

 でも、こんなこと言われるってことは、私は知っているべきってこと?

 はーちゃんさんたちなら知ってるかもってことで、ギリギリまでは話したけど、もしかしてそれ以上のことがこの学園では“知ってて当たり前”?

 

「私はただ、アリサ先輩にお礼を……」

「その不破アリサ――ノワールは亡国機業の構成員だ」

「…………」

「不破アリサは去年のキャノンボールファストの際、遅れて登場したと見せかけてレース参加者……当時の専用機持ちに攻撃を仕掛け、その後で自爆――そういう経緯も知らなかったんだろ?」

 

 言葉がでない。

 もちろん、ホンネ先輩からも触りしか聞いてなかった事件の詳細を知ってのショックもあるし、やっぱり一時は代表候補生だった人が亡国機業なんてところに所属していたことを信じていなかったってこともある。

 でも、それよりも――

 

「どうして、私は何も知らなかったの……?」

 

 不破先輩がどうこうじゃなくて、学園で起きた事件についても知らなかった。

 ううん、厳密に言えば、私が知ってたのは学園が世間に公表した程度の事実。

 つまり襲撃はあったけど撃退した、ってだけのこと。

 でも、なんで会社の人たちは何も教えてくれなかったの?

 

「……本当に、何も知らなかったんだな?」

 

 覗き込むようにして私の目を見てきたはーちゃんさんにしっかり目を合わせて頷きを返す。

 専用機持ちとしての誇りとか自覚とかそういうものはないけど……会社の人たちに裏切られたような気がする。

 子供だから、信用されてなかったのかな?

 それともアリサ先輩への興味を隠さなかったから?

 会社に特別親しい人はいないけど金銭面でうちの家族を支えてくれてるから信用はしてた。

 でも、こうなったら一度問いただして――

 

「何考えてるのか何となくわかるけど……それはやめとけ」

「……どうして?」

「意味ねーから。自社製品(専用機)乗ってるやつが変なことやらかして損すのるは会社だぞ? それでも不破アリサのことを教えてないってことは上も知らなかったんだろ」

 

 そう……なのかな?

 はーちゃんさんの言うことは少し無理矢理な気がする。

 ISを造っておいて、それに関わる事件に対しては無関心なんて有り得ない。

 だって、軍事企業なんだよ?

 

「それに、故意に隠していたんだとしたら、秘密にしていたことを知ったお前を会社はどうする? 善意で黙っていた場合はいい。でも悪意で隠していた場合は?」

「……悪意?」

「一枚岩の組織なんて極少数、お前に優しくしてた連中だけが会社の人間じゃないかもしんねーぞってことだ」

 

 そっか……上の方の人間が情報を得ても、下の、私に近かった開発とか研究とかそっちの人に情報を回さないことも出来るんだ。

 私に情報を教えないことでなんのメリットが有ったのかはよくわからないけど……

 うん、これは悩んでも仕方ない問題だ!

 

「とにかく、今は目の前のことやろっ!」

「……はぁ」

 

 はーちゃんさんが目を丸くしてから、やれやれって感じで息をはく。

 

「そのため息はどうしてなのかな!?」

 

 ◇

 

「よぉ、キャサリン、入るぞ」

「えっ!? ちょ、誰!? ……あぁ、はものね……もう、入るならノックしなさいよ」

「いいだろ別に、着替え中だったとしても男なんかこねーんだし」

 

 そんなやりとりで、はーちゃんさんと私とキャサリン先輩の話し合いは始まった。

 場所は先輩の部屋で、不破先輩が暮らしていた部屋でもあるらしい。私物も残されてるけど、確かにはーちゃんさんの言う通り生活感ってものは感じられない。

 人が住んでる気配がないとかじゃなくて、単純に不破先輩の物が少ない。化粧品とか服とか、生活に必要なもの以外を一切排したような空間ができてる。

 一方でキャサリンさんのスペースはすごく可愛いとも言い切れないけど普通って訳でもない微妙な感じ?

 あとキャサリンさん自身は性格悪そう。

 

「ふぎゃっ!?」

 

 ちょっ!?

 なんでこの人いきなり私の頭を鷲掴みにしてるのかな!?

 握手は手と手でするものだよ!?

 

「考えてることが顔に出すぎ、喧嘩売ってるなら水風呂に沈めるわよ?」

「……す、スゴクカワイクテ、テンシミタイナヒトデスネー」

「よし、はもの、この子縛ってちょうだい」

 

 なにこの人怖いんだけど!?

 あとはーちゃんさんも任せろとか言わないで! って、どっからそのビニルロープ取り出したの!?

 あとその結束バンドは何に使うつもり!?

 

「はぁ……貴女、こんなバカっぽい子に負けたの?」

「うるせー。そもそも私はまともに殴り合うのは専門外なんだよ」

 

 初対面の人にバカっぽいって言われた!?

 え、なにこの人常識とかないの!?

 ……あ、私も結構似たようなことしてるからあんまり言うと私も常識知らずになりそう。

 曖昧なままにしておくことが大事な場面もあるよね。うん。

 

「もう一度聞くけど……はもの、これに負けたの?」

「……自分が情けなくてちょっと泣きそうになるからこれ以上なにも言うな」

「ん?」

 

 私が真理を獲得してる間に二人の雰囲気がなにか物悲しくなってる?

 でもキャサリン先輩が勝ち誇ってるってことはキャサリン先輩>はーちゃんさん>私って力関係……ってなんで私が一番下なのかな!?

 ……脳内ノリツッコミとか寂しいけど、この二人は相手してくれなさそうだし仕方ないんだよ。

 というか消灯時間もあるしそろそろ本題に入らないとね。

 

「それで、アリサ先輩のこと、教えてくれるんですよね?」

「……そうね。

 

 あれはまだ私たちがティーンエイジャーになる前、十歳のころのこと――」

 

 先輩が思い出を辿るように遠い目をする。

 そんな昔から二人は知り合いだったんだ……アメリカとフランスって違いがあっても仲良くはなれるんだね。

 

「キャサリン、そういうの要らねーから」

「あ、そう?」

「嘘なの!?」

 

 なんでそんな意味のない嘘をつくの!?

 あぁ、でもこれについても身に覚えが有るから怒れない……特にはーちゃんさんの前では。

 キャサリン先輩はどこまで話したものか、というように軽く悩んだあと、意を決したように口を開いた。

 

「うん、そうね。結論から言うと、不破アリサは生きているわ」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。