Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

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「変わり者」

耳ペロってエロいですよね


11. Une femme bizarre

「不破さん! 起きて、時間ヤバいのよ! あぁもう! 起こしてあげるとか言わなきゃよかった……どれだけ寝起き悪いのよこの子」

「あと、5分……」

「最初にそれ言ってからもう30分経ってるのよ!」

「じゃあ……1分……いえ30秒」

「そこまで寝たいの!?」

 

 コンコン

 

 ノックの音に鈴ちゃんが離れていく気配がしました。これでまだ寝ていられそうですね。せっかくのシャルロットの夢なんですから、もう少し余韻に……

 

「えっと、誰? って、ちょっと勝手に、」

「いーからいーから……あーやっぱり。アリサちゃんって本当に起きないのよね。あなたも苦労するだろうから、とっておきの方法を教えてあげる★」

 

 んー? なんか、いつも私で遊ぶ小悪魔の声がしますよー? あ、小悪魔ってことはシャルロットですね。

 

「え? そ、そんなことするの? ていうか、毎朝そうしないと起きないの!?」

「うん。あ、でも怪我しないように気を付けてね」

「はぁ」

「じゃ、バイバイ♪」

 

 んー、バイバイ小悪魔しゃるたん……私ももう一度夢の国へ、アリサ、いっきまーす……

 

「えっと……不破さん? 起きないか……お、起こすためだから仕方ないのよ? もう時間もギリギリだしね?」

 

 何をしたって起きませんよーだ……んぅ? 耳に息が……あぁ、フゥーするんですね。そんなことしたって私には、

 

 ペロリ

 

「わひゃあ!? り、りり、鈴ちゃん!? 耳舐めプレイなんてアブノーマル過ぎますよ!?」

「プレイじゃない! な、なかなか起きなかったんだから仕方ないでしょ! な、舐められたくなかったらちゃんと起きてよ」

「知り合って1日の相手に対する遠慮って物はないんですか!? というか顔を真っ赤にするほど恥ずかしいならやらないでくださいよ!」

「だってさっきの人がこうしないと起きないって!」

「やっぱり先輩ですか!」

 

 心臓の音が聞こえるほどドキドキしちゃうじゃないですか! というかあれですね。これは仕返しが必要です。

 えぇ、私は何も悪魔じゃないのでハムラビ法典にならって仕返しをしましょう。目には目を歯には歯を。舐めには舐めを、です。

 

「え!? ちょ、不破さん!? なんで私をってまさか!?」

 

 ばっと飛びかかって鈴ちゃんをベッドに押し倒します。体勢的にもいい感じです。

 

「あ、不破さんじゃなくて、アリサがいいです」

 

 ペロ

 

「ひゃん!」

 

 ペロペロ

 

「だ、だめ……力抜けちゃ」

 

 ペロペロペロ

 

「ダメダメダメ! 奥に、と、届いてるってばぁ!」

 

 ……っは!?

 目の前には私に押し倒されて服が乱れている鈴ちゃん。そしてヌラリと光を妖しく反射する小さな穴――もちろん耳のですよ? 

 えーと、ひょっとしなくても寝ぼけている間にとんでもないことしちゃいました?

 というか、このあり得ない状況はまさしく楯無先輩の姦計によるものですね。私のせいじゃないです……とはいかないですよね。

 

「あー、鈴ちゃん? 大丈夫ですか?」

「アリサのばかぁ……遅れそうなのに、こんなんじゃ走れないじゃない」

 

 お互い暴れ回っていたため息も荒いですし……確かに今走ったら酸欠起こしそうです。

 

「お、お詫びに、私が、送ります」

「え? な、なに?」

 

 なにって……女の子を運ぶための伝統的作法、お姫様抱っこですよ。

 

「喋ると、舌、噛みますよ」

 

 

「あ、不破ぁ、遅かったじゃん。てか転校生くるんだってさ」

 

 もう走るだけでは間に合いそうになかったので、鈴ちゃんは嵐才流の縮地法を使って2組の担任の先生の下に届けました。ISを使えない以上あれが最も速いはずです。格闘と併用することが前提の歩法のため、

 

疲労もはしるのとあまり変わりませんしね。

 それでも鈴ちゃんが早々に暴れるのを諦めてくれなければ共倒れだったかもしれませんが。

 私の方も何とか間に合ったようです……

 

「おはよう、ございます……三好さん。その転校生なら2組に組み込まれるようですよ」

 

 初日から遅刻ギリギリらしいですよ、と言おうか悩みましたが、隣の織斑君に聞かれて鈴ちゃんの評価が下がっても可哀想ですしやめておきました。

 なにより、どうもほぼ完璧に私の寝起きの悪さが原因みたいですし。

 

「流石ぁ、クラス代表特権って奴?」

「えぇ、まぁ」

 

 私の部屋に越してきたなんて、しかも今朝はお姫様だっこで届けたなんて言ったら野次馬わきそうですし、適当に誤魔化すのが良さそうです。

 

「でもさぁ、この時期に転入とか変じゃない?」

「それは織斑君に興味を持ったどこかの国が代表候補生を送り込んできたってことでしょう」

「あ、無理矢理ねじ込んだってことか。なるほどねー」

 

 このIS学園、転入するには余程高いIS適正もしくはISの知識があるか国の推薦がないと、転入試験すら受けられません。結局、転入生イコール代表候補生という図式ができあがるわけです。

 ま、訓練機自体が十分に用意できないから入学の際の倍率も高くなっているわけですし、専用機を持っているくらいしないと学園としても受け入れたくないですもんね。

 

「あ、代表。転入生の話? なんでも中国から来たらしいよ」

「そ、そうですか」

 

 クラス代表になってからはや数週間、代表だいひょーと呼ばれるようになり、クラスメイトの方との距離が若干縮まりました。それでも大多数の方は遠巻きに私を見るだけですけどね。まぁ、クラスの人たち

 

にも慣れましたけど、やっぱり人付き合いは苦手なのでちょうどいいんですが。

 

「今日も遠くから愛でられてるねぇ、不破ぁ」

「ものは言いようですね……私的には愛でている、というより近付きがたいって雰囲気ですけど?」

「不破は怒らせなきゃ可愛いのに」

 

 だから、暫定クラストップの三好さんに言われても困ります。あ、暫定っていうのはもちろんシャルロットが来たら変動するからですよ?

 早く来ないかなぁ。

 確か6月くらいに来るんだっけ? 今度社長さんに電話で聞いてみようかな。

 

「SHR始めるぞ」

 

 あれ、いつの間にか織斑先生が来ていました。

 朝から慌ててたせいで注意力が散漫になっていますね、

 ……というか、昨夜も今朝も時間がなくて、お弁当の準備ができませんでしたね。今日は食堂ですか。使ったこと無いので少し緊張しますね。

 

 

 さて、1時間目が終わって、やはりクラスでの話題は中国から来た代表候補生。

 鈴ちゃんがどれくらい強いのか、なんて話に花が咲いています。

 

「ま、中国の代表候補生だからって専用機持ちかは分からないし、そもそもクラス代表はもう決まってるんだから1組のクラス対抗戦優勝は可能性あるよね」

「――その情報、古いよ。2組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

 あれ? これ鈴ちゃんの声ですよね? なんか朝と様子が違う気がするんですが。

 

「鈴……? お前、鈴か?」

「何恰好付けてるんだ? すげえ似合わないぞ」

「というか、鈴ちゃん、やっぱり朝の余韻が残ってぼーっとしてるんじゃないですか?」

 

 私は記憶が曖昧なのでダメージ少なかったですけど、素面だった鈴ちゃんには刺激が強かったのでしょう。

 だから変に意識してあんな堅い口調に。

 

「んなっ……!? なんてこと言うのよ、アンタたちは! というかアリサ!? せっかく忘れかけてたのに、思い出させないで!」

 

 ショック療法が効きましたかね。元に戻りました。その代わりに顔が紅くなりましたが。

 ……多分、私の顔も同じことになっていますね。

 

「アリサさん? 知り合いですの?」

「セシぃ? あぁ、昨日からのルームメイト。部屋に野次馬が集まったらヤなので内緒ですよ?」

 

 さささ、と寄ってきたセシぃに軽く説明します。それにしても女の子達ってなんでこんなに噂好きなんでしょうかね。

 

「だいたい、朝もアリサがあんな運び方するから周りから痛ぁ!?」

 

 バシンッ! という音に振り返ると鈴ちゃんが織斑先生に撃退されたところでした。

 

 その後も授業中になにやらウキウキと楽しそうにしていた篠ノ之さんと、新たな専用機持ちを相手取る

 

ために織斑君の特訓内容を考えていたセシぃが出席簿の餌食に……

 だから授業は真面目にって言ってるじゃないですか。

 

 ◇

 

「お前のせいだ!」

「あなたのせいですわ!」

 

 おー、やってるやってる。なんていうか、見事な言いがかりにお金が払いたくなりますね。

 まぁ、出席簿で3回も叩かれれば八つ当たりしたくなる気持ちも分からないではないですが……っと、どうやら食堂に行くようですね。

 

「織斑君、私も一緒していいですか?」

「不破さん? あれ、弁当は?」

「作り忘れちゃったんですよ。察してください」

「しっかり者の不破さんにしては意外だな」

「ヤですね。誉めないでくださいよ」

 

 篠ノ之さんが怖い目で睨んでくるじゃないですか。ここまで堂々と喧嘩を売られると買うのも馬鹿らしいというか。勝てない相手に喧嘩を売るのを馬鹿にしたくなるというか。

 

「ふ、2人とも仲良く、な?」

 

 別に殴り合いを始めるわけではないんですからいいじゃないですか。というか、私は篠ノ之さんに何もしてないので織斑君が彼女をどうにかしてください。敵意が向けられたら敵意を返すのは育った環境上仕方ないんです!

 ……とはいえ、今回は私がお邪魔させてもらっている立場なので我慢しますけど。

 というか、篠ノ之さんが私を敵視する理由が分からないのですが、やっぱり単純に馬が合わないだけでしょう。

 何を食べましょうかね。

 

「んー……悩みますね。カスレにコック・オー・ヴァン、ブイヤベース……鳥も野菜も食べたい気分です

 

しポトフにしましょう」

 

 しかし、フランス料理だけでも随分揃ってるんですね。材料的に自炊でフランス料理を作るのも難しいですし、懐かしくなったらここで食べるのもいいかもしれません。

 まぁ、ポトフは洋風おでんとも言われるくらいですから作るのは簡単ですけど、スープですから1人分だけ作るのも難しい……あ、鈴ちゃんがきたから今度からは多少量が多くなっても平気ですね。

 

「おまたせしました。というより私のことなんか気にしないで食べ始めていただいても構わなかったのですが……」

「まあ、せっかくだから。食べ始めのタイミングを合わせるくらい大したことじゃないしな」

「そうですか」

 

 皆さんの料理が冷めてしまうことも考えた方がいいと思いますけどね。

 篠ノ之さんのきつねうどんとか、鈴ちゃんのラーメンとかなんか伸びちゃうじゃないですか。

 

「2人ともごめんなさい。今度からは私のことを気にせずに食べちゃってください。料理は出来立てが美味しいので」

「ん、気にしなくてもいいわよ。食べたくなったら食べてたし」

「…………そういうことだ」

 

 今度は敵意も有りませんでしたが……やっぱり篠ノ之さんとは壁があるように感じますね。私としては誰とも敵対したくないのですけど。

 まぁ、たまに私から煽ったりもしているので言えた義理でもないですか。

 

「あぁ、そういえば鈴ちゃんは放課後どうするんですか? 出かけようと思っているので案内くらいならできますよ?」

「あー、それだけどさ。一夏、久しぶりだし、どこか行こうよ。積もる話もあるでしょ」

 

 デートですか。そういう理由なら私は1人で行きましょう。恋路を邪魔して馬に蹴られたくないですしね。

 

「なら必要な物があれば言ってくださいね。ついでに買ってきますよ」

「ん? うーん、思いついたら連絡するわ。ありがと」

「――というか、一夏は私とISの特訓をするから放課後は埋まっている」

「そうですわ。クラス対抗戦に向けて、特訓が必要ですもの。あいにくわたくしは遠距離射撃専門なので大した力にはなれませんが……」

「そっか……ならやっぱりアリサに案内してもらおっかな」

 

 あー、篠ノ之さんはいいとして、セシぃは空気読みましょうよ。鈴ちゃんが頑張って織斑君を誘おうとしてたのに……蹴られますよ?

 一歩引いた立場にいるセシぃが訓練なんて言っちゃったら、鈴ちゃん的には篠ノ之さんの意地じゃなくて、最初からそういう予定だったと思っちゃうじゃないですか。

 

「特訓ですか。私も急ぎ必要な物があるというわけではないので……そうですね。鈴ちゃん、私たちも織斑君の特訓に付き合いませんか?」

「そうですわね。アリサさんは一夏さんの白式と同じで接近戦のみの戦い方をしますし、一夏さんの特訓相手としては最適ですわね」

 

 いやー、だからセシぃ、2回目ですけど空気読みましょうよ? ここは私をお勧めする場面じゃなかったでしょ? 篠ノ之さんは睨んでくるし、鈴ちゃんも裏切られたみたいな顔してるでしょ?

 

「いえ、私はあまり武器を使いませんし、そこらへんを篠ノ之さんと鈴ちゃんに任せればいいじゃないですか……私はそうですね。セシぃと模擬戦をして、その様子から学び取ってもらいましょう」

 

 私たちは3人に直接干渉しないで、織斑君争奪戦は勝手にやっていてもらいましょう。

 なにより、私が接近戦の手解きをするということになると篠ノ之さんの役目がなくなって、ますます敵視されそうですし、

 

「ううん、今日はやっぱりやめておくわ。それよりアリサ、寮内とか学校とか案内してくれない?」

「え? あ、はい。じゃあ放課後迎えにいきます」

「気ぃ遣いすぎ。私から行くわよ」

 

 んー……私にはそんなつもりないんですけど。人付き合いには慣れてないのでやっぱり鈴ちゃんの言うとおりなのかもですね。

 セシぃにも、私はある程度の仲になった人に甘える傾向があるって言われたこともありますし、鈴ちゃんの世話を焼こうとするのもそのせいなのでしょうか。

 でも、なんで鈴ちゃんは織斑君の近くにいようと思わないんでしょう。私だったら好きな人の傍にはずっといたいですけど。

 

「あ、そろそろお昼休みもお終いですね。お先に失礼します。皆さんも遅れないように気を付けてくださいね」

 

 まぁ、とりあえずは出席簿で叩かれないように早めに教室行きましょう。

 

 ◇

 

「今日の授業はこれで終わりだ。各自、復習を忘れないように。おい、織斑、お前もだぞ」

 

 ふー、やっと終わりましたね。最近はようやく実用的な授業になってきたのでつまらなくもないですが

 

、やっぱり授業というだけで疲れます。

 何で俺だけ名指しなんだよ、と言って織斑先生に叩かれている織斑君は方っておいて、鈴ちゃんを待ちましょう。

 でも案内する、なんて言っちゃいましたけど、学園内に案内する所なんて思い当たらないですね……2人っきりになりやすい隠れスポットとか紹介すれば喜んでもらえますかね。

 

「アリサ、待たせた?」

 

 セシぃと篠ノ之さんに引きずられていく織斑君に合掌をしてから数分、そーっと教室の扉が開かれました。

 そこから現れたのはなぜだかキョロキョロと挙動不審な鈴ちゃん。

 

「まぁ、それなりに……織斑君ならもう特訓に行きましたよ?」

「そ、そう……あのアリサ」

「なんですか?」

「悪いんだけど、案内の前に寮に寄らせてくれない?」

 

 別に構わないんですが、何をするつもりなんでしょう。私服に着替えてしまったら学園内を歩けませんし……

 

「ほら、慌ただしかったからメイクとかしっかりできてないし……」

 

 あーなるほど、だから織斑君と一緒に特訓するのも断ったんですね。すっぴんでも十分に可愛いとは思いますが、乙女のマナーという奴でしょう。

 ただ、織斑君がメイクに気付くか、そして気付いたところでその意味が伝わるか、という辺りは絶望的だと思います。

 女の子って身嗜みに気を付けてるんだなー、程度にしか考えないでしょう。

 

「それでもいいのよ。どちらかと言えば一夏を誘惑する為じゃなくて、私が本気になるためなんだし」

「化粧で本気になるって……どこの戦闘部族ですか」

 

 あ、でも化粧で相手に見られても恥ずかしくないようにするっていうのも、ある意味では自己暗示なのかもしれませんね。

 手慣れた様子で自分の顔にメイクしていく鈴ちゃん。どうすれば自分が可愛く見えるかを知り尽くした化粧の仕方ですね。これも、全て織斑君を誘惑するために覚えたのだとすると……

 やっぱり学園案内は織斑君関係で進めるのが良さそうですね。

 

「お待たせ」

「それじゃ行きましょうか。あ、メモ持った方がいいかもですよ?」

「?」

 

 鈴ちゃんにとっては有意義な情報が満載でしょうから。

 

「まず、この部屋が織斑君の部屋です。ただ、織斑君はアクティブなので基本的に夜しかいないでしょう

 

 

「2時間目と3時間目の間の休み時間にここにいると織斑君に会えます。でも織斑君はトイレに行く途中なので戻ってくるところを待ち伏せた方がいいですね」

 

「フィールドを使用しているとき、織斑君はこちら側のピットで着替えることが多いようです。織斑君と2人きりになりたいときは、勇気があるのなら入ってみてもいいかもしれませんね」

 

「あ、後これあげます。1組の時間割と利用教室が書いてあるので参考にしてください」

 

「あぁ、2人で内緒の話をするときはこの廊下の突き当たりを曲がって左手の教室を使うといいですよ。鍵が付いていないのでいつでも使えますし、特別な物がおいてある部屋が近くにもないので先生方もあまり来ません。ただ、私が教室にいないときはそこにいるので、使うときは予め言っていただければ控えます」

 

「他に知りたいことありますか?」

「……えっと、アリサって本当にアイツに興味ないの?」

「えぇ、恋愛対象としての興味はあまり。あぁ、詳しすぎるってことですか? それは単純に織斑君の周りに起こる厄介事を避けるためですよ」

 

 それに、今のIS学園では彼の情報が最も価値が有りますからね。しかも皆さんその情報を独占しようとして無闇矢鱈に広めないので割と長く使えますし。

 

「じゃあ、さっきのこと知ってる生徒も多いってこと?」

「いえ、普段皆さんに教えるのはもっと小さいことですね。例えば織斑君が理解できていない授業範囲とか」

「なんでそんなことまで知ってるのよ……」

「席が隣だからですよ? 授業も退屈なので暇つぶしに織斑君を観察しているだけです」

 

 彼、いろいろと顔に出やすいので判断も楽なんですよね。たまに直接、私に聞いてきますし。

 

「あ、そういえば、1組の皆で彼にISについて教えているのですが、私の番のとき鈴ちゃん来ませんか?」

「いいのっ!?」

 

 良いも悪いも、私としては織斑君のISへの認識を聞いた時点で満足、というか今の状況は面倒なだけですから。

 鈴ちゃんが変わってくれるなら私も楽できて万々歳なんですよ。

 

「そろそろ、織斑君たちの特訓が終わる頃ですね。タオルと飲み物でも持って行ってあげたらどうですか?」

「う、うん。ありがと……でも、なんでアリサは私にアドバイスするの? この様子だと篠ノ之箒には何も言ってないんでしょ?」

 

 照れたような顔つきから一転、鋭い目で私を観察する鈴ちゃん。

 んん? 確かになんででしょうね。ここまで教えてあげるほどの仲ではないのですが……やっぱ、セシぃの言う私の性格のせいじゃないでしょうか。

 1日2日の関係でこうなってしまうのは普通ではないと分かっていますが……自分でどうこうできるものでもないんですよ。

 

「まぁ、ルームメイトのよしみということで」

「そ。じゃあ一夏に差し入れしてくるわ」

 

 また夜ね、と挨拶を交わして鈴ちゃんは走っていきました。

 あ、そうだ……

 

「先に飲み物に口を付けておけば間接チュウですよー! 彼なら間違いなく気付かないと思います!」

「な、なな、わぁ!」

 

 あ、転びました。

 私も部屋に帰りましょうかね。


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