Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

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三色(みいろ)(トラップ)


オリジナルっぽいの入ります。
ISを読み直していて思ったことが一つ。
一松さんたちって原作キャラじゃなかったのかー

色々と原作を忘れています(


12. Un piège de la trois-couleur

「本当に……あなたって嫌な女よね」

「そうですか?」

「結局私は何の瑕も残さずに退学にされたってことじゃない」

 

 ……まぁ、確かにそうなりますかね。

 いえ、もちろん当時はイラつきましたし凹みもしましたけど今更気にするようなことでもないと思うんですよ。

 そもそもキャサリンさんの退学だって私の意思とは関わりないところでの決定ですからね。だってそもそも彼女のことなんてよく知りませんでしたし。

 というかキャサリンさんだって私のことをよく知らなかったはずなのにどうして敵意を持たれたのでしょうね?

 

「それよ。その私は無害ですって顔が気に入らないのよ」

「え……と、私、有害です?」

 

 シャルが関係していないところでは人様に迷惑をかけていない筈なんですけど……でも私の一人よがりかもしれませんし……

 どうしましょう。有害だって言われたらさすがにショックです……!

 

「……私にとっては有害よ。これでも国では花よ蝶よと育てられたお嬢様だったのよ? だから織斑君だってすぐに堕とせると思ったのに……しかもちゃっかりデュノア君と付き合ってるらしいじゃない」

「いや、シャルは女の子ですけど……」

「揚げ足とらないで!」

「ひゃい!」

 

 この人、実はとても怖い人なのではないでしょうか!?

 なんていうか、自分のターンを絶対に譲らなさそうです。今は私が話してるんだから口を閉じてろって感じで。

 

「で、大方私のことなんて忘れてたんでしょ?」

「はい。それはもうすっかり……って場所移動した方がいいかもしれませんね」

 

 話しながらそーっと廊下を覗いてみれば人っこ一人いません。

 それは今のところ安全だということでもありますが、逆に人目を気にしないで過激な行動に出られるということでもあります。

 守るときは扉が一つの部屋は好都合ですが逃げるとなると別です。やっぱりタイミングを見計らって移動しないといけませんね。

 

「キャサリンさーん、移動する準備してくださーい」

「ほんと許せないくらい嫌な女……!」

 

 ん?

 

 バチッ!

 

「あっ……」

 

 ◇

 

「シャルロット! いいところにいたわ! 一夏見なかった!?」

「へ? あ、ううん、見てないけど」

「じゃあ生徒会長は!?」

「見てないよ?」

 

 あーもうっ!

 いったいどこに行っちゃったのよ!?

 学祭デートしようと思って午後は開けとくからって言ったのに全然誘いに来ないし!

 一組の子に聞いてみれば生徒会長が拉致したとか言うし!

 

「鈴もアリサ見てない?」

「ん? 見てないわよ? というか一緒じゃないの?」

 

 あの子のことだから今日はシャルロットから離れないんじゃないかなって思ってたんだけど……

 

「うん、デートしようって言われて、それで僕が着替えてる間にいなくなっちゃったの」

「でも書き置きくらいあるでしょ?」

 

 あの子、そういうところはマメだしね。

 

「それにしてもアリサがドタキャンだなんて――」

「ないんだ」

「は?」

「その……書き置きなんてなくて。だからどうしてアリサがいなくなっちゃったかも分からないんだ……」

 

 あのアリサが……?

 デートを諦めるだけじゃなくねアフターケアまで忘れるとなるとかなり緊急性の高い用事でも入ったのかしら……それこそ本国からの命令とか……

 あ、もしかしたら一夏と同じで生徒会長に拐われたのかも。アリサもかなり気に入られてるし十分あり得るわ。

 でもそんなことよりこの二人のことが心配ね。

 放っておくとマイナス方向にしか行かないから今回のドタキャンで互いに嫌われたと思ってても不思議じゃないわ……

 

「……あの、アリサはシャルロットのこと大好きよ?」

「ん? うん、知ってるよ?」

 

 シャルロットが当たり前じゃん、という顔で私を見る。いや、うん、まぁいいことよね。

 そんな感じにこの子も成長したなぁなんて思ってたら目の前に一枚のノートがかざされた。

 

「なにこれ?」

「アリサのノート。これを見たらアリサが僕のこと嫌えるわけがないって思えたよ」

 

 なにそれ。

 キスしても、それ以上のことをしても不安になっちゃうシャルロットがそこまで自信持てちゃうものってなんなのかしら?

 

「これ、まだ僕が転校してくる前のアリサのノートなんだけどね。余白にはいつも僕のことが書かれてるの。何してるかな、とか笑えてるといいな、会いたいなって」

「へぇ」

 

 ……本当にそんなに好きだったのね。

 今までどうして身を削ってまでシャルロットを……ってアリサに対して思ったこともあるけどあの子にとっては本当に当たり前だったのね。

 まぁ、そりゃそうね。

 今時『好き』じゃなくてちゃんと『愛してる』んだってことを自覚したいなんて悩む女なんてそうそういないわよ。

 それはアリサがシャルロットに対して誠実でいたいっていう証明なのかも。

 

「とりあえず私と一緒に探してみる? というかプライベート・チャネルで呼び掛けた?」

「それは出来ないよ」

「そりゃ大事な用事なのかもしれないけどあんたたちは恋人なんだから――」

「いや、そうじゃなくて……アリサのカゲロウここにあるからね……忘れちゃったみたい」

 

 ……は?

 え?

 …………あんのバカ娘!

 なにもこんなに不特定多数の人間が出入りする日に忘れなくたって……というか専用機持ちとしての自覚を持ちなさいよね!

 他の国に奪われたら世界のバランスが崩れちゃうの分かってるのかしら?

 アリサには内緒だけど私だってアリサへの監視命令をなんとか突っぱねてるんだから……はは、卒業後に何させられるか分かったもんじゃないわね。

 学園の生徒は国や組織からの干渉を受けないって言うけどそれもあくまで卒業するまでの間だけ。

 言ってみればマフィアのボスを殺した人が刑務所で安全に暮らすのと同じよね。釈放されて瞬間に安全の保証がなくなるんだから……

 

「とりあえず、私と一緒に探す?」

「うん、そうしようかな」

 

 ま、そこまで分かってて同じことをしてる私も私よね……でも、後悔なんてしないわよ。

 だって、アリサがいなければ私は一夏と一緒になれなかった。アリサは私の努力を担保に人生の幸せを保証してくれたんだもの。

 だったらアリサが不幸になるかもしれないことは絶対にしない。それが例え国を裏切ることになってもね。

 それは私の専用機である甲龍が無駄だってことで、IS開発のために税金を絞り取られてる国民には悪いけど……知らない大勢より知ってる一人を選ばせて貰うわ。

 

『ぴんぽんぱんぽ~ん……生徒会だよ~。生徒会長さんは、うーん、なんか忙しそうだから私が代わりにお知らせしまーす』

 

 あれ、この声は本音よね……?

 ただ、生徒会長が忙しそうって言ってたし、そうなると一緒にいるはずの一夏と何かしてるってことで……も、もしかして強引にえっちなことしようとしてるんじゃないでしょうね!?

 

「あんな年増のなにがいいのよっ!」

「あ、あの……鈴?」

「…………な、なんでもない」

 

 急に叫び声をあげた私をシャルロットが心配そうに見ていた。いや、そんな残念な人を見るような目で見ないでちょうだい……!

 

『えーっと……あ、そだそだ。それで生徒会では観客参加型の演劇シンデレラをやるよ~。王子様のおりむーの王冠を手に入れた人は~……』

 

 やっぱり一夏が絡んでる!

 手に入れた人はどうなるのよ!?

 

『おりむーと同じ部屋に住める権利をあげちゃいます!」

 

 あ、これはヤバい……学園の全てを巻き込むつもりなのね。

 ……いったい私は何人コロせばいいのかしら?

 

『ちなみにー、参加条件は生徒会の出し物に投票することだからねー。いじょー生徒会からのお知らせでしたー。あでゅ~……ぱーんぽーんぴーんぽーん』

 

 ……やってやろうじゃないの。

 別に怒りはしないわよ?

 だって、私にとっても都合のいいことだし一夏なら当然私がお願いすれば王冠をくれるだろうし。

 渡さなかった場合は私と同じ部屋に住みたくないってことでしょ?

 そんなわけないじゃない。

 

「でもアリサのことも探さないといけないし……」

「うーん……鈴、行かないとダメだよ。この企画に一夏が協力してるんだとしたら鈴に王冠を渡したいはずだし、それなのに鈴が参加してなかったら一夏も悲しいよ?」

「……ありがと。じゃあ行ってくるわ!」

 

 そうよね……どちらにせよ私以外の女が一夏と同じ部屋になるなんて許せない。

 それなら結局私が同室になるしかないじゃない。

 確か生徒会の出し物は……うん、第四アリーナであってるわね。

 第四アリーナはちょうどこの真下から直通の廊下が伸びてる……でも階段で降りるなら結構遠回りだし……ええい、女も度胸!

 

「あ、鈴!?」

 

 半ば悲鳴をあげたシャルを後目に窓から飛び降りる。

 二階や三階くらいからなら生身でも飛び降りれるように訓練されてるっての。

 

「待ってなさいよ……一夏ぁ!」

 

 私以外の女に王冠渡したらただじゃおかないんだから!

 

 ◇

 

「あっ……」

 

 ……やはり、そうでしたか。

 キャサリンさんも私の敵だったんですね。

 

 バチバチバチッ!

 

 信用できなかったのでわざと隙を見せてみたら予想通り手を出してきました。

 

「あっ、くっ……!」

 

 キャサリンさんの右手にはスタンガンが握れています。

 私が掴んでいるその手を必死に振りほどこうとしていますがそれも無駄な努力です。

 私、腕は細いんですけど握力は八十キロ超すんですよね。リンゴも潰せます。

 

「い、た……!」

 

 グイと力を入れるのと同時にキャサリンの手からスタンガンが落ちました。

 OUL……アメリカの有名な武器メーカーですね。

 バタフライナイフからISまで、なんていうキャッチコピーの企業だったはずです。

 

「……どうして、分かったのよ」

「先程の男性達の中に見知った顔がありました。キャサリンさん、捨て駒は一度しか使わないから捨て駒なんですよ?」

 

 私を海に投げ込んだ人たちが混ざっていましたから。それにちょうどシャルが転校してきた数日後から私をつけ回していた人とか。

 

「お粗末な尾行だったのですぐ気が付きましたけどね」

「……ケチらなければよかったわね」

「それにしても、退学になる前から私のことを調べていたのはなぜですか?」

「別に……ただなにか弱味を握ろうと思ったのよ」

 

 筋は通りますし、キャサリンさんならやりそうなことですけど……隠し事をしているような気もします。

 ただ、場合によってはここで明らかにしない方がいい可能性もあります。

 私の予想が正しければ特に――

 

「失礼します――」

 

 トン、とキャサリンの首筋に手刀を落とし気絶させました。

 身体の力が抜けてガクリと膝から崩れ落ちるキャサリンさんを一度支えそのまま床に寝かせます。

 そしてそのまま余計な音をたてないように最新の注意を払いながらキャサリンさんの服を脱がしていきます。

 私が探しているのはあるかもしれない盗聴機です。

 

「それにしても個人的な恨みでここまでするなんてお金持ちはやっぱり違いますねー」

 

 心にもないことを言いながらも手は止めません。

 こんなことならカゲロウを置いてこなければ良かったですね……あれを囮にして更衣室に忘れたことを言えば亡国機業が動くと思ったのですが、カゲロウがないと盗聴機を探すのも一苦労です。

 キャサリンさんが亡国機業に関わっている可能性は高くはないですが低くもないです。

 IS学園ではその専門性から退学させられる生徒はなかなかいません。織斑先生のぼやきでは数年前に一人記録があるくらいだとか。

 その上、キャサリンさんはアメリカでもかなりのお金持ちだとか……キャサリンさんが退学になった理由が理由なのできっかけさえあればお金の力で再編入できるでしょう。

 亡国機業からしてみれば退学にされて捨て鉢になっていただろうキャサリンさんはスパイにするには好条件なのです。

 きっと学園の外にあった空きテナントを使うつもりで数ヵ月前から取り壊しを進めていたのでしょうが、偶然にキャサリンさんを手に入れたことで計画を変更したと考えれば色々と繋がります。

 脱がせる服も減ってきましたが、最後の一枚であるスカートを捲ったとき――

 

「あった……」

 

下着に引っかけられている小型のマイクを見つけました。


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