Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

110 / 148
「お嬢様のメイド注意報」

とりあえず今日はここまで!

あけましておめでとうございますうぃる
来年もよろしく!


10. Une fille est une dame du nettoyage.

『これよりIS学園祭を始めます。生徒は各自――』

 

 ……始まりましたね。

 メイド喫茶で接客をするまで一時間ほどあるのでその間は巡回警備です。

 

「うそ!? 一組で織斑君の接客!?」

「しかも執事の燕尾服!?」

 

 まぁ、ついでに一組の宣伝もしちゃいます。

 

「ついでに勝ったらツーショットで写真をとれるゲームもありますよ?」

「マジで!? 考えた人誰よ、天才じゃないの!?」

「いやー、それほどでもー」

「不破ちゃんだったんだ!?」

 

 別に個人的には一組が大盛況になろうがなるまいが関係無いのですが……狙いは別にあるのですよ。

 

「グッジョブ不破ちゃん! これ、三年二組のスイーツカフェペア招待券! デュノアさんと来てね!」

 

 とまぁ、こんな感じにただで学園祭デートをするための下準備。

 演劇部のコメディラブ『シンデレラとジュリエット、更に赤ずきんとトイレの花子』のペアチケットも貰いましたし、軽音楽部の中野さんのおかげでコンサートも楽しめますね。演劇部の演目はコメディラブであってラブコメではないらしいです。これ重要なんだとか言ってたので注意して下さい。

 他にも焼きそば屋さんや茶道体験、美術部、鈴ちゃんとこの飲茶(ヤムチャ)とかですねぇ。

 あと料理部の部長さんにかなり誘われたので行った方がいいかもですね。図書室でメイド喫茶のメニューを考えていたところを目撃されたのが運の尽きでした。

 

「というかうちの学園広いですね……うまく予定を立てないとシャルとの学祭デートができません」

 

 一組から出発するとしてまずは二組に、その次は茶道体験に行ってから料理部、そのあとコンサートを途中まで見て一松さんたちの演劇を見てからさっきいただいたスイーツカフェで締めですね。

 目的の半分は達成できましたから、あとは――

 

「あのー?」

「はい?」

「私、IS装備開発企業『みつるぎ』の渉外担当、巻紙礼子と申します」

 

 すっと取り出された名刺には会社の場所や電話番号等も書かれています。

 ……ですが、『みつるぎ』なんて会社、聞いたことありませんねぇ。

 

「それで、日本の装備開発がフランス人の私に何のようですか?」

「いえ、あなたに声をかけたのは偶然で……織斑一夏君は一年何組でしょうか?」

 

 ん……織斑君に、ですか。

 どうしましょう。巻紙さんは長髪でそれなりに美人さんなのですけど……ただ、宣伝効果を期待して織斑君に装備を提供したいと言ってくる会社も結構多くて大変そうって鈴ちゃんが心配してたこともありますし……

 

「あの……?」

「……一年一組ですよ。ただ今は執事をやっているので午後の方がいいかもしれません」

「そうですか……ありがとうございます」

「いえいえ」

 

 さて……とりあえず学園内にいるフランスの誰かに彼女の監視を頼みましょう。

 私もそろそろ教室に戻った方がいいかもしれません。メイド服ってああ見えて結構着るのが大変らしいので……

 

「シャルのメイド服も堪能したいですし」

 

 今回の件でシャルが一番に狙われるということはまずないのでそこだけは安心できます。

 だから学園祭が中止になるようなことはさせません。

 まぁ、うちのメイド喫茶は織斑君がいてこそなのでお昼を過ぎたら営業を終わりますけどね。

 さすがに鈴ちゃんと学校デートさせないといけませんし……というか鈴ちゃんのチャイナドレス、お尻半分出てましたけどもしかして下着つけてないのでしょうか……?

 背中も開いてましたし可能性は高いです……

 

「お帰りなさいませアリサお嬢様」

「ふぇっ!?」

 

 あ、シャル……

 メイド服が似合いすぎてて大変です!

 というかこのシャルを誰にも見せたくないんですけど!?

 ちょ、責任者出てきなさい! って代表の私じゃないですか!

 

「シャルロットはお嬢様のお帰りを一日千秋の想いで待ちわびて――」

「ちょっと新入り、ぐずぐずしないでくれないかなぁ?」

 

 かなりの美人メイド――もとい三好さんがシャルに冷たい視線を向け、シャルもそれに体を縮めてしまいました。

 ……三好さん、どういうことですか?

 

「あ、すいませんでしたっ!」

「きゃっ」

 

 そしてシャルが頭を下げた拍子にその手にあったお盆が傾き、水差しの中に入っていた水が私の足にかかりました。

 ほ、本当に何が起きているんでしょうか?

 私はもちろん教室の中のお客さんも私の後ろのお客さんもハラハラしています。

 そんな中、シャルは焦ったようにハンカチを取り出して濡れた私の足を拭いていきます。

 それと同時に空いているもう片方の手でく私のるぶしの辺りをトントンと叩かれて……あ、欧文モールスですね。

 一度叩いてから指の腹ですーっと撫で、もう一度叩く……R?

 今度は三回連続で撫でられます。

 その後もかなり急ぎ気味のモールス信号は続けられ……R・O・L・L・P・L・A・Y?

 演劇ですか?

 

「お嬢様……本当に申し訳ありません」

 

 つまり私はお嬢様でシャルたちはそのメイドということですか?

 でもどうしてそんなことを……不思議に思って、つい発案者だろう三好さんを見ると目線を逸らされました。

 ん、いや顎で何かを……って発案者は向こうでせっせとテーブルを拭いてる一松さんなんですか!?

 というか二木さんもですけど皆さんかなり自然にメイド服着こなしてますね!?

 

「あの、お嬢様……私はクビ、ですか……?」

 

 なにも言えない私にシャルが助け船を出してくれましたが未だにどう対応していいのか分からない私はどうとも言えません。その涙も演技ならシャルかなりスゴいですね!

 私の後ろのお客さんがちゃんと席に案内されてるから不満はでないだろうななんて意味のないことしか考えられません。

 わ、私、演劇とかやったことないんですよ!? 

 

「お嬢様、とりあえずお着替えになってはいかがでしょーかっ?」

「へっ?」

「靴まで濡れて気持ち悪いんじゃないですかぁ?」

「あの、ちょっと、二木さん!?」

 

 これも助け船なのでしょうか……?

 二木さんが私のことをズルズルと引きずって更衣室と調理場を兼ねた暗幕の裏側に入りました。

 こちら側は食事用のスペースとはうってかわって紅茶のためのお湯の他に火を使った料理もメニューにあるため、その熱で窓を開けていてもむわりと蒸されそうです。

 さらに暗幕で作られた更衣スペースの中に入ると下着姿のままのリカさんがいました。

 

「ってカーテン全開じゃないですか!?」

「あ、代表おかえりー。いやー、だって暑いじゃない?」

「見えますからー!」

「いいよ。減るもんじゃないし」

 

 くっ、リカさんはスタイルに自信があるからそういうこと言えるんです!

 私なんて見られて恥ずかしい思いした上で傷跡を見られて、さらに胸が無いとか言われて……うぅ……ぐすん

 

「じゃ、リカちゃん説明任せたっ。私はホールに戻るね!」

「はいはい……まぁ、何となく分かるかもしれないけどさ。全部のメイドが同じような対応するんじゃつまらないでしょ? だから全員にキャラ付けしてるのよ」

「キャラ付け……?」

 

 どういうことでしょう?

 

「だからさ。三好は厳しいメイド長。二木は軽いノリの明るいメイドさんで一松はマジメでシャイ。ちなみにデュノアさんはお嬢様が大好きな子犬系メイドだよ」

「子犬系……って! それは他のお客さんにも尻尾振っちゃうってことですか!?」

 

 そ、そんなのやです……シャルは私の恋人なんですから……演技でも私以外の人に好きを示すなんてしてほしくありません!

 

「だいじょーぶ♪ これ見て」

 

 ウインクをしながらリカさんにラミネート加工された紙を渡されました……ただメニューが書いてあるだけのようですけど……

 あれ、裏になにか小さく……って指名ルール!?

 

「そ、それに気付けば好きなメイドさんを指名して呼び出せるわけ」

「でもシフトから外れてる人の写真も……」

「指名可能時刻ってあるでしょ? それが私たちのシフトと同じ時間になってるの」

 

 でも、これが一体なんなのでしょうか?

 

「気付かない?」

「え? ……あ、私の写真が――」

 

 ないです。

 ……これってもしかしてハブってやつでしょうか?

 私、実はクラス全員に疎ましく思われてたんですか?

 

「だから、シャルにも私が嫌がるようなキャラ設定を――いたっ」

 

 いきなりラミネートの角でチョップされました。

 やっぱりいじめるんですね!?

 

「そうじゃないっての。さっきデュノアさんは代表になんて言った? 一番最初ね?」

「えと……アリサお嬢様ですか?」

「そ。それが代表の設定。本当はお嬢様なのにハプニングでメイド服を着させられるってこと。お嬢様がメイドリストにのってたらおかしいでしょ?」

 

 あ、それで水をかけたりしたんですか。

 でもシャルが他のお客さんに愛想を振り撒くのは変わらないじゃないですか……

 

「ううん。デュノアさんは代表以外にはお嬢様って言わないわよ。全員お客様って呼ぶことになってるから」

「へ?」

「で、そのメイドリストにお嬢様大好きって書いてあるでしょ?」

 

 あ……シャルの字です……なるほど、写真の隣に一人一人がコメントを書いているんですね。

 二木さんは一松さんまで矢印を伸ばしてハートを、一松さんは『もう、はずかしぃよぅ』と書いています。

 って三好さん!?

 紹介文が厳しいけど大人の色気、コメントが『ご主人様、体の隅々まで可愛がってください(はぁと』って本気ですか!?

 厳しい態度を見せつつも指名されたらデレるんですか!?

 というか指名条件が年収三億円以上って!?

 いや、まぁ、確かにIS学園の関係者って考えると年収三千万円だと指名できる人とか結構きちゃいますからね……

 

「あれ? シャルがお嬢様大好きって書いてて、私以外をお嬢様って呼ばないってことは……」

「うん、公開いちゃいちゃ宣言だよ」

「リカさん! ありがとうございます!」

 

 キャラ設定を考えたのは間違いなくリカさんです!

 だってメイドリストじゃなくてその左下の責任者欄に名前がありますし!

 いえ、メイドリストにも載ってるんですけどね。

 

「うーん……普通恥ずかしがるはずなんだけどなぁ。一松以外が同じ反応ってどうなのよ」

「じゃあ着替えたのでいってきますってこの格好なんです!?」

 

 ミニスカートの黒いメイド服に青い硝子の髪留め、ゼブラ模様のオーバーニーソックスは左右で長さが違います。

 なんていうか、露出はそこまでおおくないんですけど私のだけお金かかってませんか……これ、本物のメイドさん仕様ですよね?

 @クルーズにはこんなメイド服なかったはずなんですけど……あそこのメイド服はセックスアピールをよしとしないヴィクトリアンメイドスタイルですからね。

 ちなみに私とシャルだけパフスリーブ・ミニスカートにペチコート着用というのはあらかじめ決まっていました。

 だってフランス人ですから?

 イギリス人は下品だって言いますけどフレンチメイドスタイルのほうが可愛いじゃないですか。

 あ、誤解のないように言いますけどフランスのメイドさんがフレンチメイドってわけじゃないですからね?

 セクシーなメイド服をフレンチメイドって言うだけですよ?

 

「ん、それね、ボーデヴィッヒさんが用意したんだよ」

「え?」

「意外だよね」

 

 ……あれ、ポケットの中に封筒?

 

――お姉様、隊長からメイドの装いをされると聞き及んだので国費から予算を出しオーダーメイドで一着縫製いたしました――

 

 エリーさん!?

 それ使い込みって言うんですよ!?

 

――もともとは性的アピールのための品ですがお姉さまの魅力を最大限引き出せるよう、清楚でありつつ可憐な、それでいて妖艶さをも持ち合わせる少女らしさを演出させていただきました――

 

 いえ、まぁ、ええ、ありがとうございます……

 フレンチメイドと一口に言っても今私が来ているようなスカートが短く袖がないというだけのものから腰布と胸をおおう布だけ、おヘソ丸出しという下品極まりないものもありますからね。

 うん。やっぱりこのゴシック・アンド・ロリータとの融合した、いわばジャパニーズメイドというべきスタイルが一番可愛いです。

 

「それで、私は無理矢理メイド服を着させられたお嬢様ってことでいいんですね?」

「そうそう。分かってるじゃない」

 

 ……お嬢様キャラってよく分からないのですけど高飛車な感じでしょうかね。

 とにかく納得したのでホールに行きましょう。ちょうど私が入る時間ですし。

 

「とは言っても元気よく登場しちゃダメですよね。あくまて無理矢理メイドの格好をさせられたわけですし……」

 

 というかこのメイド服、かなり着心地がいいです。コーデュロイなので不自然な光沢もなく実用にも耐えうる丈夫な作りですね。

 それに生地自体は重いはずなのに私の動きに合わせて軽やかに裾が踊ります。

 

「うーん……いい仕事してますねぇ。エリーさん、いくら使い込んだのでしょうか……?」

 

 このコーデュロイ、エリーさんの手紙にによるとフル・ビクーニャ・ウールらしいんですよ。ビクーニャってカシミヤの数十倍以上の値段がするんですよ?

 それに同封されていたペチコートやエプロンに使われているシルクは天然物の天蚕からとった繭糸だとか……こちらもキロ辺りウン十万という代物です……

 ドイツ国民の皆さんごめんなさい。そしてありがとうございます。あなたたちのお陰で今私はゲームの最強防具並みの値がするメイド服を着させていただいています……

 日本最高峰のクリーニング屋さんで洗って返しますね……

 

「えっと、とりあえず恥ずかしそうに暗幕から顔を出して……」

 

 こんな格好、人に見せられない! みたいなオーラを出せばいいんですよね?

 シャル、気付いてください!

 

「あっ、お嬢様っ」

 

 気付いてくれました!

 そっか、こういう嬉しいときは我慢しないで表に出してもいいんですね。

 ほんのちょっぴり恥ずかしがって、それでもシャルに向けて安心した笑顔を向けます。

 これ、演技じゃないですから。

 

「お嬢様、どうして出てこられないんですか?」

「へ、いや、あの、その……」

「とりあえずきてください!」

 

 あぁ、シャルが可愛いすぎますよぅ!

 でも、ここからは真面目にいきましょう。

 

「ふ、古くは貴族でもあったのにこんな格好を庶民に見せるわけにはいきませんっ」

「だーいじょうぶです。私も着てるんですから!」

 

 シャルが私って、私って!

 ああもう、これからもずっと私っていっててください!

 

「しゃ、シャルロット、貴女は私のメイドなんですから――やぁっ!?」

「はーい、お客様ごちゅうもーく。こちらが私の恋人で雇い主のアリサお嬢様です!」

「あ、あぁ……うぅぅ……恥ずかし……」

 

 顔を赤くし、両手でエプロンをぎゅっと掴むと店内の人達がため息をもらしました。 おぉ、さすが天蚕の絹、力一杯握ってもシワ一つつきません。

 

「かわいー……」

「え、本物のお嬢様?」

「そっか、こっちに書いてある大好きなお嬢様ってあの子のことなんだ……納得」

 

 べ、べつにシャル以外の人にそんな反応されたって……少しは嬉しいですけど……

 それにしてもお客さん側からアクションがないとオロオロするしかないですね……あくまでもお嬢様なのでメイド服で堂々としてちゃまずいでしょうし。

 

「あの、メニューくださーい」

 

 む、男性から声をかけられました……と、とりあえず行きましょう。

 

「メニューならテーブルの上にあるじゃないですか」

「ごめんごめん、本当は君と話したかっただけなんだ」

「……ではもう会話したので失礼します」

「あ、ちょっと!」

 

 なんだかあらかじめ用意していたような棒読み加減ですね。女性に慣れていないのかもしれません。

 まだ言葉を続けようとするのを遮って優雅に一礼してから顔をあげると声をかけてきた男の人も呆然としながら会釈をしてくれました。

 

「接客も簡単ですね――きゃっ!?」

「お嬢様! 適当にやらないでください!」

「しゃ、シャルロット……? 私、役目は果たしましたよ? 会話したいと言っていたので会話してあげました」

「そういう意味じゃないの! 行きますよ!」

 

 シャルが強引に私の手を引いて先ほどの席に戻ります。

 何をするつもりなのでしょう?

 

「お客様、うちのお嬢様が失礼しました」

「失礼なのはシャルロットです……私はご主人様なのですよ?」

「はい、口閉じてください」

 

 むぐぐーっ!

 め、名家の長女である――という設定――私がどうしてこのようなことをしなければいけないんですか!

 

「だ、男性なんておぞましい……」

「お嬢様、食べず嫌いはよくありませんよ」

「た、食べ?」

 

 シャル……その言い方はよくないです。お客さん、赤面してるじゃないですか……

 でもおかげで方向性が少し掴めました。

 

「あら、シャルロットは私が男性の味見をしても気にしないんですね?」

「え……?」

「そういうことでしたら少しくらい男性とお話しするのもいいかもしれないですね」

「あの、お嬢様……?」

 

 シャルはとりあえず無視して机に腰掛け男性の目の前で足を組みます。もちろんスカートの中は見せませんよ?

 

「ねぇ、なにか楽しいこと話してくれません?」

「え!? え、えっと、俺、織斑一夏の親友で五反田弾といいますっ!」

「へぇ、織斑君の……私は彼のクラスの代表を務めています。アリサって呼んでくれていいですよ?」

 

 外国のお嬢様で通しているので不破なんて苗字は教えられませんよね。

 

「あ、あの、お嬢様……そんなはしたない……」

「あら、メイドごときが私に庶民と同じ高さまで頭を下げろと言うんですか?」

「そ、そんな……」

「シャルロット、あなたは他に行ってて大丈夫ですから……あぁ、私の分の紅茶もお願いしますね」

 

 ごめんねシャル……私、ちょっと楽しんでます。だって、シャルはもう私のこと嫌わないんですもんね?

 シャルが私を嫌うのは私がシャルを嫌うとき。そして私がシャルを嫌うのはシャルが私を嫌うときです。

 だから、ほんのちょっぴり意地悪してみたくなっちゃうんです。

 シャルの気持ちを少しずつ信じられるようになっているのが嬉しくて……幸せですね。

 

「それで一夏のやつ――」

「へぇ、そうなんですか……でも確かに――」

 

 五反田さんは女性と話すときに緊張してしまうようですがだんだん慣れてきたのか饒舌になってきました。

 うん、やっぱり私は聞き上手さんですね。さすが私!

 

「あ、そろそろ行かないと……あの、アリサさん……!」

「はい、なんでしょう?」

 

 意外と真面目な顔で見つめられています。

 

「……電話番号教えてください!」

「ふぇっ!?」

 

 ……今のはシャルの声ですからね?

 うーん、私としては教えてもいいんですけど……ちゃんと恋人がいると言えばいいわけですからね。

 でも、どうやらシャルは嫌がっているようですし……

 

「シャルロット、こっちに」

「は、はい、お嬢様!」

「私、殿方とのお付き合いには明るくないのですが……電話番号を聞かれるというのはどういうことなんです?」

「え、えっと、えと、け、結婚を前提にしたお付き合いをしてくださいという意味です」

 

 また随分と誇張しましたね……でも、そうしてしまうほどにシャルが私を独占したいと思ってくれているということなので……

 

「申し訳ありません。私の電話番号を教えることはできないようです。恋人がいますので」

「そ、そっか……あの、二人の関係は演技ですよね?」

 

 むぅ……!

 やっぱりみんなそう思ってるんですね!

 別に女の子同士が付き合ってたっていいじゃないですか!

 

「……本気ですよ? シャルロット、目を瞑りなさい」

「へ?」

「いいから早くなさい」

「は、はい!」

 

 いつもと違う私がシャルに強制できる立場……ドキドキします。

 目を瞑っているシャルは緊張のためか直立不動で、睫毛だけが唯一震えています。

 

「シャルロット、可愛い♪」

 

 ちゅっ

 

 接客中なので軽いバードキスです。

 でも効果は抜群だったようでそれぞれが指名したメイドと話しているはずの教室内はシンと静まりかえっていました。

 注目されているのが分かって、少しだけ顔が熱くなっちゃいました。

 

「こ、こういうことですので! お客様方はくれぐれも私のシャルロットに手を触れないようお願いします!」

「お、お嬢様ぁ……よくもあんな恥ずかしいことを……仕返しですっ!」

 

 シャルがもじもじとしながら私に飛かかり、頬にちゅっとキスをしました。

 その瞬間、お客さんたちから拍手や黄色い声が上がりました。

 

「五反田さん、納得いただけましたよね?」

「……はい、お幸せに」

「またのご来店をお待ちしておりますね」

 

 最後にサービスでちゅっと投げキッス。

 どうやら私に高飛車キャラは無理があったようなのでメイドであるシャルと協力しないとですね。

 

「シャルロット、次はあのお客さんと話したいです。ついてきなさい」

「アリサお嬢様!? 指名されてからでないと――」

「知りません。私、メイドじゃありませんから」

 

 一年一組のメイド喫茶『ご奉仕喫茶』は学園内トップの売上高だったとかなんとか……

 ちなみに私とシャルの指名数(無効)は織斑君と同じだけあったらしいですよ?




一年一組メイド喫茶『ご奉仕喫茶』裏設定
メイド服設定(感想欄よりコピペ)

一組のメイド服はいわゆるヴィクトリアンスタイルですね。
長いスカートにタイツ、袖も手首まで隠れる清潔なイメージのメイド服です。
一方アリサとシャルのメイド服は作中でも言われているようにフレンチスタイル。
このフレンチはフランスを直接指すのではなく、イギリスから見たフランスのイメージ(=下品)という意味の形容詞となっております。
ただ、近年ではフレンチスタイルの中でもスカートの内側にペチコートを身に付けふんわり感を出し、エプロンやワンピースにもフリルやレースで装飾したゴスロリに近いメイド服をジャパニーズスタイルと呼ぶこともあります。
この場合、頭もホワイトブリムに限らず大きなリボンやバラなどの意匠を施した髪飾り(ほとんどの場合において黒系色)を着けることもあります。
ただしアリサの場合、メイドである以前にお嬢様だということになっているので頭はゴテゴテさせず、青硝子の髪留めのみをつけています。
ちなみに足がゼブラがらのオーバーニーソックスなのは足を長く見せるためです。右足のニーソックスが長いのはフトモモの銃創を隠すためですね。
アリサのメイド服に使われているビクーニャは世界一高い毛織物とも言われていて生地はキロ辺りなんと数百万円となります。
しかもコーデュロイ織法はイメージとしてはジーンズ生地に近いので使われる糸の重量も多くアリサのメイド服で考えると五百万は下らないかと(
さらにさらにペチコートやフリルなどに使われているシルクも天然の天蚕の繭から紡いだ糸で織ったものです。
本当の天蚕シルクは緑色の光沢なのです。価値は下がるのですが脱色したのでしょうかね。もったいない。

クラスメイド設定。
メニュー表の裏――メイド指名表

シャル
人を喜ばせることに幸せを感じる従順仔犬系メイド。
元気をもらいたいあなたにおすすめです。
『お嬢様大好きっ!』
指名条件:お嬢様専用

一松さん
真面目だけどちょっぴりシャイなメイド。
男の人は少しだけ苦手なので優しくしてあげてください。
『もう……ふたちゃん恥ずかしいよぅ』
指名条件:おいたしない人

二木さん
明るく元気なムードメーカー。
メイドさんとの楽しい一時を過ごしたい方は是非是非ご指名を!
『(二木)――――はぁと―――→(一松)』
指名条件:いっちー

三好さん
大人の魅力を持つメイド長。
厳しいけれど指名をしてみると違う一面が見られるかも?
でも浮気はダメですよ?
『ご主人様、体の隅々まで可愛がってください(はぁと 』
指名条件:年収三億円以上

セシリア
きっちりかっちり生真面目さん。
大きい胸は母性の象徴!
悩みがある人は相談するといいよ!
『む、胸は関係ありませんわ!?』
指名条件:アンチ巨乳派以外

ラウラ
必要なことを必要な分だけ。
無口なメイドは眼帯の下で何を考えている!?
でも女の子らしい格好にも興味がある可愛いクールちゃんです♪
『ば、バカバカしい……!』
指名条件:ちゃんと誉めてあげられる人

ほんね
のんびりのほほんゆったりめいどさん!
いつもにこにこハッピーライフ!
というかメイド服までダボダボなのかよっ!
『本職のメイドさんなんだよ~。寝るのが仕事だけど~』
『真面目にしなさい(姉より)』
『ひぇぇ!?』
指名条件:学園最強であること

織斑一夏
三十二億分の一の男!
世界で唯一ISが動かせちゃいます!
でも隣のクラスのチャイナ娘と交際中なので惚れるなよぉ?
『三十二億分の一って年末ジャンボ何回当てられるかな?』
指名条件:お好きにどうぞ

篠ノ之箒
メイドというよりお母さん!?
軟弱な男の子はビシバシ鍛え直すよ!
でも誉められるとふにゃっとなります♪
『な、なぜ私がこんな服を……可愛いけど』

原田リカ
いやー暑いね~。
私なら奥で休んでるから会いたかったらいつでも呼んでね!
『いや、ほんとあっついわ』
指名条件:3分で用事終わらせてほしいな

???
可愛い・ちっちゃい・超強い!
一組の誇る最終兵器兼クラス代表!
どんな娘なのかはまだ秘密!
気になる人は十時くらいにお店に集まれ!
指名条件:大好きなアナタ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。