Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

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「学祭大作戦会議」


8. Le plan du festival scolaire

「さて、一週間を監察室で過ごして少しは反省したか?」

「はい……シャルと会えなくなるようなことをしてしまって本当に後悔しています」

 

 監察室から出て最初の会話がお説教だなんて……織斑先生も優しくないです……

 一週間前のシャルとのデートの日、ちょっぴり暴れてしまって私がISの操縦者だと警察関係の方に気付かれてしまったみたいなんですよね。

 それで内々にIS学園に注意が届いて処分として一週間の謹慎を言い渡されたんです。

 場所はもちろん懐かしの監察室です。

 原田さんにボールペンを投げ刺してしまった時以来ですね。

 いえ、私がというだけではなくて、この監察室が使われるのがです。

 まぁ、やっぱりタサキさんから連絡があって異世界で色々やってたんですけどね。姉妹喧嘩を止めたり農作業を頑張ったりウサギを育てたりと忙しかったです。平和でしたけどね。

 ただ問題はほぼ一週間フルで異世界に行っていたので体感時間では半年近くシャルと会えていないわけで……身体の変化は本来の時間軸であるこの世界の時間と同期しているらしいのですけどそれでもかなりやつれた気がします。

 

「……反省は?」

「え?」

 

 反省することなんてありましたっけ?

 

「お前……いくら相手が犯罪者だからってやっていいことと悪いことがあるだろ……」

「えっと……?」

「トゲが付いてるままのバラを喉に挿すなんてどこの国の拷問だ……私ですら考えたこともないぞ」

「いや、でも私達は犯されかけたんですよ? 口とかお尻とかにあんなの入れようとしたんですから口に薔薇を活けられるくらいマシな方ですよ。それになにより私の愛しくて可愛いシャルをこともあろうに犯すって言ったんですよ? そんなことしか言えない口なら一生口を閉じていた方がいいと思いません? 先生――」

 

 私、怒ってるんですよ?

 ……それこそ銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)がシャルを絞め殺そうとしているのを見たときくらい怒ってるんです――!

 

IS()があったってシャルは女の子なんです! 私の前でシャルは傷つけさせません。体にも、心にも……!」

「熱くなるな。というよりそれはそれ、これはこれ、だ。分かっていないかもしれないがお前は今かなり微妙な立場にいるんだぞ?」

 

 ……候補生ではないのに専用機を持っていて、他国の候補生と親密で、しかもその全ての候補生と同等以上の実力を有しているから……ですか?

 アメリカからは睨みを効かされていますし仏独防共協定なんていうのも提案しちゃったこともですかね?

 

「それだけじゃない。束とも親交があるだろう。今やお前は全ての国・組織が欲しがり、同時に消してしまいたい人間なんだぞ?」

「おぉ……私、まるで漫画の主人公みたいですね」

「ふざけている場合じゃない。問題は全てがシャルロット・デュノアのため、言い換えればお前の個人的な理由からだ。他国が恐れるのも仕方ない。デュノアが社を継いだ時、お前がデュノア社の邪魔になるものを全て潰しにかかるかもしれないからな」

 

 いや、さすがにそんなことはできませんよ……?

 なんだかんだでうまくいっているようにみえるだけで本当は失敗ばかりで、幸運だけで首の皮一枚という感じですから。

 

「とにかく、お前は特に目立つようなことはするな。いつか拉致られるぞ?」

「いや、そんなバカな――」

「そしてそうなったら愛しのデュノアとも一生会えないな」

「気を付けます!」

「それでいい。今回のことは相手が強盗犯だったことと強姦未遂もあったということで、なんとか学園に対処を任せてもらった。感謝するように」

「ありがとうございました」

 

 そっか……私はシャルに一週間も会えないなんて自分勝手で、シャルも私と会えなかったことを考えてあげられませんでした。

 私達が一緒にいるにはシャルだけじゃなくて私自身もしっかりしないといけないんですね。

 

「先生、本当にありがとうございました」

「いきなり素直になるな馬鹿者」

「えへへ」

 

 でも大事なことを気付かせてくれましたから。

 

「じゃあ急いで教室に行け。今はちょうど学園祭の出し物を決めているはずだからな」

「放課後に、ですか?」

 

 そんなに真面目なクラスでしたっけ?

 せいぜい朝のSHRと休み時間を使う程度だと思いますけど。ええ、なんというか一松さんが頑張って意見をまとめようとしているのが用意に想像つきます。

 

「各部活の対抗戦――とは言っても投票だがそれで一位になった部活が織斑の身柄を手に入れられることになってな……バカどもにも火が着いたんだろう」

「いや、クラスの出し物は関係無いんですよね? それならどうして……?」

 

 クラスの出し物を真面目に決める必要なんてないと思うんですけど……いえ、私は学園祭楽しみにしてますけどね?

 シャルと一緒というのもそうですけどクラスメイトと力を合わせてなにかやるというのは人生初なので……小学校の時はそんな意識はありませんでしたし中学校は不登校でしたからね。

 だからお友達が沢山いる今年はとっても楽しみなんです!

 だから昨日、シャルからのメールでやる気がなさそうって知ってスゴく悲しかったんですけど……

 

「バカがバカなことをしたんじゃないのか?」

「?」

「とにかくお前がクラス代表なんだから早くいってやれ」

「はい!」

 

 ◇

 

 よかった。皆がやる気を出してくれて。

 アリサが学園祭を楽しみにしてたのにクラスの皆は部活の方ばっかりに気が向いてたみたいだから……

 まぁ、僕がやったことは一夏に頑張ろうぜって言ってもらっただけなんだけどね。ただアリサのことは前もって一夏に伝えてたから、そのことを一夏が皆に言ってくれて……一夏も優しいよね。

 しかも鈴までわざわざクラスに来て二組の方がスゴいんだからって宣戦布告してくれたから皆に火が着いたみたい。

 一夏だけでなくクラス部門での勝ちまで譲ってなるものか、って感じでね。

 

「それで、意見はこれだけですの?」

 

 今はセシリアがクラスを纏めてくれてる。

 アリサが戻ってくるまでの臨時の役目だなんて言ってたけど自分の手で終わらせようとしてるのが目に見えるよ。セシリアもアリサをライバル視してるからね。

 それでも話が逸れちゃうことがあるんだけど箒が咳払いをすると皆が慌てて真面目に話し始めるんだよね。アリサが恐いけど可愛い女の子なら箒は恐いけどいい人って感じでクラスに受け入れられてるから不満に思ってる人もいない。

 ……なんだかんだで一組っていいクラスだね。それともアリサがそうさせてるのかな?

 さすが、私の可愛いアリサ……なんてね。

 

「シャル、メイド喫茶と喫茶店はどう違うんだ?」

「へ? ラウラ、熱でもあるの?」

 

 ラウラがいきなりメイド喫茶なんて……多分出し物のことを考えてたんだろうけど……

 

「いや、今、本国のエリーとクラリッサに聞いたら学園祭の出し物と言えばメイド喫茶以外はないと言われてな……それに先月末にメイド喫茶に強盗犯立てこもりなんていう事件もあったしな」

「そ、それでどうして僕に聞くの?」

「え? あの日、そのメイド喫茶で働いていたと聞いたぞ?」

 

 あ、アリサー!

 色々とまずいこともあるから言っちゃダメって言ったのに!

 ……まぁ、デートの話で盛り上がってたんだろうけどね。ラウラ以外はアリサのデート話に付き合ってあげてないし。

 

「それで、その、アリサが私にもメイド服が似合うんじゃないかって言ってくれてな……」

「ふーん」

 

 あれ、思った以上に冷たい声が出ちゃった。ラウラもヤバいって顔してる。

 

「や、違うぞ!? 浮気とかではなくてだな!」

「あはは、分かってる。冗談だよ。でも今まで服になんて気を遣わなかったのにどうしたの?」

「その、一夏にフラれてから色々と……私には女らしさが足りなかったんじゃないかとな。だから少しは気にしてみようかと」

 

 うーん、それでメイド服ってのは少しズレてる気がするけど……ラウラも頑張って失恋を乗り越えようとしてるんだね。僕には失恋の辛さは分からない――いや、付き合って初日でいきなり破局するのは失恋以上の衝撃だったかもしれないけど、まぁとにかくラウラを応援してあげたい。

 ラウラの片想いは成就させてあげられなかったけどラウラが女の子らしくなるのに協力してあげることはできるはずだからね。

 うん、そう考えるとフリフリの楽しさがよく分かるメイド服ってのも有りなのかもしれない!

 

「よし、僕が提案――」

「待て、ここは……提案も私がしたい。少しはクラスにも貢献したいしな」

「そ、そう? まぁメイド喫茶と喫茶店は基本は同じだからきっと受け入れてもらえるよ」

「なるほどな……そういうことなら学園祭は一般客も来る。生徒一人が外部から一人を呼べる仕組みだから当日は軍事関係者なども含めて全校生徒の三倍から四倍の人間が――」

 

 うーん……考え込んじゃった……

 でも、アリサまだかなぁ。さっき先生がアリサをにお説教してくるって言ってたところだからそろそろだと思うんだけど……あ、来た。

 かなり急いできたみたいで音がしそうなほど激しく扉を開けたアリサが一言。

 

「せしぃ! メイド喫茶がいいと思います! メイド喫茶!」

 

 えええぇぇぇぇぇぇえええ!?

 いや、それラウラが今頑張って考えてたのに!?

 どうやって正当性を持たせようかって色々と加味して悩んでたのに!?

 というか今、覚悟を決めたような顔で手をあげた瞬間だよ!

 

「あ、せしぃバトンタッチです。で、メイド喫茶……と」

 

 あぁ、アリサが黒板の前にたって意見のところにメイド喫茶って書き加えちゃった……ラウラもちょっと悲しそうに手を下ろしちゃうし。

 でも、アリサが悪いってわけでもないし……慰めるだけでもしてあげないと。

 

「あの、ラウラごめんね?」

「いや、慎重になりすぎた私にも責任がある。それにメイド喫茶が案として出たんだから問題はない」

「そう……?」

 

 まぁ、ラウラがあんまり気にしてないならいいいのかな……?

 

「あ、そういえば私が入ってきたときラウラさん手を挙げてましたよね? ラウラさんも積極的に参加してくれているみたいで嬉しいです!」

「う、む。私も一組の一員だから、な」

 

 ああああ……ラウラも冷や汗かいてるよ。アリサお願い、なんて言おうとしてたかだけは――

 

「それでなにを言おうとしてたんですか? ラウラさんが提案してくれるということはかなり考えてくれたんでしょうし期待できますね!」

 

 アリサのばかぁぁぁ!

 どうするの、ねぇ、どうするのこの状況!?

 自分が考えてた意見が出ちゃって、その上期待してるなんてハードル上げられちゃったらアリサと同じメイド喫茶だなんて言えないよ!?

 ラウラぁ……アリサがごめぇん……

 

「……いや、意見があったわけではないんだ。ただ戦略的に見るなら経費の回収が行えて、その上で需要のあるものがいいと思うんだ」

 

 ……え?

 

「その点、アリサが言ったメイド喫茶は飲食だから品質に気を遣う必要があるとはいえ経費の回収も出来るし、外部の客へ休憩所を提供することもできる」

 

 あ、もしかして自分が考えてたメイド喫茶の利点を言うことで援護射撃を……?

 ……心配しすぎだったかぁ。ラウラも頭いいし度胸もあるからオロオロするわけなかったね。

 

「しかも招待券で外部から来る客の中には男もいるし、女も学園唯一の男である一夏を見に来るだろう。ということは客の入りもかなり期待できるんじゃないか?」

「ほえー……」

 

 スゴいなー、ここまで考えてたんだ。アリサも驚いてるし……でもアリサも意見を出すならもう少し考えないとダメだよ。

 ラウラと同じ意見で助かったね。

 

「じゃ、メイド喫茶に決定! 服は私に伝手がありますし皆さんは料理のメニューを――」

「えー、代表おうぼー、私たち納得してなーい」

 

 あぁもう……皆アリサのことを面白半分にからかうのはやめてよね、アリサは冗談で怒ってみせてももしかしたら本気なのかもって考えちゃうんだから!

 本当は後々まで結構引きずっちゃうんだからね!

 今だってきっと――

 

「ふふふ……心配しないでください。十秒後には皆さんやる気になりますよ」

 

 って、笑ってる?

 

「織斑一夏の執事姿……そしてその織斑君に合法的にあーんできるメニュー『執事にご褒美セット』! さぁ、どうですか」

「え、ちょ、俺そんなの聞いてな――」」

「賛成の人は元気よく挙手を!」

「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

「けってーいでーす♪」

 

 うわ、アリサいい笑顔……でもあとで鈴に怒られても知らないよ? 人の彼氏に勝手にそういうことさせるなんて。

 というかクラスのみんなも一夏が働いてる時に休憩もらえないとそのメニュー頼めないんだよ?

 下手したら自分のとなりで違う女の子がそれ頼んでウギギってなるかもしれないんだよ?

 

「ちなみに、鈴ちゃんは既に買収……というか競争心を刺激して学祭期間中は織斑君を好きにしていいと許可をもらってまーす」

 

 あ、もう手回しは終わってるんだ……

 なんていうかアリサはズル賢いってわけじゃないんだけどラウラと違う方向性でかなり頭を使ってるよね……

 まぁ、そのお陰で僕はなんのしがらみもなく女の子でいられるんだけどね。

 ラウラが策士ならアリサはペテン師って感じ……あれ、やっぱりずる賢い?

 

「でもラウラのおかげだね」

 

 ラウラの意見がなければ一夏は嫌がっただろうし、そうなったら『織斑君とポッキーゲーム』とかみたいに冗談ってことで流されてただろうし。

 

「いや、アリサは多分私と同じことは考えてたよ」

「え?」

「シャルがそう思ってあげればアリサだって喜ぶだろう?」

 

 ラウラがぱちりとウィンクを飛ばしてくる。

 も、もう!

 べ、別にアリサと僕のことまで気にしなくていいのに……

 

「いや、妹をフった相手には幸せでいてもらわないとな」

「エリーちゃんが可哀想だから?」

「いや、アイツはそれ見たことかと調子にのる」

「ふふっ、なにそれ」

 

 ラウラがこんな冗談を言うってことはエリーちゃんももう大丈夫なのかな。

 最後までアリサには恋してない、パーティーでの告白は演技だってスタンスで通してたけどそれで騙せるのは鈍い一夏とか素直な鈴くらいだもん。

 ちょっと可哀想なことしちゃったなって感じてたけどもう気にしないようにしようかな。

 あの子はきっと我慢できなくなったら奪いに来るだろうし。

 

「ラウラ、ありがと」

「事実を言っただけだよ」

 

 そっか。

 

「あー! ラウラさん! なに私のシャルといい雰囲気作ってるんですか! 略奪愛ですか!?」

「も、もうアリサ! 恥ずかしいよう……」

「シャルが可愛すぎるから心配なんです!」

 

 そう言ってアリサが僕の胸に飛びついてくるのを抱きとめる。

 

「まったく仕方ありませんわね……では出し物はメイド喫茶で決まりですわ。黒板はわたくしが消しますので皆さんは下校、もしくは部活へ行く準備を」

 

 セシリア、ありがと。


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