Plongez dans le "IS" monde. 作:まーながるむ
IFというかなんというか、あるかもしれない未来。
「セシぃ、フィールドが使えるようなので放課後に模擬戦でもしませんか?」
「望むところですわ! 今日こそアリサさんからアドバンテージを奪わせて頂きます」
アドバンテージ? あぁ、テニスですか。
そういえば戦いすぎていて分かりにくくなっていたので連続で2勝した方が連続で2敗するまで強者を名乗れるとか、そんな感じのルールにしましたね。
「それでいま何戦何勝何敗?」
「77戦38勝38敗1引き分けですわ!」
引き分け……IS学園に入学してすぐセシぃと戦った時のですね。
あの後、興味を持った人が試合データを解析したところ完全にシールドエネルギーが切れた時間は同時だったようです。
今でも私達の模擬戦の結果は一進一退の状況が続いているので周囲からは完全にライバル認定されています。去年の引き分けは伝説にすらなっているとか何とか。
「うわぁ……私達、そんなに戦ってたんだ……」
大体、去年入学してからの1年間で50戦、夏休みとかのこととか考えると大体月に5回は闘ってる計算になりますね。シャルとも最近は一緒に訓練したり整備したりしてるし、鈴ちゃんとかラウラとも月に2回くらいは模擬戦してるし……当然他の子たちとも同じようなことをしてますし。
「わたくしも色々な人と戦っていますがアリサさんの年間模擬戦闘記録には到底及びませんわ」
「年間136回とか新聞部に書かれましたね」
概算で3日に1回のペースです。
しかも、あれって単純にフィールドの使用申請を出す時の利用目的に模擬戦って書いた回数を数えただけって言ってたから……もう少し増えるんじゃないでしょうか。
「そんなだからバトルマスターだなんて言われてるんですわよ」
「あー。なんか、生徒会長に次いで強いんじゃないか!? とか書かれてましたねー。最近は負け続けなのに」
「代表候補生を相手取って勝率50%以上をキープしているのもアリサさんくらいですわ……そろそろまた代表候補生に戻ってもいいのではないですか?」
「そりゃ、私はもともと候補生だったのを辞退しただけですし、専用機も持ってるんですから条件は候補生とあんまり変わりませんよ……代表候補生になるのは、考えておきます」
……場合によってはIS学園を卒業した後もシャルと長い時間いられるようになるかもしれませんし。
まぁ、今だと私がまともに戦って勝ち目があるのは近接戦闘が苦手なセシぃと実弾装備主体のシャル、あと相性の問題で鈴ちゃんだけなんですけどね……ラウラさんのAICは近接格闘が主な私にとっては鬼門ですし、織斑君と篠ノ乃さんの第4世代機に至っては至って普通のチートですので戦うことすらあんまりないです。
タイマンなら絶対に勝てないってことはないですけど……勝率はお察しという注意書きも付きます。楯無先輩には未だに勝てていませんが、彼女が卒業してしまうまでに勝ちたいですね、弱点も最近になって分かってきましたし。
ただ……その妹の
あぁ、私も荷電粒子砲撃ちたいなぁ……
「でもやっぱり、セシぃは近接も慣れてきましたよね。最近は私が踏み込んでも逃げられちゃいますし」
「悔しいですがこの1年で射撃戦は逃げの戦法だと認めざるを得なくなりましたから」
セシぃは本当に危機回避能力が上がったと思います。私が踏み込もうとした瞬間にビームで足止めしたりと戦い方が上手になりました。
なにやら最近は私以外にも接近戦を好む生徒が増えたみたいで、彼女達と模擬戦をしたりとセシぃも精力的に技術を磨いています。
「接近戦が人気になったのはアリサさんが誰かれ構わず接近戦闘の訓練を個別で付けているからだと思いますわ……半年先まで予約があるなんて噂も聞いておりますわよ?」
「ん? 予約制じゃなくて気が向いた時に頼まれたら、ですよ……それにしても私達が初めて会った時からもう随分経つんですねー」
私がパパと一緒にイギリスに行ったのが12歳の半年間だからもう4年近く昔のことですか。
◇
「アリサ、パパ、来週からイギリスに行くんだけど来るかい?」
そんなパパの気を遣っているような言葉がきっかけだったはずです。
あの頃はちょうど私が他人からの視線を恐れるようになった頃でしたから、長い間家から離れることが心配だったのでしょう。
私は私で現状から逃げ出したい一心でついて行く! と言ったような気がします。
そうと決まれば準備はすぐでした。
次の日にはヴァネッサさんたちデュノア社の方々に一時フランスを離れることを告げ、必要なものを買い揃えて、フランスに戻らなくてもいいようにと引越すのかという程、荷物を作りました。
事実、この時、私にはフランスに戻るつもりなどありませんでした。
そしてタクシーで空港まで行き、そこからイギリスで住む家に着くまでの記憶がないんですよね。
パパの話ではフランスの空港で私は気絶したらしいのですが……大方空港にいる全ての人が自分を見ているというような錯覚にでも囚われたのでしょう。あの頃は私の視線への恐れが一番強かった時ですから。
そして2週間ほどをイギリスでの生活に慣れるために費やし、そしてパパがお世話になっている研究所に行ったんですよね。
本来ならば他国のIS研究機関にパパが入れたわけがないのですが……どうやらそこの研究にも元からパパが噛んでいた研究の成果が使われていたらしく、快く受け入れられたように記憶しています。
確かにデュノア社にスカウトされるまでは世界各国に技術を売っていましたからね。未だに私はパパが何の研究をしていたのかは知らないのですが。
「あら、あなたどなた?」
研究所に訪れた初日、特別に用意された部屋でパパを待っていた私に話しかけてきたのがセシぃでした。あの時なぜセシぃが部屋に入ってきたのかは知りませんが、当時の私のとっては知らない人が自分を見ている、というそれだけでパニックに陥っていたのを覚えています。
「大丈夫ですわ。わたくしはあなたに何もしません」
震えながら後ずさりしていた私にセシぃは優しく笑ってそう言ったんです。しかもハグのおまけつきで。私にとっては暴れてもおかしくない状況だったのですが何故かセシぃだけは平気でした。
もしかしたら、彼女が両親を失っているという影を背負っていることに気付いていたのかもしれません。
無意識の内に、そんなセシぃに近いものを覚えていたのでしょう。毎日のように私たちは話すようになり、それに伴い私も段々と視線に恐怖しないようになっていきました。とはいえ、数人に見られていても普通に受け答えが出来る、という程度ではありましたが。
セシぃは持ち前の面倒見の良さで時には私を外に連れ出し、時には私を引き連れて、無理矢理研究所を案内したりしてくれていました。無理矢理とはいっても私が我慢できなくなるラインを弁えていたようで、私にとっても楽しかった記憶の1つです。多分、知らない人から見れば奔放な
初めのころはイギリスの料理も味気ないものだと思いましたが2人で出掛けている間に美味しいお店を見つけたりして、だんだんとイギリス自体に愛着を持つようになっていきました。
ただ、イギリス料理を食べながらセシぃにフランス料理の美味しさを語っていた私は、やはりフランスに帰りたかったのかもしれません。いつかフランスを案内するなんてことを毎日のように言っていましたしね。
そんな折、私とセシぃが互いにIS操縦者の卵であることを知り、話は自然と二人で戦ってみないか、という話になったんです。それがちょうどイギリスに行ってから2カ月が経つころですね。
そういった経緯があって互いに面識のある、少しヴァネッサさんに似ていた女性の研究員を立会人とした模擬戦を週に2、3回するようになりました。まだ私達は専用機なんてものも持っていなかったので互いに訓練機を使っての試合でしたけどね。
それでも互いに向き不向きがあることは分かっていたので私はいつも接近戦闘を得意とする訓練機を、セシぃは射撃装備が豊富な訓練機を選んでました。
そして、その頃から互いに適性が高かった私達の実力は伯仲していたようで、私にとってもセシぃにとっても模擬戦は“ただの楽しい遊び”でした。殴っても、殴られても痛くないですし。
それで、私達の様子を見ていた研究員の方が私達の戦闘データを取りたいと言い出したんです。私の視線恐怖症を知っていたセシぃは私のことを思いやって断ろうとしたのですが、その当人である私はISで戦っている時なら大丈夫という根拠のない自信からオーケーを出してしまったのです。
……その結果がセシぃの昏睡。
セシぃはあの時のことを私に語りませんが、私は何となく覚えています。
意気揚々とISに乗りこみ訓練場に足を踏み入れた私を待っていたのは20人分程度の視線。
大丈夫、大丈夫、と言い聞かせていたはずがいつの間にか早く終わらせないと、早くセシぃを倒さないと、という思考に変わっていき、私を案じたセシィが一歩歩み寄ってきた瞬間、開始の合図も待たずに彼女を押し倒し一心不乱に殴りつけていたのです。
その後セシぃが昏睡状態に陥ったということは恐らく彼女のシールドエネルギーが切れてからも、他のISによって取り押さえられるまで――ISがセシリアの生命維持のために絶対防御を発動させるまで殴り続けていたのでしょう。
それから、私は大事な人を傷付けることが怖くなって、視線を浴びると何もできないようになりました。ISを兵器と認識したのもこれが起因ですね。
それからセシぃが目を覚ますまでは毎日、面会時間の許す限りセシぃの病室に行き、それ以外の時間はずっと自分の部屋に閉じこもっていました。本当にお腹が空くまでごはんも食べずにただ座り込んで後悔していました。
なんで、私はデータを取ることをオーケーしちゃったんだろう。
どうして、私は自分を止めることが出来なかったんだろう。
セシぃが目覚めなかったら私はどうなっちゃうんだろう。
同じことばかりを考えて、しかもいつも自分のことばかり。そんな自分が嫌で泣き続けて。
結局、セシぃが起きた日は嫌われてしまうんじゃないかと思ってお見舞いに行けませんでした。
その次の日もお見舞いに行こうとしない私にパパが怒鳴り、無理矢理、本当に引きずられるようにしてセシぃの病室まで行きました。後にも先にもパパが本気で怒鳴ったのはこの時だけですよ。
それで、セシぃの病室に入ったら入ったでセシぃが泣いて謝りながら私に抱きついてきました。
何が起きたのか、セシぃがなんで怒っていないのか、全く状況が分からずただひたすらオロオロしていた私です。
セシぃが落ち着いてから聞いてみれば、アリサを止めてあげられなくてごめんなさい、ということだったらしいです。
セシリアが意識を戻した日、なかなか病室に来ない私のことを考えて、嫌われてしまったのではないか、私が、セシぃを傷つけたことで辛い思いをしているのではないか、と心配していた、と。
私は自分のことしか考えていなかったのに、セシぃはずっと私のことを考えていてくれて、本当に優しい友人を持ったことと自分の情けなさで今度は私が泣きました。
20分ほど私の事を慰めてくれたセシぃのぬくもりは今でも覚えていますし……照れくさいのであんまり言いませんけど、感謝しています。
◇
「きぃぃぃーー! また負けましたわ! あれほど皆さんと研究を重ねて、授業時間中にもイメージ・トレーニングまでしましたのに!」
「でもほら、何度か私も危なかったし……というか授業は真面目に受けてください」
「その余裕が余計に頭にきますわ!」
うーん、1年経ってもセシぃは負けず嫌いなままだなぁ。
それにしても本当に皆強くなってるんですよね。特にここ2、3カ月で急に戦いにくくなってきました。
セシぃが良く使うわたしの踏み込みを妨害するのもそうですし、シャルもなんだ
「でもほら、セシぃもいつの間にかインターセプターって叫ばなくても展開できるようになってましたし、」
「それはずいぶん前から出来ました! 今までは、貴方が展開させてくれるような時間をくれなかったからお披露目出来ていませんでしたが……」
「皆さん……伸びしろが合っていいですよねぇ」
最近完全にカゲロウの自己進化プログラムも沈黙しちゃいまして……そろそろ稼働時間が5000時間を上回りそうだったんですけどねぇ。あとは私自身のIS適性がどれくらい伸びるか、という程度でしょう。いずれ皆さんとも差をつけられちゃいますね。
「アリサさん、何を勘違いしていますの?」
「え?」
「わたくしも他の皆さんも、あなたのことを研究し尽くしているからアリサさんに勝てるようになってきたのです。それと同じことをすればいいだけですわ」
「……そっか、じゃあ皆の研究を始めないといけませんね。あぁ、織斑先生にたまには検査室に行けって言われたんでした。あの部屋久しぶりだから緊張します」
検査室なんて入学して一回行ったきりでしたからね。というか未だに何を検査する部屋なのかも分かっていません。
「……まだ、アリサさんに完全勝利することは難しそうですわね」
「そんなことないと思いますけど」
「いいから早く検査室へお行きなさい……はぁ、それだけの間検査室を使っていなければ伸び悩むのも当たり前ですわ」
「?」
◇
「それにしてもアリサさんには呆れますわね……はぁ」
「セシリア。ため息なんてついちゃってどうしたの?」
「あら、シャルロットさん。あなたも訓練をしていたんですの?」
「うん、ちょっとアリサ対策を、ね。やっぱりフランス代表候補生の座を譲ってもらった形だから、バカにされないためにももうちょっと勝率を伸ばしたくて……」
なるほど。珍しくアリサさんの近くにいないと思ったら秘密特訓をしていましたのね。
アリサさんの話では最近はシャルロットさんの勝率が6割強ということでしたが……その勝率も明日からは下がっていくでしょう。
検査室に行っていなかったということは自分での調整以外の精密な最適化などはしていなかったのでしょうし……IS自体には割と無頓着なアリサさんですから十分あり得ますわ。万が一で戦う相手に怪我をさせる可能性を減らすことにしか気にしていませんから。
それでも私とは勝率50%を保っていたのだとすると……まだまだ私の接近戦への対応には見直す必要があるようですわ。
「セシリア、本当に大丈夫? さっきから唸ったり黙りこんだり……熱あるの?」
「あなたも明日には同じことをする羽目になりますわ」
「そんな
「最近、ますますアリサさんに似てきましたわね……」
「え、えぇ!? ど、どこら辺がかな?」
驚いた後に頬を少し染めるシャルロットさん……お二人の関係がどうなってるかも気になりますわ。
ここのところアリサさんが私達に彼女のことを相談することも減りましたし。そういえば昔はそれこそ毎日のように皆さんと相談に乗っていましたわね……鈴さんはともかく箒さんやラウラさんは他に下心があったように思えますが。
まぁ、仲良くやっているのでしょう……あと、どこが似てきているのかと言えば微妙に話が通じないあたりですわ。この辺りは一夏さんにも通じるところがありますけれど。
「あ、そうだ! セシリアってアリサのこと昔から知ってたんだよね?」
「ええ、とは言っても12歳のころのことですわよ?」
「僕がアリサに初めて会ったのは13歳の時だし、その頃は避けられてたから……だから、教えてくれないかな?」
避けられていた、というのは初耳ですわね。
シャルロットさんが転入してきてからすぐに――アリサさんにしては非常に珍しく――自分から話しかけて、仲良くしようとなさっていましたのに。むしろあの頃避けていたのはシャルロットさんでしたね。
「むぅ、そのことは思い出さなくていいのに」
「まぁ、いいですけど……というよりアリサさん本人に尋ねた方が喜ぶと思いますよ?」
「……それは、ちょっと心の準備がつかないというか、先に少しでも知っておきたいというか」
また、指先を合わせてもじもじするシャルロットさん。お二人の関係は――どういう関係かは深く聞かないようにしていますが――今でも良好のようですわね。安心しました。
「私が初めてアリサさんを見て思ったのは陰気な子という感じでしたわ」
◇
両親が死んでしまったわたくしは身元を引き受けて頂いた方ともギクシャクしていまして、研究所に出入りすることが多かったのですが、アリサさんを見たのはそんな時でしたわね。
特別に用意された広い部屋の角で小さくなって座り込んでいた彼女の姿は、両親が死んでどうすればいいか分からなくなっていた頃のわたくしの姿と重なったのです。
研究所の中では初めて見る自分と同年代の少女に興味を抱き彼女のことを研究員の方達に尋ねて行くうちに、彼女がフランスから客員研究員として一時的に出向してきた方の娘だということを知ったのですわ。
それで、その方――つまりアリサさんのお父様ですが――に彼女のことを聞いてみると、アリサさんの心の傷を話し出し、最後に優しい表情で仲良くしてあげて下さいと言われたのを覚えています。とはいえ、当時のわたくしは捻くれていたので自分の半分にも満たない年の少女にも敬語を使う情けない男だと思っていましたが。
わざわざ断る理由もありませんでしたし、わたくしも暇だったので早速アリサさんのいる部屋に行ったのです。その時は驚きましたわ。アリサさんは本当に怯えた表情で、腰も抜けていたのでしょう、足と手だけの力で何とかわたくしから離れようとしていたのですよ。彼女は最初から自分が壁に背を預けていたことにも気付かないで、ですわ。
その姿があまりにも不憫で、気付いたら駆け寄って抱きしめていました。何かを言った気もしますが必死だったので私も覚えていませんわ。
それからは毎日話したり、彼女がある程度他人からの視線に慣れることが出来るように連れ出したり、妹が出来た気分で楽しかったですわ。事あるごとにわたくしの後ろに隠れるアリサさんは本当に可愛らしかったです。
今もあれでいて未だに寂しがりやで甘えん坊なところもありますが、これはシャルロットさんが一番分かっていることでしょう。
そんなある日、偶然、わたくし達2人が共にISに乗ることが出来ると知り、研究員の方を巻き込んで模擬戦を繰り返していました。今となってはバカなことですが、当時のわたくし達にとってのISはどこまでいってもオモチャでしたので、本当に楽しく戦っていたように思いますわ。
そんなある日、わたくしとアリサさんの戦闘データを取りたいという話が持ち上がったのです。
最初、わたくしはやめるべきだと言ったのですが、視線が怖いはずのアリサさん自身がやりたいと言ったので大丈夫な自身があるのでしょうと思い承諾してしまったのですわ。結局、その楽観のツケを自分で払うことになってしまいましたがね。
ここら辺は私が勝手に話していいことではないので、知りたければ直接アリサさんに尋ねて下さい。
その事件のせいで一時は仲違いしてしまうかとも思ったのですが、幸いなことに私が気にし過ぎていただけのようで、むしろさらに仲良くなりましたわ。たった半年間の思い出ですが、両親と死別してからこの学園にはいるまでの間で一番楽しかった記憶ですわね。
◇
「長々と話しましたけど、考えてみればあなたの知りたかったことではなかったかもしれませんね」
おそらく、シャルロットさんは昔のアリサさんの可愛かったところなどが聞きたかったはずですわ。そこら辺のことはアリサさんも恥ずかしがってなかなか言わないでしょうし……肝心なところで外してしまったようですわね。
「ううん、なんであの時アリサが僕に話しかけたのかが分かったから。それに初めて模擬戦をした時の言葉の理由もね」
「あの時?」
「……えっと、だから、本邸でのこれ」
これ、と言ってシャルロットさんが指をさしたのは彼女自身の額。
……あぁ、あの話の女性とはアリサさんのことだったのですね。思い返してみれば確かに彼女が言いそうなことですわ。
「間接的に僕はセシリアのおかげでアリサと知り合えたことになるのかな?」
照れながらそう言って彼女は自分の部屋に入っていきました。中からは、きっとラウラさんが頬が紅いのを指摘したのでしょう、にぎやかな声が聞こえてきます。
「あぁ、アリサさんが明日から強くなること、言い忘れてましたわ」
きっと言えば落ち込みながらも喜ぶのでしょう。私も含めてアリサさんの周りにいる全員が彼女の強さを目に焼き付けているのですから。
「ふふふ……一夏さんとアリサさんのどちらかが次期生徒会長、なんて言う新聞部の憶測も間違いではないかもしれませんね」
検査室に1年間行っていないということはアリサさんがIS適正Aだったのも1年前の話で……流石に適正SはないでしょうがA+になっていたりするかもしれませんわね。
「そうですわね……皆さんを招いて今日の戦いの反省点を見つけ出しましょう」