ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~短編劇場 作:Mr.エメト
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ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロスVS闇皇の蝙蝠~
~世界を越えた出会い・激闘編~
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~翌日~
昨日の浴場突撃事件で女性陣たちに睨まれている新。
そんな事件を起こした本人は気にしていない様子である。
「……何で止めなかった?」
「止めたさ。新がズタボロ雑巾にされるかと思ったけどまさか生還するとは思わなくてさ」
望紅の剣幕した表情に怯みつつも返答するドルキー。
「裸体を隠さなきゃいけない状況に全力の攻撃なんかできるわけないでしょ!?」
カナンは頬を赤くして、涙目になって反論する。
「一番、ショックが大きいのはシェリルさんですよ……」
鎧を修復して装着しているが、裸を見られたショックが大きいのか膝を抱えて座り込んでいた。
流石に悪い気がしてきたのか新は後頭部をかく。
「あ~、流石に悪かったよ。許してくれとは思わないけど……」
謝罪の言葉を聞いて、四人はうーん、と考えて――――。
「これからの行動で許してあげるわ」
「次にセクハラしたら、マジで殴るな」
カナンと望紅はそう言う。
鋼弥とアルスはやれやれ、という顔をして捜査を開始する。
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二人一組となって、異変が無いか捜査する。
ドルキー&望紅、リオ&アルス、カナン&シェリル、鋼弥&新だ。
それぞれ、散開し調べるが――――。
「中々、見つからねぇなぁ……」
「気配も感じない」
鋼弥と新の二人。
闇人がいたら、異変のボスにたどり着けるのだが……それもいない。
「ところでさ、鋼弥は朱乃と付き合っているのか?」
「……付き合っている。
朱乃が堕天使のハーフという事を明かして、弱さを知った。
だから、命をかけて守ると心に決めた」
鋼弥の決意を聞いて、新は感心していた。
付き合った時期を考えれば、三大勢力が和平準備した時のだ。
「そういう新は誰かと付き合っているのか?」
「付き合っているというか、俺の家には朱乃、小猫、ゼノヴィア、ロスヴァイセと一緒に暮らしているな」
「それは、一誠が言うハーレムというものか。多くの女性と関係を持つのは、いい気はしない……」
「お前みたいに一人を愛するといれば、俺は多くの女性を愛する。
それに、俺は欲深い生き物なんだ。欲しいと思った女は必ず傍に置く。
それが俺の愛情表現だ」
「愛情表現は賛同できないが、新なりの愛し方なのだな」
そんな会話をしているとCOMPのアラームが鳴り響き、起動する。
無数の点が向かっており、次々と消えていく。
鋼弥と新はその場所へと向かった。
◆◆◆◆
たどり着くと、辺りは闇人の死体だらけだ。
他のメンバーも合流して、警戒しながら進む。
死体の山から、誰かが来る。
髪はオールバックにして、ギザギザの歯が特徴の男だ。
手には、白い槍を持っている。
「よぉ?お前たちも世紀の目撃者となりに来たのか?」
「世紀の目撃者?何言ってやがるんだ?」
「この死体の山は、お前がやったのか?」
「ああ、小賢しくも俺を狩に来たんだろうが、返り討ちにしてやったよ」
ニィッと笑う男。新は睨みながら、問う。
「で、誰なんだお前は?」
「そんなに知りたければ教えてやろう……。俺はオルガム!!オルガム・ザーディム!!」
その名前を聞いて、驚く魔界組。
「まさか!?風と森林の国に疫病を流行らせて多くの死者を出した魔界人!?」
「けど、シンディさんが捕まえてディープホールへ追放された筈!?」
驚くのも無理はなかった。
当時は白衣を着ていた研究者のような姿だ。
今の姿とまるで別人だったのだ。
「くくくく……。あの奈落世界に追放されても、復讐を忘れなかった。
あの生意気な女を食い殺すまで、俺は強くなったのよ。
そして……疫病を司る悪魔パズズと地獄の女神ラマシュトゥのデビルソースを食らい……」
オルガムの体が変貌する。
背中から鷲の翼と頭、嘴が開かれる鋭い牙が並び立つ。
獅子の鬣、毒々しい紫色の爪と鉤爪、バビロニア風の衣装を身に纏う。
4mもある怪物へと変わり果てた。
【力を得たのだ!!我が名は疫病王オルガム・ザーディム!!
畏れ、敬い、頭(こうべ)を垂れよ!!血と贄を捧げよぉぉぉぉぉ!!】
「バビロニア神話において疫病を司る二大悪魔を喰らい、力を得たのか……!!」
ただの人がデビルソースを喰らっても失敗してスライムになる。
オルガムは力への渇望、復讐によってパズズとラマシュトゥを喰らい人を捨て悪魔へとなったのだ。
しかし……。
「お前は王ではない。人でもない悪魔でもない……ただの化物だ」
「ああ、闇人なんかよりも酷い化け物だな」
鋼弥は拳を握り構え、新も剣を振り回して、構える。
【貴様らの血肉を喰らってやるわ!!】
鋭い爪で引っ掻きに掛かるが、一同は散開。
まず鋼弥は素早い動きで掻い潜り拳、蹴りを放つ。
続けて新は剣による斬撃を連続で与える。
【そんなもの……効かぬわ!!】
オルガムは風を放ち、二人を弾く。
【くたばれっ!!マハザンダイン!!】
強烈な風を放ち、切り裂く風の刃は木々や廃墟の建物を切断する。
「近づけない……!!」
オルガムはリオへと強襲し、鷲掴みされて捕まる。
「リオ!!」
【くくくく、こいつから溢れる魔力を使えば俺の計画に大いに役立つ
この鎗―――マルテを使ってなぁ!!】
オルガムは翼を広げて、旅立とうとするが、新たちは阻止しようと飛び掛かる。
【貴様たちはコイツらと相手にするがよい!!】
口から黒い玉を2つ生み出し、罅が入り割れる
サソリの尾持つトカゲ―――ムシュフシュ。
七つの頭を持つ毒蛇―――ムショマッヘ。
二体の邪龍は威嚇の声をあげて立ちふさがる。
「鋼弥、新!!俺の風で追いつかせる!!」
ドルキーの両手から竜巻を生み出し――――。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
二人目掛けて、撃ち二人はタイミングよく竜巻に乗り跳躍し、オルガムの後を追う。
「我々はこいつらを始末するぞ!!」
アルスはサーベルを抜き構えて、他の面子も武器を構える。
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リオは目を覚ますと、縛られて身動きが取れない。
オルガムがニタニタと嗤っている。
【くくく……空をみるがいい】
リオは薄暗くなった空を見る。
其処には複雑に描かれている方陣があった。
【あれはなぁ、生贄を捧げたその時、疫病を蔓延する方陣だ。
この世界は疫病が流行り、何もかもが苦しむ世界となる。
そして、そのマイナスエネルギーを喰らい。俺は神をも凌ぐ力を得る!!】
鎗を手にし、高々と宣言する。
【今こそ、この世界に疫病が蔓延する世界を!!】
鎗を天高く突き上げ、縛り付けているリオを刺そうとする。
「きゃあああああああああああああああああああ!!!!」
リオは来るであろう死と痛みに悲鳴を上げ目を閉じるが――――。
―――ガシッ!!
目を開けると、鎗の刃を止める鋼弥と闇皇の鎧を身に纏った新が立っていた。
「女をそんな風にするんじゃねぇ……よっ!!」
新は鎗を持っている手を剣で斬りおとし、蹴飛ばす。
オルガムは翼を巧みに使い、吹き飛ばし阻止をする。
【無駄な事を……この世界は俺の住みよい世界になるのだ】
切り落とされた手を拾い上げ、くっつけて再生する。
鋼弥はリオを解放させて、鎗を拾い、構える。
「貴様の住む世界は無いっ!!」
剣を横に振るい、構える新
「人様の世界で、んな事をやるんじゃねぇ!!」
(BGM:大魔導陣の激闘)
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ムシュフシュとムショマッヘと戦うアルスたち。
両者とも最大の特徴は強力な毒を持っている。
二匹は口から毒ガスブレスを放ち、毒地帯にしようとする。
ドルキーの風で毒の息を押し返し、望紅は、火炎弾を連続で放ち二匹の顔面を当てる。
カナンがムショマッヘに飛び掛かり、右手を鉤爪に構える。
「ドラゴンクロー!!」
勢いよく振りかざし、ムショマッヘの七本の首のうち三本を引き裂く。
追撃にアルスはサーベルを構えて―――
「デス・アンダルシア!!」
刀身が黒いオーラに包まれて、真横一閃に薙ぎ四本の首を斬り飛ばす。
シェリルは大刀を横に構えて、回転斬りしてムシュフシュの両目を斬り潰す。
兜だけを外して、髪は右手に絡まり、ランスとなる。
「はあああああああああああああああっ!!」
一撃必鎗。
鱗を突き抜けて、ムシュフシュを仕留めた。
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新の怒涛の斬撃でオルガムにダメージを与えるが、元に戻ってしまう。
「こいつ、どうなっているんだ!?」
「再生能力を持っているのだろうな」
鋼弥はマルテを構えて、オルガムの両手足を貫く。
鎗捌きに関しては、タオが教えてくれたから、素人とは思えない動きを見せる。
しかし、敵の再生能力ははやく直ぐに修復する。
【調子に乗るなよ!!小僧どもが!!】
オルガムはマハザンダインを放ち新と鋼弥を弾く。
【デスサイクロン!!】
悪しき禍々しい竜巻を放ち、鋼弥と新を飲みこみ激しく傷をつける。
「今、回復を……!!」
【テンタラフー!!】
激しい閃光がリオの前で弾き、吹き飛ばされる。
立ち上がろうとするが、眩暈がして行動が起こせない。
「混乱魔法……!!」
【貴様は後からだ。まずは、そこの二人から喰らってやる!!】
猛禽類の眼をして、狙いを定め急降下、鋭い爪で串刺しに掛かろうとする。
「新……この鎗に俺たちの魔力を送るぞ……」
「勝機はその鎗か……」
「このマルテは奴が遺跡から発掘したもので、使い方までは知らない……」
最後の望みに鋼弥と新はマルテを持ち上げて、魔力を送る。
するとマルテの形状が変わり、枝分かれとなった鎗剣となった。
(BGM:希望の騎士)
「オルガム、お前はこの鎗を知らないだろうな。
この鎗は病魔を操る者たちを葬り、シンディ師匠が使っていた鎗だ!!」
鋼弥と新は柄を掴み、一緒に飛び、投擲の構えをする。
「「貫けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」
七支ノ鎗剣を共に投げる鋼弥と新。
鎗剣マルテは白く輝き一筋の流星となり――――オルガムを貫いた。
【グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?】
勢いは止まらず、オルガムが張り巡らせた陣を破壊した。
【バカな……下等生物どもに、この俺が!?シンディではなく、あんなガキどもに……この俺がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!】
オルガムの体に罅が入り、瞬間―――爆発した。
多くの者たちを疫病で苦しめ搾取したマグネタイトがキラキラと四散した。
遅れて来た、アルスたちは討伐成功したのを確認し、鋼弥と新を介抱する。
◇◇◇◇
別れの時。
ゲートを前にいる鋼弥たち、新は見送りに来たのだろう。
「約束だ、受け取ってくれ」
報酬金を新に手渡す鋼弥。
「サンキュー。まぁ、俺はそれ以上に得たからいいけどね」
リオ達の方を見ると、女性陣達は体を隠し下がる。
アルスとドルキーは苦笑いをする。
「新、いつかまた……会える時を待っている」
「おう。その時は魔界の美女とか紹介してくれよ?」
「機会があったらな」
鋼弥と新は拳をコツンっとぶつけ合う。
そして、鋼弥たちがゲートに入ると何もなかったかのように閉じる。
いつか、二人が再会する刻が来るまで――――。