ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~短編劇場 作:Mr.エメト
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=悪魔たちの証言=
――ウァラクって、昔は人間の召喚士に仕えていた話だぜ。
その人間に恋をしていたという話まで、聞いてたが……。
――確か、若くして病死したんだろ?俺も仕えていたからな。
――いい人間だったわね。けど……ウァラクが、おかしくなったのがそこからね
――殺しの愉悦感というのか痛め付けるのが好むようになったのは。
けど、本当は…………。
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ウァラクが呼び出したワイバーンの群は鋼弥たちに襲い掛かってくる
紫色の皮膚に蝙蝠の翼を持つワイバーンは鋭い牙が並んでいる口を大きく上げて食い千切ろうとかかる。
珠樹は刀を抜刀し、斬り捨てる。
「烈風刃!!」
剣先から刃を飛ばして、ワイバーンを次々と切り裂く。
「マハブフーラ!!」
「マハザンマ!!」
リオと彗華は魔法を唱えて、ワイバーンたちを撃退していく。
「中級魔法を出しておいた方がいいわ。ウァラクの戦力はあれだけではありませんわ」
フィーナは剣を振りかざし、カナンは回し蹴り、手刀、気功波でワイバーンたちを蹴散らす
シェリルは大刀を振りかざして、ワイバーンたちの首や羽根などを斬り捨てる。
崇仁と魔界ハンターたちに同行してきた、ユーラテとアベルも群がり襲いかかってくるワイバーンたちと戦っていた。ユーラテは光槍で、アベルは槍を振るって次々とワイバーンたちを叩き落とした。ただ、ユーラテは一緒について来たカスティーを守りつつ戦っている。
だが、次から次へとワイバーンが際限なく溢れ出でくる
「もう!!一体何処へ繋げたらこんなに出でくるのよ!?」
「ワイバーンの群が渡りをしているのを狙って繋げているわね」
ワイバーンが限がなく溢れ出すことにイライラしている珠樹、カナンは冷静に分析する。
「竜に関しては詳しい堕天使だから、そういうのも造作もないか」
鋼弥も拳、回し蹴りでワイバーンを叩きのめす。
だが、それだけではなかった……ワイバーンたちとは違う悪魔が出現する。
巨体で紫色の鱗を持ち金色の瞳を持つファーブニル。
大きな翼に足が無く黄色い体を持つ飛竜リンドブルム。
緑色の鱗を持ち大きな翼と尾の先端がトゲトゲとなっている翼龍クエレプレ。
それらが出現したと同時に召喚の陣に罅が入り粉々に散った。
新たに出現した竜たちはワイバーンたちを捕食し始めている。
「弱肉強食……恐ろしい事ですね」
「龍神はしないが、龍王と邪龍は喰らって強くなろうとするからね」
目の前の光景にただ、息を呑む。
三匹の竜は鋼弥たちを睨み、吼える。
鋼弥たちは、街に出さないために対峙する。
◆◆◆◆
【アハハハハハハハハハハハハッ!!焼け死んじゃうよ!!】
"地獄の業火"を連続で放ち、タオと崇仁を撃つ。
タオは棍を振りかざして火炎弾を弾き落す。
【そーらっ!!】
ウァラクは"ショックウェーブ"をタオとタカヒトへ放つ。
タオは棍を地面に指して、離れる。
電撃は棍へと落ちた。
「電撃でも、避雷針にすればどうという事は無いよ」
【けど、君の武器は使えないね】
避雷針代わりにした武器は黒焦げとなっており、使えなくなっている
「僕の武器は他にもあるよ」
タオが取り出したのは棒を三本、金具が付いた鎖でつないだ武器――三節棍を取り出す。
ウァラクはジオンガを連続で放つが―――――。
「はぁー!!せいっ!!やぁっ!!やぁっ!!とりゃ!!」
タオは三節棍で全て薙ぎ払い打ち消す。
ヒュンヒュンと振り回し、ふぅーと息を吐く。
【ふーん……やるじゃないか。じゃあ、これはどうかな!?】
両手から、気を生み出し球体が出現する
【刹那五月雨撃!!】
閃光の矢が雨の如く降り注がれる。
タオは崇仁を抱えて、回避する。
「魔法だけではなく、こんな技まで覚えていたのか……!!」
【捕まえた♪】
ウァラクが迫り、ゼロ距離のジオダインを放つ。
二人は吹き飛ばされてしまう――――。
◆◆◆◆
ウァラクとタオと崇仁がいる方向に電撃が奔ったのを見て鋼弥は"まさか"と思った。
「まずい……!!二人がやられてしまう!!」
「三体のうち、私たちは二体を引き付けてます。残りの一体を倒して助けに行ってください!!」
フィーナ、リオ、カナンはリンドブルムを、珠樹と彗華はクエレプレを攻撃し引き付ける。
鋼弥とシェリルはファフニールを相手にし、短時間で倒してタオと崇仁を救わなければならない。
ファフニールは雄たけびを上げて、鋼弥とシェリルを踏みつぶしにかかる。
口から猛火を撒き散らすが、避けて拳や剣で切り付けるが大したダメージは受けてない。
流石は邪龍の中ではタフネスを誇る。
不意にシェリルはあの過去の事を思い出す―――。
"リーザが危険な目にあわせてしまった事を"
もし、崇仁とタオが殺されてしまったら残された者たちは悲しむ。
シェリルは兜と鎧を取り外し捨てる。
「シェリル……!!」
「もう……逃げない!!」
彼女の髪がザワザワと蠢き、手に絡みつくと髪が刃となった
「これが、私が封印していた力……ネイチャーウェポン。髪を武器に扱う能力!!」
シェリルは駆け出し、ファフニールに立ち向かう。
ファフニールは大きな口を開けてシェリルを噛み砕かんとするが―――。
シェリルは身体を捻り避けて、ファフニールの首を狙い両断する。
ズズッとファフニールの首が落ち、切断面から血が噴き出す。
首が無い体はゆっくりと横に倒れて轟音が響き渡り、黒い塵となって消滅した。
「あれがシェリルさんの本来の力……やるわね!私もこんな連中にいつまでも手こずってはいられないわ!」
ユーラテは美貌に強気な表情を浮かべ、
「アベル君、お願い!しばらくカスティーと一緒に離れて!」
アベルはそれにうなずいてユーラテの背後にいたカスティーを抱き抱えて離れる。
「ユーラテさん!!」
カスティーが心配そうに叫ぶ、その彼にユーラテはニッコリと微笑む。
「心配しないで。今から私のとっておきの技を見せてあげるから♪」
そう言ってユーラテが右手をかざすと彼女の手に光が集まる……その光りに照らされたワイバーンの大群はややひるんだ様子を見せたが、次の瞬間、一斉にユーラテめがけて襲いかかる
「ユーラテさんっ!!」
カスティーは思わず絶叫する。その瞬間、美しい金髪をなびかせたユーラテの手から巨大な光の波が放たれて、ワイバーンの大群を包み込み、ワイバーンたちは一瞬のうちにすべて消滅した。
「す、凄い……!!あんなにたくさんいたワイバーンを一瞬で……!」
「さすがはユーラテさん……」
一方、シェリルとユーラテの力を目にした珠樹と彗華
「髪を武器にする能力ネイチャーウェポン。あれが、シェリルさんの本当の力……」
「ユーラテさんもやるわね。負けていられないじゃない、あんな凄い能力見せられたさ!!」
珠樹の気合が入った言葉に彗華は強く頷く。
クエレプレはキシャーッ!!と吠えて、カメレオンの様に目をグリグリと見る。
「あたしが、足止めするからお願いね!!」
「はい!!」
珠樹は刀を構えて、クエレプレを牽制する。
彗華は薙刀を地に差し、弓と矢を用意して、構える。
弓の弦を引き搾り、集中―――炎が宿る。
「穿て―――焔!!」
炎の矢は鳥の形となり、クエレプレに向かう。
珠樹は退いて、距離を取る。
クエレプレは氷のブレスを放つがそれでは溶けずに眉間に突き刺さり、炎に包まれた。
黒髪をなびかせる彗華は瞑目する。
リンドブルムと戦うリオ、カナン、フィーナ。
飛竜の口から雷を落とすが、三人は避けて反撃に出るも素早い動きで当たらない。
「流石は飛行特化した竜族。簡単に当てることはできないか……」
「けど、私たちはここで立ち止まるわけにはいかないわ」
リオはタリスマンを手に持ち、掲げる。
「召喚―――魔神ツクヨミ!!」
月を模した冠、闇色ローブを身に纏った導師が現れる。
【国を憂いて幾星霜。必殺ノ霊的国防兵器が一柱。月神ツクヨミここに】
ツクヨミは夜空が描かれている扇を取り出し、リンドブルムに向ける。
【ランダマイザ】
能力低下魔法を唱え、リンドブルムの動きを鈍らせる
「ザンダイン×6!!」
リオはザンダインを六連発放ち、リンドブルムがふら付きはじめた。
「削る!!」
カナンの両足に闘気が宿り、蹴りの連打が炸裂。
体を捻り、右足を上げて―――。
「ドラゴンスパイク!!」
踵落としを決める。
フィーナは眼を閉じ、剣の刀身から黄金のオーラが宿る
水平に構え、フルスイングの構えをし――――。
「ムーンストライク!!」
円形の刃を飛ばし、リンドブルムの首を切り飛ばす。
首が無い体は地響きを立てて地面に堕ち、後からリンドブルムの首が堕ちる。
リンドブルムの遺体は黒い塵となって消滅した。
◆◆◆◆
【もう、おしまい?】
ウァラクはタオを何度も踏みつけて痛め付ける。
「や、やめて……タオさんに酷い事をしないで……」
崇仁は大きなダメージを受けて倒れ伏しながらも涙を流してウァラクに懇願する……その彼にウァラクは呆れたという表情を浮かべつつ言う。
「やれやれ、君は本当にお人好しだね。こんな状態で他人の事を気遣うなんて……おまけにてんで弱い。そんな事じゃとてもレイナーレを守れないよね?大丈夫、レイナーレは僕が守ってあげて幸せにしてあげるから、君は安心して死んでね。せめて苦しませずに楽に死なせてあげるよ……」
次に崇仁を止めに刺そうとするが―――タオはウァラクの足を掴む。
「い、いかせない……!!」
【邪魔だよ!!】
電撃を放ちタオを吹き飛ばす。
「うわああああっ!!!」
「タオさんっ!!!」
鋼弥は走りながら、業魔化身を発動させ――トランプカードが纏わりつき弾けると魔人アリスとなる。
崇仁の前に立ち、ウァラクと対峙する。
【崇仁お兄ちゃんをイジメたら、めっ!!】
メギドを唱えて、ウァラクに向けて放つが避ける。
【なんで僕の邪魔するんだよ……どいつもこいつも!!】
崇仁を殺せないイライラが募ってきたのか、口調が荒くなっているウァラク。
【皆、死ね。死んでしまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!】
バリバリと電撃が奔り、最大技を放つ
【雷雲呼び!!】
黒雲を呼び寄せ、イナヅマが止むことなく降り注がれる。
アリスは崇仁の前に立ちマカラカーンで防ぎ、シェリルはタオを抱きかかえて避ける。
フィーナたちも駆けつけに来たが、降り注がれる雷に阻まれて入れない。
【ふふふ……これで止めだよ】
ウァラクは笑みを浮かばせて狙いを定める。
シェリルは髪を伸ばしてウァラクを巻き付けて身動きを封じる。
【なに!?】
「今よ……!!」
アリスはニッと笑い、魔力を高める。
【マジカルメテオ!!】
アリスは魔力で緑色に輝く隕石を生み出しウァラク目掛けて落とす。
閃光、爆音が巻き起こり、煙が晴れると……ウァラクは力尽きて倒れていた。
【威力は抑えているから、死んでないよ♪】
アリスはそう言って、姿を解き鋼弥へと戻る。
珠樹と彗華はレイナーレが囚われているだろう廃墟へと行く。
【は、はははは……僕が破れるなんてね……】
「さて、こいつを連れていけばいいだけだけど……」
「連れ帰ったとしても罪は大きいと思います……」
この世界で傷つけて更には崇仁まで殺そうとした悪魔。しかし、崇仁は―――。
「あの……彼と話をしたいです……」
誰もがその言葉に耳を疑ったが、鋼弥は前に出て―――。
「解った。しかし、ウァラクが仕掛けようとしたら……解るな?」
崇仁は頷きそして、ウァラクに近づく
【なんだ……?】
「どうして、こんな事をしてレイナーレを攫ったの……?」
【僕は人間のサマナーに恋をしていた。
けど、サマナーは病気で死んで冷たくなっていた
人間は病気や怪我すれば死に、寿命が来れば死ぬ……
そんな悲しさを忘れるために色々な悪魔を殺しまわっていたさ】
「……魔界で多くの悪魔を殺していた理由がそれだったのね」
シェリルはウァラクの凶行を知り、悲しむ。
寂しさと孤独を忘れさせようとしたが、心を埋めることは決してなかった。
【なにより、レイナーレは僕の召喚士マナに似ていたからさ。
どんな種族でも彼女が好きだった、彼女の事が……彼女の事が……】
ウァラクは次第に涙声となり、声を押し殺して泣いた。
崇仁も救出されたレイナーレはウァラク事情を知る。
夜空に浮かぶ満月は悲しく照らしていたような感じだった。
◆◆◆◆
翌日、ウァラクは魔界へと送還された。
「ありがとうございます。鋼弥さん」
「いや、突破口を開いたのはシェリルだ。彼女の力が無ければ、崇仁とタオは間に合わなかった」
「シェリルさん。ありがとう」
レイナーレはシェリルに感謝の言葉を述べる。
シェリルは照れていながらも笑って頷く。
ようやく、彼女が覆っていた兜を外す日が来たのだ。
「やっぱり、兜を外していた方が可愛いわ」
ユーラテがそう言うとシェリルは顔を赤くし指を絡ませる。
「魔界に帰ったら、リーザが喜ぶわね」
「そうですわね」
カナンと彗華が言う。
「それで……ウァラクはどうなるんですか?」
「魔界中央にある監獄城へと送られるが、真っ当に生きるだろう。
時間が経てば、彼の心の傷も癒えて強く生きるはずだ」
彼は討伐されるわけではないが、いつの日か心の傷が癒えることを祈るしかない。
「そうそう、忘れるところだった。あの時はゆっくり自己紹介してなかったわね。
アタシの名前は如月珠樹。よろしくね」
「私は花咲彗華と申します」
「リオ・サウロンと申します。よろしくお願いします」
「カナン・ケシェット。今後ともよろしく」
「タオ・ライシェン。ボロボロになってカッコ悪いところをみせちゃったけどね」
「フィーナ・クレセントと申します。鋼弥さんたちとは長い付き合いですわ」
崇仁たちも自己紹介を済ませて、しばしの交流をする。
時間は過ぎ、鋼弥たちは元の世界へ帰還する時間となった。
崇仁たちは彼らを見送り、また会える日を楽しみに待つ。
シェリルの本当の力、"ネイチャーウェポン"。
シェリルのモデルとなったキャラはロード・トゥ・ドラゴンに登場する討髪王シャルロッテです。
豊満な体が黒い鎧を身に包んだ女性がいいなと思いました。
引き続き本編もよろしくお願いします!!