全てが終わった。世界はかくて事も無し。全てが元通り。神樹もなく、世界はあるべき流れに戻った。といっても、四国以外が滅びていることには変わりはないが、壁は消えた。
世界は復興を始めようとしていたのだ。混乱があった。始めこそ、混乱に次ぐ混乱であった。なにせ、滅んでいたという世界にはまだ生き残っている人たちがいたからだ。
なんでも、他の盧生たちが動いていただとか、眷属がどうとか。東郷さんが予想を立てていたけど本当のところはわからない。
でも、きっと大丈夫。だって世界は救われたんだから。
四国の混乱は、残っていた大赦を夏凜ちゃんが物凄い手腕でまとめ上げて、神樹様のお告げとして世界が平和になったことを告げたらあっというまにおさまって復興が始まった。
勇者部は、勇者部としてしっかりと働いた。色々と規格外らしい私たちは、みんなから重宝されたよ。そんな感じに一ヶ月とか二か月とか過ぎて、次第にいつも通りの日常が戻ってきた。
ええと、ここで先生たちについて話した方がいいかな。辰宮理事長先生、狩摩先生、柊先生、神野先生、甘粕先生、ヘル先生、柊四四八さんは、あの騒動のあとみんないなくなってしまった。
いっぱいお話したかったんだけどなあ。四四八さんと。
東郷さんが言うにはみんな夢の存在で本当は過去の人だったんだって。だから、全部終わったら消えてしまった。けれど、みんなが先生たちのことを忘れちゃったわけじゃない。
夢だったけど、あれは現実でもあったから。詳し事はわかんないけど、そういうことなんだって。東郷さんが言ってたから間違いないよ。
それじゃあ、私たちについて。
あの時、四四八さんを連れてきた樹ちゃんはなんだか吹っ切れたみたい。この前なんか、歌のオーディションに受かったとかで歌手を目指すみたい。
風先輩なんて、それ聞いて号泣していたほど。それと、なんだか気になる人ができたみたいで、よく一人で男の子と出かけているみたい。
――いいなぁ、とか思っちゃったり。
風先輩なんか、樹は私のだー、樹が欲しいなら私を倒せって言って息巻いてるみたいだけど、そのうち倒されるんじゃないかな。
どこか偉そうなところはあるみたいだけど、いい人みたいだし。私は会ったことないんだけどね。そのうち合わせてくれるかなぁ。
そうそう風先輩は最近凄い。なんでも、本気を出したのさっ、とかキメ顔で言っているけど、本当に凄い。三年生の中で一番だって。
でも、樹ちゃんを追っかけるのに労力のほとんどを費やしているとか。うどんを食べるのも変わらず。みんなで一緒に食べてるよ。
――高校もさくっと決めちゃってください先輩!
夏凜ちゃんは、言った通り大赦に行ってたけどすぐに勇者部に戻ってきた。狩摩とは違うのよ! っていうのが口癖。
なんでも、鬼面衆の人たちに全部押し付けてきちゃったらしい。それくらいできるでしょって、行っていたし何よりお兄さんに任せたから問題ないとか。
それからはすっかり肩の荷が下りたのか夏凜ちゃんは普通の学生生活を謳歌してる。山育ちだから、学業とか遅れてたり、作法とかが駄目らしいんだけど東郷さんが矯正してる。
東郷さんのしごきは厳しいらしくて大変そうだけど、夏凜ちゃんはなんだか楽しそう。
――よかったね、夏凜ちゃん。
東郷さんは、なんでもあのあと友達に謝りに行ったらしい。少しの間落ち込んでたみたいだけど、ちゃんと仲直りできたんだって。
神樹様も消えて、供物になってたものはみんな帰ってきたからそれが全部元通りになったら改めて紹介してくれる手はずになってる。
どんな人なのか会うのが楽しみだな。あとはいつも通りスパルタで夏凜ちゃんの矯正をやっていたり、時々あの狩摩先生とやっていた大将棋を一人でやっているのを見かけるかな。
眼鏡をかけて難しい本を読みながら一人で打っている。狩摩先生にはまだ勝てないかなって言ってたっけ。私も時々やってみるけど、覚えるだけで大変。
――今度はきちんと、覚えるからね、東郷さん。
そして、私は相変わらず勇者部で勇者やってます。甘粕先生を倒したのは私だから、あの人に恥じない勇者になろうって思った。
結城友奈は甘粕正彦が倒されるに値した勇者なんだって胸を張って言えるように。それが私があの人に出来ることだと思うから。
確かに先生たちがいなくなって寂しいと思うことはあるよ。うん、今だって時々そう思っちゃう。だけど、そんなんじゃ甘粕先生に合わせる顔がないよね。
だから、元気に今日も勇者活動! そうそう、勇者部は文化祭で劇をやることになった。今日がその公演日。
「おおぅ、なんかめっちゃ人入ってるんだけど」
風先輩がそっと会場を見て驚いている。
「おお、やったね東郷さん!」
「ええ、宣伝した甲斐があったね」
「うぅ、緊張してきた」
「大丈夫よ、樹、この私がいるんだからね。でもなんで、私が盲打ちの役なのよ」
それは満場一致で決まったことだから仕方がないよね。
「まあいいわ、ここまで来たらやるしかないし。行くわよ、勇者部ファイトー!」
『オー!』
円陣を組んで、腕をあげて、そうして司会の人が演目を読み上げる。
「続きましては勇者部による演劇です。演目は、終段、顕象――それはきっと勇者の物語です」
そうして劇は始まる。そして、最後の場面。
「お前たちの輝きを私に見せてくれ!」
これはあの人の物語。魔王で、勇者な甘粕正彦の物語。
万雷の拍手を受けて、私たちの劇は幕を閉じた。その時、先生の笑顔を私は見たような気がした――。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「良かったじゃないか」
そう柊四四八が言う。
「良い子たちだ。彼女たちなら大丈夫だろう」
クリームヒルトが言った。
「フッ、無論、信じているとも。俺の教え子たちだ。無様なことなどするはずがない。そう信じている」
信じることは怖い、だからこそ信じることは尊いのだ。劇を見た甘粕正彦はそう言って席を立ちあがる。友奈と目があった気がしたが、笑顔を返してやった。
「さて、帰るか。まったく、盧生の力はもう使わないつもりだったんだがな」
「たまにはいいだろう。私たちは私たちで大変なんだ。これはいい息抜きになった」
「では、またどこかで会おう。俺はいつでも、人の世を救うためにどこへでも行く」
「ほどほどにしろよな。お前はやりすぎる」
「そうだ。この前など」
「はっはっは、覚えておこう」
今日も、盧生は行く。己の描いた夢の為に――。
「お前たちの輝きを俺に見せろォ! 終段顕象!!」
どこかの世界で今日も甘粕は戦う。確かに見た輝きを胸に――。
おつかれさまでした。というわけでこれにて甘粕正彦は勇者部顧問であるはハッピーエンドで完結です。
短期集中連載っぽくなりましたが、お付き合いいただきありがとうございました。
本当、こんな駄文小説を最後まで読んでいただきありがとうございます。皆さまの感想を読むたびニヤニヤして喜んでました。
リアルでは近くに戦神館やっている人がいないのでそう深い話ができないので、皆さまと感想で戦神館の話が出来て私的にはとても嬉しく楽しかったです。
また、甘粕が暴れるようなことがあればよろしくお願いします。
で、ちょっとした妄想。エピローグの東郷さんの将棋は万仙の歩美の将棋やってるCGを東郷さんにして眼鏡かけて将棋している感じです。
あとエピローグ後に終段やってる甘粕はその胸に勇者部と撮った集合写真を忍ばせてるとかそんな裏設定とか妄想があったり。
ここから先はぶっちゃけ話。
まずこの小説を始めようと思った理由が、ゆゆゆ見た瞬間から甘粕好みだなと思ってていつかやりたいなと思っていたところに万仙陣が来てこれはやるしかないと思って一発ネタのつもりでやったんですけど、意外にも反響があってみんな甘粕が好きなんだなと思いながら連載に踏み切りました。
そこからセージを追加して狩摩も放り込んで、そのころは実はまだこんな最後はまったく構想してませんでしたので、ただのネタだしこんなもんかなと思いながらやってました。
で、万仙陣をプレイして、これだと思って第五盧生を構想。その時、クリームちゃんに惚れ込んで出そうと思ったけどまだ早いかなと思って東郷さんの話をしました。
この時、実は、まったく東郷が夢を紡いだこととか考えてなくて後でその展開にしようと思って、考えてたら狩摩が言った通り、全てが嵌ってたんですよね。
本当、考えてなかったので気が付いた時、作者のくせにマジかって驚いて。しかもその全てに狩摩がかかわってたんですよね。
狩摩は勝手に動くので、作者でもどう動くかわかりません。これだから盲打ちは。
まあ、そんな感じでこの作品は、今回で終わりになりました。色々とありそうですが、ともかく終われたのは皆さまのおかげです。
感想のおかげで更新も捗りました。途中感想欄が阿片窟になっていたりと、とても楽しませていただきました。
特にクーマン様はこの作品を推薦までしていただいていたようで、今更ですがありがとうございます。上手い文章に笑わせてもらったりしました。ありがとうございます。
さて、最後に、何か絶望的な世界観を持った二次創作が書けそうな作品ってないですかね。
気が乗れば甘粕をどこかに出張させようかなと思ってますので教えてもらえると嬉しいです。
まあ、書くとは言ってないんですが。原作もってないかもしれませんし。
戦神館クロスオーバーのネタだと
まどマギにTSセージ(南天ではない)を送り込み、神野ちゃんと甘粕ちゃんという友達とともにQべぇたちを蹂躙するネタがあったりなかったり。
ノゲノラの世界に空白じゃなくて狩摩送り込んでみたりとか。
血界戦線に甘粕をぶっこんで世界を崩壊させたりネタはいくらかあります。
ネタがあるだけでまったく何も考えてないんですけどね。
さて、長くなりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。
ではでは。