Minecraft ~ある冒険家の旅路~ 作:セッキー.Jr
「そこまでだ!!」
チャカ…
ルーフスに5、6人の兵隊達の銃が一斉に向けられる。
ルーフスは黙ったまま瞳でMr.Fを探す。
「Mr.Fはどこだ。」
「奥の部屋で休まれている。我々はここで見張りを頼まれたのだ。」
兵隊達は円形の部屋で、半円のような陣を作って銃を向けている。
「残念だったな。君はこの危機から脱せられまい。」
ルーフスは言った。
「確かにそうだ…だけどやるっきゃないんだよ。」
兵隊達とルーフスは静止して睨みあう。
ルーフスの放つ緊張感から、銃の引き金を引くことができないのだ。
ルーフスもまた然り。
複数の銃はいつ放たれるのか…
「…撃て!」
バン!!
バン!!
バン!!
バン!! バン!!
バン!! バン!!
・・・
・・
ルーフスは無傷。
隊員達全員の胸から血が噴出す。
ルーフスは目を開いて驚く。
「…分かっていたさ…お前らには到底倒せないよ…」
奥の扉が開いて白衣の男が現われた。
「…Mr.F…!!」
Mr.Fは挨拶をする。
「わたしがMr.F…本名も教えておこう。フェリクス・ディールだ。」
ルーフスは倒れた兵隊達を見て問う。
「…なんで仲間を殺したんだ…?」
「簡単さ。使い終わったぼろ雑巾は捨てるしか道は無いだろう?」
Mr.Fは更に続ける。
「こいつらもどうせ後に裏切るのさ。王の座を狙ってね。
…アーティクルやチェリーももう倒された。あいつらも私を裏切ったのだ。
自分の力を過信しただけのただの悪魔なのだよ…」
ルーフスは何も言わずに聴く。
「この世界の全て、皆皆、悪魔なのさ。
悪魔のように救いはなく、醜いものさ。
俺はこの世界に捨てられたのだよ。」
ルーフスは言った。
「…で?…独り言は終わったのか?フェリクス。」
ルーフスは剣を構えていった。
「『世界は悪魔だー』とか、『世界は醜いものだー』とか、
そんな自論を聴きにきたわけじゃねぇんだよ。
要はよ…お前を倒せば、世界は救えるんだろ?」
フェリクスは舌打ちする。
「英雄ぶるなよ…この悪魔め…!!」
ボァアアアア…!!
フェリクスの影が床から離れ、フェリクスの体にオーラのようにまとわりついた。
「…!!!」
(これは…魔法か!!)
「…さあ、私に食われるがいい…!!」
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チェリーはステーラと共に飛行艇の中へ突入する。
ステーラはルーフスの飛行艇に入る瞬間を見ていたのだ。
入るとすぐにルーフスの姿が見えた。
「ルーフスさん!!」
ルーフスはこっちに振り向く。
「…今から突入するんですね!!」
「いや…終わったよ。」
「え?」
ルーフスは喜んで言う。
「全部終わったのさ!Mr.Fはもう倒れたんだよ!!
世界はもう救われたんだ!!
ほら、喜べよ!!お前ら!!」
ルーフスは笑顔で話す。
チェリーとステーラはポカンとする。
チェリーはうつむく。
「…違う…」
ルーフスは心配する。
「ん?どうした、傷が痛むのか?」
ステーラもうなる。
「グルルルルルル!!」
ルーフスは動揺した。
「な、なんだよ、お前まで、
それが主人に向かってする態度か!?」
「違うって言ってるでしょ!!」
「バウ!!」
ルーフスはチェリーとステーラの剣幕に怯えて後ずさりする。
「ルーフスさんは…例え…Mr.Fを倒したとしても…
Mr.Fのことまで考えているはず…!」
(本当は敵として対峙しなきゃいけないんだ。…
だから、あいつがこの旅で大きくなったら、自分の存在を考えるようになるだろう。)
「見えているものの裏まで…他人の気持ちまで考えちゃう人なんだ!!」
(強くなるために残しておいた命を・・・お前は全て踏みにじる気か!?)
「私はルーフスさんがそんな人だって信じてる…!!『大好きだから』!!」
ルーフスは真顔になる。
・・・・・・
・・・・
・・
・
ルーフスは赤い世界にいた。
ここは…フェリクスの記憶の中か…??
―――降りしきる雨の中。
空き缶が一つ置いてある。
―――知らない男。
こわい。にげたい。
ああ、けらないで…なぐらないで…おじさん。
がんばるから。ぼく、がんばるから…
―――檻の中。
目…目…目…
―――汚れた少女。
ぼくとおない年。君はぼくに笑ってくれた。
きみを見たら、なんだかとてもうれしくなった。
―――また雨の中。
手を繋いで、裸足で走る少年少女。
逃げるんだ。しあわせになるんだ。
―――工場。
彼女のためだけに…
彼女が苦しまないように…!!
―――小さな部屋。
これでもう、寒くないよね…
君といつまでも一緒にいられるよ…
―――病院での指輪。彼女の泣いた顔。
何年かかって買えただろう…
遅くなったけど、これが僕の君への気持ちだ。
―――雨の中。
彼女がいなくなる?
彼女はいなくなってしまう?
そんなのごめんだ…!!私は…!!
―――病院の中。
水が欲しいのか?それとも何か食べたいか?
なんでそんなことをいうんだ!?
お願いだ!!まだ私の前から消えないでいてくれ…!!
!!………………あああああああ!!!!!!!
―――憎い。
悪魔達が私を睨みつけている。
全てが私を嫌っている。
そうか、皆敵なんだ。この世界など消えてしまえ
消えてしまえ
消えてしまえ
消えてくれ…
皆…消えてくれ…
彼の世界では、雨がいつも滴り落ちていた―――
・
・・
・・・・
・・・・・・
「おい、いい加減本当の姿見せたらどうだ?」
チェリーがもう一人現われる。
「ワオ!?」
「私…?……!……ヘロブライン…!!
なんで私の姿なのよ…」
「近くになれそうな奴がいなかった。」
ルーフスの姿は黒い影となった。
そして中から
ルーフスとフェリクスが現われる。
ドサッ…
「ルーフスさん!!…はぁ…良かったです~!!」
チェリーが泣いて抱きしめる。
チェリーの胸が顔に当たる。
「ちょっと…チェ…チェリー…」
チェリーの姿のヘロブラインは真顔で、顔にダラーと流れる涙をハンカチで押さえた。
ルーフス達は体制を立て直して言った。
ヘロブラインは言う。
「偶然にも、私はMorphの魔法を無効化できるのさ。
さあ、降参するんだ。Mr.F。」
Mr.Fは言った。
「…諦めるとでも…??」
Mr.Fは白衣の裾に隠したボタンを押す。
ビュウウウ!!
Mr.Fの乗っていた中央の丸い床が天井まで突き出した。
「しまった…!!外に出られてしまった!!」
既にミュータントモンスターズの屍があちらこちらに転がっていた。
Mr.Fはバルコニーに立つ。
「いた!Mr.Fだ!!」
火山の戦士達はざわめく。
民族の長は命令する。
「矢を構えろぉ!!」
「…!待て、何か話すつもりだ。もしかしたら降参宣言かもしれない。」
Mr.Fはピンマイクで放送を開始する。
「君達、今から私は、この
「…何?」
「あいつ…とうとう頭が狂っちまったようだ…」
「Mr.F!!お前の負けだ!!降参しろ!!」
「「「「「「「降参!!」」」」」」」
「「「「「「「降参!!」」」」」」」
「「「「「「「降参!!」」」」」」」
戦士達はコールをする。
Mr.Fはあざけ笑ってバルコニーから降りる。
中からチェリーの姿のヘロブラインが叫ぶ。
「みんな!!逃げろぉおおお!!」
ボァアアアアアア!!!
「な…なんだあの影のようなものは…!!」
魔法の国の王様は気づく。
「あれは…Morphの魔法…!!
…まさかそれを…惑星に適用するというのか!!
止めろ…!!」
魔法の国の王様は叫ぶ。
「私でさえ国を制御し大きな副作用を負ったのだぞ…!?
素人のお前では無理だ…!!制御すらできなくなるぞ!!!」
「王様…!!」
サフラが心配そうに王様を見た。
バッ…
世界は光に包まれる。