Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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59:Mr.F

 

 

 

「そこまでだ!!」

 

チャカ…

 

 

 

ルーフスに5、6人の兵隊達の銃が一斉に向けられる。

 

 

ルーフスは黙ったまま瞳でMr.Fを探す。

 

 

「Mr.Fはどこだ。」

 

 

 

「奥の部屋で休まれている。我々はここで見張りを頼まれたのだ。」

 

兵隊達は円形の部屋で、半円のような陣を作って銃を向けている。

 

 

 

 

「残念だったな。君はこの危機から脱せられまい。」

 

 

ルーフスは言った。

 

 

「確かにそうだ…だけどやるっきゃないんだよ。」

 

 

 

兵隊達とルーフスは静止して睨みあう。

 

 

ルーフスの放つ緊張感から、銃の引き金を引くことができないのだ。

 

ルーフスもまた然り。

 

複数の銃はいつ放たれるのか…

 

 

 

「…撃て!」

 

 

 

バン!!

      バン!!  

             バン!!

   バン!!    バン!!

 

 バン!!      バン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフスは無傷。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隊員達全員の胸から血が噴出す。

 

 

 

 

ルーフスは目を開いて驚く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…分かっていたさ…お前らには到底倒せないよ…」

 

奥の扉が開いて白衣の男が現われた。

 

 

 

 

「…Mr.F…!!」

 

 

 

 

Mr.Fは挨拶をする。

 

 

「わたしがMr.F…本名も教えておこう。フェリクス・ディールだ。」

 

ルーフスは倒れた兵隊達を見て問う。

 

「…なんで仲間を殺したんだ…?」

 

「簡単さ。使い終わったぼろ雑巾は捨てるしか道は無いだろう?」

 

 

Mr.Fは更に続ける。

 

「こいつらもどうせ後に裏切るのさ。王の座を狙ってね。

 

…アーティクルやチェリーももう倒された。あいつらも私を裏切ったのだ。

 

自分の力を過信しただけのただの悪魔なのだよ…」

 

 

ルーフスは何も言わずに聴く。

 

 

 

「この世界の全て、皆皆、悪魔なのさ。

 

悪魔のように救いはなく、醜いものさ。

 

俺はこの世界に捨てられたのだよ。」

 

 

 

ルーフスは言った。

 

 

「…で?…独り言は終わったのか?フェリクス。」

 

 

ルーフスは剣を構えていった。

 

 

 

「『世界は悪魔だー』とか、『世界は醜いものだー』とか、

 

そんな自論を聴きにきたわけじゃねぇんだよ。

 

 

要はよ…お前を倒せば、世界は救えるんだろ?」

 

 

 

 

フェリクスは舌打ちする。

 

 

「英雄ぶるなよ…この悪魔め…!!」

 

 

 

 

 

ボァアアアア…!!

 

 

 

 

 

フェリクスの影が床から離れ、フェリクスの体にオーラのようにまとわりついた。

 

 

「…!!!」

 

 

(これは…魔法か!!)

 

 

 

 

 

 

「…さあ、私に食われるがいい…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

チェリーはステーラと共に飛行艇の中へ突入する。

 

 

ステーラはルーフスの飛行艇に入る瞬間を見ていたのだ。

 

 

 

 

入るとすぐにルーフスの姿が見えた。

 

 

「ルーフスさん!!」

 

 

 

ルーフスはこっちに振り向く。

 

 

 

 

「…今から突入するんですね!!」

 

 

「いや…終わったよ。」

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

ルーフスは喜んで言う。

 

 

「全部終わったのさ!Mr.Fはもう倒れたんだよ!!

 

世界はもう救われたんだ!!

 

ほら、喜べよ!!お前ら!!」

 

 

 

ルーフスは笑顔で話す。

 

 

チェリーとステーラはポカンとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

チェリーはうつむく。

 

「…違う…」

 

 

ルーフスは心配する。

 

「ん?どうした、傷が痛むのか?」

 

 

ステーラもうなる。

 

「グルルルルルル!!」

 

 

 

ルーフスは動揺した。

 

「な、なんだよ、お前まで、

 

それが主人に向かってする態度か!?」

 

 

 

「違うって言ってるでしょ!!」

 

「バウ!!」

 

 

ルーフスはチェリーとステーラの剣幕に怯えて後ずさりする。

 

 

「ルーフスさんは…例え…Mr.Fを倒したとしても…

 

Mr.Fのことまで考えているはず…!」

 

 

(本当は敵として対峙しなきゃいけないんだ。…

だから、あいつがこの旅で大きくなったら、自分の存在を考えるようになるだろう。)

 

 

「見えているものの裏まで…他人の気持ちまで考えちゃう人なんだ!!」

 

 

(強くなるために残しておいた命を・・・お前は全て踏みにじる気か!?)

 

 

「私はルーフスさんがそんな人だって信じてる…!!『大好きだから』!!」

 

 

 

ルーフスは真顔になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

・・・・

 

 

・・

 

 

 

 

 

ルーフスは赤い世界にいた。

 

 

 

 

ここは…フェリクスの記憶の中か…??

 

 

 

 

―――降りしきる雨の中。

 

空き缶が一つ置いてある。

 

 

 

 

 

 

―――知らない男。

 

こわい。にげたい。

ああ、けらないで…なぐらないで…おじさん。

がんばるから。ぼく、がんばるから…

 

 

 

―――檻の中。

 

目…目…目…

 

 

 

 

―――汚れた少女。

 

ぼくとおない年。君はぼくに笑ってくれた。

 

きみを見たら、なんだかとてもうれしくなった。

 

 

 

―――また雨の中。

 

手を繋いで、裸足で走る少年少女。

 

逃げるんだ。しあわせになるんだ。

 

 

 

 

―――工場。

 

彼女のためだけに…

 

彼女が苦しまないように…!!

 

 

―――小さな部屋。

 

これでもう、寒くないよね…

 

君といつまでも一緒にいられるよ…

 

 

 

―――病院での指輪。彼女の泣いた顔。

 

何年かかって買えただろう…

 

遅くなったけど、これが僕の君への気持ちだ。

 

 

―――雨の中。

 

彼女がいなくなる?

 

彼女はいなくなってしまう?

 

そんなのごめんだ…!!私は…!!

 

 

―――病院の中。

 

水が欲しいのか?それとも何か食べたいか?

 

なんでそんなことをいうんだ!?

 

お願いだ!!まだ私の前から消えないでいてくれ…!!

 

!!………………あああああああ!!!!!!!

 

 

 

 

―――憎い。

 

悪魔達が私を睨みつけている。

 

全てが私を嫌っている。

 

そうか、皆敵なんだ。この世界など消えてしまえ

 

消えてしまえ

 

消えてしまえ

 

 

 

 

 

消えてくれ…

 

 

 

皆…消えてくれ…

 

 

 

 

 

彼の世界では、雨がいつも滴り落ちていた―――

 

 

 

 

 

 

 

 

・・

 

 

・・・・

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、いい加減本当の姿見せたらどうだ?」

 

 

 

チェリーがもう一人現われる。

 

 

 

「ワオ!?」

 

 

「私…?……!……ヘロブライン…!!

なんで私の姿なのよ…」

 

 

「近くになれそうな奴がいなかった。」

 

 

 

 

 

 

ルーフスの姿は黒い影となった。

 

 

そして中から

 

 

ルーフスとフェリクスが現われる。

 

 

 

ドサッ…

 

 

「ルーフスさん!!…はぁ…良かったです~!!」

 

 

チェリーが泣いて抱きしめる。

 

 

チェリーの胸が顔に当たる。

 

 

「ちょっと…チェ…チェリー…」

 

チェリーの姿のヘロブラインは真顔で、顔にダラーと流れる涙をハンカチで押さえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフス達は体制を立て直して言った。

 

 

ヘロブラインは言う。

 

「偶然にも、私はMorphの魔法を無効化できるのさ。

 

さあ、降参するんだ。Mr.F。」

 

 

 

 

 

Mr.Fは言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…諦めるとでも…??」

 

Mr.Fは白衣の裾に隠したボタンを押す。

 

 

ビュウウウ!!

 

 

Mr.Fの乗っていた中央の丸い床が天井まで突き出した。

 

 

「しまった…!!外に出られてしまった!!」

 

 

 

既にミュータントモンスターズの屍があちらこちらに転がっていた。

 

Mr.Fはバルコニーに立つ。

 

 

 

「いた!Mr.Fだ!!」

 

 

火山の戦士達はざわめく。

 

 

民族の長は命令する。

 

「矢を構えろぉ!!」

 

 

「…!待て、何か話すつもりだ。もしかしたら降参宣言かもしれない。」

 

 

 

Mr.Fはピンマイクで放送を開始する。

 

 

「君達、今から私は、この惑星(ほし)になろうと思う。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何?」

 

        「あいつ…とうとう頭が狂っちまったようだ…」

 

   「Mr.F!!お前の負けだ!!降参しろ!!」

 

 

「「「「「「「降参!!」」」」」」」

 

「「「「「「「降参!!」」」」」」」

 

「「「「「「「降参!!」」」」」」」

 

 

 

 

戦士達はコールをする。

 

 

 

Mr.Fはあざけ笑ってバルコニーから降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中からチェリーの姿のヘロブラインが叫ぶ。

 

 

「みんな!!逃げろぉおおお!!」

 

 

 

 

 

 

ボァアアアアアア!!!

 

 

 

 

 

 

 

「な…なんだあの影のようなものは…!!」

 

 

 

魔法の国の王様は気づく。

 

 

「あれは…Morphの魔法…!!

 

 

…まさかそれを…惑星に適用するというのか!!

 

 

止めろ…!!」

 

 

魔法の国の王様は叫ぶ。

 

 

「私でさえ国を制御し大きな副作用を負ったのだぞ…!?

 

素人のお前では無理だ…!!制御すらできなくなるぞ!!!」

 

 

「王様…!!」

 

サフラが心配そうに王様を見た。

 

 

 

 

 

 

バッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界は光に包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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