Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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9:守られし村(後編)

少年と鉄の人形の二人だけの生活が始まった。

 

二人で木を切ったり、食糧を確保したり、

 

鉱石をたくさん採り、ある夜にはゾンビと戦い・・・

 

そんな毎日の忙しい日々の中・・・

 

「・・・カマド・・・ココ・・・デ・・・イイ・・・?」

「うん、そこにおいといて。俺は牛を狩ってくるよ・・・」

 

ゴーレムには少年の体が一瞬ぐらつくのを見た。

 

 

 

次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

少年はふらっと体が横に傾き、

 

 

 

 

 

そのまま床に倒れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ワレ・・・ノ・・・トモ・・・!」

ゴーレムは少年に駆け寄り、額に手を当てた。

 

ひどい熱である。ゴーレムはどうしていいのか分からなかったが、

ひとまずベッドに寝かせ、氷を叩き割り、額にのせた。

 

「ダイ・・・ジョウ・・・ブ・・・?」

「ああ・・・ただの熱だ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

「ワレ・・・イチバン・・・ワルイ・・・ワレガ・・・キラワレテ

 

「うるさい!」

 

・・・!」

ゴーレムは一喝され、ひるんだ。

 

「君は何も悪くない!自分を責めるんじゃない!

嫌われることが悪いなんて誰が決め付けた!?

もし天が決め付けたというなら・・・!

この世を創りあげた者が決め付けたとしたなら・・・!

俺は違う世界に生まれたほうが数倍、数百倍良かった・・・!」

 

 

 

 

 

ワレハ・・・コノコノタメ・・・ナニガ・・・デキルノダロウカ・・・

コノコハ・・・マエマデ・・・トテモ・・・オクビョウ・・・

 

 

 

 

 

コノヨハ・・・ワレヲ・・・ハイジョ・・・シタ・・・

ユウイツ・・・コノコハ・・・ワレヲ・・・ミトメタ・・・

シナセテハ・・・イケナイノダ・・・!

 

 

それから二日が経った。

ゴーレムは看病を続けたが、

一向に良くなる気配はなかった。

むしろ、熱はあがるばかりだった・・・

 

 

 

 

三日目の夜。

とうとうゴーレムは決意した。

このままではこの少年は良くなるはずがない。

・・・医者をたずねるのだ。

 

 

 

ゴーレムは村まで全速力で走った。

矢は飛び交い、後ろでは爆破音がなり、蜘蛛も飛び掛る。

その攻撃全てをなぎ払い、ついに村に着いた。

だが・・・忘れていたのだ。

 

 

 

そこに立ちはだかっていたのは採掘者たちであった。

 

「よぉ・・・向こうのほうでガタンゴトンと音がしたと思ったら・・・

やはりお前だったのか・・・」

右手にはスタンガン。一人の採掘者が指を動かす度に、

青白く光る電流が走る。

 

「ハハ!よくここまで二人で生きてきたものだ・・・!

だがここまでだな・・・お前は天国で一人さびしく生きていくんだからよ!

・・・おっと、天国に行っている時点でもう死んでるか・・・」

 

「「「「ハハハハハハハハハ!」」」」

 

採掘者たちは笑う。

 

「・・・ナニガ・・・オカシイ・・・!!」

ゴーレムの目はどんどん明るくひかり、

何かの噴出す音が間接から聞こえる。

 

 

 

 

 

「トモガ・・・ヒトリ二ナルコトノ・・・ナニガオカシイ!」

ゴーレムは突進していった。

 

「馬鹿な奴め!この電流でお前はイチコロだ!」

 

 

ビリッ!!

 

 

「・・・ギギギ・・・」

 

ゴーレムから機械音が聞こえてきた。

少し動きが鈍くなっている。

 

 

「これでどうだぁぁああ!」

 

 

一人の採掘者がゴーレムに向かってピッケルが飛んでくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グシャ!

 

 

「うわぁぁああ!」

採掘者はぶっ飛ばされた。

 

「・・・・・・?」

「何だこのガキィ!?」

 

どうやら採掘者に向かって8人ほどの少年たちが

卵を投げつけたらしい。

「・・・俺らはあいつが何で洞窟に入ってたか知ってんだ。

あいつは友達がいなかったからなんだ。

俺らには話す勇気がなかっただけなんだ・・・!」

「だからこれが・・・挨拶代わりになると思って・・・!」

 

 

少年たちはオリジナルの木の剣を振りかぶって採掘者たちへ向かっていった。

 

 

 

 

「・・・トモとしての!」

「お人形さん、あなたは医者へ向かって!」

「・・・アリガトウ・・・!」

ゴーレムは医者へ向かった。

 

 

 

 

 

 

バタン!

 

「だ、誰だい君は!」

「おい!ここはお前みたいなブリキ人形が来る場所じゃねぇぞ!」

「ここは人間の病院だ!」

「・・・君は・・・あの洞窟の人形かね!?」

 

 

ゴーレムは短く、こういって、床につっぷした。

 

 

「トモ・・・タスケテ・・・」

 

医者は言う。

「・・・急患だ。君、診察を代わってくれないか。」

患者の一人がどなる。

「おい!人間をほったらかしてブリキ人形に従うのかよ!

そんなん不公平じゃねぇか!」

「だまれ!」

医者もどなる。

「彼は人間じゃない・・・ただ彼は・・・患者の家族であることは確かだ!」

患者は打ちのめされると同時に、周りの厳しい視線にも気がついた。

「・・・さあ、患者のいるところへ案内してくれ。」

患者は納得のいかない表情で、腕を組みながらしぶしぶ座った。

 

 

 

医者とゴーレムは、モンスターの間をかいくぐってようやく草原へでた。

しかし、雨が降り始めたのだ。

 

ぽつん、ぽつん・・・

 

 

ザーーーーー・・・

 

ビリビリビリ!

ゴーレムの体から電流が漏れ出す。

 

「君!大丈夫か!案内がなければ患者も危ういぞ!」

 

ゴーレムは前を指した。

「・・・トモ・・・」

プツン・・・

 

「・・・!そんな・・・!」

 

朝日が昇り、指を指した方向には一軒の小さな家があった。

 

 

 

 

 

 

熱の原因は食中毒であった。

鶏の生肉を食べたからであった。

医者によれば、あと一日で死ぬところだったらしい。

一人の勇気ある戦士がいなければ死んでいた。

――――――だが、彼は今、ここにいないのだ。

 

―――「あの時、私は泣き崩れました。

たった一人の友達。それを私は失ったのですから。」

 

「そういえば採掘者はどうなったんですか?」

 

「あやつらは無論のこと、少年たちに勝ちました。

村で裁判も行われ、少年たちや、私も判決に立ちあわせたのですが、

証拠がない、これだけで泡になりました。

 

私は友を認めない、そんな村が嫌いだったのでしょう。

私や少年たちは、遠くへ旅立ったのです。

新しい村を作るために。

・・・今思えば、彼が少年たちとめぐり合わせてくれたのです。」

 

「あれは新しいゴーレムなんですか?」

「いや、その「友達」、そのものです。

電源を変えたり、部品の交換で修理したのです。

機能はもとのまま使えます。ただ・・・

 

記憶はないのです。」

 

「・・・・・・え・・・・・・」

 

「・・・彼はあの日々を覚えているのでしょうか。

・・・あれは現実だと思ってはダメなのでしょうか・・・!」

村長はうつむいた。

 

 

 

「・・・現実ですよ・・・!」

「え・・・?」

 

ゴーレムがこちらへ寄ってくる。

 

一歩。

 

 

 

一歩。

 

 

 

一歩。

 

 

 

一歩。

 

 

 

彼は差し伸べた。

 

 

 

「・・・ゴゴ・・・ガギ・・・!」

 

 

 

彼はきっと、友達といったのだろう。

 

 

 

 

 

彼の差し伸べる「花」がそう語っていた。

 


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