Minecraft ~ある冒険家の旅路~ 作:セッキー.Jr
~~~~地獄にて~~~~
ゾンビピッグマンとブレイズは水晶で地上界を観ていた。
「…地上界が危ない。」
「このままでは本当に地上界は滅んでしまうぞ。」
ゾンビピッグマンは焦るようにその場を歩き回る。
「…だが…私達には手出しが出来ない。」
「…だな、非情だが、我々には関係がない。
手出しをすれば運命の掟に反してしまう。」
ブレイズは悔しそうに言った。
「もしこの世界の住人が皆死んだとしても…
我々には…生き返らせることは出来ないのだ…」
「いや、待て。」
ブレイズははっと気づく。
「生命の蘇生は出来なくとも、悪人を裁くことはできるのではないか?」
『それは無理だ…』
上空から声が響き渡る。
ブレイズは大きな声で聞き返す。
「天…!…何故ですか!?幾多の人々を殺そうとする悪人が…ここにいるではありませんか!!」
『彼は…ただ世界を変えようとしているだけだ…例え裁きができるとしても…
それは彼が新世界を築き悪行を犯した後の話だ…』
「そんな…理屈がまかり通るのですか!?」
『…ブレイズ…お前の気持ちも分かる…だが…』
『一人の意思も守らなければ…独裁となってしまう…
これが裁きの難しいところなのだ…』
~~~~~~~~~~~~~
~~~~とある島にて~~~~
ドォオン!!
ボォオオン!!
「ギャァォ!!…」
プテラノドンは宙から撃ち落とされる。
「コァア!!」
「ゴォオ!!」
「キャォ!」
「オォォン…」
地上の恐竜たちは爆発に怯え逃げ惑っていた。
背後には黒い三つ首の怪物が。
ボォォオオン!!
パリィイン!!
試験管が割れる。
バチバチ…
書類は炭をあたりに撒き散らし燃えていた。
「私の…子供達と…研究成果が…!!」
女性は絶望と怒りに震えていた。
たまらず近くのほうきを持ってウィザーに殴りかかる。
パシッ!!パシッ!!
「出てけ!この島から!出てけ!!」
ドォォオン!!
ウィザーは威嚇するように爆発する。
「きゃぁ!!」
研究所は無残な姿だ。
壁や天井はすっかりはがれてしまった。
ウィザーは女性にゆっくりと近づく。
女性は地面に落ちたまま後ずさりする。
ウィザーの対象が変わった。
柵の中。
小さな恐竜。
小さな恐竜は怯えたようにウィザーを見て震えていた。
ゴォオオ!!
ウィザーはエミリアを通り過ぎてティラノサウルスへと向かった。
「ゼット!!」
エミリアは咄嗟にゼットへと自分の身体を投げた。
ドォォオン!!!
ゼットは目を開ける。
ゼットの目の前にはエミリアが笑って覆いかぶさっていた。
エミリアの背中は痛々しく赤く焼き焦げていた。
「よかった…ゼット……当たらなくて…」
ドサッ…
エミリアは横に倒れる。
ゼットの目にある景色が思い浮かんだ。
ゴォオオオオオオ…
世界は瞬く間に氷河に包まれる。
暗い洞窟の中。
ここに一つの卵があった。
パリッ…
一つの卵の殻が少し割れる。
穴の中から、小さな赤ちゃんは景色を見た。
大きな恐竜が自分を氷から守るように覆いかぶさっていた。
(…ママ……)
ゼットの意識は今に戻る。
(…ママ……)
ゼットは目の前の倒れた女性を見つめる。
そしてゼットは怪物に目を向けた。
(…ママを…よくも…!!!)
『ギャァアアアアオオオオオオオオ!!』
ドドドドドドドドド…
ゼットの怒りの叫びが島を揺らす。
バサバサバサバサ…
鳥達は島から逃げ出した。
地面に落ちたプテラノドンのビームスも、
逃げ惑っていた草食恐竜達も、
皆がその声に気づく。
(((((ゼットが戦おうとしている…!!)))))
ドス…ドス…ドス…
サッサッサッ…
トトットトットトッ…
シャー…
恐竜達は皆研究所へと向かう。
ウィザーはゼットの鳴き声に驚いてバリアを張った。
ゼットはバリアを張ったウィザーにかまわず噛み付く。
ガブジュッ!!
パリィン…
バリアは割れ、ウィザーに牙が深く刺さる。
「シュォオオオオ!!!」
ボォオオン!!
ウィザーは苦しみながらゼットを振り落として逃げようとする。
「ギャァォ!!」
プテラノドンのビームスが高速で突撃する。
ドォォオオン!!
そのままウィザーは草原へ落ちる。
トリケラトプスのランダが更に頭突きをかます。
ドン!!
ヒュゥウウ…
ウィザーはボロボロに飛ばされていく。
そこにブラキオサウルスのルーパは鞭のような首でウィザーをかっ飛ばす!
カキィィイイン!!
ウィザーはロケットのごとく空へと飛ばされていき…
ウィザーはそのまま光となった…
ヴェロキラプトルのマイクは近くから薬草をむしりとる。
バシャァアン!!
プレシオサウルスのリナがマイクごと薬草に水をかけた。
マイクは薬草をエミリアの患部に置く。
ステゴサウルスのエレナは巨大な木の葉っぱを口でむしりとってエミリアにおおわせる。
「コォ…」「キャォ…」「オォン…」
一仕事終わったゼット、ビームス、ランダ、ルーパもエミリアの元へ駆けつけ、
エミリアの回復を祈っていた。
~~~~~~~~~~~~~~
~~~~宇宙にて~~~~
星が周りに美しく散らばる宇宙。
惑星から出発したロケットは月へと向かっていた。
ロバートは宇宙船の窓から不思議な光景を見ていた。
「なんだ…あの円盤は…!?」
無数の円盤が自分の惑星へと向かっていた。
ドォォオン!!
「うぉ!!」
ロケットに何かが激突した。
ここは地下に作られた緊急用司令室。
「ロバートの宇宙船から衝撃と思われる音波を検知しました!」
「こちら司令塔、ロバート、応答せよ!ロバート!」
ビビッ…
「…こちらロバートだ。」
「こちら司令塔、状況はどうした。」
「こちらロバート…こちらの…操作ミスだ。ロケットに異常なし…」
ロバートの背後には―――
宇宙人が浮いていた。
脳がむき出しのガラス張りで、顔や体の輪郭が曖昧の、人型の宇宙人。
「…バダ…ギッ…エルマ…サウィ…」
「…?…君は…何を言っているんだ…?」
ピチュゥ…
宇宙人の脳に電撃が走った。
「言語の特定が完了した。…すまなかったな…エルマ星人よ…」
「!…」
宇宙人はロバートの惑星の言語で話始めた。
どうやら、自分達の星を「エルマ星」と呼んでいるらしい。
「我々はンラール星から来た者だ…大事にはしたくないために君を脅し、他のエルマ星人には内密にしてもらった。」
「…何が目的なのだ?」
「…我々は、1000年前に我々のご先祖の星、デケル星をA-10星に襲撃された。
我々は自分達の機械の文明を守るため、広い宇宙へと機械の種子を放したのだ。
我々は戦ったが敗れ、デケル星はA-10星に侵略された。予想通りデケル星の文明は滅ぼされ、A-10星の文明となったのだ。
法律により我々は渡星を禁じられ、エルマ星から機械たちを回収することが出来なくなってしまった。
それから867年が過ぎ、政権は変わり、渡星もゆるされるようになった。
デケル星人の子孫である我々は早速、100光年先のエルマ星へと旅立ち、今に至るというわけだ。」
「…貴重で壮大な宇宙の歴史をどうもありがとう。
しかし、君はまだ本題を話していない。君達の目的は何だ!?」
ロバートは問う。
「たいした目的ではない。
君は私の星から来たと思われるロボット達を知っているか?
我々はそのヒントが知りたいだけなのだ。」
ロバートは自らの記憶を探る。
「…すまない。残念だが心当たりはないな…」
「ありがとう。私達の質問に答えてくれただけありがたい。」
ピピピーピピ…
宇宙人から音が鳴った。
「フェタ…ビス…ギェロ…ムル…エルマ…」
「ロル…クェンタ…ルード…エルマ…」
何か宇宙人同士で交信しているらしい。
ピピーピピピ…
交信が終わったようだ。
「君達の惑星が…大変な事態に陥っているようだ。」
「何だって…!?」
宇宙にいたロバートは司令塔から何も知らされてはいなかった。
ロバートの家族からの願いで、司令塔からは何も伝えなかったのだ。
「一人のエルマ星人が自らの惑星を壊そうとしている。
…君はこれから、どうするつもりだ?家族に会いに行くか?」
ロバートは決断する。
「家族の願いは…『俺に宇宙を見て欲しい』ということだ。
家族だけではない。司令塔も、他の応援してくれる皆もそう思っている。
俺は月へと向かうよ。」
ンラール星人は無言になる。
「…エルマ星が、美しい理由がやっと分かったよ。
君のような心から美しい者達がたくさんいるからなのだな。」
ロバートは少し照れて頬をかく。
「我々もそれに応えなければならないな。
君の星を宇宙から護衛しよう。」
ロバートはンラール星人と泣いて握手をした。
「ありがとう…どうかこの惑星を…守ってくれ…」
「…これはエルマ星での感謝の印なのだな。…了解した。」
ロバートの惑星は変わらず青と緑で美しく輝いていた。