Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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50:計画始動

鮮やかな黄緑色の芝生と白い柵に囲まれた赤い一軒家。

 

女性は少ない皿を洗い終わってから、机でアルバムを見ていた。

 

「いつのまにかあなたは大きくなっていくのね…」

 

女性は笑う。

 

「ルーフス…あなたは今、どこまで大きくなっているのかな!」

 

 

ドォォオオオオン…!

 

「きゃぁああああ!!」

              「うわああああああ!!」

 

人々の悲鳴が外から聞こえる。

 

 

女性は慌てて外を見る。

 

 

 

 

遠くに謎の巨大な黒い影が見える。

 

黒い影の目は不気味に白く光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはセルバースタウン。

 

漁師が今日も陽気に鼻唄を歌いながら網を引く。

 

 

漁師に影がかかる。

 

 

 

「ん…?…飛行機か…」

 

 

 

三つ首の髑髏は漁師を凝視する。

 

 

 

漁師は驚く間もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォオオオオオオン!!

 

ボシャァアアアアン!!

 

 

漁師の船は半分になって沈んでいった。

 

 

「父さん!」

 

 

他の漁師は大きな水しぶきが見えた。

 

水しぶきの中から謎の黒いモンスターが現われた。

 

 

「逃げろぉお!!」

 

 

ワアアアアアア!!

 

船はそれぞれがモンスターから逃げていった。

 

ドォォオン!!

 

ボォオオオン!!

 

 

船は次々に沈められていく。

 

 

沈んだ船員達は浮き上がっては来なかった。

 

 

 

 

 

 

モンスターは青く光りはじめる。

 

モンスターの目は静かに閉じた。

 

 

セルバースタウンの砂浜には今日も人で溢れている。

 

 

 

砂浜の監視員は双眼鏡で恐ろしい光景を観てしまった。

 

 

モンスターがこちらに向かって近づいてくる…!!

 

 

 

「皆さん!謎のモンスターがこの砂浜に近づいています!

 

速やかに海から上がってください!!」

 

観客はモンスターを確認してから海から急いで上がる。

 

キャァアアアアアア!!

 

「お子さんの手を離さずに!速やかに海から上がってください!!」

 

 

ドォォオン!!

 

 

謎の爆発物が監視員の目の前で落ちて砂を上げる。

 

「まずい!我々も逃げるぞ!!」

 

監視員も機材を置いて砂浜を引き上げる。

 

 

砂浜に大きな口を開けて泣いている少年がいた。

 

 

 

ルーフス達は逃げる人ごみを掻き分けて砂浜に出る。

 

 

「なんだ…!この騒ぎは…!」

 

「グルルルルル!!」

 

 

ステーラが気づいて威嚇する。

 

 

「!!」

 

 

黒い三つ首の髑髏に、巨大な肋骨を持ったモンスターが近づいてくる。

 

 

 

 

ルーフスの後に、女性がたどり着いた。

 

「レック!」

 

「ママ!」

 

 

少年は喜んで走っていく。

 

 

「うわ!」

 

バシャァ!

 

しかし砂に引っかかって転んでしまった。

 

 

 

モンスターは少年の背後から髑髏を少年に向かって放った。

 

チェリーが咄嗟に判断して砂浜を駆ける。

 

 

「たあ!」

 

刀で髑髏を横に弾き飛ばした。

 

 

 

髑髏は砂浜に当たって爆発した。

 

 

 

 

ボォオオオン!!!

 

 

 

 

遠くで砂が上がる。

 

 

「早く逃げて!」

 

「うわああああん!!」

 

 

 

少年は泣きながら母親の元へ駆けていった。

 

 

 

 

ルーフスとジャックもチェリーの元へと行く。

 

 

「なんだかわかんねぇけど…ここで食い止めとかなきゃ街が壊されちまう!」

 

「そうだね!」

 

チェリーは真剣な表情のままうなずいた。

 

 

 

 

ボォオオオン!!!

 

モンスターが爆風を上げる。

 

 

ルーフスは風を腕で防ぐ。

 

 

 

 

モンスターは上に上がり、海の彼方へと消えていった。

 

 

 

 

 

ルーフス達は呆然とする。

 

 

 

「…なんだったんだ一体…」

 

「さあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セルバースシティのカフェにはいつも以上の人で溢れていた。

 

 

テレビでの情報を家に帰るより先に手に入れるためだ。

 

 

店長もカウンターを出て客の中に混じってテレビを見る。

 

 

 

テレビキャスターが話す。

 

『速報です。先ほど全国各地で謎の黒いモンスターによる襲撃が行われました。

この事件には死亡者や重傷者も出ており、全国の警察による調査が行われています。

…各地のテレビ局に中継が繋がっております。…』

 

「この街だけじゃなかったのか…」

屈強な漁師は言う。

 

「そしてあの黒い奴はどうやら何匹もいるようだぜ。」

魚屋は言った。

 

「一体あのモンスターは何者なんですの…」

教会のシスターは言った。

 

 

 

 

『…こちらサク…』

 

プツン…

 

 

 

テレビの表示が途絶える。

 

 

「おい、サントス!お前のカフェのテレビが壊れたぞ!」

 

カフェの店長は腕を組んで考えながら言い返す。

 

「いや、私のカフェのテレビは、先月取り替えたばかりだが?」

 

「いやでも現に表示が出来てねぇじゃんかよ!」

 

「それはすまないが、私が得意なのはコーヒーを入れることぐらいだから

どうしようもできないさ。」

 

 

カフェの客からは不満がもれる。

 

 

 

 

その不満を掻き消すかのようにいきなりテレビが点いた。

 

テレビに映っていたのは謎の白衣の男。

 

 

「なんだ…?」

         「電波ジャック?」

   「誰だ…?」

 

 

 

 

白衣の男は狐のような笑顔で話し出す。

 

「やあ諸君。私はMr.Fと言う者だ。以後お見知りおきを…」

 

「白衣の…男…」

 

 

ルーフスは怒りで震える。

 

ココアの村を襲撃したのはこいつなのだ。

 

 

白衣の男は続ける。

 

「君達はなんて滑稽で臆病な人たちなのだろう!まさに爆笑ものさ…

なぜならこんな救われない世界に、黙って住んでいられるのだから!」

 

白衣の男は両手を差し出して言った。

 

「そんな君達に、最高のプレゼントを贈ってあげよう。

我々の30分間のデモンストレーション…気に入ってくれたかな?

 

明日の正午から、我々はこの世界を破壊して0に戻す計画を開始する。

君達はただ待っていてくれればいい…

そうすれば、皆が幸せになれる世界が築けるはずさ…

どうだ、最高のプレゼントだろう?

 

…ただし、どうしても受け取りたくは無いという者は

バッダボーナ火山のふもとに集まればいい。

もし500万人以上に達せば我々の飛行機に乗せてやろう。

 

さあ、君達は箱舟に乗るか、死を選ぶか…

君達の判断…楽しみにしているよ。」

 

 

プツン…

 

 

『………!!失礼しました。先ほど何者かの電波ジャックにより…』

 

 

客の間に静寂が訪れる。

 

チェリーの手は机の下で震えていた。

 

 

客達の目はさまざまだった。

 

 

理不尽な行動に怒りを見せるもの…

 

滅亡の恐怖に怯えるもの…

 

 

 

 

怯えた客はカフェを後にし、最後の晩餐に出かけていった。

 

 

 

ドン!!

 

一番屈強そうな男が取り仕切る。

 

「ここに残っている奴の中にゃ…チキン野郎はいねぇだろうな…?」

 

「当たり前だ!」

             「そうだ!!」

 

多数の男女は賛同する。

 

「…俺達だけじゃ世界は守れねぇ…だがこの世界にゃ、

俺達のように共に戦ってくれる奴がいるはずだ!」

 

「「「「そうだ!!」」」」

 

「そうだ!!」「ワン!!」

 

ルーフスとジャック、ステーラも掛け声を合わす。

 

「そしてそいつらも同じように求めているのが…

 

 

俺達さ!」

 

 

 

「「「「「おおおおおおお!!」」」」」

 

勇者達は初対面もいるが、心は既に一つになっていた。

 

力強い掛け声を屈強な男に浴びせる。

 

「よし…じゃあまずは今日はもう寝るぞ!力がなきゃ戦はできねぇ!」

 

「待ちなさい。」

 

 

カフェの店長が言った。

 

「それを言うなら君…腹が減っては戦が出来ぬだろう。

今日は世界最後の大サービスだ。私の料理をいっぱい食べていきなさい。」

 

 

「「「「「わああああああああああああ!!!!」」」」

 

 

客達は大いに喜ぶ。

 

 

「ありがとよ!サントス!」

 

「俺にはコーヒー入れることぐらいしかできねぇって言ったろう?」

 

サントスは冷静に手を洗いながら言った。

 

チェリーがカフェの人々を見つめて、涙を拭いたように、ルーフスには見えた。

 

 

 

 

腹が一杯になり。

 

ルーフス達はホテルで予約をする。

 

 

ホテルはすでにほぼ満杯で、二人部屋が二部屋のみであった。

 

ルーフスとチェリー、ジャックとココアとステーラで、二部屋に分ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~ジャック、ココア、ステーラの部屋~~~~

 

部屋の明かりを消して、それぞれのベッドのランプでほのかに照らされている。

 

 

ココアが本を読んでいるジャックに話しかけた。

 

 

 

「…ねぇ、ジャックくん…」

 

「どうしたの?ココア。」

 

 

 

ココアは不安そうにジャックに尋ねる。

 

 

「…この戦いでさ、私がいても…足手まといになるだけだよね…

 

私はどうしたらいいのかな…?」

 

 

 

 

 

ジャックは答えた。

 

「…僕は君に、一緒にいて欲しいな。」

 

 

ココアはジャックを見る。

 

ジャックは震えながら答える。

 

「正直、僕はこの戦いから逃げ出したいんだ…

僕の中の臆病な気持ちが、そうさせているんだよ。

でも、」

 

 

 

 

 

ジャックは真剣な顔でココアと向き合って話した。

 

 

「君がいれば、僕は逃げずに戦えると思うんだ。」

 

 

ココアはジャックをポカンと見たままだ。

 

 

ジャックはココアの顔に慌てる。

 

 

「ご…ごめん、やっぱり無理かな?そうだよね、

君を戦場の中に置いておくなんて」

「そんなことないよ!」

 

 

ココアは笑顔でジャックの手を取った。

 

 

「私…ジャックくんを応援する!

ジャックくんの傍にいた方が、私も安心できるから!」

 

 

ジャックは赤くなる。

 

 

ジャックは顔の暑さを振り落としてから、

 

ココアの手を強く握り返した。

 

「必ず、君を守って見せるから!」

 

 

 

ココアは笑顔で言った。

 

「うん!よろしくね!」

 

「ワオン!ワオン!」

 

ステーラはココアを安心させるように、ココアの顔をなめる。

 

「あははは!ステーラも守ってくれるんだね!」

 

「ワン!ワン!」

 

「お!ステーラ、気合入ってるな!

僕も気合入れていかないと!」

 

「ワン!ワン!」

 

ステーラは元気な鳴き声を発する。

 

 

「じゃあ、今日はもう寝よう!」

 

「そうだね!しっかり眠っておかなくちゃ!」

 

「ワン!」

 

 

 

パチン…

 

 

 

部屋のランプが消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~ルーフス、チェリーの部屋~~~~

 

 

「うっし、じゃあもう電気消すぞ。」

 

「はい…」

 

パチン…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐす…

 

うぅ…

 

 

 

 

ルーフスの隣のベッドからすすり泣く声が聞こえる。

 

 

カチッ…

 

 

 

部屋の電気が点いた。

 

「…チェリー、泣いているのか?」

 

「怖い…」

 

 

 

チェリーは本音を吐き出した。

 

 

「私…これまでに出会った人達が…みんな消えてしまうのが…

とても…怖いよ…!!」

 

チェリーは泣き始める。

 

 

チェリーは思い出してしまった。

 

お父さんが暗闇に去っていく。

 

お母さんが霧に奪われていく。

 

プラムがボロボロに傷ついていく。

 

 

そしてチェリーはいろんな人々の笑顔を思い出していた。

 

 

 

 

「チェリー。」

 

ルーフスは話す。

 

 

「俺達が出会った仲間はよ、みーんなお前と同じような事を思ってるんだぞ。」

 

チェリーの涙は少し治まる。

 

「俺も、ジャックもチェリーも、これまでに会ったみんな、みーんな

『お前』が消えたら嫌だ、って思ってんだよ。

 

じゃあ、お前は、その仲間達に出来ることはなんだ?

 

『生き残る』ことさ。お前は今、泣いてる場合じゃないぞ。」

 

 

 

チェリーは涙をごしごしと拭いた。

 

 

「…そうですね、私は…生き残る…!

 

生き残ってみせる…!」

 

 

チェリーは言い聞かせるが、涙は次々に溢れてくる。

 

「チェリー…」

 

 

 

 

 

 

 

二人の間に沈黙が訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェリーは涙で濡れた顔でルーフスに話しかけた。

 

「ルーフスさん…」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ルーフスさんの…すぐ横に居たいです。」

 

ルーフスは目を見開く。

 

そしてたちまち赤くなった。

 

 

 

 

 

 

 

ルーフスはベッドの左に寄って顔を逸らして言った。

 

「…全く…大丈夫だよ。」

 

 

 

 

 

チェリーはルーフスの背中の後ろに入る。

 

 

 

 

 

 

 

ルーフスさんの背中…

 

 

温かい…

 

 

 

 

 

 

 

 

私は…自分で守ることしか考えてなかったけど…

 

みんなが、私を守ってくれていたんだな…

 

 

チェリーの涙は止まった。

 

 

「…夜這いはしませんから、安心してくださいね。」

 

ルーフスは一瞬止まった後に怒る。

 

「わ…わざわざ口に出すなよ!!」

 

「…ふふ♪」

 

チェリーは幸せそうに笑う。

 

 

 

すやすやと眠るルーフスとチェリーの顔は、

 

 

 

 

 

両方、温かい笑顔であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜。

 

 

 

 

 

 

 

馬の蹄が砂を裂く。

 

 

モンスターが徘徊する砂漠の中の小さな家に向かって、

 

様々な方向から時間差で人々が馬で集まってきた。

 

 

人々は白いマントで身を包み、体格も様々だ。

 

 

 

商人達は家の中に入り、下りのエレベーターに乗る。

 

 

 

 

 

そこは寂しい砂漠とは裏腹の、豪華な会議室。

 

 

 

 

商人達はマントを脱ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

その面々は…

 

 

 

 

 

 

 

 

グレート・スライヴ・シティ 市長/ヴァイオレット・カーライル

 

ジェラーナ国 大統領/エルジア・ストック

 

イクオラ・ジェラーナ国 大統領/イブン・ジャリル

 

アルヘンシキ国 大統領/イスコ・トゥーッカ・ケウルライネン

 

ディラベル王国 国王/コンラッド・ディラベル

 

ディラベル王国 女王/ローナ・ディラベル

 

バルダン・オートリウム・シティ 市長/バリー・オドゥクル

 

イリーガシティ 市長/エッツィオ・ベッツィーニ

 

サクラノ国 国王/桜ノ道常(ミチヅネ)

 

ザラメユキ国 国王/松原(マツハラ)郷玄(ゴウゲン)

 

ディスコ・マウンテン・シティ 市長/リリアーヌ・ボルデ

 

モンス・ベールシティ 市長/オスニエル・ロングハースト

 

 

 

以上の大都市を統べる者達だ。

 

これから、緊急の、秘密裏の国際会議が始まる所であった…

 


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