Minecraft ~ある冒険家の旅路~ 作:セッキー.Jr
小さな島にたどり着いたルーフス達。
シダやツタ、巨木に邪魔をされ、なかなか前に進まない。
「ジャングルは嫌だなー…」
「とっても進みにくいですよねー。」
「あ!ネコさんだ!」
「ココア!危ないよ!噛まれちゃうよ!」
「グルルルルル…ガオゥ!!」
「ニャァアア!?」
「こら!ステーラ!めっ!」
ジャックが制止する。
密林を更に奥に進むと、開けた場所に謎の研究所があった。
鉄で囲まれたものものしい研究所。
中には試験管のようなものが立てられている。
「…なんの研究所でしょうね…?」
「…誰もいないな…」
キャァォ!ギャァォ!
「ワン!ワン!ワン!ワン!!」
ステーラが空に向かって吠える。
バサ…バサ…バサ…
ココアが空を凝視する。
ココアがジャックの肩をつついた。
「ねえねえ、ジャックくん。」
「ん?」
「あのおっきな鳥、なんていうの?」
「ああ、あの見たことある外観、あれは…プテラノドンだね!
今じゃあもう絶滅しちゃって、どこに行っても化石でしか見られない恐竜だよ。」
「見えてるよ?」
「……」
ジャックが空を2度見した。
もう空には何にもいない。
「…あれれ…海底にいたから疲れちゃったのかな…」
「…?…何なんだろう…?」
ココアには疑問符がついたままだ。
「ちょっと池があったから水飲んでくるわ。」
ルーフスが池の方へ行った。
「ああ…そうか…バッグが海水でびちょびちょだわ…
後で買い換えないとなぁ…」
チェリーはびちょびちょになったクッキーを食べてまずそうに舌を出す。
ジャックとココア、ステーラも口にした。
「これはまずいね…」
「うう…」
「クゥン…」
みんなの顔が青くなる。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
ルーフスの最大の叫び声が島に響き渡る。
チェリー達は池へと向かう。
ルーフスが池のほとりに腰を落としていた。
「おい…これって…俺でもわかるぞ…これは…」
チェリー達が目を見開いて口をぽっかり開ける。
ステーラは威嚇をしているようだ。
「グルルルルル…」
「恐竜だろ!?」
池には首の長い橙色の竜がいた。
大きさはルーフスの背とほぼ同じぐらいといった所か。
「コァア!コァア!」
首長竜は鳴き声を出してルーフスに寄ってきた。
「ひぃぃいい!!こっちきたぁ!」
チェリーは慌てて海水にぬれたクッキーをホイと投げた。
首長竜が口でキャッチ!
首長竜はおいしそうに食べる。
チェリーはもう一つ投げる。
ホイッ。
パクッ。
…
ホイッ。
パクッ。
…
チェリーの顔が驚愕の表情から徐々に笑顔へと移行していく。
「かわいい~!!」
ホイッ!ホイッ!ホイッ!ホイッ!
パクッ!パクッ!パクッ!パクッ!
「チェリーさん、投げすぎ…」
「まあ…旅人さん?」
池のほとりに慌てて駆けてきた女性。
茶色のショートに白衣を着ている。
見た目から言えば30歳ほどの女性だ。
ジャックがいきなり目を輝かせて聞いた。
「なんで恐竜がいるんですか!?」
女性は少し戸惑って話し始める。
「えっと…まあ、私の研究室でゆっくりお話しましょうか。」
白く清潔な研究室の中で。
ステーラはエミリアから差し出された牛肉を食べている。
「私はエミリア・ブライトウェル。ここで恐竜蘇生の実験をしているのよ。」
「「「「恐竜蘇生!?」」」」「ワオン!?」
エミリア博士は機械の横に立って説明する。
「化石をこの分析器にかけて恐竜のDNAを取り出して、それを培養することで恐竜の卵に育てるの。
でもこの過程に至るまでに相当の運が必要なんだけどね。」
「今は何匹ほど育てられたのですか?」
「う~ん…2年前から始めて…6匹ぐらいかな?」
「2年間で6匹!?」
「育てるのも卵を作るのもとても大変なんですね!」
エミリア博士はうなずく。
「今までに何匹もの恐竜を殺してきてしまったの。
その子達もかわいそうだけど、私もとても悲しかったわ。
自分の子供を殺したのも同然ですから…」
「そうですよね…」
チェリーは共感する。
「でも私は、ここで一歩進まなきゃいけないと考えたの。
ここで止まれば、人間は進歩できない。私も含めてね。
私はこの恐竜蘇生の研究に人生をささげて、未来へつなげたいと感じているの。」
「すばらしいなぁ…」
ジャックが感心した。
「あの…」
ココアが言う。
「恐竜を見せてもらってもいいですか?」
エミリア博士は笑顔で言った。
「もちろん!…さあ、じゃあ恐竜の世界へ冒険するわよー!!」
エミリア博士は無邪気に腕を上に上げる。
「「「「おおーー!!」」」」「ワオーン!!」
ルーフス達も手を上げた。
「まずはさっきあなた達が見たこの子。プレシオサウルスよ。
名前はリナ。人懐っこい女の子よ。」
エミリア博士はリナの頭を撫でる。
「コァア♪コァア♪」
リナは嬉しそうだ。
「かわいい♪」
「この子は大きいから、この私も乗ることが出来るの。
…ココアちゃんとジャックくん、乗ってみる?」
「やったぁ!恐竜に乗れるのかぁ!」
「わーい!」
二人とも子供っぽくはしゃぐ。
「すごいなぁ!リナ!」
「いい子いい子♪」
「コァア!コァア!」
「次に…」
ピュイー…
エミリア博士は口笛を吹いて呼ぶ。
空から巨大な鳥が降り立った。
「やっぱさっきのそうだったんだ…!」
「この子はプテラノドンのビームスよ。人間で言うと高校生の男の子ね!
とっても遊ぶのが大好きなのよー!」
「おお!お前俺と同級生なのかー!」
「キャァォ!」
「この子も乗れるけど…ルーフスくん乗ってみる?」
「おお!乗ってみます!」
…ゅぅううびゅうううぅぅぅ…
プテラノドンはレーシングカーの速度よろしくハイスピードで空を飛ぶ。
「ばばばばばばばばばばばおまえはやすぎだってゃばばばばば」
ビームスから何かが落ちていくのがココア達に見えた。
「…ぁぁぁぁああああああああああああああ!!」
ボシャァァン…
遠くで高く水しぶきが上がった。
「「「あ」」」「ワオ」
目の前には首長の青い竜だ。
「えーと次はこの子!ブラキオサウルスのルーパちゃん!
こんなに大きいけど、こう見えておしとやかな女の子なのよ!」
ルーパは黙々と葉っぱを食べている。
「のんびりしてますね!」
「ここまで大きくなるとね。すばやく動けなくなっちゃうの。」
スタタタタ…
「こら!!」
エミリア博士がチェリーに向かってどなる。
「え!?す…すみません…」
「ああ、ごめんね、あなたに怒っているんじゃないの…
後ろの子にね!」
チェリーの後ろにはぬれたクッキーを持ち去ろうとしている小さい恐竜が。
反省を示しているのか寂しそうな顔をしている。
「かわいい~♪いいのよ~どんどん持ってっちゃって!」
チェリーが小さな恐竜にクッキーを与える。
小さな恐竜はガツガツとおいしそうに食べ始める。
「この子はヴェロキラプトルのマイク。いたずら好きな男の子よ。」
「次にステゴサウルスのエレナ。この子はもう大人で私と同じくらいのおばさんなのよ!」
「いやいや、エミリアさんはまだ若いっすよ!」
「やだ~!もう!ルーフスくんったら♪お世辞言わないの!」
「♪」
ステゴサウルスも同時に喜ぶ。
「次にトリケラトプスのランダよ。この子は中学生くらいの男の子ね!
…チェリーちゃん乗ってみる?」
「わああ!乗りたいです!」
チェリーがランダの上に乗る。
ランダがいきなり楽しそうに歩き出した。
ドスン♪ドスン♪
「きゃあ!」
「あら…フフフ。この子の性格がやっと分かったわ。
この子は女の子好きなのね!」
「ははははは!」
チェリーは楽しそうだ。
「…あと一人なんだけどね。」
「どうかしたのですか?」
「一人だけ柵の中で育てているの。」
「もしかして…肉食恐竜だからですか?」
ジャックが予想する。
「そう。…ティラノサウルスのゼットっていう子なんだけどね。」
柱で枠組みされた柵の中でゼットが眠っている。
「この子はね、愛情を見せても私に心を開いてくれないの。
撫でようとすれば手を噛まれるし、近づいても避けられてしまう。…」
「そうなのですか…」
エミリアは悲しい表情から少し笑ってみせる。
「でもね、最近、分かったことがあるのよ。
私がエサを与えても私の前では食べてくれないけど、
私がゼットの所にもう一回来てみると、そのエサはなくなっていたのよ。
少しだけ、愛情が伝わった証拠かな!」
ルーフス達は笑う。
「ルーフスくん達はもうここを出るの?」
「はい、研究の邪魔になってはいけないので…」
「なら、せめて研究所で夜を過ごしてから行きなさいな。」
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
ルーフス達は研究所へと入っていった。
研究所での会話は弾む。
「えぇ!?あなた達、アルファード博士に会ったの?
アルファード博士は私の尊敬する博士の一人なのよ!」
「おお!そうなのですか!」
「人々の批判にも負けずに、自分の研究を愛し続ける。
私はまだまだね。批判されるとすぐに落ち込んじゃって。」
「エミリア博士もがんばっているじゃないですか!」
「そうですよ!」
「ふふ!そう言ってくれると嬉しいわ!」
「ワン!」
翌日。
ルーフス達は舟を浜辺につける。
海にはリナ、そしてビームスも待ってくれた。
「コォゥ…」
リナは寂しそうだ。
「大丈夫だよ、私達、またきっと来るからね。」
ココアが優しく頭を撫でる。
「コァア!」
リナは笑顔になった。
「おう、お前も元気でいろよな!」
「今度は僕も乗せてよ!…安全速度で」
「キャァォ!!キャァォ!!」
ビームスも笑っている。
「エミリアさんも研究、頑張ってください!」「ワオン!」
「あなたたちも、風邪には気をつけるのよ?」
エミリアはステーラを撫でた。
「さようならー!!」「お元気でー!」
「ワン!ワン!」
「またいつでもおいで!」
「キャァォ!!ギャァォ!!」「コァア!コァア!」
舟は小さな島から、どんどん遠ざかっていった…