Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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46:アートの街(後編)

天気は晴天。

 

旅人達はアミディオと会話していた。

 

「昨日はありがとうございました!アミディオさん。」

 

「いや、こちらこそ。新しい才能の芽を発見できて、とっても嬉しいよ。

…君達はここから西へ行くのかい?」

 

「はい!そうです。」

 

「ここから西の地域はこことは全く違う景色になるよ。」

 

「え…というと?」

 

チェリーが質問する。

 

「ここは絵画が中心の文化が根付いている。

しかし隣の地域では、面白いことに音楽が文化として根付いているんだ。」

 

「へえ!そうなんですか!」

 

ジャックが楽しそうに返す。

 

「とっても賑やかな場所でね。

僕も静かな生活に疲れたとき、よく遊びに行っているよ。」

 

 

「あの…アミディオさん!」

 

「?」

 

アミディオはココアと向き合う。

 

「3年後…この街で会いましょう!」

 

アミディオは笑顔で返す。

 

「ああ!約束しよう!」

 

アミディオの大きな手とココアの小さな手が固く握られた。

 

 

 

「「「「さようならー!」」」」「ワン!ワン!」

 

アミディオさんは手を振る。

 

ココア達も元気に手を振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し歩いて。

 

 

 

街の雰囲気はアミディオさんの言ったとおりガラッと変わった。

 

町中に音楽が流れる。

 

ドラムが大きく響くポップ調の音楽。

 

楽しい雰囲気がその街には溢れていた。

 

「すごいなぁ…!」

 

「やあ旅人の皆さん、ようこそおいでくださいました。」

 

 

見ると背の小さい、落ち着いた黄色のハンチングキャップに白い口ひげを付けた

老人が黄色い旗を持って立っていた。

 

黄色い旗には「town ture」と黒文字で描かれている。

 

「私はここに来た旅人の方々をご案内する、フォルカー・デーべライナーといいます。

よろしくお願いします。」

 

「「「「よろしくお願いします!」」」」「ワオン!」

 

 

老人は笑って案内を始める。

 

「では、少し、歩いてみましょう。」

 

 

 

目的地までの間で。

 

「まずこれから向かう場所はセントラルシアターです。

今日は丁度良く、有名なロッカーグループ、レシーバーズの演奏会があります。」

 

「おお!早速音楽が聴けるのですね!」

 

「楽しみだな~!!」

 

 

 

 

老人はシアターに案内する。

 

受付のお姉さんが目を開いて嬉しそうに言う。

 

「あら!フォルカーさんじゃない!」

 

「やあ、サブリーナ。久しぶりだな!」

 

「本当!…旅人さんが来てくれたのね。お金は私が払っておくわ。

どうぞ中に入って!」

 

「ありがとう、後で共に酒でも飲もう。」

 

老人は旅人たちを引き連れてシアターへと入っていく。

 

お姉さんは笑顔で迎えた。

 

 

シアター内はほぼ満席で、運よく5人分の席があった。

 

「おお~!」

 

「ふっかふかだ~!!」

 

「気持ちいいですね…」

 

「何が始まるんだろうな!」

 

「ワン!ワン!」

 

 

ブーーー…

 

 

音が鳴ってシアターが暗くなる。

 

 

 

中心に立った司会者が照らされた。

 

ワーーーー…!!

 

パチパチパチパチ…!

 

 

観客席から一斉に拍手が起こる。

 

 

 

「レディース!エンド ジェントルメン!

 

今日はなんと、あのグループがこのシアターに来てくれたぞ!?

 

そのグループの名前は…レシーバーズです!」

 

4人の男性と女性のグループが左から姿を現す。

 

ウォォォォォォ!!!

 

     キャァアアアアアア!!

 

 

観客は最高潮だ。

 

ルーフス達はびっくりする。

 

「ハハハ…すごいなあ…」

 

「皆さん盛り上がってますね…」

 

「暑くなってきちゃった…」

 

「どんな音楽なんだろうなー?」

 

老人は楽しそうに見ている。

 

 

茶髪の天然パーマの男性が元気よく言う。

 

「皆!こんにちは!ボーカル兼ギターのシンです!

 

それじゃあいつものように、メンバー紹介に入りたいと思います!」

 

ヒューーーー!!!

 

 

「渋い低音を鳴らせ!ベース担当、ソウ!」

 

ツンツンの金髪の男性が軽快にベースを弾き鳴らす。

 

ワァァァア!!

 

「かわいく弦をはじけ!キーボード担当、アン!」

 

ギザギザにカールのかかった短髪の女性が跳ねるようにピアノを奏でた。

 

キャァアアアア!!

 

 

「最後に、力強くリズムをならせ!ドラム担当、ディズ!」

 

肥満体にゴーグラスを付けた男性がかっこよくドラムをならした。

 

ワァァァァアアア!!

 

 

「以上がメンバーだ!それじゃあ、早速第1曲目…『Run!!』」

 

 

 

 

ワァアアアアアアアアアアアア…!!!

 

 

 

 

 

観客の拍手と歓声が鳴り止む。

 

 

 

ドラムが力強くバスとスネアを叩き始める。

 

観客の拍手もリズムに加わる。

 

それに続いてベースとキーボードが重なった。

 

最後にギターが入る。

 

前奏が終わり、シンが歌い始める。

 

 

♪グレーに染まる世界に 独りでただ篭ってた

 

 3年前の本 もう何十回読んだだろう

 

 自分の周りには 誰もいないって決め付けた

 

 はみ出た荷物 背に持って強い光に満ちる世界へ

 

 光も 雲も 草も 空も 僕は何も知らなかったんだ

 

 ここに僕の人生《たび》を見つけた 行こう

 

 街を駆け抜けて 雲追い越して

 

 草を飛び越えて 海掻き分けて

 

 この星は なんて素晴らしく

 

 鮮やかだったんだろう

 

 灰色のこの心が 虹色に染まっていくよ

 

 駆けろこの道を どこまででも はるかな未来へと

 

 

 

「素敵な歌詞ですね…」

 

「あぁ…いいな…」

 

チェリーとルーフスが感嘆をもらす。

 

ジャック達は静かに聴いていた。

 

 

 

演奏が終わり、観客から声援と拍手が送られる。

 

パチパチパチパチ!!

 

    ワァァァアアアアアアア!!

 

「ありがとー!!」

             ヒューーー!!

 

       「サイコー!!」

 

レシーバーズも手を振って返した。

 

 

 

 

 

その後、4曲の演奏が終わり、ライブは幕を下ろした。

 

辺りは夕方。西の空が赤く染まる。

 

ルーフス達はシアターを出て、フォルカーの後をついて歩いている。

 

「楽しかったですねー!」

 

「ホント!行って良かったぜ!」

 

「喜んでいただけて良かったです。私も案内をした甲斐がありました。」

 

「フォルカーさん、次はどこへ行くのですか?」

 

「次は先ほどとうってかわって、落ち着いたカフェに行ってみましょう。

皆さん、お腹が減ったでしょう?」

 

 

グォオオオオ…

 

 

ココアのおなかが鳴る。

 

ココアは顔を赤らめてうなずいた。

 

 

 

 

 

カフェの店内には落ち着いたピアノの生演奏が流れている。

 

ルーフス達のテーブルにオムライスとコーヒー、飲み物が運ばれてきた。

 

 

「良い雰囲気ですねー…」

 

「オムライスもうめぇな!」

 

ルーフスはオムライスをがっつく。

 

 

「この街はとても良いところです。私は5年ほど前にここに来たのですが、

この街ほど良い街は他に無いですね。」

 

フォルカーさんは話す。

 

ココアが問う。

 

「あれ?この街出身じゃないのですか?」

 

フォルカーは答えた。

 

「私はロックベースシティという街で生まれたんだ。」

 

 

ジャックが何気なく聞く。

 

「ロックベースシティって世界有数の経済大国ですよね?

…なぜこんな遠い街に引っ越したのですか?」

 

 

 

 

フォルカーは真剣な顔で話し始める。

 

「私は幼い頃からバイオリンをしていてね…

バイオリンを弾く時が一番楽しくて、家に帰れば勉強そっちのけで

バイオリンを弾いていたりしていたよ。

 

そしてロックベースシティで有名なバイオリニストとなった。

もう40年前になるな…

 

しかし、その10年後、『音楽が騒がしい』という市民の怒号に怯えた政府が

即座に音楽禁止令を出した。ロックベースシティの憩いの地でもあったステージは

撤去され、楽器も政府によって奪われてしまった。

 

私は反対活動を行った。

 

だが世間の目は違ったのだ。皆が皆お金に目を奪われ、音楽はゴミのように扱われたのだ…

 

心が疲れた私は酒に溺れ、泣き疲れていたのだ…

 

そんな私に声をかけてくれた人物がいたのだ。」

 

 

『Hey!じいさん、この街に泣いているのかい?

 

…それなら、Meの街に来てみなよ。あなたにぴったりの場所さ。』

 

 

 

「男は変な話口調で私を誘ったのだ。確か名前は…ミラーボだったな。

男は地図を渡してくれた。あの男がいなければ、私は酒に殺されていたのだよ。

あの男は命の恩人なんだ。」

 

 

「そうだったのか…」

 

「音楽が無い生活なんて…どんなに悲しい生活なんでしょう。」

 

 

フォルカーさんは笑顔で言う。

 

 

「私は、この街に来て、本当に幸せさ。」

 

「フォルカーさんじゃないですか!」

 

 

程よく酔った男性が呼びかける。

 

「バイオリン、弾いてくださいよ!」

 

「私、伴奏やってもいいですか!」

 

「私も聞きたいです!」

 

「僕も!」「俺も!」

 

 

カフェの客がフォルカーさんを呼ぶ。

 

「この街は、なんて楽しい町なんだろう…!」

 

フォルカーさんはつぶやいた。

 

ルーフス達も笑顔で言う。

 

「「「「バイオリン、聞かせてください!」」」」

 

 

 

 

 

フォルカーさんのバイオリンが始まる。

 

その心地よい音色は、何を表しているのだろうか。

 

悲しみ?楽しみ?失望?希望?夢?

 

恐らく、その全てを包括しているのだ。

 

これまでの人生を、バイオリンのメロディーに乗せて

人々に見せているのだろう。

 

音楽というものは、一人一人が作ることができるのだから…

 

 

 

ホテルで夜を過ごして翌日。

 

ルーフス達はディスコ・マウンテンを後にしようとしていた。

 

「もう旅立ってしまうのかい?」

 

「はい。この街にもとどまって居たいけど、また次の場所も見たいですから。」

 

「…そうか。身体には気をつけてください。」

 

「…はい!フォルカーさんも健康にお過ごしください!」

 

 

ルーフス達はお辞儀をする。

 

「「「「素晴らしい演奏、ありがとうございました!」」」」「ワン!」

 

フォルカーさんは笑う。

 

「アンコールが聞きたいなら、また遊びに来なさい。」

 

 

「「さようならー!」」

「また来ます!!」「ありがとうございましたー!」

 

「ワオン!!」

 

 

ルーフス達は赤い台地を駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは地下の廃坑。

 

ノイズの入ったテレビから音声が流れる。

 

『ロックベースシティの復興も順調に進んでおり、

政府は引き続き犯人の捜索を進めております…』

 

「ねー…まーだー?…次の都市はどーこー?」

 

魔女が浮いた箒の上で寝転がって言う。

 

白衣の男が真顔で答える。

 

「まだだ…まだ街の機能が停止しないレベルなのだ…

もっと強大な力が必要なのだよ。…」

 

太った男が言う。

 

「金ナーらいくらデーモ出しマース!

 はやーくあのにくーき都市を破壊するのデース!」

 

「慌てるな。必ず破壊してやる。」

 

大きな男が言う。

 

「…私たちは何を進めれば良いのだ?」

 

 

白衣の男は歯をかみ締めてから言った。

 

「…ミュータントの薬の醸造に、ウィザースケルトンの頭蓋骨と

ソウルサンドを大量に集めるぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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