Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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8:守られし村(中編)

幼き子供は洞窟へと向かう。

 

奥へ、奥へ、奥へ・・・

 

そこには鉄の人形がずっしりと座っていた。

 

「これかぁ・・・」

 

そこに、水脈から垂れてきたのだろうか。

水滴がちょうど人形の目のあたりに落ちた。

 

 

 

幼き子供にはそれが一人で泣いていたように見えた。

 

 

 

 

 

「だいじょうぶだよ。なかないで。これ、あげるからさ。」

と言って、子供は一輪の花を見せた。

 

 

 

ビチュン・・・

 

 

 

金属音が聞こえたその途端、人形の目は赤く光った。

そして轟音が響き渡る。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ・・・

 

 

「!?な・・・なんだ!?」

 

 

 

 

 

人形は立ち上がった。

 

「わあ!」

子供はしりもちをついた。

手からこぼれた花を、人形は手に取った。

花をいろいろな方向から見て首をかしげている。

 

「分からないの?・・・それは「はな」っていうんだよ。

えーと・・・きれいで、かわいくて・・・」

子供は説明の言葉をかんがえて・・・

「・・・すきなひとにわたすものなんだよ!」

 

「・・・スキ・・・バ・・・ギト?」

「ちがうよ、す・き・な・ひ・と!」

 

「・・・スキ・・・ナ・・・ビゴ?」

「おしいんだよなぁ・・・す・き・な・ひ・と!」

 

「ガン・・・モ・・・ドキ?」

「なんかすごいはなれちゃった!なんでしってんだよ!」

 

「ぼく・・・きみのこと・・・すき・・・だから・・・ともだちに・・・なる・・・」

「トモダチ・・・」

人形は考えながら、ひらめき、

洞窟に生えていたキノコを渡した。

 

「あ、ありがとう!・・・それは「はな」じゃなくて「きのこ」っていうんだよ!」

「キ・・・ノ・・・ゴ?」

「アハハハハ!またまちがってる!」

洞窟から笑い声が響く。

 

 

 

「じゃあ、もうかえらなくちゃ!またあしたくるよ!」

「・・・アシタ・・・?」

「日がおちて、また、のぼったときだよ」

「ヒ・・・ツキ・・・ヒ・・・」

「そう!日がおちて、月がのぼっておちて、日がのぼるとき!」

「・・・アシタ!」

「うん!あした!」

子供はキノコをもって、洞窟から去って行った。

 

 

 

 

「うわぁあああああ!」

人形は振り向く。洞窟の手前のほうだ。

人形は走る。轟音を響かせながら・・・

 

「トモダチ・・・アブ・・・バィ!」

 

 

 

3匹の蜘蛛が子供を襲う。

「ギシュウ!」

「うわっ!」

子供の服が破ける。

「えーん!えーん!」

まだ10歳の子供は泣く。

「ギシュシュシュ!!」

「グシュ!」

「わぁあああん!」

 

 

 

ゴォォオオン!

 

 

 

「クシュゥゥ・・・」

「ギャシュゥゥ・・・」

「人形!」

 

「トモダチ・・・マモル!」

鉄のパンチが舞う。

 

 

ガン!

 

ゴッ!

 

 

「クシュゥゥゥゥ・・・」

子供は見入っていた。

 

このおにんぎょうさんはゆうきがあるんだ・・・!

ぼくもこんなゆうきもちたい!

ないているだけじゃだめなのに・・・なみだがとまらないよぉ・・・

 

「・・・ありがとう!」

子供は人形に飛びついた。

 

 

 

 

それから何ヶ月たっただろう。

周りの目も気にしないまま、

子供は毎日人形に会いに行き、

名前もつけた。

友を守る正義の怪物。「ゴーレム」と。

 

子供はゴーレムと共に言葉を学び、

積み木で遊び、花の輪の作り方を教えたりしていた。

 

そんな幸せの毎日。まだ幼き子供にはそれが永遠に続く・・・と思っていたのだ。

 

 

 

 

 

それから1年。

子供は少年と呼ぶほうがふさわしい年齢になった。

採掘者は毎日自分たちの仕事場の洞窟に

少年が来ることに非常に気になった。

「おい、あの小僧はまた洞窟に入っているのか。」

「なんだろうな、『こっちにきちゃだめ!』って言いやがる。」

「まさか金かダイヤでも見つけたから、

毎日少しづつ素手で掘っているんじゃないか?」

「俺が見てくるよ」

採掘者は少年のいる洞窟に入っていった。

 

 

 

「おい!ビッグニュースだ!」

「なんだ!?」「どうしたんだよ!?」

 

 

 

「鉄の人形が・・・動いてやがる!」

 

 

 

「「「な、なんだってー!?」」」

「まさかあの人形がうごくなんてなー!」

「びっくりだな!」

「そ・こ・で・だ。うまい話がある。

あの人形を隣町のおもちゃ屋に売ってくるんだ!」

「なるほど!動く人形!これは大富豪が買ってくれるだろう!」

「しめしめ・・・さっそく明日の夜・・・決行だ!」

 

 

 

「じゃ!またあした!」

「ジャ・・・ネ・・・!」

少年は洞窟から去っていったと同時に、

採掘者は洞窟の奥へと向かった。

 

人影を見たと同時に、ゴーレムは動かないふりをしていた。

 

「動かないふりをしなくても大丈夫だ・・・一緒に話そうじゃないか。」

「・・・・・・・・・」

「もうお前が動くことはばれているんだよ!」

「・・・・・・・・・オマエハ・・・ダレダ・・・」

 

「ただの通りすがりの採掘者・・・いや、

もうすぐ大富豪となる男、ととらえてもいい!」

 

「ドウイウ・・・コトダ・・・?」

 

「何・・・って・・・もうすぐお前は大富豪の家でこき使われるってことだよ・・・

俺がお前を売るんだからよ!ハハハハハハ!」

 

「・・・トモガ・・・イル・・・ワレト・・・オナジ・・・ヒトリ・・・

・・・ダカラ・・・イクモンカ・・・!」

 

「おいおい!あいつを友だと思ってんのか?」

採掘者は人形に指をむけながら罵った。

「人形が人間と友達になれるわけないじゃないか!

人形ってのは人間に「遊ばれる」ためにあるものさ!

馬鹿らしい、馬鹿らしい!ハハハハハハハハハ!」

 

ゴーレムは目を大きく見開いた。

 

「あいつは「一人」だからお前と友達になれるって

「ただ妄想」していただけなんだよ!それをお前は気がついてない!

脳みそなんてろくに入ってない馬鹿だからな!」

 

ゴーレムの表情は険しくなる。

「・・・タダノ・・・モウソウ・・・ジャ・・・ナイ!・・・アノコハ・・・

ワタシヲ・・・コンナスガタノワタシト・・・シタシク・・・シテクレタ!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

 

「え、え?」

 

ゴーレムは叫んだ。

「・・・オマエナンカ二キメテモライタクナンカナイ!」

「ひぃ!」

 

 

 

採掘者は涙目になりながら、

「そ、それがどうした!こここここ怖くなんかないぞお!

覚えてろ!おまえなんかスタンガンで一発だ!

へーん!メメーー!(ママーー!)」

と去っていった。

 

ゴーレムはオーバーヒートし、一夜が過ぎた。

 

 

 

 

「ワレ・・・ニンゲント・・・トモ二・・・イキラレル・・・?」

「ど、どうしたの?来た時にオーバーヒートしてたし・・・

扇風機あてつづけたら直ったけど・・・」

「キノウ・・・バカニサレタンダ・・・」

ゴーレムは昨日の出来事を話した。

 

 

 

 

ゴーレムの話は終わり、少年は沈黙したままであった。

「・・・クヤシカッタ・・・クヤシイ・・・」

ゴーレムは涙を流す。

数分かして、少年はあまりの悔しさに歯を食いしばった。

 

 

 

 

「・・・この村を一緒に出よう!君を売らせはしない!

今日の夕暮れ時がチャンスだ!」

少年の目には勇気が宿っていた。

 

 

 

 

 

夕暮れ時。

一人の少年と巨大な物体。

一人の少年は周囲を見渡し、巨大な物体に手招きした。

巨大な物体は後をつく。

そのまま、広い草原へと駆け出していった。

 

 

 

少年は木材を置き、小屋を作った。

松明もしっかりおいた。

 

「ちょっと狭いけどここが僕たちの新しい家だ!」

「・・・・・・・・・」

ゴーレムはうつむいたままだ。

(人形ってのは人間に「遊ばれる」ためにあるものさ!)

(お前と友達になれるって「ただ妄想」していただけなんだよ!)

(人形が人間と友達になれるわけないじゃないか!)

昨日の言葉がコンピュータに響く。

「・・・・・・・・・大丈夫だよ!」

少年は笑顔で言う。

 

 

 

 

「僕等は心が通じ合っているじゃないか!」

「・・・ウ・・・ウ・・・ウ・・・」

 

「・・・アリガトウ!」

ゴーレムは少年を抱きしめた。

「ちょ、おま、苦しい、ガホ!」

「・・・!・・・チョット?・・・ダイジョウブデスカー!?」

ゴーレムは泡のはいた少年にあせっていた。

 


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