Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

77 / 96
43:10億人を殺した科学者

ここはイリーガシティの服屋。

 

ルーフス達は飾ってある本を手にとって読んでいた。

 

チェリーがカーテンの中から出る。

 

「ワン!」「お、着替えたか?」

 

チェリーが楽しそうに笑って言う。

 

「ふふふ♪ジャックくん、驚いちゃうかもよ!」

 

「?」

 

ジャックは首を傾げる。

 

「じゃあ!開けますよ!」

 

チェリーがカーテンを開いた。

 

シャァ!

 

 

中には変身したココアが立っていた。

 

ベージュ色のショートパンツにピンク色のTシャツ。

 

髪はきれいにとかしてあり、水色のカチューシャをつけている。

 

ココアは恥ずかしそうに後ろに手を組み、顔を赤くしてうつむく。

 

 

 

ジャックの心臓が飛び出そうになった。

 

目はハート型になっている。

 

 

「おー!ココア似合ってんじゃん!」

 

ルーフスが目を少し大きく開く。

 

「ワン!ワン!」

 

ステーラも同調しているようだ。

 

「ちぇ…チェリーさん…恥ずかしいよぉ…」

 

「な~に言ってるの!女の子なんだからこれぐらいおめかししなきゃダメ!」

 

チェリーは楽しそうだ。

 

 

 

 

 

 

ルーフス達はレジでお金を払って店を後にする。

 

ジャックとココアが先頭で、その後ろにチェリー、ルーフス、ステーラが並ぶ。

 

チェリーの提案でこの配置にしたそうだ。

 

ジャックは珍しそうに道路の脇に立ち並ぶ店を見ているココアの横で

 

顔を赤くしながら逆さまに辞書を読んでいた。

 

 

ルーフスはふと気づいてジャックに声をかける。

 

「おいジャック、辞書逆さまだぞ?」

 

ジャックは慌てて辞書を持ち直す。

 

チェリーはくすっと笑う。

 

 

「どうしたんだ、ジャック?どっか具合でも悪いのか?」

 

ジャックは後ろ歩きで両手をじたばたさせて言う。

 

「そそそそそそそそんなことないよ!うん!正常すぎて逆にやばいよ!」

 

「????…そ、そうか…」

 

ルーフスは意味も分からず了解する。

 

チェリーは相変わらず笑っている。

 

 

 

ドン!!

 

 

 

後ろ歩きで進んでいたジャックに人が当たった。

 

ジャックは前を見る。

 

「ご…!ごめんなさい!!」

 

 

白いぼさぼさに白髭の男性が振り返った。

 

「いや、いいんだよ。」

 

ジャックは目を見開く。

 

 

 

「あなたは…!!

アルフォード・マグネス博士ですよね…!」

 

男性はうなずく。

 

「ああ、いかにも。私がアルフォードだ。」

 

「「「アルフォード博士?」」」

 

ルーフスとチェリーとココアは首を傾げる。

 

「酸の研究者で、新しい燃料を作り出した偉大な人なんだ。」

 

アルフォード博士は帽子を取って挨拶をする。

 

「ああ…会いたかったです。あなたにお聞きしたいことがあって…」

 

アルフォード博士は笑顔で言った。

 

「君は研究者の卵みたいだね。…では私の研究所に来なさい。」

 

「いいんですか!」

 

アルフォードはうなずく。

 

「ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

博士は歩きながら旅人たちと話す。

 

「ほう!君達は旅人なのか!…それはいいな。世界はとても広いだろう?」

 

「ええ、とっても。まだまだ自分も知らない場所があって…」

 

「よく学ばせていただいてます!」

 

「今のうちに、よく学んでおきなさい。例えどんなものであろうと、

将来、問題を解く鍵となることだろう。」

 

「「「「はい!」」」」

 

「ワオン!」

 

 

 

 

「…さあ、着いたよ。」

 

「……!!」「え…!!」「なんで…!」

 

「……」

 

ジャックだけが悲しくうつむいていた。

 

 

 

 

博士の研究所の壁には落書きがところどころにあったのだ。

 

『die!!』

          『You're enemy of this world!!』

『disaster!!!!』

どれも悪口。

 

 

書きなぐったかのような汚い字から垂れる液の様子は血文字のようにも見える。

 

 

「重いものを見せてしまってすまない。君達。

 

さあ、どうぞ中へ。」

 

 

ルーフス達は中へ入っていく。

 

 

 

 

 

専門書が汚く散らばった部屋の中にはきれいな色をした小瓶がいくつもあった。

 

修復した跡のある窓ガラスからヒビの入った光が机を照らしていた。

 

 

「ここがアルフォードさんの研究室かぁー…」

 

ジャックは興味深々に部屋の中を見ている。

 

 

チェリーがたずねる。

 

「この液体は何ですか?」

 

「腐食性液体といってね。動物にとっては危険で触ることのできない、

有害な液体なんだ。」

 

「有害なんですか!!…こんなにきれいなのに…」

 

 

 

アルフォードが研究室を探りながら話す。

 

「そのまま…ではね。これを更に私が独自に開発した、

このプラズマ製錬機で製錬するんだ。するとゲルと呼んでいる物質が出来る。

更にこれを製錬するとこんな固体になるんだ。」

 

アルフォードが一つの塊を見せる。

 

「こうなっちゃうのか~…」

 

ルーフス達がまじまじと見る。

 

 

「私はこの物質を発見してから、更に二つの特定の腐食性液体のゲルと

インゴットを混ぜることで、この惑星(ほし)を救うことの出来る燃料の開発に成功したんだ。

それがこれなんだよ。」

 

アルフォードが小さなひし形の物体を見せる。

 

「……これが…?」

 

「石炭よりも小さいですね…」

 

「そう思うだろう?だがこの燃料一つで、木炭を約5000個も焼くことができる。」

 

「ご…5000個!?」

 

「すごい…」

 

ココアも驚く。

 

 

「すごいな…!惑星を救うほどのものを作るなんて…」

 

 

アルフォードは少しうつむく。

 

「それと同時に…惑星を破壊するまでのものも作ってしまったのだが…」

 

ルーフス達は驚く。

 

ジャックは悲しい顔になった。

 

「それって…どういうことですか…?」

 

チェリーが尋ねる。

 

 

 

 

 

「先ほど、腐食性液体は人間にとって有害なもの…といっただろう。

人間とは皆強欲なものだ。各国の国々は他国を自分の領土とするために

人間を殺すための武器を作っていく。」

 

「戦争…」

 

ルーフスがつぶやいた。

 

アルフォードはうなずく。

 

 

「レールガン、レーザーライフル、プラズマライフル、クリオブラスター、酸手榴弾…

これらは全て、各国の軍部が私の研究を応用して作られたものだ。」

 

ルーフス達は静かに聴いている。

 

 

「私は浅はかだった…『腐食性物質』という危険なものを人間の

役に立つため『だけ』に活動してきたのだ。

 

…危険な因子を防ごうとする努力は何もしなかったのだ…!

私は世界中の人間10億人を殺してしまったのと同罪に当たるのだ!」

 

アルフォードは大声で言い切った。

 

 

「家の壁の悪口は…そういうことだったのですね…」

 

「………」

 

ルーフスは何も言うことが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルフォードさん…あなただからこそ聞きたいことがあったのです。」

 

沈黙を破ってジャックがアルフォードに問う。

 

 

「『作る』って…どんなことなんですか?」

 

 

アルフォードがジャックと向き合う。

 

 

「『子供を育てる』…ことと同じことだと思うね。

子供が悪人にそそのかされて悪さをした時、

責任はその悪人ではなく父、母にかかってくる。

だからこそ、責任を持って育てていかなければならないんだ。」

 

 

アルフォードは笑顔で言う。

 

「だが、同時に『愛すべきもの』でもあると思うね。

私はどんなに悪口をいわれたとしても、この燃料をゴミ箱に捨てることは無い。

自分の子供を捨てることは、悲しいことだからね。」

 

ジャックも笑顔で返した。

 

「お話できて嬉しかったです。ありがとうございました!」

 

「お礼を言いたいのは私の方だ。この私を尊敬してくれるなんてね。」

 

 

ルーフスとチェリー、ココアも温かい気持ちになった。

 

 

 

 

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

「ワオン!!」

 

「またいつでも遊びに来なさい!」

 

 

ルーフス達はアルフォードの研究所を後にする。

 

 

 

ジャックはとても嬉しそうだ。

 

バンダの辞書に付箋を追加する。

 

ココアが興味を持つ。

 

「ねえ…ジャックくん…これって、何が書いてあるの?」

 

ジャックは笑顔で教える。

 

「これはね…」

 

 

ココアも嬉しそうだ。

 

チェリーはそれをにやにやしながら見ている。

 

ルーフスは笑った。

 

「さあ、明日、また次の街へ出発だ!

今日はとことん食っていこうぜ!」

 

 

「「「おおー!!」」」

 

「ワン!ワン!」

 

 

ルーフス達は楽しそうに店へと入っていくのであった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。