Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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41:災いの少女

天気は曇り空。

 

今にも雨が降りそうだ。

 

ルーフス達は呆然とする。

 

「なんなんだこれは…」

 

目の前にはとても大きな穴。

 

そしてその周りの木々にも点々と「穴」が空いていた。

 

 

チェリー達は穴を避けて前に進む。

 

「しかも…この森、動物が全く見られませんよね…?」

 

「王様の魔法の影響があった場所なのかな…?」

 

「クゥン?」

 

ステーラは首を傾げる。

 

「…そうっぽいな…」

 

ルーフス達は壊された木々を横目に先へ進む。

 

 

 

 

 

「!!!」

 

「ええ!?」

 

「ひどい…!!」

 

 

ルーフス達は目の前の光景に驚く。

 

人が数人、倒れていた。

 

何かが複数回爆発したような跡。

 

荒れた地面には穴が空き、

 

民家があったのだろうか、家の残骸が所々に見える。

 

ルーフスは倒れている男性を揺らし、問いかけた。

 

「おい!何があったんだ!おい!!」

 

男性は今にも閉じそうな目でルーフスを見る。

 

「白衣…男…」

 

 

「白衣の男…?」

 

男性の目が閉じ、首がガクッと落ちる。

 

「…!!ジャック!脈は!」

 

ジャックは悲しそうに首を振る。

 

「…!!……」

 

他の村人も、もう既に死んでいたのだった…

 

 

 

 

 

「何があったんだ…?」

 

「あ!」

 

ジャックが人物を遠くに発見する。

 

「あっちに生きてる人がいるよ…!」

 

 

「聞いてみるか…」

 

ルーフス達は遠くの人物の元へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

ルーフス達は一人の少女が見えた。

 

髪はぼさぼさで黒いストレート、黒い肌に大きくはっきりした目、

 

骨がくっきりと見えた手足。

 

そして茶色く土のついたワンピースを着ていた。

 

少女はぼーっと突っ立っている。

 

 

 

ルーフスは聞く。

 

「あの…何かあった」

 

「近づかないで。」

 

 

少女はさえぎって言う。

 

「それはどういう…」

 

「殺されてもしらないよ?」

 

 

 

見た目とは裏腹の言動にルーフス達は驚いた。

 

「この惨状…私がやったんだ。

 

私がこの村を壊したんだー…

 

皆を殺したんだー…

 

私は悪魔…

 

私は災害…

 

…だから近づかないで…」

 

少女は微笑んだ。

 

 

ルーフス達は沈黙する。

 

ルーフス達と少女の間を冷たい風が吹いていった。

 

 

 

 

 

ルーフスは一歩踏み出す。

 

 

また一歩。また一歩。

 

 

少女は急におびえた顔になって叫ぶ。

 

「近づかないで!そう言ったでしょ!」

 

 

ルーフスが少女の目の前に顔を寄せて…

 

 

 

トン!

 

 

「痛い!」

 

少女にチョップを放つ。

 

ルーフスは目を少し閉じて言った。

 

「バーカ。ならお前、殺してみろよ。」

 

少女は額をさする。

 

 

「どうやってお前がこの村を壊滅させたんだ?

 

どうやってお前が皆を殺したんだ?

 

…少なくとも、お前はそんなことする奴には見えないし、

 

お前にはそんなこと出来そうにもない…

 

 

…俺達に話してみろよ。お前に何があったんだ?」

 

少女は涙をポロポロと流し始めた。

 

 

 

少女の涙が収まった所で。

 

チェリーが少女の目の前に差し出す。

 

「はい、クッキーをどうぞ。」

 

少女はぼーっと頬張る。

 

 

「で、何があったんだ?」

 

「……」

 

少女は話し始める。

 

 

 

 

おぎゃぁあああ!おぎゃぁああ!

 

「村長さん!赤ちゃんが生まれました!」

 

「おお!ガーナ達の子供か!男か、女か?」

 

「女の子です!」

 

「…またこの村に、新たな命が出来たのだな…

 

ありがたや、ありがたや…!」

 

村長は手をすりすりと合わせる。

 

村長は母親の元へと歩く。

 

「どうだい、ガーナ。名前は決まったかい?」

 

「はい…名前はココア。東の森のココアの木のように、

すくすくと伸びて欲しい…そう思い名づけました。」

 

「そうか。良い名前じゃないか。」

 

村長はココアを持ち上げた。

 

 

「神様、ありがとう…」

 

村長は太陽とココアを重ね合わせる。

 

 

 

 

その年からであった。

 

 

 

草原は荒地に侵食され、植物も全く育たなくなり

村民たちは食べ物に苦しんでいった。

 

さらに、池の水も黒く濁り、水も飲めなくなったのだ。

 

加えて、ココアが生まれてから3年後、村長が病気で亡くなり、

9年後には母親が飢餓で亡くなった…

 

父親は悲しい村を見てはおれず、夜に失踪。

 

村民達も次々に痩せ細り倒れていく。

 

村には笑顔がまるで無かったのだ…

 

 

 

 

5年経ったある日、4人での村の会議が始まる。

 

「この状況を…どうにか出来ないのか…!」

 

「何故こんなに災いが起こるのだ…!」

 

「…一つ、気がかりがある。…ココアだ。

ココアが生まれてから、母親が死に、村長が死に…

そして村は不作。…彼女が原因だ…」

 

「お前…そんなことを言うか!」

 

「そう考えるしかないじゃないか!」

 

「二人とも!落ち着いて!」

 

乱闘になりかかった男性二人を女性が制止する。

 

「だが…このまま指をなめて見守るだけでは何も生まれない…

賭けてみるしかない…!

 

…すまない…!ココア!!」

 

 

 

キィ…

 

 

 

ガコン…

 

 

石で閉じられる。

 

 

ココアは地下の遺跡に閉じ込められた。

 

ココアは石の扉を叩く。

 

「開けて!出してよ!!…開けて!!」

 

石の扉をはさんで、閉じ込めた村民は涙を流して階段を駆け上がっていった。

 

金色に松明で明るく照らされたまがまがしい部屋。

 

大きい像は厳しく少女を睨んでいるようで、

 

少女はなるべく目を合わせないように座っていた…

 

 

食事は上から覗く小さな穴から配給された。

 

 

 

…とは言っても、食事は小さな生魚が1匹程度。

 

 

 

日に日に汚い池に魚が棲まなくなり、食事量も徐々に減っていった。

 

 

 

トン!トン!トン!!

 

 

石の扉に石が当たる音が幾つも聞こえる。

 

子供達が文句を言いにやってくるのだ。

 

「この悪魔!どっかいけ!」

 

「お前は災害なんだよ!」

 

「この村から出て行け!!」

 

 

少女にとってはこれが一番の幸せだった。

 

人が傍にいることが、彼女にとっては嬉しかったのだ。

 

 

 

 

そしてついさっき。

 

閉じ込められてから数ヶ月後。

 

 

 

ドォォオン…!

 

「きゃぁああああ!!」

 

「逃げろ!速く逃げるんだ!」

 

「ぐああああ!!」

 

「ああああああああ!!」

 

 

ドォォオン!!ドォォオン!!

 

 

 

ガラガラ…

 

 

遺跡が大きく揺れる。

 

大きな像が横に倒れる。

 

 

ボォオオン!!

 

 

ガラガラガラ…

 

 

遺跡の天井が崩れた。

 

天井からは太陽の光が照らす。

 

 

 

 

少女は瓦礫を踏み越えて、外に出た。

 

 

 

 

皆はもういなかった。

 

 

 

 

村はもう無かったのだ…

 

 

 

 

少女は悲しみと自分への恐怖で立ち尽くすことしか出来なかった…

 

 

 

 

 

「私がいたからなんだ…私が不運だったから、

この村は壊滅したんだ…」

 

 

ルーフス達は真顔のまま聴いていた。

 

 

ルーフスが話す。

 

「お前よぉ…」

 

 

 

「運なんて信じているのか?」

 

「え…?」

 

 

「運が悪かったから作物が育たない?

運が悪かったから皆が死んだ?

運が悪かったから村が終わった?

 

違うな。

 

ただ、偶然の偶然に偶然が重なって、そんなことが起きただけだと思うぜ?

…それでも信じられないっていうならさ…」

 

 

ルーフスは握手の手を差し出す。

 

「俺らと一緒に来てみないか?

俺らと一緒にいて、運とかそんなものは無いって証明してやるよ!」

 

ルーフスは笑う。

 

チェリー達も笑ってルーフスの横につく。

 

「私と居て…いいの…?」

 

「俺達は大歓迎だぜ!」

 

「僕も大歓迎だよ!」

 

「私も!」

 

「ワオン!ワオン!」

 

ステーラは少女の横で飛び跳ねる。

 

 

 

 

ココアはもう一度涙を流す。

 

「…ありがとう。皆さん…!」

 

 

ココアはルーフスの手を握った。

 

「決まりだな!」

 

 

チェリーがまじまじと少女を見て提案する。

 

「まずは服が必要ですね!」

 

ジャックが地図で確認する。

 

「じゃあ、ここから西にある都市へ行こう!」

 

ルーフスが問う。

 

「夜になるまでに着きそうか?」

 

「うん!1時間歩けば着くね!」

 

「よっしゃ!じゃあ行こう!

チェリーはココアしょっていってくれねぇか?」

 

「分かりました!」

 

チェリーがココアをおぶった。

 

 

「じゃ!元気にいつもの掛け声だ!

 

…行くぞ!」

 

「「「おー!!」」」

 

「ワオン!」

 

 

5人に増えたルーフス達の旅路は、更に続く…

 


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