Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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40:魔法世界の冒険(後編)

~~~~ジャックの冒険~~~~

 

「ガウガウ!!」

 

「うわあ!さっきの狼!!」

 

ジャックに向かって何かを伝えようとしている。

 

時々ジャックの服の裾を引っ張った。

 

 

「…ん?何か言おうとしてるぶーん?」

 

ナーガが聞き取る。

 

「ナーガ、狼の言葉が分かるのか!?」

 

「僕は蛇の神様なんだぶん。動物の言葉はある程度わかるぶーん!

…少年から君に伝言だ、『池の前で全員集合だ』…って言ってるぶん。」

 

「で、でもなんであの狼が…!?

…まあありがとう。君はあの池の場所分かる?」

 

「ガウガウ!!ガウガー!!」

 

「ふむふむ…『暗い森は俺達の庭のようなもんだ』…って言ってるぶん!」

 

「分かった…ありがとう、ナーガ!ここでお別れだ!」

 

「こっちこそ、久しぶりに人と話せて楽しかったぶーん!

さようならぶーん!!」

 

 

ジャックは黒い狼と共に去っていった…

 

 

 

 

~~~~チェリーの冒険~~~~

 

 

チェリーが目を覚ます。

 

そしてヒドラを見てびっくりした。

 

チェリーは立ち上がって構える。

 

「あ…あなた達!」

 

左の頭から順に言う。

 

「お、起きたか!」

 

「そう構えるな。俺達はもうお前を食べようとはしねぇよ。」

 

「お前を食って、腹の中で暴れられたらひとたまりもねぇからなー…」

 

 

「へ…?」

 

 

ギュルルルルル…

 

 

チェリーの小さい腹が大きくなる。

 

チェリーは顔を赤らめて腰を落とした。

 

 

「ほらよ、ミーフストロガノフだ。」

 

ちぇりーの前に大きな頭が近づく。

 

頭の上にはキノコシチューのようなものが。

 

 

チェリーはそれを受け取って食べる。

 

「おいしい…」

 

 

 

 

 

チェリーはこの世界についてヒドラから聞いた。

 

「そんな悲しい事が…」

 

左の頭が言う。

 

「その城の王は俺達を毎日討伐にきていたんだ。」

 

右の頭があくびをして言う。

 

「あいつが来なくなって、俺達は暇になっちまったよ。」

 

中央の頭が城を仰ぎ見て言う。

 

「あの王は今どうしているのだろうか…」

 

 

 

「ガルルルルルルルル…」

 

見るとステーラがいた。

 

「ステーラ!違うの!この竜はもう仲間よ!」

 

ステーラは威嚇をやめてチェリーに近づいた。

 

チェリーはステーラの頭を撫でる。

 

「よかった、ステーラが見つかって…」

 

ステーラは腹の血に気づいてチェリーの腹をなめる。

 

「あはははは!くすぐったいよ…でもありがとう、ステーラ。」

 

「クゥン…!」

 

ステーラはいきなり急いだようにチェリーのスカートを引っ張る。

 

「…ついてこい、って言ってるの?」

 

「ワオン!」

 

そうだと言わんばかりに吠えた。

 

「ヒドラさん、私もう行かなきゃ。」

 

「そうか、仕方が無い。」

 

中央の頭はうなずく。

 

「また遊びに来いよ!」

 

左の頭が笑って言う。

 

「今度は食ってやるからな~」

 

右の頭が冗談を言って笑った。

 

 

「はい!」

 

チェリーも笑顔で返す。

 

チェリーはステーラと共にヒドラの巣から去っていった…

 

 

 

 

 

~~~~ルーフスの冒険~~~~

 

 

ルーフスは回復してから再戦、

 

回復してから再戦を何度も繰り返していた。

 

だが、一向に相手の3つの盾は割れない。

 

 

 

…!魔法弾だ…!

 

ルーフスは剣でとっさに跳ね返した。

 

 

すると、魔法弾は盾に向かっていく。

 

 

パリィン…

 

 

なんと、いとも簡単に割れてしまったのだ。

 

 

「…もしかして…!あの盾、魔法は防げないのか…!

…そうと分かったら!始めようぜ!ピンポン!」

 

ルーフスは幻影達の攻撃をかわしながら、

 

リズム良く弾を跳ね返して盾を次々に割っていく。

 

 

 

最後の盾が割れた!!

 

 

 

「ウィ~ヒック!まだまだ~!!」

 

骸骨はふらふらしながらゾンビを2体召還した。

 

ゾンビなら毎晩戦っている。

 

ルーフスはゾンビを倒して盾のない骸骨を斬った。

 

 

骸骨がいきなり怒り冗語になって言った。

 

「いいられんにしろぉ!!俺は死にてぇんらよぉ…!

平凡せらいの住人の分際で…!ほっろいてくれろぉ!!」

 

「ほっとけるかよ。」

 

骸骨がふらふらと剣を力強く振る。

 

 

 

ガキィン…!!

 

 

 

ルーフスの剣と重なって大きい音を出した。

 

そのまま骸骨はゆったりと振りかぶって斬るを繰り返す。

 

ルーフスは後ろに下がりながらその剣をさばく。

 

「俺はこの世界の住人に頼まれたんだ。

王様が生きているかどうかを確かめてくれってな!

 

…住人を心配させておいて酒を飲んでいる奴なんてな!」

 

ルーフスが骸骨の剣を振り払った。

 

 

骸骨の剣はくるくると回って後ろの壁に刺さる。

 

 

 

ルーフスは自分の剣を後ろに投げて、王に平手打ちをする。

 

 

バシン!!

 

 

骸骨は酒の酔いがやっと醒めたようだ。

 

 

 

「今、この世界に住んでいる奴が何を求めているか知っているか…?」

 

骸骨はルーフスの目を見た。

 

 

「王様だよ!」

 

 

 

 

 

 

 

骸骨はふらふらと地面に座って震える。

 

 

「…こんな私を…か…」

 

「そうだ。」

 

 

骸骨は激昂する。

 

「…この国を滅ぼした…この私をか!!」

 

ルーフスは驚く。

 

「!…お前が…!」

 

 

骸骨は話し始めた。

 

 

 

 

 

 

大砲の弾が上空から降り注ぐ。

 

 

ピュゥゥン…

 

 

ボォォオオン!!

 

 

「キャアアアアア!!」

 

民家が次々に燃えていく。

 

住民達は走り回る。

 

 

親とはぐれた少女が泣き。

 

逃げ遅れた男性は燃えた瓦礫にうずもれて見えなくなった。

 

 

凛々しい口ひげを持った王様はベランダからその様子を見ていた。

 

 

「王様!大変です!我が国の住人達が…!次々と武器により殺されていきます!!」

 

「…もはやあれしかない…!!」

 

執事が引き止める。

 

「お止めくださいませ!その方法を使えばあなたがどうなるか…!」

 

「このままこの国をこの世界に置いたままでいいというのか!?

この国の住人がこれ以上殺されてもいいというのか!?」

 

「……」

 

執事は黙る。

 

「…分かりました…おいぼれの爺は何も言うことはありません!ただ…がんばってくだされ!」

 

王様は笑って答えた。

 

「…ああ…ありがとう…」

 

 

王様は呪文を唱え始める。

 

 

すると国全体に光の線が描かれ始めた。

 

 

その線はやがて曲がり…

 

 

 

さらに曲がって…

 

 

 

ついに六芒星が出来た…!!

 

 

王様は光に包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい…!なんだあれは!」

 

他国の兵士達は戦車からその光景を見ていた。

 

国が地面ごと浮き始めているではないか!

 

 

少し地面が崩れて落ちていく。

 

 

そして…

 

 

国はサーッと消えていった。

 

 

総帥も驚くことしか出来なかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

別世界へ移された後の3ヶ月後…

 

街の復興も終わり、元の平和な生活を取り戻していた。

 

畑で作物を作り。

 

魔法で大量の土を鉄に変えたり…

 

子供達は魔法学校で魔法を楽しく学んでいた。

 

 

そんな中。

 

 

立派な城の自室の中で

 

 

王様は寝こんでいたままだった…

 

 

メイドが食事を運んできた。

 

「王様。ここに食事を置いて…」

 

「黙れ…殺すぞ…」

 

メイドが不安気に立ち去る。

 

 

王様の使った魔法はあまりに強大で―――

 

 

あまりに副作用が大きかったのだ。

 

胸が溶けるように熱い。

 

頭が破裂するように痛い。

 

 

王様はその苦しみから自分に対する言葉さえも全て拒絶するしかなかったのだ。

 

王様は自分の情けなさに涙をながす。

 

 

 

 

 

 

「王様ー!」

 

王様の目が見開く。

 

駄目だ…

 

「大丈夫ですかー!」

 

止めろ…

 

王様は布団で耳をふさぐ。

 

住人達が応援の言葉を次々に語りかける。

 

お前らを殺してしまう…!

 

 

 

止めろ…!!

 

 

 

 

 

 

「うああああああああああああああ!!!」

 

ついに王様は怒りと悲しみに叫び始めた。

 

魔法がはたらいてしまったのだ。

 

 

 

王様は四つんばいでベランダへ行く。

 

外の景色はあまりに酷いものだった。

 

人が根に蝕まれ…木に変わっていく。

 

子供はぐんぐんと縮み…草花に変わっていく。

 

私の国民達が…次々に植物になっていく…

 

 

王様は悲しみで自分を殴り始める。

 

 

 

 

しかし死ねなかった。

 

 

 

 

それから、どんな自殺をはかっても死ねないのだ。

 

 

首を絞め、毒を飲み、剣で腹を斬り…

 

 

 

 

魔法の暴走は、自らを不死身にしてしまったのだ…

 

 

 

 

気がつけば肉は腐り、骨だけになっていた…

 

 

 

 

「私が国民を植物に変えた張本人なんだ…

もうこの世界は終焉を迎える。

この世界の太陽を見たか?いつも沈んだままだ!

この世界は、太陽と同じように沈んでいくんだよ…!」

 

 

 

 

 

 

 

「…沈んだまま…いいんじゃねぇのか?」

 

ルーフスは言った。

 

 

()()みろよ。」

 

骸骨はベランダに出て太陽を見る。

 

 

 

 

数分経ってから骸骨の目から涙があふれ出る。

 

 

 

 

 

 

「…本当だ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽はさっきと全く変わらない場所で骸骨を蜜柑色に染めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…この世界の太陽は…永久に沈まない…!!」

 

 

ルーフスは指を指して言う。

 

「…!…ほら、国民達もちゃんといるじゃねぇか!」

 

 

ドドドドドドドド!!

 

 

大きな大蛇がくねくねと城の下に来る。

 

「王様!」

 

「ナーガ…!」

 

ナーガは大きな涙を流す。

 

「良かったぶーん…王様が…生きてたぶん!」

 

 

ドスン、ドスン、ドスン…

 

三つ首の竜が草を踏み潰して城の下に来た。

 

「おめぇよお!あんなに俺達にけんか売っといてどこに行ってやがった!」

 

「まだ我々と決着がついていないだろう?」

 

「ふわぁ~…見つかるのがおせぇーんだよ。」

 

「…ヒドラ…!」

 

 

「あれれ?王様だ!」

 

「いひひひひ!やった!生きてたんだ!」

 

「おりょりょ。心配してたんだよ!」

 

「お前ら…!」

 

 

「ワオーーーーーーン!」

   「ワオーーーーーーン!」

      「ワオーーーーーーン!」

         「ワオーーーーーーン!」

            「ワオーーーーーーン!」

 

黒い狼達が王様を見て遠吠えをする。

 

更に木の間から猪に、鹿に羊が。

 

草の間から小鳥やリス、ウサギ、カラスが。

 

 

 

城壁には蛍やセミが止まりに来た。

 

 

「…みな…」

 

 

 

動物達も一斉に鳴き始める。

 

木々が自らざわめいた。

 

 

 

王は涙を更に流す。

 

 

 

 

「ただいま…!」

 

 

 

 

 

 

こうして、王様の心の氷は溶けたのであった…

 

ルーフスは狼に連れられて池へと行く。

 

 

 

「おーい!」「ルーフスさーん!」「ワオン!」

 

「おお!お前達!」

 

ルーフスは手を振る。

 

ルーフスがチェリーの体の包帯を見ていった。

 

 

「お…おい!大丈夫か!お前…!」

 

「大丈夫です。たくさん寝て、食べて、ジャックくんに手当てもしてもらいましたし…」

 

チェリーがただ笑って言った。

 

包帯を持ったジャックがなにやら顔を真っ赤にしてチェリーから目を逸らす。

 

 

「それならいいんだけどな…」

 

 

ステーラと黒い狼は別れの遠吠えをする。

 

「ありがとな!お前ら!」

 

「ガオ!ガオ!!」

 

 

木々が風に揺らされる。

 

まるで風がルーフス達を見送っているようだ。

 

 

「さようなら。ディブレーク王国。」

 

ルーフス達は池に息を吸って飛び込んだ。

 

 

ジャボーン!!

 

 

 

 

 

 

 

池を抜けて…

 

 

バッシャーン!!

 

 

元の場所だ。

 

 

「…戻ったんだな。」

 

「不思議な世界でしたね。」

 

「ふぅ…」

 

「ワオン!」

 

 

ルーフスは指揮をとる。

 

「さあ!次の世界!行くぞ!」

 

「「おー!!」」「ワオン!」

 

 

ルーフス達は暗い森の中を駆け抜けていった。

 

 


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