Minecraft ~ある冒険家の旅路~ 作:セッキー.Jr
~~~~チェリーの冒険~~~~
黒いだけの世界。
チェリーはそこに立っていた。
ここはどこだろう。
独りぼっち。
寂しい。
悲しい。
チェリーは涙目になる。
…!!
独りじゃないようだ。
私より一回り小さい女の子。
茶色でさらさらの長い髪に水色ワンピース。
その可愛い瞳でにっこりと私に笑いかけた。
「あなたは…?」
少女が口を開く。
「プラムだよ。…久しぶり、お姉ちゃん。」
たまらず目を見開いた。
私の頬に涙が伝ったのがやっと分かった。
脚は勝手に走り出す。
「ダメ!」
プラムが制止する。
チェリーの脚は止まった。
手が届きそうなのに…
こんなに近いのに。
抱きしめられないなんて。
「うう…ああああああああああ!!」
チェリーは大声を出して泣く。
泣き顔をあけっぴろげにして。
今までで一番大きな声で。
「コホ…ケホ…」
喉が追いつけなくて、咳き込む。
「わああああああああ…」
プラムは優しく笑って弁解する。
「泣かないで。お姉ちゃん。」
チェリーの泣き声が静かになっていく。
次第に息を吸う音だけになった。
チェリーは下を向いて涙を手で抑える。
「私はお姉ちゃんが嫌いなわけじゃないよ。
…でも…ここでお姉ちゃんが私を抱きしめちゃったら、
今の仲間達を大切に想えなくなっちゃう…私だけを想っちゃう…!
だから私は止めたの。」
頭の中にルーフスとジャック、ステーラの姿が浮かぶ。
プラムは続けた。
「今、お姉ちゃんにはお姉ちゃんを大切に想う人がいっぱいいるんだよ。
だから…負けないで。お母さんもお父さんも、私も、お姉ちゃんを守っているから…」
プラムの目が次第に潤ってくる。
「でも…私…やっぱり…プラムちゃんと…一緒に…!」
チェリーの心の底に隠れていた本音が口から出る。
次の瞬間。
冷たい涙が伝っていた頬に温かい感触が来た。
プラムがチェリーを抱きしめている。
プラムは大粒の涙を流す。
「…こうすれば、…問題無いかな…!お姉ちゃん…!!」
チェリーはまた涙を流し始める。
しかしさっきの涙とは違う、温かい涙だ。
「私達…今、一緒にいるんだよ…!」
チェリーはやすらかな笑顔になる。
「ありがとう…プラムちゃん…」
プラムの姿が消えていく。
でももう追いかけようとはしなかった。
願いはもう果たされたから…
生きなくちゃ。
私…まだ死ぬのは早い…!
(貴様の炎…しかと受け取った…!)
黒い世界を紫の炎が燃やしていった。
茶色く焦げて、炎が噴出す地獄のような場所。
寝ている娘の背後には3つ首の竜。
「じゃ、俺は脚から!」「俺は胴か。」「俺は胸から上だなー…」
中央の頭が近づく。
思い切って口を開く。
ガキン…!
!!
バリバリバリ…
中央の頭の歯がどんどん落ちていく。
「あがーーーーーーー!!!」
中央の頭はショックで倒れる。
「2番目!!」
「この人間…まだ生きていたのか…!?」
3つ首竜の前には、真剣な顔をしたチェリーが立っていた。
ぼろぼろの服に血がしみこんでいる。
深い傷と対して、なんと心強い顔であろうか。
手に持った日本刀がギラリと光る。
彼女の目には、紫の炎が瞬いていた。
「その傷で~!!」「動けるわけゃないっしょ!!」
ボォォオオオオ!!
左と右の頭は同時に火炎放射を放つ。
娘の姿は炎で見えなくなった…
1番目は3番目を見て話し始める。
「今度こそやったな3番目!」
「ふわ~ぁ…早くディナーに」
ボォオオ!!
娘が炎の中を超えて飛んできた。
日本刀を両手で左に構える。
右の頭は目を大きく丸くした。
瞳はチェリーを大きく映していた。
ズサ…!!
紫の斬撃が一閃する。
右の頭の首を中ほどまで斬った。
「さ…3番目ー!!」
1番目は娘を震えながら見た。
娘の目は真っ直ぐに左の頭の目を見る。
娘の近づく足音が静かに響く。
1番目はたまらず目を逸らした。
歯が恐怖でがたがたと震えだす。
「ひ…ひぃ!お、お許しください!!ごめんなさい!」
ドサッ…!
途端に、娘が倒れる。
1番目は目を向ける。
「……お…おーい……生きているかー…」
スー…スー…
どうやら疲れて眠っているようらしい。
「…へ、へへ、やっと飯が食える!…へへ…へ…」
左の頭から笑みが消える。
今まで…我らヒドラは人間に倒されることは絶対に無かった…
しかし…1頭どころか2頭も倒してみせるとはな…
…敵ながら…感服だ…
ヒドラはチェリーを優しく口で巣まで運び、
枯れた草を布団がわりにしてかぶせる。
「なんで俺がこんなかあちゃんみたいなことを…」
1番目のヒドラは嫌な目をしてつぶやいた。
そして静かに3番目を治療するのだった…
~~~~ルーフスの冒険~~~~
「ここだな。」
前には高く聳え立った城。
確かに扉は丸石で閉じられていた。
ルーフスはつるはしで丸石を壊して進む。
「マ…マジかよ…」
ルーフスは上を見上げた。
長い長い螺旋階段。
螺旋階段の途中では枝分かれがいくつもある。
ルーフスは住み着いたゾンビやスケルトンを跳ね除けて進む。
螺旋階段を上って上って。
なにやら床が見えてきた。
「…もうすぐ最上階か…?」
ヒック…ウエー…
なにやら声が聞こえる。
…と同時に、異臭もした。
酒の匂いだ。
ルーフスは鼻を押さえる。
「う…すげえ匂い…」
ルーフスは最上階の床を踏んだ。
そこには王冠を被った骸骨がワインを飲んでいる。
顔は驚くほど真っ赤だ。
床には大量のワイングラス。
骸骨は突然大きな声を上げた。
「この世界は終わっれいるんたよぉ…!」
「な…なんだ…」
「もう誰も救えれぇんだよぉ…!」
「おい…おっさん落ち着けって…」
いきなり泣き出す。
「これが落ちついれいられっらよぉ!
誰もいねぇんだ…誰も…」
そしていきなり怒り出した。
「れていけぇ!おらえはよぉ…!」
ビュゥ!!
「あぶね…!!」
ルーフスは避ける。
ルーフスに向かって魔法弾を撃ってきた。
魔法弾は壁に刺さって消えた。
「…眠らせて冷まさせるしかないようだ…!」
ルーフスは釘を撃った。
骸骨は消える。
そしてルーフスの後ろからファイアボールを撃ってきた。
ボォン!!!
ルーフスに当たる。
「ツッ!!」
ドォォオオン!!
ルーフスは壁まで吹き飛ばされる。
ルーフスは起き上がる。
「くっそ…」
目の前には王冠を被った骸骨が3人もいた。
「な…なんだと…」
「「「れていけぇ!」」」
3人から魔法弾が3発ルーフスに向けられる。
ルーフスは右へ走る。
魔法弾は壁に刺さって消滅した。
骸骨はまたテレポートする。
ルーフスはテレポートした場所を見つけた。
「くらえ!!」
剣で振りかぶる。
しかし剣で振り払ったのはただの煙であった。
幻影だったのだ。
追い討ちに後ろから魔法弾を撃たれた。
ドォン…!
ルーフスに直撃。
「ぐっ…!!」
ルーフスは螺旋階段へと落ちる。
ボォォオン!!
ルーフスは息を上がらせながら起き上がった。
「くっそぉ…まずはどれが幻影か分かんねぇとな…」
ルーフスはふらふらと見回している3体を良く見る。
あれ…?
一人だけ守りが硬い…
確かに一人だけ、3つの盾を魔法で漂わせている。
…幻影じゃない奴は分かった…あとは…
あの盾をぶっ壊して、攻撃するだけだ!
ビュゥ…!
ファイアボールが飛んでくる。
「うわ…!」
ルーフスは慌てて身を翻す。
ボォォオン!!
壁に当たって爆発する。
骸骨はテレポートした。
…どこだ…
ビュッ
ビュッ
ビュッ…
そこだ!!
中央の骸骨に剣で連撃を行う。
カキン!カキィン!ガキィン!ガキン!
また魔法弾が3発繰り出される。
「だあああ!!」
ドォン!!
3発全て当たった。
ルーフスは床に転がった。
「…やべえ…ひとまず撤退だ…」
ルーフスは螺旋階段をよたよたと下る。
骸骨は追いかけようとするが、
「うっぷ…!」
……察しのとおりである。
ルーフスは螺旋階段を中ほどまで下って、壁に寄りかかって座る。
そして鞄から肉を取り出してかじりついた。
「…どうやってあんな奴止めりゃいいんだ…」
明るくなった城の中で考え込むルーフスであった。