Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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39:魔法世界の冒険(中編)

~~~~チェリーの冒険~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

黒いだけの世界。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェリーはそこに立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはどこだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

独りぼっち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寂しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェリーは涙目になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

独りじゃないようだ。

 

私より一回り小さい女の子。

 

茶色でさらさらの長い髪に水色ワンピース。

 

 

 

 

その可愛い瞳でにっこりと私に笑いかけた。

 

 

 

「あなたは…?」

 

 

 

 

 

少女が口を開く。

 

 

「プラムだよ。…久しぶり、お姉ちゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たまらず目を見開いた。

 

私の頬に涙が伝ったのがやっと分かった。

 

 

 

脚は勝手に走り出す。

 

 

 

 

「ダメ!」

 

 

プラムが制止する。

 

チェリーの脚は止まった。

 

 

 

 

手が届きそうなのに…

 

 

こんなに近いのに。

 

 

抱きしめられないなんて。

 

 

「うう…ああああああああああ!!」

 

チェリーは大声を出して泣く。

 

泣き顔をあけっぴろげにして。

 

今までで一番大きな声で。

 

「コホ…ケホ…」

 

喉が追いつけなくて、咳き込む。

 

 

 

「わああああああああ…」

 

 

プラムは優しく笑って弁解する。

 

「泣かないで。お姉ちゃん。」

 

チェリーの泣き声が静かになっていく。

 

 

次第に息を吸う音だけになった。

 

 

チェリーは下を向いて涙を手で抑える。

 

 

「私はお姉ちゃんが嫌いなわけじゃないよ。

 

…でも…ここでお姉ちゃんが私を抱きしめちゃったら、

今の仲間達を大切に想えなくなっちゃう…私だけを想っちゃう…!

 

だから私は止めたの。」

 

頭の中にルーフスとジャック、ステーラの姿が浮かぶ。

 

 

 

 

プラムは続けた。

 

「今、お姉ちゃんにはお姉ちゃんを大切に想う人がいっぱいいるんだよ。

だから…負けないで。お母さんもお父さんも、私も、お姉ちゃんを守っているから…」

 

プラムの目が次第に潤ってくる。

 

「でも…私…やっぱり…プラムちゃんと…一緒に…!」

 

チェリーの心の底に隠れていた本音が口から出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷たい涙が伝っていた頬に温かい感触が来た。

 

 

 

 

 

プラムがチェリーを抱きしめている。

 

 

プラムは大粒の涙を流す。

 

「…こうすれば、…問題無いかな…!お姉ちゃん…!!」

 

チェリーはまた涙を流し始める。

 

しかしさっきの涙とは違う、温かい涙だ。

 

 

 

「私達…今、一緒にいるんだよ…!」

 

 

 

チェリーはやすらかな笑顔になる。

 

 

 

 

「ありがとう…プラムちゃん…」

 

プラムの姿が消えていく。

 

でももう追いかけようとはしなかった。

 

 

 

願いはもう果たされたから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生きなくちゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私…まだ死ぬのは早い…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(貴様の炎…しかと受け取った…!)

 

黒い世界を紫の炎が燃やしていった。

 

 

茶色く焦げて、炎が噴出す地獄のような場所。

 

寝ている娘の背後には3つ首の竜。

 

 

 

「じゃ、俺は脚から!」「俺は胴か。」「俺は胸から上だなー…」

 

 

中央の頭が近づく。

 

 

 

 

 

思い切って口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキン…!

 

 

 

 

 

 

!!

 

 

 

バリバリバリ…

 

 

中央の頭の歯がどんどん落ちていく。

 

 

 

 

「あがーーーーーーー!!!」

 

中央の頭はショックで倒れる。

 

 

「2番目!!」

 

「この人間…まだ生きていたのか…!?」

 

 

 

 

3つ首竜の前には、真剣な顔をしたチェリーが立っていた。

 

ぼろぼろの服に血がしみこんでいる。

 

深い傷と対して、なんと心強い顔であろうか。

 

手に持った日本刀がギラリと光る。

 

彼女の目には、紫の炎が瞬いていた。

 

 

「その傷で~!!」「動けるわけゃないっしょ!!」

 

 

ボォォオオオオ!!

 

 

左と右の頭は同時に火炎放射を放つ。

 

 

娘の姿は炎で見えなくなった…

 

 

1番目は3番目を見て話し始める。

 

「今度こそやったな3番目!」

 

「ふわ~ぁ…早くディナーに」

 

ボォオオ!!

 

娘が炎の中を超えて飛んできた。

 

 

日本刀を両手で左に構える。

 

 

右の頭は目を大きく丸くした。

 

瞳はチェリーを大きく映していた。

 

 

ズサ…!!

 

 

紫の斬撃が一閃する。

 

右の頭の首を中ほどまで斬った。

 

 

 

 

「さ…3番目ー!!」

 

1番目は娘を震えながら見た。

 

 

 

娘の目は真っ直ぐに左の頭の目を見る。

 

 

娘の近づく足音が静かに響く。

 

 

 

1番目はたまらず目を逸らした。

 

歯が恐怖でがたがたと震えだす。

 

「ひ…ひぃ!お、お許しください!!ごめんなさい!」

 

 

ドサッ…!

 

 

途端に、娘が倒れる。

 

 

 

 

 

1番目は目を向ける。

 

「……お…おーい……生きているかー…」

 

 

スー…スー…

 

 

どうやら疲れて眠っているようらしい。

 

 

「…へ、へへ、やっと飯が食える!…へへ…へ…」

 

左の頭から笑みが消える。

 

 

今まで…我らヒドラは人間に倒されることは絶対に無かった…

 

しかし…1頭どころか2頭も倒してみせるとはな…

 

 

 

…敵ながら…感服だ…

 

 

 

 

 

 

ヒドラはチェリーを優しく口で巣まで運び、

 

枯れた草を布団がわりにしてかぶせる。

 

 

 

 

 

「なんで俺がこんなかあちゃんみたいなことを…」

 

1番目のヒドラは嫌な目をしてつぶやいた。

 

 

そして静かに3番目を治療するのだった…

 

 

 

 

 

 

~~~~ルーフスの冒険~~~~

 

「ここだな。」

 

前には高く聳え立った城。

 

確かに扉は丸石で閉じられていた。

 

 

ルーフスはつるはしで丸石を壊して進む。

 

 

 

 

「マ…マジかよ…」

 

 

ルーフスは上を見上げた。

 

長い長い螺旋階段。

 

螺旋階段の途中では枝分かれがいくつもある。

 

ルーフスは住み着いたゾンビやスケルトンを跳ね除けて進む。

 

 

 

 

 

 

螺旋階段を上って上って。

 

なにやら床が見えてきた。

 

「…もうすぐ最上階か…?」

 

 

ヒック…ウエー…

 

 

 

なにやら声が聞こえる。

 

…と同時に、異臭もした。

 

酒の匂いだ。

 

 

ルーフスは鼻を押さえる。

 

「う…すげえ匂い…」

 

 

 

ルーフスは最上階の床を踏んだ。

 

 

 

そこには王冠を被った骸骨がワインを飲んでいる。

 

顔は驚くほど真っ赤だ。

 

床には大量のワイングラス。

 

 

骸骨は突然大きな声を上げた。

 

「この世界は終わっれいるんたよぉ…!」

 

「な…なんだ…」

 

「もう誰も救えれぇんだよぉ…!」

 

「おい…おっさん落ち着けって…」

 

いきなり泣き出す。

 

「これが落ちついれいられっらよぉ!

 

誰もいねぇんだ…誰も…」

 

 

そしていきなり怒り出した。

 

「れていけぇ!おらえはよぉ…!」

 

ビュゥ!!

 

「あぶね…!!」

 

ルーフスは避ける。

 

ルーフスに向かって魔法弾を撃ってきた。

 

魔法弾は壁に刺さって消えた。

 

 

「…眠らせて冷まさせるしかないようだ…!」

 

ルーフスは釘を撃った。

 

 

骸骨は消える。

 

 

そしてルーフスの後ろからファイアボールを撃ってきた。

 

 

ボォン!!!

 

 

ルーフスに当たる。

 

 

「ツッ!!」

 

ドォォオオン!!

 

ルーフスは壁まで吹き飛ばされる。

 

 

 

ルーフスは起き上がる。

 

 

「くっそ…」

 

 

目の前には王冠を被った骸骨が3人もいた。

 

「な…なんだと…」

 

 

「「「れていけぇ!」」」

 

3人から魔法弾が3発ルーフスに向けられる。

 

 

 

ルーフスは右へ走る。

 

 

魔法弾は壁に刺さって消滅した。

 

 

骸骨はまたテレポートする。

 

 

ルーフスはテレポートした場所を見つけた。

 

「くらえ!!」

 

剣で振りかぶる。

 

 

 

しかし剣で振り払ったのはただの煙であった。

 

幻影だったのだ。

 

 

 

追い討ちに後ろから魔法弾を撃たれた。

 

 

ドォン…!

 

 

ルーフスに直撃。

 

 

「ぐっ…!!」

 

 

 

 

ルーフスは螺旋階段へと落ちる。

 

 

ボォォオン!!

 

 

 

 

ルーフスは息を上がらせながら起き上がった。

 

「くっそぉ…まずはどれが幻影か分かんねぇとな…」

 

 

ルーフスはふらふらと見回している3体を良く見る。

 

 

 

 

 

 

あれ…?

 

 

 

 

 

 

一人だけ守りが硬い…

 

確かに一人だけ、3つの盾を魔法で漂わせている。

 

…幻影じゃない奴は分かった…あとは…

 

 

あの盾をぶっ壊して、攻撃するだけだ!

 

 

 

ビュゥ…!

 

 

 

ファイアボールが飛んでくる。

 

「うわ…!」

 

ルーフスは慌てて身を翻す。

 

 

 

ボォォオン!!

 

 

 

壁に当たって爆発する。

 

 

 

骸骨はテレポートした。

 

 

 

…どこだ…

 

 

 

ビュッ

      ビュッ

   ビュッ…

 

 

そこだ!!

 

 

中央の骸骨に剣で連撃を行う。

 

 

カキン!カキィン!ガキィン!ガキン!

 

 

また魔法弾が3発繰り出される。

 

 

「だあああ!!」

 

ドォン!!

 

3発全て当たった。

 

 

 

ルーフスは床に転がった。

 

 

 

「…やべえ…ひとまず撤退だ…」

 

ルーフスは螺旋階段をよたよたと下る。

 

 

骸骨は追いかけようとするが、

 

「うっぷ…!」

 

……察しのとおりである。

 

 

 

 

 

ルーフスは螺旋階段を中ほどまで下って、壁に寄りかかって座る。

 

そして鞄から肉を取り出してかじりついた。

 

 

「…どうやってあんな奴止めりゃいいんだ…」

 

明るくなった城の中で考え込むルーフスであった。

 

 

 

 

 

 

 


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