Minecraft ~ある冒険家の旅路~ 作:セッキー.Jr
日が傾き始める砂漠の中心で。
ルーフスは男の話を聴いていた。
「そのアーティクルって奴が問題を棚にあげたんだな。」
「ああ、そうだ。このことは秘密にしなきゃいけねぇんだが、もういいのだ。
お前らもどうせ道連れだからな!ハッハッハッハッハ!」
男は完全に生き伸びる選択肢を見失っている。
「今頃、この手紙を贈ろうとしている大統領も長官の手で殺されているはずだ!」
ルーフスは血相を変えて男の胸ぐらを掴む。
「何!?」
「もう遅いんだよ。お前らがあそこで断っていれば、大統領の命はまだ続いたのだからな。」
「今すぐ止めさせろ!」
「そうだ!」「ワン!」
ジャックとステーラも同意する。
チェリーもうなずいた。
「止めるものか…すべてはマクス・エルダム様に誓うためなのだからな!」
ルーフスは男を振り落とす。
「ジャック、ステーラ。この手紙をイクオラ・ジェラーナに届けてくれ。
俺とチェリーは大統領の所へ向かう。」
ジャックはうなずいた。
「わかった!必ず届けるよ!」
「バウ!」
ステーラも力強く吠える。
「よし、行こう!」
「待て!」
見ると赤いヘルメットの男がTNTの山に火をつけようとしている。
「…お前…まだ!!」
「俺がそれを許すと思うか…?マクス・エルダム様の思想を守るためなら!
俺は例え身が滅んでも!」
ドォン!!
ルーフスが男の頭に強い蹴りを入れる。
男は砂漠を少し転がった。
「お前がそうしたら…マクス・エルダムは喜ぶのか?
…お前が自殺して、違う意見を殺して、マクス・エルダムは喜ぶのかよ!」
「……」
男は真顔で砂を見つめる。
「俺はマクス・エルダムの思想はわからねぇ。だけど、
この世界のどこにも!心の底から戦争がしたいなんて奴はいない!」
ルーフスは動かない男を背にしてジェラーナに歩いていった。
チェリーも男を一度見つめてから、ルーフスの後をついていった。
「じゃぁ、ジャック、ステーラ。頼んだぞ!」
ジャックとステーラはうなずいて、一つの包みを男の元へ置いて、
イクオラ・ジェラーナに向かった。
男が包みを開けると、そこにはパンとリンゴが二つずつ置いてあった。
男はパンを一噛みして、目を覆って震えた―――
ここは大統領室。
アーティクル長官は大統領の頭を足で踏む。
「あなたがあの隣国と仲良くしようとしたのが、間違っていたのだ。」
ストックはアーティクルを睨む。
「お前の目的は…サラピス教の弾圧だろう!」
アーティクルは冷静に答える。
「勿論だ。私はコーポリム教の一信者として、
「お前は宗教がなぜあるかを間違っている!」
ストックは怒鳴る。
バン!
ストックが目をつぶる。
パリン!!
アーティクルが銃を発砲する。
弾は大統領の後ろのガラスに当たり、一気に割れた。
ストックの上に幾つもの破片が降り注ぐ。
「君はまだ一つ前の立場でいられるつもりなのか?」
ウ~~~~!!
パトカーのサイレンが聞こえてきた。
「…やはりな。」
「私の胸には…特殊な波長を感知する……防犯装置がしこんである。
銃弾の衝撃波を…感知した瞬間…警察が作動するようになっているのだ。」
ストックは息を切らせながら言った。
「だが残念だったな。警察にも私の仲間を紛れ込ませてある。」
ストックは目を見開く。
「警察が弾を一斉に撃ったその瞬間、何人が『流れ弾』で倒れるだろうかね…!」
アーティクルの言葉が終わると同時に、人が悲鳴をあげて倒れる声がした。
「くそ…」
「さあ、命が惜しくば我々の言うとおりにするのだ…
軍隊に命令しろ!『イクオラ・ジェラーナの人民を抹殺しろ』と!」
ジャックとステーラは砂漠を日が落ちる砂漠を一生懸命駆けていた。
目の前には砂岩で組まれた神殿や住宅街が大きく見えている。
「…やっとついた…大統領の宮殿は…」
遠く目だった宮殿が見える。
「あそこか…もう少しだね、ステーラ!」
「ワン!」
ジャックとステーラはもう一走り、砂を蹴っていった。
ボォン…!
大統領が壁に吹き飛ばされる。
アーティクルは大統領のもとへ歩んだ。
「早くしろ。」
ストックは激しく呼吸をしている。
「…ハァ…ぜっ…対に…言う……ものかぁ!」
アーティクルはピストルを向ける。
ストックは銃口を恐怖の目で見つめていた。
「これでも…どうだ…?」
アーティクルは人差し指を少しずつ曲げていく。
ストックが目を閉じた。
「あ…!」
「う!」
バタン!バタン!
断末魔と倒れる音がした。
「アーティクル指揮官!大変です!」
アーティクルはピストルの人差し指を戻す。
「どうした?」
「二人の少年少女が侵入してきました!」
「何!…あの鍛えられた隊員たちを…突破したというのか!!」
ボォン!!
大統領室の扉が開く。
「ストック大統領!」
「君達…!!」
ルーフスがアーティクル長官に殴りかかる。
巨大な体は素早くよけた。
「お前がアーティクルか!」
「いかにもそうだ。小僧。何をしにきた?」
「国を繋げに来た!!」
少年は真剣な顔で言った。
チェリーがストックを大統領室からのっそりと抱えていった。
隊員たちと警官が倒れる廊下で、ストックは背負われながらチェリーにたずねる。
「手紙は…」
「ジャック君とステーラが運びに行っています。」
ストックは力を抜く。
「そうか。」
大統領室でルーフスとアーティクルが対峙する。
「恐らく、バークルの奴から聞き出したんだろう?」
「あのヘリで俺らを襲ってきた奴か?」
「そうさ、作戦ではお前らが死んで手紙を切り刻む。これで終わりであったはずなのだがな…」
ルーフスは笑う。
「旅して歩く奴の体力なめんなよ!」
アーティクルは真顔のまま構える。
「すまなかったな。全く、なめていたよ。」
ブゥン!!
鞭のごとく巨大な左拳がルーフスを襲う。
ルーフスは左に避ける。
バキッ!!
床に拳が刺さった。
アーティクルは拳を抜いて木片を吹いて落とした。
「お前は共存のことが考えられねぇのか?」
右拳のアッパーがルーフスを襲う。
ルーフスが避ける。
「
左足のかかと落としが襲う。
「この世界に立つ者は、私と同じ思想を持つ者だけでいいのだよ!」
ルーフスがまた避ける。
バキッ!!
床にまた一つ穴があいた。
「へぇ…じゃあ…」
アーティクルの右拳がルーフスの顔面を狙う。
ルーフスが両腕で受けた。
ルーフスが後ろへ押されていく。
しかし途中で止まった。
「
「なに?」
アーティクルの攻撃が止む。
「肌が違う、信じる人が違う、持ってるお金が違う、先祖が違う…
その前に俺達はヒトだぜ?」
ルーフスが構える。
「お前と…何が違うんだよ!!」
ルーフスのパンチがアーティクルの腹に素早く向かう。
ルーフスが続いて次々とパンチをする。
「ハッハッハッハ…なんと平和ボケな思想だ!では考えてみろ!
世界全体で皆が平和にできるのか?」
「できるさ。」
「なぜだ?その原理が答えられるのか?答えろ!」
「…世界の皆が心の奥で、平和を願っているからだ!」
ルーフスが構えた。
その時。
アーティクルの目に何かが見えた。
小僧の後ろに
痩せ細り、ローブを巻いた老人の姿が見えた。
マ…マクス・エルダム!?なぜコーポリム教ではない奴に力を貸しているのだ…!?
『私は…悲しいぞ。私の教えは…戦争に導くものではないのだ…』
ドスン…
アーティクルが床に倒れた。
ルーフスは腕を下ろす。
「…終わったか。」
ドタドタドタ…
警官が大統領室になだれ込んできた。
「アーティクル!覚悟!…アレ?」
「あ…こいつをよろしく頼むよ。」
「…あ、ああ…」
警官たちがアーティクルに手錠をはめた。
ガチャリ。
こうして、違う宗教を弾圧しようとする
アーティクル長官の企みは阻止されたのだった。