Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

64 / 96
32:「強い」刀

ルーフス達は今日もサクラノ国を行く。

 

 

タネノスケとタマベエの話では…

 

 

「ここから南の町へ歩いていってごらん。

サクラノ国の刀が見られるよ。」

 

「…そこの店主はわしに負けないぐらいに頑固な奴でな。

斬られんように気をつけろよ。」

 

 

「…どんな人なんだろうな…」

 

「タマベエさんを超える頑固な人…」

 

「言葉には気をつけた方がいいかもしれないね…」

 

 

店の前に看板があった。

 

『刀や薙刀 売ります』

 

 

「ここみたいだね。」

 

 

 

 

 

ルーフス達は店に入っていく。

 

 

「…こんにちはー…」

 

 

店の中には今まさに刀を作っている男がいた。

 

黒く太い眉の間にしわを寄せて、刀をじっくりと見ている。

 

 

「あのー」

 

男は無言でギラッとした目で睨んだ。

 

「ここで刀をつく…」

 

 

 

ビュン!

 

 

「おわっ!」

 

「わー!!」

 

「きゃっ!」

 

「ワオン!」

 

 

ルーフスの目と目の間に鋭い矛先が向けられる。

 

 

 

「…刀や薙刀も知らん外国人め…この国から追っ払ってやるわ!」

 

 

 

男は店から飛び出し、刀をルーフス達に向かって振り続ける。

 

 

ヒュン!ヒュン!ヒュン!

 

 

「ちょっと!話を聞いてください!」

 

「黙れ!この茶髪野朗め!」

 

 

 

店の中から小さい女の子が出てきた。

 

おかっぱにかわいらしい赤い着物を着ている。

 

続いて狼が一匹。

 

橙色の首輪。

 

 

 

ステーラがハート眼になる。

 

「だめだよとおちゃん!おちついてよぉ!」

 

「ウメは黙ってろ!」

 

「いいかげんにしてよぉ!またおきゃくさんへらすきなの!」

 

ウメと呼ばれる女の子は大人らしく言う。

 

男はさらにヒートアップする。

 

「俺の意思を通して何が悪い!」

 

「ウメちゃん!旅人達よ!離れてなさい!」

 

外からタマベエの声がした。

 

ウメは中へ入っていった。

 

ルーフス達は外へ逃げる。

 

 

 

タマベエは小さい玉を投げる。

 

 

 

 

 

 

ボォォオオン!!

 

 

 

 

 

 

「「「ええええええええええええええ!?」」」

 

 

タマベエの驚きの行動にルーフス達は口を大きく開ける。

 

 

 

 

男は白目のまま刀がばら撒かれた店の中に倒れていた。

 

 

「大丈夫だ、こいつはこんなことじゃ死なん。

逆にこれぐらいやらんと止められんぞ。」

 

女の子は小さな体で男を座敷に上げる。

 

 

 

 

ステーラと狼は仲良く駆け回っている。

 

「わたちはウメっていうの!とおちゃんはミネゴロウ。あのオオカミはユズ。メスなのよ!」

 

「ははは、ステーラ絶対ユズに惚れてるな!」

 

「ごめんなさい、とおちゃんがめいわくかけて。」

 

「いやいや、大丈夫だよ、いきなり押しかけた俺達も悪かった。」

 

「でもウメちゃん。」

 

チェリーが質問する。

 

「なんでお父さんはこの国以外の人を嫌うの?」

 

「とおちゃん、このごろ、とおい国の会社に店をつぶされそうなんだ。

この店の刀、国中ににんきで、つぶれることもないのにね。」

 

「だからあんなに追い出そうとしてたんだね…」

 

 

 

タタタ、タタタ、タタタ…

 

馬の(ひづめ)の音がする。

 

 

「ははは!ドクーのだ平民達よ!」

 

「あ…うわさをすれば…」

 

男ががばっと起きて外へ行く。

 

 

 

「あなたはほんトーウに馬鹿なヒトーだー。

こんなボローイ刀で、マーダやっていくつもりなのか?」

 

豚のように太った貴族が、馬に乗っていた。

 

なにやらおかしなしゃべり方で話す。

 

男は咄嗟に店に落ちていた薙刀を貴族に向ける。

 

従人が同時に男にピストルを向ける。

 

「とっととこの国から出て行け。」

 

「ノンノン…私はこの店を差し出すだけでいいといってールのです。

こんな火でどぅにーも消せる店など、ナクーても変わりありマセーン!」

 

「この店は代々から受け継いだ店だ。そうやすやすと渡せるものか。」

 

貴族は笑って言う。

 

「あなたは世界を知らない。どんなに鉄をカタークしても、ダイヤモンドには勝てないのですよ。

…そうだ!明日、河原で勝負をしまショーウ!わたーしがわーが国から剣士を連れてきまーす。それであなーたの勝ち…つーまりあなたの刀が強いと証明されーれば私はサガーリまーす!」

 

「本当だろうな。」

 

「本とーうでーす!でーは、わたーしは帰るーとしマース。でーは、また明日。」

 

貴族は馬で強引に人々をよけさせながら帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステーラとユズが屋根の上で一緒に月を眺めている。

 

 

ルーフス達は刀屋の中で話をしていた。

 

「あの外人さんはランプスこうしゃくっていうの。

2年前に突然やってきて、『店を売ってくれ』っていうのよ。」

 

「なんか話し方がウザイ奴だったな。」

 

「いかにもごくつぶしって感じでしたね…」

 

「でさ、ミネゴロウさん、どうするの?」

 

 

ジャックが尋ねてもミネゴロウは話そうとしない。

 

 

「とおちゃん、この人たちはあの人とちがっていい人たちだよ?」

 

「…ハン!」

 

ミネゴロウは2階へ上っていった。

 

 

 

バシン!

 

 

ふすまを力強く閉めた音が響く。

 

 

 

「ごめんなさい、わたちが話すよ、たびびとさん。」

 

 

ウメは話し始める。

 

「たぶん、明日、とおちゃんはそのけんしと戦うとおもいます。

だいじょうぶ、とおちゃんはすっごく強いんだ!」

 

ウメはミネゴロウの刀をまじまじと見て言う。

 

「わたちは、とおちゃんの刀はだれにもまけないとおもうんだ。

とおちゃんほど、刀をだいじにおもっている人はいないよ!」

 

「ウメちゃん…」

 

チェリーは懇願する。

 

「私も、その戦い、観ても良いかな?」

 

「え?」

 

「戦いが気になるんじゃなくて…

ミネゴロウさんがどれだけ刀を愛しているかを観たいの!

…あ…でもミネゴロウさんが許さないかな…」

 

ウメはすぐに笑顔で言った。

 

「だいじょうぶ、とおちゃんは素直じゃないから、

今2階にいるあいだもわたち達の話、聞いているんじゃない?」

 

ドタン。

 

2階から物音が聞こえる。

 

ウメはくすっと笑う。

 

「ほらね?」

 

「ははは、ウメちゃん、すっかりとおちゃんの事分かってんな!」

 

「ふふふ!」

 

「はははは!」

 

 

 

 

「今夜はお兄ちゃん達、どうするの?」

 

「んーと…ここにいてもあの人の機嫌を損ねるだけだな、

ジャック、チェリー。宿を借りに行こうぜ。」

 

「そうだね…話を聞かせてくれてありがとう、ウメちゃん。」

 

「明日、また見に来るわ。」

 

 

ウメはニコッと笑う。

 

「うん!お兄ちゃん、お姉ちゃんたち!おおかみちゃんも!また明日!」

 

 

ルーフスは屋根の上のステーラを呼ぶ。

 

「おーい!ステーラ!行くぞ!」

 

「ワン!」

 

ステーラは返事をしてからユズにお辞儀して屋根から下りる。

 

「キャン!キャン!」

 

ユズも挨拶をしているらしい。

 

 

ルーフス達は夜の町を歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

ルーフス達は河原に来た。

 

ミネゴロウは仁王立ちで敵を待つ。

 

ウメはルーフス達の横で見ていた。

 

 

 

前に馬に乗った貴族と剣士らしき男が見えた。

 

従人達も6人ほどか。

 

従人達は貴族と剣士を守るように遠くから囲んでいる。

 

 

貴族がある程度刀屋と近づいた所で、止まる。

 

 

「おやおやー!みなーさんおハヤーい!」

 

「そのふざけた声はもう聞きたくはない。さっさと始めよう。」

 

「わかーりました!では、マンティース!行きなさい!」

 

「かしこまりました。」

 

マンティースという男が前に出る。

 

敵の姿を見た瞬間、マンティースは貴族に向かって話す。

 

「ランプス侯爵、私にはこの人とは向かいあわせできません。」

 

「どぅいーうことだ?そこまで強いというのか?」

 

「いえ。」

 

マンティースはミネゴロウをみて言う。

 

「私には老人を傷をつけることはしない。だから戦いはできないといっているのです。」

 

「おい、若造、敵に背を向けていいのか?」

 

剣士は避ける。

 

 

 

マンティースは目を鋭くさせる。

 

「侯爵、たった今、彼は敵となりました。始めましょう。」

 

「グレートであーるぞ!始めよ!」

 

 

マンティースはダイヤの剣を抜いてミネゴロウに走り出す。

 

ミネゴロウは刀を見て呼びかけた。

 

「雷鳴…今日も(とどろ)いてくれよ。」

 

 

刀から青白い光が走ったように見えた。

 

 

マンティースの刃の乱撃が始まる。

 

ミネゴロウはその乱撃を次々とさばいていく。

 

ミネゴロウの刀がダイヤの剣とぶつかるごとに雷が走っているようだ。

 

 

ルーフス達にも、不思議なくらいその光が見えた。

 

「ち、近づけねぇ!」

 

「刀からこんなにパワーを感じるなんて…!」

 

「ひざが笑ってるよ…」

 

ジャックはひざを揺らす。

 

ステーラとユズも一生懸命に見ていた。

 

 

 

マンティースが乱撃の途中から話し始めた。

 

「そのような古めかしい刀でよく対戦を挑んできましたね。

さび臭くてたまりませんよ…」

 

「ハン!…剣が壊れそうになって変えるようなお前らとは、違うんでねぇ!」

 

 

キィン…!

 

 

ミネゴロウが刀を振り切って乱撃が止まった。

 

 

「この刀はもう30年使ってるんだよ!」

 

ミネゴロウが始めて笑顔を見せた。

 

まるで自分の子供を自慢するように。

 

 

「30年…しかし刀の歳が勝負に比例する訳ではあるまい!」

 

マンティースが切りかかる。

 

 

ミネゴロウが力強く刀を振った。

 

 

 

 

 

ピキィン!!

 

 

 

 

マンティースのダイヤの剣が背後に飛んでいった。

 

 

マンティースは驚愕する。

 

 

 

ミネゴロウはマンティースの首元に刃を当てた。

 

「終わりだ。」

 

 

「やった!とおちゃんが勝った!」

 

ミネゴロウは刀を鞘に納める。

 

 

マンティースは潔く負けを認めた。

 

「…あなた…すごいですね。…私はここで、また成長できた気がします。

…あなたのサムライの心、しかと学びました。

 

…ついては、また5年後、勝負を申し込みたい。」

 

「…ハン!…おめぇのあの素早い刀さばき。到底素人の真似できるもんじゃねぇ。

受けてやるよ。また5年後に!」

 

マンティースとミネゴロウは握手を交わす。

 

 

ランプス侯爵は悔しそうに言った。

 

「ぐぬぬぬ…でーは、わターシたちは下がるしかないでーすね!」

 

ランプス侯爵は馬をUターンさせる。

 

 

 

 

 

 

一件落着。

 

 

 

 

 

 

…?

 

 

 

 

 

 

ランプス侯爵の馬は3歩歩いてから、もう一度こちらを向いて止まった。

 

 

「はーい、下ガーリました♪」

 

 

ダン!ダン!ダン!

 

 

従人がミネゴロウに3発打ち込む。

 

 

 

「とおちゃん!」

 

「「「ミネゴロウさん!!」」」

 

ルーフス達は駆け寄る。

 

「キャン!キャン!」

 

ミネゴロウは苦しそうに血を吐く。

 

「ジャック、医者呼んでくるぞ!」

 

「うん!」

 

ルーフスとジャックが駆けていった。

 

 

 

チェリーはランプス侯爵を睨む。

 

 

 

マンティースも驚愕する。

 

 

マンティースはランプス侯爵の前に立つ。

 

「なーんだ?マンティース?」

 

「すぐにお止めなさい、侯爵、いや!ランプス!

あなたは騎士道を侮辱した!」

 

 

「お前マーデも私に口答えする気か?」

 

 

 

ダン!ダン!ダン!

 

 

 

 

「マ…マンティー…ス…」

 

ミネゴロウが苦しそうにマンティースが撃たれるシーンを見た。

 

 

 

「では!あの店をたダーチに壊してしまうのでーす!」

 

 

「待ってください。」

 

 

 

ランプス侯爵が見ると黄色の着物姿の娘が立っていた。

 

「なーんだ?お前マーデも私にたてつく気か?…撃ってしまえ!」

 

 

ピュン!ピュン!ピュン!

 

 

チェリーは素早く動く。

 

 

ピストルの弾は地面に刺さっていった。

 

 

そしてチェリーが跳んで馬の頭を超える。

 

 

「な…」

 

ランプス侯爵は驚く。

 

 

 

ランプス侯爵の前に乗り、鼻先に剣を当てる。

 

 

「この国に…もう関わらないでください!」

 

「ははははぁい…もももう来まーせん…逃げろー!!」

 

ランプス侯爵は馬を走らせる。

 

走ると同時にチェリーは地面に着地した。

 

 

ジャックとルーフスが戻ってきた。

 

「あれ?あのバカ侯爵は?」

 

「もう行きました、この国には関わらないって約束して…

それよりミネゴロウさんとマンティースさんを!」

 

「あ!マンティースも!」

 

「どうですか?先生!」

 

「大丈夫だ、どちらも、頭や心臓には当たっていない、

止血して私の家に運ぼう!」

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

ミネゴロウとマンティースは何事も無かったようで。

 

 

 

少し病院で休んで各々帰った。

 

 

 

ルーフス達も刀屋へ行く。

 

チェリーは既にメイド服に着替えていた。

 

 

 

刀屋の座敷で、ウメは眠っている。

 

どうやら疲れてしまったようだ。

 

 

「本当にすまなかった。外人だとひいきして、おもてなしも何も出来なかった!

何と魂が腐っていたことか!」

 

ミネゴロウが謝る。

 

「いいんですよ。それより、大事に至らなくてよかったですね!」

 

「本当に、ありがとう。」

 

ミネゴロウが笑顔を見せた。

 

 

 

ステーラとユズは寂しそうに向き合っている。

 

ステーラはユズに黙って背を向けた。

 

ユズは察して、元気良く吠える。

 

「キャン!」

 

 

「じゃあ、僕らはこれで。」

 

「ちょっと、お嬢さん、待ってくれないか。渡したいものがある。」

 

「私ですか?」

 

チェリーが刀屋へ戻った。

 

 

ルーフスとジャックが不思議そうに見守る。

 

 

「あの侯爵に、恐れも無く、命を賭けて向かってくれて、本当にありがとう。」

 

「いえ…私も、一人の剣を扱うものとして騎士道を侮辱されたのが許せなかっただけです!」

 

「君は、本当に強いのだな。」

 

 

ミネゴロウは笑う。

 

 

「…えーと、それで渡したいというのは…?」

 

「これだ。」

 

 

黒紫色の細長い刀。

 

 

「私が作った刀、名前を『閻火(えんか)』という。

黒曜石を念入りに融かし鋼を作ったものだ。」

 

「黒曜石を…!」

 

「この刀が選ぶ持ち主。それに似合うのは、まさにお前さんしかいない。」

 

チェリーはその刀が放つ気に怯えていた。

 

『貴様にこの私を扱えるのか』

 

まさにそう問いかけているようだ。

 

 

 

「…分かりました。大切に、使わせていただきます!」

 

ミネゴロウはうなずいた。

 

 

 

 

 

「「「ありがとうございました!」」」

 

「またいつでも来なさい!」

 

 

「ワン!ワン!」

 

「キャン!キャン!!キャン!」

 

ステーラは再会を約束しているらしい。

 

 

 

町は橙色に染まる。

 

ルーフス達はサクラノ国の門を出ようとしていたのだった。

 

 

 

 

「ありがとう、サクラノ国。」

 

 

ルーフスは振り向いてつぶやく。

 

 

山に咲く桜と城と町が見える。

 

 

ルーフス達は別れを言うと、夕日に向かって元気良く走っていった。

 

 

「ジャック、チェリー、ステーラ、次の世界へ行くぞ!」

 

「「「おお!!」」」

 

「ワオン!!」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。