Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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30:桜の咲く国

 

 

ここはグレート・スライヴシティ。

 

ハヤブサはビルの西窓から北西の方角を見つめている。

 

 

「ハヤブサ局長、何を見ているのですか?」

 

昔からの部下の記者が話しかける。

 

「…いや、ちょいと、昔離れた故郷のことを思い出してな…」

 

「へぇ…故郷ですか。…私もいつかまた帰りたいですねー…」

 

ハヤブサは笑って記者と話す。

 

「誰しも、故郷は絶対に忘れられないものだな。」

 

 

 

 

 

 

「…今度久しぶりに、帰ってみるか。サクラノ国へ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海賊達の海を離れて西へ行くルーフス達。

 

 

砂漠を踏みしめる音が辺りに響く。

 

 

目の前には緑の気候帯が広がり始める。

 

 

空まで突き抜ける山は絶景だ。

 

 

 

「すげえ…」

 

「こんなにすごい高山始めてみたよ…」

 

「まだまだ、世界は広いですね!」

 

 

 

ルーフス達は更に進む。

 

 

険しい山を登る登る。

 

 

 

 

 

頂上に着いた。

 

 

 

 

 

「…!!」

 

「まあ…」

 

チェリーが感嘆をもらした。

 

 

 

 

目の前には薄い桃色の花の咲く木。

 

 

 

桜だ。

 

 

 

桜が所かしこに咲き誇っている。

 

 

 

桃色の花びらは高原の上を舞う。

 

 

 

 

 

「桜だ…」

 

「すげぇ…」

 

「いいですねぇ…!!」

 

「ワンワン!!」

 

ステーラがたまらず高原を下っていった。

 

 

 

「おい!ステーラ!!待てよー!」

 

ルーフス達が追いかけていく先には

 

 

 

立派な城の立つ一つの国があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どどん!

 

 

 

 

 

堀の上に架かった橋の後ろには巨大な開いた門。

 

その前には二人の門番がいる。

 

 

 

ルーフス達はその橋の上にいた。

 

 

 

「ここはなんていう国なんだ?」

 

「う~んと…『ようこそ さくらの(こく)へ』…サクラノ(こく)だって。」

 

「サクラノ国か…」

 

ルーフスは鼻から香りを吸った。

 

「なんだかいい匂いがするな…」

 

ステーラも舌を出して門に向かってクラウチングスタートのポーズだ。

 

 

…全く、行く気マンマンのようだ。

 

 

 

「行ってみましょう!ルーフスさん!私もこの良い匂いの料理、是非習いたいです!」

 

「行こうよあんちゃん!僕も、あの桜のこと聞きたいんだ!!」

 

「よし、じゃあ行ってみっか!!」

 

ルーフス達は門番へ話しかける。

 

 

「あの、この国に入りたいのですが…」

 

「旅人の者でございますか!ようこそサクラノ国へ!

ではまず殿に会っていただきましょう。」

 

「殿に?」

 

「お殿様のご命令で、お客人はまず、全て我が城に招待するようにと伝えられております。」

 

「分かりました。案内よろしくお願いします。」

 

「では、私にご引率くださいませ。…ゴヘイ!ここは任せたぞ!」

 

「へい!わかりやした!」

 

 

ルーフス達は門番について歩く。

 

 

 

 

 

 

城下町を歩くと、所かしこから声が聞こえる。

 

「すたみな満点!豚串はいかがかねー!!」

            「まあ!この掛け軸美しいわ…!!」

    「でしょう、奥様。それは有名な…」

  「いい扇子あるよ!扇子だけに、センスがいいってか!」

          「おいしい湯豆腐売ってるよ~。」

   

 

「にぎやかな町だなー!」

 

「湯豆腐…」

 

チェリーが売り手のおじいさんに手を伸ばす。

 

「まあ、チェリー、城から戻ったら食えるって。」

 

 

 

 

「さあ、着きました。ここが我が殿の住む城、サクラノ城でございます!」

 

 

 

「でっかいなぁ…」

 

 

 

白と黒できめた城はなんとも壮観だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どどどん!

 

 

 

 

 

 

 

着物をまとったたくさん女の子達が横に並んで正座している。

 

 

床にはきっちりと詰められた畳。

 

 

部屋の上座に近い所に置いた机にルーフス達は座っていた。

 

 

細長く広い部屋の中に小さい机。

 

 

なんとも異質な光景だ。

 

 

爺が旅人に説明する。

 

「いいですか、お殿様がいらっしゃったら上座に向かって正座で頭を下げるようお願いします。」

 

「「は、はい!!」」

 

「分かりました。」

 

 

 

「殿様の、おな~り~!!」

 

 

 

上座の横から殿が来る。

 

 

凛々しい顔立ちに八の字のひげとあごひげを持っている。

 

黄色に輝く着物を翻し、扇子を広げ仰ぐ。

 

涼しい顔で旅人を見た瞬間、驚いた顔になった。

 

そして爺に向かって激昂した。

 

「爺!お客人に何故(おもて)を下げさせておる!」

 

ルーフス達は驚いて顔を上げる。

 

「殿、お言葉ですが、あなたは殿でございましょう!

もっと自信をお持ちくだされ!」

 

「自信などとうに持っておる!私は彼らと同じ、人なのだぞ!?

人が頭を下げていいのは神や仏しかおらん!」

 

 

一段落ついたところで殿は旅人と向き合った。

 

「これは失礼した、旅の者達よ。私がこのサクラノ国を統治する、

桜ノ道常(ミチヅネ)だ。」

 

「ルーフスです。」

 

「ジャックです!」

 

「チェ、チェリーと申します。」

 

「こいつはステーラです。」

 

「ワン!」

 

 

「では、食事を持ってまいれ!」

 

女の子達が3人と1匹分の料理を持ってくる。

 

殿にも食事が持ってこられた。

 

 

湯豆腐に、牛飯、ゆで卵だ。

 

 

「あ!さっきの湯豆腐~♪」

 

チェリーがハート眼になる。

 

 

殿が説明する。

 

「この湯豆腐は城下町で歩いて売っているサルノスケのじいさんから頂いたものだ。

遠慮なく、食べるがよい!」

 

「おいしい♪」

 

「うめぇ!!」

 

「卵がとろけるよ~!」

 

「ワン!」

 

 

「はっはっはっは…愉快な旅人達じゃ!」

 

 

 

 

 

お殿様はこの国の歴史を話す。

 

 

「この国は私の先祖であった道良(ミチヨシ)が桜ノ木を見つけたことから始まる。

道良はそのあまりの美しさに、すぐにここに城を作ることをきめたのだそうだ。

そして旅人がそのまま国に居座り、次々と発展していった。

今では、この国の他にここまで桜の咲く国は無いとされているようになったのだ。」

 

「へぇ…」

 

「この国は独特の文化を持っておる。私はそれを大切にしたいね。」

 

殿ははっと気づき、扇子を閉じてちょんまげ頭をぺチン、と叩いて笑った。

 

「…いかん、私としたことが。熱くなり長くなってしまった。では、宴会を続けるとしよう!」

 

 

殿とルーフス達は語り合う。

 

 

「おぬし達、『ぐれえとすらいぶしてぃ』へ行ったと言うのか!

では、ハヤブサに会ったのか?」

 

「え!?なんでお殿様がハヤブサさんを知ってるんですか!?」

 

「何故と言われても、ハヤブサは私が若い頃の側近であったからだ。」

 

「「「ええー!?」」」

 

「ガツガツ」

 

 

 

「ハヤブサさん、そうだったのかー!」

 

「やっぱすげぇ人だったんだな!」

 

「ハヤブサの活躍は私も耳に入ってくる。さすがは私を育ててくれた人だ、と思ったよ!」

 

殿は笑う。

 

 

 

 

サクラノ城の宴会は夜まで続いた。

 

 

 

 

「お、もう夜か。では、皆、外へ出てみよう。」

 

「外へ?」

 

 

 

 

 

 

殿は障子を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

「……!!」

 

 

 

 

声も出せなかった。

 

 

 

 

桜がまばゆく光っている。

 

 

薄い桃色の光が点々と照らしていた。

 

 

 

ジャックもチェリーも、ステーラもうっとりしている。

 

 

 

「私は毎日、この景色を見ずに眠ることが出来ないのだ。

本当に、この国を統治していて、良かったと思うよ。」

 

 

 

 

 

こうして、ルーフス達のサクラノ国の旅が始まった。

 

 

 

 

 

 


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