Minecraft ~ある冒険家の旅路~ 作:セッキー.Jr
海の上。
巨大な帆船が浮かんでいる。
白いマストがたなびく中、アコーディオンと共に歌声が聞こえてきた。
♪我らが スターク海賊団
太陽が今日も 甲板を照らす
海に消えていく 波の音は
今日の姿のままに 帰るのだ
「島は見えるか~!」「ノー!」
「船は見えるか~!」「ノー!」
それでは始めよう 宴の時!
船長が歌い終えるが、伴奏はまだ続いている。
船員達が酒や料理を甲板の上で頬張る。
「こっちにも酒だ!」 「まだ足りないよ!」
「がっはっはっは!」
「いいぞ!酒の飲み比べだ!」
「ゴキュ、ゴキュ」 「はっはっはっは!」
「おい!なさけねぇぞ!」 「ど、どこさわってんのよ!」
「ぼふっ!」 「うっぷ…もう駄目だ…」
「はっはっはっは!!」
筋肉質な体格の船長は豪快に笑う。
「今日も順調の航海だ!!」
ルーフス達は。
機械のバイオームを抜け、ボートで海を西に進んでいた。
太陽がまぶしく、温かくルーフス達を照らす。
「ふわぁあああああ…ねみぃな…」
チェリーが目を開ける。
「あ…ついうとうとしちゃいました…」
「ほんっと、いい昼だねー。」
「クゥン…」
ステーラもルーフスのボートの上で眠っている。
「「「はぁ…」」」
ルーフス達も一斉に寝始める。
ルーフス達のはるか遠くで、ノコの刃のような三角が横切った。
「もういっちょう!」
♪我らが スターク海賊団
この世界の 全てを盗んでやる
あの
必ずや帰り 手渡すのだ
「島は見えるか~!」「ノー!」
「船は見えるか~!」「イェース!」
それでは始めよう 宴のと…
「なにぃ!?」
アコーディオンが止まる。
「船は見えてます。…とは言っても小船ですが…」
船長は船の前方を見た。
3人の少年少女、そして犬がボートの上で眠っているではないか。
船長は宝を見つけたのごとく目を見開く。
「おめぇら、引き上げろ!」
「アイアイサー!」
ルーフス達は眠ったまま、海賊団に引き上げられた…
ルーフスが目を覚ます。
ここは…?
部屋の中?
見ればそこには樽や木箱が置いてあった。
ルーフス達はベッドに寝ていた。
「おい、ジャック、チェリー、ステーラ、おきろ!」
「うーん…エンダーマン、そんなにじゃがいも食べられないよー…」
「わあ…触れるごとにクッキーが1万枚だなんて~…」
「…なんの夢見てんだよ。」
皆おきて。
「で、ここはどこなんだ?」
「あんちゃん、これ!」
ジャックが×印の書かれた地図を見つけた。
「やばいよ、ここ、海賊船の中だよ!」
「「えええええええええ!!??」」
「…どうする、ドアを蹴破って一気に逃げるか?」
「いや、ボートもどっかに行っちゃったですし、
海に飛び込んでも近くに島がなかったら…」
「どうすればいいんだ…」
キィ。
屈強な男が部屋の中に入ってきた。
「ん?」
顔に傷跡がある。
モノホンの海賊だ。
ルーフス達は口を開けることしか出来なかった…
ステーラはその横でのんきに眠っていた。
「はっはっは…船員が驚かせてすまなかったな!」
「はは、なんだ、サメが来てたから助けてくれただけだったのか!」
「もし助けてくれなかったら今頃…本当にありがとうございました…」
ジャックが青ざめた顔でお礼を言った。
「そりゃあ、サメが来れば誰でもびびるわな。
まあ、お宝も頂いたしな!」
サクッ!
「ああー!!私のクッキー!!」
チェリーは驚く。
見れば船員達も全員食べている。
「もう!欲しいなら欲しいと行って下さいよー!なんで盗むようなまねしてるんですか!」
「「「「「だって海賊だし。」」」」」
「しかしうんめぇな!これ!」「うまーい♪」
「お前の作るクソマズ料理よりぜんぜん最高だな!」
「あん?おめぇのご飯明日から抜きにすんぞコラ。」
「母ちゃんのクッキー思い出すぜ…」
チェリーはおいしそうに食べる船員達の様子を見て、
笑顔になった。
「俺の名はスターク。お察しの通りこの海賊団の船長だ。」
「俺はルーフス。」
「ジャックです!」
「チェリーです。」
「ワンワン!!」
「こいつはステーラだ。」
「おめぇたち、まだ若いのに旅に出るとは、よくやる者達だ!」
ルーフス達は照れる。
「で、おめぇらはこれからどこへ行くつもりなんだ?」
船長は尋ねる。
「俺らは西の大陸に行こうと思ってるんだ。」
「お、奇遇だな!俺らはここから西にある、でっかい島に用があるのだ。」
「用ですか?」
「実はな…」
ここから西の島に見える城。
そこには魔術を操るネクロマンサーがいる。
そのネクロマンサーは莫大な宝を持っているらしい。
「俺らはその宝目当てに、その城へ突撃しようと思ってるのさ。」
「キャプテン!目標の城が見えました!」
「野郎ども!準備は出来たか!」
「「「「「「「おおー!!」」」」」」」
「我々はなんだー!」
「「「「「「「スターク海賊団!!」」」」」」」
「そうだ!我々はスターク海賊団!世界一の海賊だ!!」
船が砂浜に着く。
奥には巨大な城があった。
そしてスケルトン達は、すでに船の近くまで来ていた。
恐ろしい数だ。
「突撃ィ!!」
ワアアアアアアアアアア!!
だがこちらの数も負けていない。
スケルトン達が襲う。
船員達が斬る。
スケルトンが倒れていく。
次々と海賊団は城へ攻めていく。
「皆つえぇ…」
「もう城の中に入っていくよ!」
「おめぇらを危険にさらすわけにはいかねぇ。ここで待っててくれねぇか?」
返事を待つ前にスタークは船から飛び降りていった。
「…行っちゃった。」
「暇だねー。」
「釣りでもしていましょうか。」
「ワオーン!」
数時間して、船員の一人があわただしく戻ってきた。
「どうしたんだ?」
「船員たちが皆瀕死になっちまって…!」
「なんで!?あんなに強かったのに!」
「途中のザコは皆倒したんだが、城主が厄介だ!
今キャプテンが一人で戦っている!…すまん、もう行かねば!」
ルーフス達が船から降りる。
「俺たちも行くよ。」
「あんたら…正気か!」
「私達だって、あなた達と同じ旅をする者なんです!」
「それに、恩を返さないと気がすまないよ!」
「ワンワン!」
「…ついて来い、はぐれるなよ!」
船員とルーフス達は巨城へと駆けてゆく。
骸骨と骨、船員達の転がる階段をのぼり、
最上階に着いた。
「キャプテン!!」
スタークは床に突っ伏していた。
「ハァ…すまねぇ…血が足りねぇ…」
「私の力を甘く見ていたようだなぁ?海の賊どもよ。」
十字架の前に腰掛ける骸骨が言う。
「おや?海の賊の次は陸の賊か?」
ネクロマンサーは鼻で笑う。
「所詮、ただの人間どもよ。私の魔術で地獄まで送ってやろう!」
「気をつけろ!そいつは吸血弾を撃って来る!
触れたらそいつを回復させるだけだ!」
ネクロマンサーが吸血弾を撃つ。
ルーフスがよける。
スケルトンがネクロマンサーの近くに現われる。
「召還した!?」
チェリーは倒す。
「ステーラ、危ない!」
ジャックがステーラを抱え込み横転する。
ステーラの頭上だった場所には砂利が落ちた。
船員がスタークを2階へと運んだ。
「どうした?まだ逃げてしかいないぞ?」
「ハンマー!!」
ドォォオン!!
ネクロマンサーに衝撃波が襲う。
「な…なんだこの衝撃は…!!」
カン!カン!カン!
ネクロマンサーに釘がささる。
「ぐおお!!」
ネクロマンサーは床に腕をつく。
チェリーが振りかぶる。
ステーラも突撃する。
「…愚民どもめ!!」
バリリリリ!!
「きゃっ!」
「ワオン!」
チェリーとステーラは弾き飛ばされ、着地した。
電撃だ。
「大丈夫か!」
「はい!」「ワン!」
「スケルトン!!」
ネクロマンサーは叫んだ。
ルーフス達の後ろにスケルトンが現われ、ルーフス達を掴む。
「くそ!はなせ!」
「ふは…はははは…私は死なぬ…まだ生きる…はははは…!」
死ぬという恐怖に混乱しているようだ。
「死ぬことが怖くてココロいかれちまうようじゃ、人間より上とは呼べねぇな?あぁ?」
「キャプテン!まだ完治してませんって!」
そこにはスタークが立っていた。
「俺たちゃ、死ぬこと承知で海に出てんだぜ?」
「殺す殺す殺す!!ははははははは!!」
ネクロマンサーが電撃を手に蓄えながらスタークに近づいてきた。
ルーフス達は目をつぶる。
「…あれ!?」
ネクロマンサーの前には何もない。
ネクロマンサーの後ろに、みるみるスタークが現われた。
「良き
ザムン!!
ネクロマンサーの背中から一突きする。
スケルトン達は消えていった。
「なんだ…なにがどうなったんだ…?」
「キャプテンは魔術を使える。」
「え?」
「何でも、子供の時、村にいるおばあさんから教わったそうだぜ。」
「…もしかして魔女なのか?」
「さあ、そのことはあの人から聞かないとわかんねぇな。
っていっても、本人は何も語ってくれないんだけどな。」
ここは甲板。
船員達の手当ても終わり、みんなすっかり元気に話し合っている。
スタークはルーフスと椅子に座りながら話す。
「ルーフスよ。私の代わりに戦ってくれてありがとよ。」
「俺達は恩を返しただけだよ。」
「はは、そうか。…野郎ども!」
スタークが船員達を大きな声で呼ぶ。
船員達は船長に真っ直ぐ向いた。
「今日は皆、久しぶりに死ぬ思いであった!
しかし今宵は休めるか?ここに私達と同じ勇敢な旅をするものがいる!
寝て夢を見るわけにはいけまい!宴だ!!」
「「「「「「イエッサー!!キャプテン!!」」」」」」
甲板の上で愉快な宴が始まった。
「どうだルーフス、お前と私の冒険を話し合おうではないか!!」
「お、いいぞ!スタークはどこから来たんだ?」
「わしはここから南の南の島出身でな…」
ジャックは甲板の中を見ていた。
「おう、ボウズ、おめぇはこっち、こねぇのかい?」
「あ、僕はこのキャノンが気になって…」
「キャノンならまかしときな!
この船で唯一レッドストーン回路を知るこのヤスベエが何でも、
質問に答えるぜ!」
「本当ですか!えっと、えっと、まず仕組みはどうなって…」
女船員と話していたチェリーの前に、ポピーの花が差し伸べられた。
「お譲ちゃん、可愛い顔してるね、一緒に踊らないか?」
「はぁ?なにアンタナンパしてんの?」
女船員が荒立ててこたえる。
「それって、船の中のプランターに植えられてた花ですよね。」
船員の一人がしたり顔でうなずく。
「植物を大切にしない人は嫌いですよ!」
チェリーはニコッと応えた。
船員は慌てて土下座し始める。
「ははは、あんたにゃ無理だよ、あきらめな!」
「はい、クッキー!」
チェリーがクッキーを船員に渡す。
しょんぼりしていた船員は一口食べて、一瞬で幸せそうな顔になった。
女船員達がなにやら群がっている。
「お手♪」
「ワン!」
ポテッ!
「「「「や~ん!かわいい~!!」」」」
男勝りな女船員もこの時ばかりは黄色い声だ。
船員達がボソッと話す。
「まさか狼に負けるとはな…」
「俺達も狼になりたいぜ…」
「「はぁ~」」
一晩たって、
海賊船に連れられ、ルーフス達は西の大陸に上陸した。
「ここでいいんだよな。」
「ああ。おくってくれてありがとう。」
「最後に言っておく。」
「俺達が海を支配するなら、おめぇは
「ああ、『全部』!行ってやる!」
「では…」
「じゃ…」
「「良き
二つの拳骨がぶつかり合った。
船が離れていく。
しかし愉快な歌声は離れていかなかった。
♪我らが スターク海賊団
大きくも小さき 船の形は
遠い友に届く はずもなく
友と再会を 果たすなら
今日の姿のままに 帰るのだ
「島は見えるか~!」「ノー!」
「船は見えるか~!」「ノー!」
それでは始めよう 宴の時!
それでは始めよう 宴の時!
「よし、皆、俺達も行こう!」
「「おおー!」」「ワオン!」
ルーフス達は遠ざかる船に背を向けて砂漠の砂を踏みしめて歩く。