Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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27:ブラウン村

 

 

ディラベル王国の中を歩いて3日。

 

ルーフス達は整地のされていない森の中を歩いていた。

 

まだここは開発が行われていないようだ。

 

 

「王様が言うには、ここらへんは王国が開発される前からの住民達が

そのまま住んでいるらしいね。」

 

「『歯車』が出来る前からの住民達か…」

 

「あ、あれじゃないですか?」

 

 

 

前には木材で作られた家々があった。

 

風車や水車がところどころで回っている。

 

「おお、旅人さんですか。」

 

みるとタオルを頭に被った若い男性がいた。

 

「ようこそ、ブラウン村へ!」

 

若い男性は爽やかな、活気の溢れた声で話す。

 

 

「初めまして。ルーフスです。そしてこっちがジャック、チェリー、ステーラです。」

 

「「よろしくお願いします。」」

 

「ワン!ワン!」

 

 

「こちらこそ。私はこの村の村長、テイローと言います。」

 

「村長さんですか!? …若いですね…」

 

チェリーは驚く。

 

「はは…実は村長であった祖父から、この前引き継いだばかりなのですよ。」

 

「なるほど…」

 

 

 

「では、この村を案内します。」

 

「はーい!」

 

ジャックが元気よく返事をする。

 

ルーフス達も後をついていく。

 

 

 

ルーフス達はノコギリが置かれた風車と水車の前に着く。

 

「この村は王国の出来る前からの生活様式で生活しています。

例えばこの風車と水車。回転する力で機器を作動させています。

全て、この土地に住む人々が私達に残してくれたのです。」

 

「この水車と風車はいつからあるのですか?」

 

「祖父が生まれた頃からあったようです。しっかり造られていて、

まだまだ使えるでしょう。」

 

「すごい…そんな昔からあるのか…!!」

 

 

 

「おお、村長さん、こんにちは。」

 

おじさんがテイローに話しかける。

 

「コーダさん、こんにちは…いい作品は出来ましたか?」

 

「ああ、今日もたくさんできたぞ!」

 

「旅人の方々に見学をさせてもいいですか?」

 

「おう、いいよ。」

 

「こちらはこの村の陶器屋のご主人、コーダさんです。」

 

「よろしく!」

 

「「「よろしくお願いします!」」」

 

 

 

コーダは台の上に粘土のカタマリを乗せる。

 

そして粘土が回り始めた。

 

コーダは慎重に粘土に筋を入れていく。

 

「「「おおお!!」」」

 

 

するとプランターが出来上がった。

 

 

「で、後はこれを、このかまどで焼くんだ。」

 

コーダは移動し、大きな炎の上に設置されたかまどにプランターを置く。

 

ふいごの稼動を確認しながら、みるみるプランターが焼きあがっていった。

 

 

テイローが追加で説明をする。

 

「この回転台も、ふいごも水車と風車の動力で動いているのですよ。」

 

「へえ…自然を動力にする…かぁ…!」

 

ジャックは目を輝かせた。

 

 

所変わって、ここはテイローの家。

 

「さあ、どうぞ。自家製のチャウダーです。」

 

 

ルーフス達は口へと運ぶ。

 

「うめぇ!」

 

「…おいしい…!」

 

「すごいまろやかだぁ~!」

 

「ガツガツガツ」

 

ステーラは一心不乱にチャウダーを食べている。

 

「このチャウダーの食材には全て、村の農産物を使っています。

そして私の母、べラスが作っています。」

 

幸せそうに太った女性が笑う。

 

「喜んでもらえてうれしいねぇ。」

 

 

「テイロー、お客さんかね?」

 

「あ、じいちゃん、

 

紹介します。私の祖父、そして前村長のマシロです。」

 

腰を大きく曲げ、杖をついた老人は笑顔を見せる。

 

「このチンケな村に、わざわざきてくれて、ありがとうよ。」

 

「いえ、とっても素敵な村です!」

 

ルーフス、ジャックもうなずいた。

 

「そうかい、気に入ってくれて何よりだ。」

 

「こんにちはー。」

 

 

村に一人の兵士が来た。

 

「テイロー村長、マシロ前村長、ご無沙汰しております!」

 

マシロの顔が厳格になる。

 

「…また来たのか。」

 

「はい、街での通貨をこの村に普及すれば、この村はもっと豊かに」

 

「そんなカタマリなどいらんわい!とっとと出ていけぃ!」

 

マシロは壁にかけてあるスピアを手に取り弱弱しく兵士に突き続ける。

 

「マ、マシロさん!お体に響きますよ!無理せずに!」

 

「うるさい…ごほっ、ごほっ、ごほっ…」

 

チェリーがマシロの元へ駆け寄る。

 

テイローは兵士に弁解の意を伝えた。

 

「すみません、わざわざ来ていただいたのに…

しかしこの村は、東の街が歯車を守っているように、

私達も文化を守っているのです。どうかお引取りを…」

 

「いや、でも王様のご指名で…」

 

「では、私どもから王様にお詫びのご馳走を届けてもらってもよろしいですか?

試食もどうぞ。」

 

兵士はルーフス達のチャウダーを見て唾を飲んだ。

 

「で、では、お言葉に甘えて…」

 

 

 

 

 

 

その後、兵士はテイローからご馳走をもらい帰って行った。

 

マシロはベッドで寝そべっている。

 

チェリーが横で看病を行っていた。

 

 

「すまんのう…迷惑をかけて…」

 

「大丈夫ですよ。ゆっくり休んでくださいね。」

 

 

 

「…私はこの生活が好きなんじゃ。」

 

 

老人は唐突に話し出す。

 

「時に汗をかき、時に病にかかり、時に皆と談笑し、

自ら作る料理を食す。私はこの生活が何よりも大好きじゃ。

 

もし街へ食べ物を買いに行けば、

食べ物のありがたさをきっと忘れてしまうだろう。

 

だから、私はわざと苦しい中で生きるのじゃ。

苦しいからこそ、食べ物の温かさが分かる。

 

私はこの生活が大好きなんじゃ…!」

 

「じいちゃん…」

 

テイローは口に出した。

 

「ブラウン村新村長として、あなたの伝統を守り抜いて見せます!」

 

マシロは笑顔でうなずいた。

 

ルーフス達も笑う。

 

 

 

「ありがとうございました、テイローさん、マシロさん。」

 

「こちらこそじゃな。旅人が遊びに来る時は、本当に楽しくなる。」

 

「べラスさん、レシピありがとうございました!」

 

チェリーがべラスにお礼を言う。

 

「いいのよ、いいのよ!あなた、昔の私にそっくりなんだもの。」

 

「え…?」

 

「私もね、昔から料理が大好きでねぇ。ことあるごとに村のお母さん達から

レシピをもらって作っていたのよ。

またいつか、この村によって頂戴ね。次までにまた新しいレシピ、考えておくわ!」

 

「はい!私、べラスさんのようなお母さんになりたいです!」

 

「まぁ、ありがとう!」

 

べラスとチェリーは笑いあった。

 

 

 

 

3人と1匹は手を振ってまた西へと向かって行った。

 

ディラベル王国の西門が近づく。

 

 

王国ともお別れだ。

 

 

二人の兵士が名簿をつけてから敬礼をして言った。

 

「「よき旅を!!」」

 

 

「ありがとう!」

 

3人は手を振る。

 

 

 

 

 

「楽しかったなぁ、ディラベル王国!」

 

「また寄りたいな、この街!」

 

「みんな、とても優しかったですね!」

 

「ワオーン!」

 

 

 

 

 

「あんちゃん、次はどっち進む?」

 

「このまま『西』だな!いくぞ!お前ら!」

 

「「おおー!!」」

 

「ワオン!!」

 

 

 

 

 

3人と一匹は草原を西へと駆けていった。

 


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